「よ、よくも幽々子様を……!」
妖夢はプロメテウスに向けて怒りの視線を送る。プロメテウスはその視線を受け流すと、口角を歪めて語りかける。
「さ、次は半分お化けのアンタの番なわけ。絶対逃がさないんですけど?」
「誰が逃げるか……! 幽々子様を返せ!」
妖夢は右手で刀を楼観剣を抜く。フランケンシュタイン『メアリー』から受けたダメージがまだ癒えず、左腕をだらんと垂らした状態で妖夢は戦闘の構えを取る。
「返して欲しければ私とやってみれば? ま、無駄なんですけど。大人しくお前も私のコレクションになったらいいわけ!」
「だまれ!」
妖夢は一直線にプロメテウスに向かって突撃する。策など何もない。まさに闇雲だ。ただ幽々子を奪われた怒りに身を任せるだけ。そんな感情的な一手にやられるようなプロメテウスではない。妖夢の直線的な攻撃に合わせて霊弾を撃ち込む。
「が……っは……!?」
妖夢は霊弾を脇腹に受けてしまう。
「あっはは。半分お化けにも零弾は効くんだ。これは大発見なんですけど。それにしてもカウンター攻撃をまるで警戒してないなんて、激情家すぎるんですけど。そんなんじゃ私に敵うはずないわけ!」
「う、うるさい……!」
妖夢は楼観剣を振り回す。しかし、プロメテウスは太刀筋を見極め華麗にかわした。
「あははは。てんで駄目なんですけど。アンタの攻撃はさっきスケルトンちゃんたちと闘ってた時に見極めてるわけ! おとなしく捕まった方がアンタの身のためなんですけど?」
プロメテウスは杖に魔力を込める。そして、幽々子にダメージを与えたのと同じ魔法を妖夢に向かって打ち放った。
「くっ!? 当たってたまるか……!」
妖夢は球状に放出された魔法を何とかかわす。妖夢に避けられた球は地面にぶつかり砂煙を上げた。視界がなくなった妖夢は煙から抜け出す。
……しかし、抜け出した先にはプロメテウスの姿があった。
「回避力あるじゃん。でも、雑魚キャラの回避ほどうざったいものってないわけ。大人しくダメージ喰らって弱ればいいんですけど!」
プロメテウスは妖夢の左腕を蹴り飛ばした。メアリーが折った場所をピンポイントで撃ち抜くように……。
「がっああああぁああ!?」
「クリティカルヒットってやつ? アンタは捕まえなきゃいけないから死なないでよね?」
「くっ……! どこまでもふざけたことを……!」
『……私に代わりなさい』
突如妖夢の脳内に声が響く。妖夢の『半霊』が声をかけてきたのだ。
「今は取り込み中なんです。声をかけてこないでください……!」
『この状況で何を強がっているんです……! 彼女の『正体』を見抜いた私が闘った方が勝機があります』
「なに、ひとりごと言っちゃってるわけ? ダメージ受けすぎて混乱しちゃってる? ま、いいわ。気絶させてからフラスコに閉じ込めてあげるんですけど!」
プロメテウスは妖夢の首を片手で締め上げる。どうやら身体能力を向上させる魔法も持っているようだ。妖夢の体から次第に力が抜けていく。首絞めから解放されようともがき動かしていた右腕も脱力され、重力のままに垂れ下がる。
「さーて、気絶したみたいだし捕まえてあげるんですけど!」
プロメテウスが妖夢の首を絞めたまま、もう片方の手でフラスコを用意しようと、袖に手を入れた時だった。プロメテウスの右手が切断される……!
「あ、ああああぁあああ!? な、なにが起きたわけぇえええ!?」
「……今度は私の番です。私はもう一人の『妖夢』ほど抜けてはいませんよ? 覚悟してください!」
「……私の腕を切っておいて……! 覚悟するのはお前の方なんですけど……!?」
プロメテウスは腕に回復魔法をかけながら妖夢を睨みつけるのだった。