東方現代物語 〜最強の相談屋が華麗(物理)に事件を解決します〜   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 飛鶴が家を出て行ってしまった。



 それではどうぞ!


第14話 一輝と飛鶴(前編)

side飛鶴

 

 これは私がまだ施設に来て間もない頃の話。

 

 私はまだ幼く、知らない環境で勇気が出なかったので全然友達なんて出来なかった。

 だから私は毎日施設の敷地内に設置されているブランコで一人寂しく揺れていた。

 

 ここには幼くして両親を無くした子供達が集まっている。

 自分だけが酷い目にあっているって言う訳では無いんだがどうにもナイーブになって、独りを選んでしまう。

 

「はぁ……」

 ため息を着いた。

 私はもうどうでもいいと思える程に気持ちがナイーブになっていた。

 正直同年代の子供達に比べたら可愛げが無かったと思う。

 

 私は何の為に生きてるんだろう。幼いながらに四六時中考えていた。

 

「あ、飛鶴ちゃん。まだこんな所に居たの? 寒くなってくるから中に戻りなさい?」

 施設の方々は優しい。だけどなんでだろう、素直に会話することが出来ない。

 今日も言葉は聞くけども一度も言葉を発することは無く建物内に入っていく。

 

 その瞬間だった。

 

「え、きゃあ」

 私は尻もちを着いた。

 何故なら目の前を男の子が凄いスピードで走って行ったから。

「宇佐見落ち着け、な?」

「な? じゃないわよこの馬鹿!」

「ちょ、待て! 死ぬ! 死ぬから!」

 その男の子はすぐに後ろからやって来た女の子に柔道の技をかけられて大ピンチに陥っていました。

 私には関係ないですが、私にはとても滑稽に思えてしまったのです。

 

「ふふっ」

「お、ま、え〜。笑ってる暇があったら助けてくれ」

 あろう事か、明らかに年下の私に対して助けを求めてきました。情けないです。しかしそれが面白くて面白くて仕方がありませんでした。

「無理ですよ。私、力ありませんから」

 それで私はその人達の横を通って室内に入りました。

 今日、私は久しぶりに笑ったような気がします。あの人達はなんて言うんだろう。その日はその人達の事で頭がいっぱいでした。

 

「ねぇ輝山君。さっきの子の事知ってる?」

「あ? いんや、この施設内で名前を覚えてるのは宇佐見だけだぞ?」

「そ、そう……。じゃ無くて、あの子は篠川 飛鶴って言って笑わない女の子として有名なのよ?」

「笑わない女の子か……。キヒヒ」

「何? 笑い方が気持ち悪いわよ」

「どうでもいいだろ?」

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 翌日、私が起きてホールの方に来ると――

 

「よ、篠川。おはよう!」

 何こいつ。

 昨日の今日で私の中でのこいつの評価は面白い奴から変な奴に変わった。

 

 それからこの男の子は私を見かける度に話しかけてくるようになりました。

 朝起きてのおはようはもちろん、ご飯の時は誰も好んで私の隣には来ないのですが、この人だけは違って

「よ、篠川一緒に食おうぜ」

「……勝手にすればいいじゃないですか」

「んじゃ、勝手にさせてもらう」

 態々私の隣に陣取って毎食一緒に食べてくる始末。

 そして食事中には私に雑談を振ってくる。

「うめぇなこの唐揚げ」

「……別に、いつも通りじゃないですか?」

 あ、ほんとだ美味しい。中にまで味が染み込んでる。

 

 これが毎食、おやつの時間だって私の隣に来て、

「これこれ、これだよ! 俺、これが好きなんだよな〜」

 分かるような。私も結構好きなお菓子だ。

 ん、美味しい。

 

 寝る前も、

「お、篠川。おやすみ! また明日な」

 また明日!? もしかしてこれから毎日こんな感じに話しかけてくるつもり!?

 本当に変な奴。

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 翌日もやはり来た。

「おはよう! 今日は清々しい朝だね」

「おはようございます」

『…………』

 私が挨拶を返すとみんなが不思議な目で私達二人を見てきました。

 久しぶりに挨拶したのでどこか至らない点でもあったのでしょうか?

 すると男の子は嬉しそうにはにかみました。

 

「にしし、おはよう」

 やっぱり変な奴だ。

 

「うめぇ。このハンバーグ最高!」

「はい。美味しいです」

 今日も自然にご飯の時間になったら私の隣に座って食べているこの人。なんかナチュラルに座って来たので私も自然と受け入れてしまいました。ですが悪い気はしません。

『…………』

 

 今日も寝る時間、いつものようにあの人が駆け寄ってきました。

「篠川、おやすみ」

「……その前に一つお話いいですか?」

 私は気になった。どうしてここまで私の周りをうろつくのかが。

 私のような人に愛想振りまいてもいいことないっていうのに……。

「どうしてあなたはそんなに私に話しかけて来るんですか?」

 ついに聞いてしまった。

 これでもし「自意識過剰過ぎね?」とか言われたらもうショックで立ち直れない自信がありました。

 しかしその人は優しい表情で私の頭を撫でながら驚くべき事を言ってきました。

「俺の妹になってくれ」

「は?」

 正直予想外と言う気持ちと何言ってんだこいつと言う気持ちで半々でした。

 私の質問に答える訳でもなくこの人は急に妹になれと言ってきたので困惑してしまいました。どうやら関わってはいけない種類の方だったようです。

 

「ああ、なぜ話しかけるかだっけ?」

 まずはその事から言ってくださいよ。びっくりしますから。……そういう問題ではないですが。

「まぁ、単純にだ。君の笑顔が見たい」

「え?」

 今度は別の意味で驚いてしまいました。

 私の笑顔が見たい。そんなのは初めて聞きました。それだけに胸を撃ち抜かれた様な衝撃が走りました。

 

「ダメか?」

「ダメじゃ……ないです」

 ダメかと問われた瞬間に私の口は勝手に動いてそう言っていました。

 

「なら良かった。じゃあ妹に――」

「おやすみなさい」

 私は最後まで話を聞くことはなく寝室に入りました。

 

「妹が欲しい……」

「……輝山君。正直、キモイ♪」




 はい!第14話終了

 飛鶴の回想ですね。

 幼いながらにこんなことを考えるのは相当ヤバいと思います。

 それでは!

 さようなら

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