東方現代物語 〜最強の相談屋が華麗(物理)に事件を解決します〜 作:ミズヤ
前回のあらすじ
蓮子と飛鶴を助け出したものの……
それではどうぞ!
side一輝
「なんでですか」
冷静に俺は聞いた。
正直言って焦っていた。だが、その焦りを見せないように普段と変わらないトーンと口調で平静を装って聞いたのだ。
すると校長は俺をじっと見ながらその答えを言ってきた。
「校外で受理したからだよ」
校外。学校外で受理しちゃいけないなんてルールがあったのかよ。
そう言われてルールブックを再度確認すると確かに学校外での口頭で依頼を受けることは特別な理由が無い限り認めないと書かれていた。
確かに校外で受理してはいけないらしい。
「今までの相談屋の奴らも同じ様な事をして退学をして行った」
そうだったのか。今までの奴らも良い奴だったんだな。だが、なぜこれで退学にされなければいけないのか……。俺には俺なりの正義感がある。その正義に従って人を守った。それをなぜ咎められなければいけないのか?
人を守り、責め立てられる。そんな世の中があっても良いのか?
しかし気になるのは特別な理由が無い限りと言う一文だ。これはなにか特別な理由があれば認めると言う意味合いを持つと読んだ。
だが、どういう理由なら校長を納得させられる? 多分今までの何人もの相談屋が退学にさせられているって事は「人を助けたかった」では話は通らないだろう。言った瞬間、即退学の可能性も大いにある。
何せこのルールはそこまで重要じゃないように見えて重要ランクが10になっているのだ。つまり、依頼を断るのと同じレベル。
厄介な事になってしまった。
だがあの校長の目。違反者を見る目では無い。何か期待のような物を感じる。
校長が何を考えているのかは分からないがとりあえず俺はこの正当な理由って物を話さなくてはならないらしい。つまりは試されているのだ。
俺は今まで様々なピンチを乗り越えてきた。こんな所で躓いて溜まるかよ……っ!
「えー。僕は今日、校外で依頼を受けました」
「ほう? それで、何かあるのか?」
「はい。あの場面では必ず受けなければいけない理由があったのです」
何も考えついていない。行き当たりばったりの発言。つまりはハッタリだ。
ハッタリなのだが、俺がこの学校に滞在し続けるにはこのハッタリをどうにかして通すしかない。
地味に今のこの状況が気に入ってるんだ。それにここで退学にされたら今後一生飛鶴がお世話をしてくる未来が見える。それだけは避けなくてはならない。男として!
「俺はあの時、確かに俺の友達二人を助けるために行きました」
「つまりは君は二人を助ける為に受理したってことかね?」
「それもあります。ですが、それだけではありません」
そこまで言うと校長は興味深そうに眼鏡の位置を直すと面接官のような緊張感を漂わせてこっちを観察してきた。
いや、これは面接なのかもしれない。俺は今、退学するか在学するかの中間にいる。ここから在学の道へ進むには校長の期待に答えなければいけないのか……。
どこかにヒントは無いか?
学校の掟三ヶ条。ルールを守り、健全な精神を培う。一人はみんなの為に、みんなは一人の為に。自分の心を偽るな、心には素直であれ。
この中にヒントが?
その時、俺の脳に電流が走ったような衝撃が走った。
心に素直に……そうか! 友達を助けるってのは建前で、所詮は自分の為だったんだよ。失うのが怖かったんだ。俺はあの二人をとても大切に思っているから俺は失うのが怖くなって戦ったんじゃないか。
もしもこれが他人だったらどうだ? 俺は助けたのか?
宇佐見と飛鶴ならば俺は必ず助けると言うだろう。だが、俺はそんなお人好しでは無い。
見ず知らずの人の為に危険を犯す奴が何処にいる? そんなの漫画やアニメの世界だけだ。
「俺はお人好しではありません。見ず知らずの人を助けるような聖人じゃありません」
校長は俺の話を静かに聞いている。
俺は態々自分の不利になる様な台詞を語った。
俺は二人が大切だと思っているからこそ失うのが怖いとか、もしも二人が他人だったら助けないと言った旨も話した。
「そうか。では君は自分の為に友達を助けたと、そう言いたいのだな?」
「どうですか。清々しいまでの職権乱用っぷりは! 俺は目的の為ならばどのような手でも使いますよ! 俺はそういう人間だ!」
「そうだな。自分の目的の為に勝手に校外で依頼を受理し、挙句の果てに開き直る。あまり褒められた行為ではない。だがな一輝君」
校長は今までの緊張感を解きながら言った。
「私は君のような人ほど信用出来る人は居ないと考えるよ」
正直言うと多分、性格面では今までの相談屋の方が良かったのだろう。
俺は不良だ。しかし校長はそれでも俺を選んだのだ。前から気になっていた。どうして俺にしたのかと言う事が……でも、その答えはここに隠されていたんだ。
「自分の心に素直。不良を気取っているものの、人を無視出来ないその優しさ。そして言ってしまったら退学になってしまうかもしれないと言うタイミングで本心を打ち明ける。中々出来ることでは無い」
「では!」
「だがまだダメだ」
少しいい話で纏まりかけていたところで再び校長からダメ出しを受けた。
まさか、俺はこんな大事な場面でミスったと言うのか? 人生を決める大事な場面でのミス。それを感じて目眩がしてきた。
視界が歪む。まさか、ここまでなのか? ここに来てダメなのか?
その時だった。
バタン! 校長室の扉が物凄い勢いで開いた。
何事かと思いそちらを見てみると、そこには三人の人物が立っていた。
「宇佐見、和成妹、進奏。なんでここに?」
「輝山君が退学させられそうになってるって聞いて来たんだよ」
「そうです。先輩が居なくなるなんて寂しいです」
「一輝、俺はこの退学は認めねぇぞ!」
三人とも……。俺は泣きそうになった。三人にそんな事を思って貰えてたと思うと嬉しかった。
「ノックもせずに入ってきた事は褒められた行為ではないが、君達の行為は実に素晴らしいものだ」
突然校長が賞賛してきた。
とても満足そうな顔をしている。優しい目をしていてさっきの厳しい表情が全く感じられない。
「一輝君。君は人望がある。それは君の人柄による物だろう。これは中々出来ることでは無い。君は素晴らしい相談屋だ。だからこそ私は君を選んだ……合格だ」
一瞬信じられなかった。さっきのあの状態から状況を逆転出来るなんて。
だが出来た。その事に喜びを感じる。これからもこいつらと共にここに居れるのだ。
「「「やったぁぁっ!!」」」
みんなで喜びを分かち合い、そしてこれからも共にこの学校で相談屋として在学する。
はい!第23話終了
次からは秘封倶楽部に焦点を当てて行きたいと思います。
それでは!
さようなら