東方現代物語 〜最強の相談屋が華麗(物理)に事件を解決します〜 作:ミズヤ
それでは前回のあらすじ
宇佐見の活躍によって進奏が一輝の事を助けに来た。
果たして進奏は一輝を助けることは出来るのだろうか?
それではどうぞ!
side一輝
あいつらは卑怯だ。単純に殴るだけじゃ解決出来ないはずだ。
そう思っていたら、リーダと思わしき男がなにやら動き出した。そして何かを取り出す男。
その動きが進奏にとっては武器を取り出す動作に見えたらしく、そんな事はさせないとばかりに、その体を蹴り飛ばした。
しかし、あいつらが無鉄砲にそのまま突っ込んでくるとは思えない。多分あれは何か卑怯な手を使おうとしているに違いない。
そうなのだとしたら進奏が危ない。
「大丈夫っすか?」
「あぁ、大丈夫だ。だが、この状況は想定内に過ぎない。やつを揺さぶるネタはまだあるんだ」
何をブツブツと仲間と話しているのかは分からないけど、これだけは分かる。良くないことだということだけは……。
そんな進奏を見て俺はロープを引きちぎった。
あんな進奏を見ていたらじっとしていられない。そう思って飛び出したのだが、次の瞬間、俺は嫌なものを見てしまった。
進奏を揺さぶるネタ――それは、和成 結乃の写真だった。それもただの写真ではない。
進奏はそれを見て固まってしまった。なぜならそれは、ナイフを突きつけられて今にも殺されてしまいそうな妹の写真だったからだ。
あれは幾らなんでも酷すぎる。あいつらはいつの893だよ……ってレベルの極道っぷりだ。
多分進奏は大抵のことでは心を乱すことはないだろう。しかし、この写真は流石に聞いているようだ。
悔しそうな表情をしてピタリとも動かなくなってしまった。
「今だ! やれ」
『はいっ!』
リーダーが命令すると、周囲に居た仲間が一斉に進奏に飛びかかった。しかし、進奏は全く動く気配が無い。
そりゃそうだ。あんな写真を見せられたら誰だって動けなくなる。
弱点が極端に少ない進奏でも流石に妹を人質にされたら動けなくなるようだ。
その時、俺には進奏がニヤリと笑ったような気がした。
「大丈夫かな……」
この状況でそんな事を口にした進奏。それによって男たちは追い詰めたと判断したようだ。しかし、俺にとってはその台詞はまるで……まるでっ――勝利を確信したような声色だっ!
『どわあぁぁぁあっ!』
進奏に襲いかかった男たちは全員、宙を舞った。進奏が殴り飛ばしたのだ。
しかし、そんな事をしたら妹が傷つけられてしまう。
なんでこの状況で相手を殴り飛ばすという選択が出来たのかが俺には理解が出来なかった。
「大丈夫か? お前のお友達がよォ」
「こ、こいつ……心配していたのは自分の妹ではなくて、俺らの仲間の方だったっ!?」
こいつ、自分の妹の心配は一切していなかったというのか。こいつの考えが全く読めない。
「お前、自分の妹がどうなってもいいのか!?」
「まぁ、俺も人の子なんで、妹をどうにかされるのは嫌っすけど」
「ならなんで抵抗する!」
その時、リーダーの携帯電話が鳴り始めた。
リーダーはチッと舌打ちをして電話に出る。すると、リーダーの顔は一瞬で青ざめた。
その様子を見て進奏は申し訳なさそうに笑った。
「どうして……どうしてあんな小娘ごときに……っ!」
「ふっ、まぁ、どうにかしてくれても構わないぜ。俺は妹に何かしようとするお前らを止めはしない。まぁ、出来たらの話だがな」
まさか、結乃ちゃんは――
「俺の妹は――」
「「強い」」
あんなか弱そうな女の子があの状況で勝ったというのか? 普通で考えたら不可能だ。
結乃ちゃんは戦えるとは思えないくらい筋肉などは着いていない華奢な体だ。あの体のどこに戦う力があるんだよ。
「俺の妹である結乃は確かに武術の達人って訳でもない。それはパッと見でわかるだろ? だがな――」
その時に見せた進奏の表情は嬉しそうで、悔しそうだった。そんな複雑そうな表情を進奏は見せた。
「あいつはな、武術では最弱だけどもよ、戦いの上では俺すらも多分凌駕する。あいつは護身術の達人、相手にも思い通りの戦いをさせない。それがあいつだ。力なんて要らないんだよ。人間の体の構造を知ってさえいれば……な」
そうか。護身術で相手の本調子を出させなければ力がなくても勝機はある。
ったく……和成兄妹は本当に人間なのかよ。兄と言い、妹といい……。
「一輝、お前はごちゃごちゃ考えすぎだ。俺たちを信じろ。多分脅されたんだと思うが、その程度の脅しに屈するなんて……俺らの事を信じてくれてなかったのか?」
「お前らのことを?」
確かに今までこの脅しに逆らったらみんなが酷い目に会う。俺なんかと一緒に居た事実が知られたらみんなは、この学校で今回の俺みたいなことをされてしまうんじゃないかと考えていた。
しかし、実際は強い奴らだった。それは進奏や結乃ちゃんだけじゃない。
みんな強かった。芯が太かった。この程度の脅しに屈した俺を殴りたくなってきたぜ……。
「あぁ、サンキュ……お陰で目ェ覚めた」
もう何も恐れるものはない。こいつの何事にも屈しないところはこういう信頼から来ていたんだな。
俺は軽く指をポキポキと鳴らす。
「なぁ、進奏。俺は怒っている」
「あぁ」
「超怒っている」
「あぁっ!」
「こいつらどうしようか」
「とりあえず、殴ってから考えようぜ」
「そうだな」
俺ら二人は指を鳴らしながら男たちに近づいていく。
そんな俺らを見て男たちは生まれたての子鹿のようになってしまっている。
「歯ぁ食いしばれ!」
はい!第35話終了
今回は進奏が活躍する回でした。
どうでしたかね。
それでは!
さようなら