東方現代物語 〜最強の相談屋が華麗(物理)に事件を解決します〜 作:ミズヤ
今回は久しぶりに東方現代物語、そしてクリスマス特別編を投稿していきます。
周年記念は毎回書いていましたが、暫く季節の特別編は書いていなかったので久しぶりですね。
オリジナルでクリスマス特別編を書くことも考えていましたが、すこし間に合わな双だったため、東方現代物語の方で登校することにしました。
この作品はもう2年ほど前に完結したんですね。久しぶりに見てみて感慨深かったです。
時系列は本編完結後となっています。
まだ本編を読んでいない方は本編を読んだ後に読むことをお勧めします。
それではどうぞ!
クリスマス特別編 雰囲気に充てられて
side一輝
「はぁ……」
俺は自宅への帰路を歩いている最中、おもむろに息を吐いた。
その息は白く色付き、この夜空にふわりと消えてゆく。その光景を見ていると、今この季節を実感する。
季節は冬、もうすでに雪が降り積もっており、俺たちの足跡を鮮明に残す。
そんな中俺は片足を引きずりつつ歩いているため、俺の足跡は一本の線となって連なって残されていた。
今回は少ししくじった。俺は自分の体を少し過信しすぎていたようだ。病み上がりの体に無茶をさせすぎてしまったため、俺は足を痛めてしまったのだ。
街中では夜、真っ暗な時間帯だというのに人々が行きかっており、普段は暗くてあまり明かりなどはないのだが、今日だけはきらびやかに彩られていた。
そう、今日はクリスマスだ。
街中には大勢のカップルや親子連れがいる。そしてその手には食い物やらラッピングされたものやらを抱えられている。
そんな中、俺はというと――
「はぁ……何やってるんだか。俺も充てられたか」
手に持っているそれを見て自分で苦笑してしまった。
少し前まではこういうことをする考えは持ってはいなかったが、どうやら俺もこの街の雰囲気に充てられてしまっていたらしい。
手に持っているのはケーキだ。
確か今日は宇佐美やメリーたちも呼んでうちでクリスマスパーティーをするって飛鶴が張り切って料理をしてくれているらしい。
ちょっと前までの俺だったら何も買わずに普通に帰っただけだったが、どうやら俺はいつの間にかみんなと楽しい時間を共有したいと思ってきていたらしい。
まぁ、このせいで足を引きずってケーキを買いに行ったらものすごく心配されてしまった。
確かに痛いし、歩きにくくはあるが、こういう仕事――相談屋をやっていたらこういうことも普通にあり得る。
一年前に死にかけたりとかもしたし、この程度ならまだいい方だ。
とりあえず依頼も終わったことだし、早く帰ってパーティーに参加したい。
俺は少し足を速め、帰路を辿っていく。
俺の家はここからあまり遠くはないため、少し歩いたらすぐに家に着いた。
するとすぐに俺は異変に気が付いた。
家の前に来たのだが、やけに静かすぎる。
それに電気が付いていないというのも気になる。
俺は依頼があるから少し遅くなると伝えて後で参加するからパーティーは先に始めててくれと伝えていたからみんなで先にパーティーをやっているものだと思っていた。
だが、中から物音が聞こえてこないどころか電気すらついていないというのはどういうことだ?
俺は少し嫌な予感がして家の壁に手をついてみる。
俺は物の記憶を読み取れるため、これで何かあったか見てみようとしたのだが、触れてみてわかったことはみんなが楽しそうに家の中に入って行ったということだけだ。特段怪しいことなど何もない。
だというのになんなんだこの静けさは。
もしかしたらここには何もなかったが、ほかのことで何かがあったのかもしれない。
俺は警戒しつつ慎重に玄関の扉を開けて家の中に入った。
家に入ってみるとやはり真っ暗で、足元もよく見えない状態だったため、俺はスマホを取り出してライトをつけて進んでいった。
もしこの家で何かがあった、もしくは誰かが侵入し、みんなに何かしていったのだとしたらまだこの家にいるかもしれない。警戒するに越したことはない。
そう思って慎重に進んでいき、リビングの扉を開けたその瞬間――
『メリークリスマス!』
パァンパァンパァン。
近くから破裂音のようなものが聞こえるのと同時にリビングの電気が付けられてようやく状況を理解した。
俺は警戒しながらリビングへとやってきたらいつの間にか大量のテープをかぶってしまっていた。
「メリークリスマス!」
再度聞こえてくるその言葉に俺は弾かれるようにして声の聞こえてきた方へと視線を向けると、そこには宇佐美蓮子がいた。
周囲を見回してみると、そこには飛鶴やメリー、進奏、結乃ちゃんがそこにいた。
そしてその手に持っているものを見てすべてを察した俺は脱力してしまってその場に座り込んでしまった。
くそ、心配して損した。
「どうだ? 驚いたか?」
「はぁ……これはお前の入れ知恵か? 進奏」
「わ、私は止めたんですが……たぶん様子がおかしいって一輝が心配するって……でも、ちょっとこの空気に充てられてしまったみたい」
確かに俺もこの空気に充てられていたわけだから宇佐美の気持ちもわからないでもないため、それは許すこととしよう。
だが、さっきまで余計に気を貼っていたせいか一気に脱力して疲れが押し寄せてきた。
「そういえばお兄ちゃん、足を引きずっていたようですが、大丈夫なんですか?」
「お前はお前でなんで真っ暗な中、俺の動きを把握してるんだよ」
「妹として兄の動きを完全に把握するのは義務ですので」
ちょっと今度本気でGPSや盗聴器を取り付けられていないか確認してみよう。
そう心に決めた。
「まぁ大丈夫だ。ちょっと痛むがいつものことだ」
「ダメですよ。ちょっと待ってくださいね。今湿布を貼ってあげますから」
俺が大丈夫だといっても飛鶴は許してくれなくて湿布を取りに向かってしまった。
その間に俺はみんなに連れられて食卓にまでやってくる。
テーブルの上にはチキンやオードブルなど様々な料理が並べられていて、非常に豪華なラインナップとなっていた。
これはみんなで出し合って買ったものだ。もちろん俺も学校で宇佐美に金を渡しておいた。
「美味そうだな」
「だろ、これさっきまで宇佐美と飛鶴で作っていたんだぜ」
「なんでお前が誇らしげなんだよ」
「私たちも手伝っていたんですよ。ね、メリーさん」
「そうですね。まぁ、蓮子と飛鶴ちゃんと比べたらできることは少ないのだけど」
「進奏、お前は何のためにここに居たんだよ」
「味見役だな」
「そ、そうか」
進奏も相談屋の手伝いに連れて行った方がよかったかもしれないと、そう思ってしまった。
「そうだ。これ、土産だ」
「あ、これケーキじゃないですか!」
飛鶴が湿布を取って戻ってきたときに俺がケーキを取り出したため、テンション高めに駆け寄ってくる。
飛鶴が好きなイチゴショートのほかにチーズケーキ、チョコケーキ、フルーツケーキなどいろいろなケーキを買ってきた。事前に誰が来るかは知らされていたため、ちゃんと人数分。
「それじゃ、とりあえずテーブルの上にあるものを食ってからそれをデザートとして食おうぜ」
「なんでお前が仕切ってるんだよ」
こうして俺たちのクリスマスパーティーが始まった。
はい!クリスマス特別編終了
久しぶりに書いたことによって今までの現代物語と違う雰囲気の物語となりましたね。
本当はもうちょっと蓮子や飛鶴との絡みも書きたかったのですが、時間がなかったため、断念しました。
正月特別編はもうちょっとしっかり書きたいと思いますのでよろしくお願いします。
正月はオリジナルで書こうかなと思っています。
それでは!
さようなら