問題児と死にたがりが異世界から来るそうですよ? 作:天月照詠
「ところで、皆様はもうコミュニティの状況についてはご存知なのですよね?」
気を取り直した黒ウサギが不安げな顔をして訪ねてきた。
「もちろん」士人
「ガルドが説明してくれたわ」飛鳥
「説明役乙b」春日部
(ガルド、お疲れ様です……)
春日部の突き出た親指を見たジンがなぜか空に向かって敬礼していた。
なんでだろうな?
「申し訳ありません、本来なら歓迎という形で皆様にお祝いをしなければならなかったのですが……」
「いいわよ、無理しなくて。私達のコミュニティってそれはもう崖っぷちなんでしょう?」
「そこまで気を遣わなくても大丈夫」
「食って風呂入って寝れればなんでもいい」
最後の俺の言葉に黒ウサギが完全に固まっていた。
どこまでひどい状況なんだよ。
「だ、大丈夫です!水に関してはちょっと頼りなかったかもですが、今回十六夜さんが水神から大きな水樹の苗をもらってきてくれましたので!」
「十六夜が世界の果てに行ってくれたおかげでなんとかなったわけか」
「そうね、湖に落ちたせいで微妙に藻の匂いがするし本当に良かったわ、十六夜くんが世界の果てに行ってくれたおかげで」
「本当によかった」
「ヤハハッ、だろ?」
「って!皆様方揃って十六夜さんを正当化しないでください!」
怒った黒ウサギに一同爆笑。
「え~っとそろそろコミュニティに帰る?」
笑いが収まってきた頃にジンがそう提案してきた。
「あ、ジン坊ちゃんは先にお帰り下さい。ギフトゲームが明日なら『サウザンドアイズ』に鑑定をお願いしないと。水樹の事もありますし」
「名前だけ聞くと気持ち悪いコミュニティだな」
旗に千の目玉があんのか?
「そんなこと言わないでください!一応お世話になっているコミュニティなのですから!」
「で?どんなコミュニティなんだ?」
「あっ、はい。『サウザンドアイズ』は特殊な『瞳』のギフトを持つ者達の超巨大商業コミュニティです。幸いこの近くに支店がありますし」
「なくても行くつもりだったんだろどうせ」
「それは言わないでくださいよぉ」
「えっとそれじゃあ、僕は先に戻って準備してるね」
「わかりました、それではみなさん行きましょうか。ジン坊ちゃんもお気を付けて」
しばらく5人で歩いていると桃色の花の木を発見。
「あっ、箱庭にも桜の木、あるんだ」
「あら、今は夏だったと思うけれど」
「まだ初夏だし、根性ある桜ならまだ咲いてるんじゃねぇか?」
「えっ?桜ってそもそもいつでも咲かせられるだろ?」
『えっ?』
「ん?」
なんだ?全員の言ってることがバラバラなんだが……。
「士人さんが言ったことは気になりますがこれは皆さんはそれぞれ違う世界から召喚されているのデス。元いた時間軸以外にも歴史や文化、生態系など所々違う箇所があるはずですよ」
「へぇ? パラレルワールドってヤツか?」
「近しいですね。正しくは立体交差並行世界論というものなのですけども……」
「へぇ~面白いな」
そうなふうに話しているとサウザンドアイズらしき店を発見。
それに加えて、店をしまおうとしている割烹着の店員も発見。
あれ?まずくね?
「ちょ、まっ「待った無しです御客様。うちは時間外営業はやっていません」……」
「なんて商売っ気のない店なのかしら」
「ま、全くです! 閉店時間の5分前に客を締め出すなんて!」
「文句があるならどうぞ他所へ。あなた方は今後一切の出入りを禁じます。出禁です」
「出禁!? これだけで出禁とかお客様舐めすぎでございますよ!?」
おいおい、これはこれは。
「そこまでにしておけよ黒ウサギ」
「なっ、士人さんはこちらの方の味方なのですか!?」
「その女は時間に閉め始めただけだろう?むしろこんなギリギリの時間に来る俺たちも悪い」
「一人はわかっている人がいるそうですね」
「だから、こんなつまらん店員はスルーしておこうぜ?」
「……なんですって?」
俺の最期の言葉に店員はこめかみをぴくりとさせた。
「だってそうだろう?ギリギリとはいえ俺たちは来ているんだせめて何を求めているか、それぐらい聞くのが店員といものだろう?」
「なるほど、『箱庭の貴族』であるウサギのお客様のいるコミュニティを無下にするのは失礼ですね。中で入店許可を伺いますので、コミュニティの名前をよろしいでしょうか?」
「そ、それは……」
なんだ?
ノーネームだと問題があるのか?
「俺たちはノーネームってコミュニティだ」
「ちょ、十六夜さん!」
「そうでしたか、生憎ですがノーネームはお断りなので」
へぇ~。
「じゃあ俺は入れてもらおうか」
「……あなたは人の話を「ノーネームは入っちゃいけないんだろ?生憎だが俺はまだノーネームじゃないんだ」!?」
「黒ウサギたちを待ってるあいだにジンから聞いたんだが箱庭に来た人間は30日間、コミュニティを決める猶予があるらしいじゃねぇか。ならまだノーネームに入っていようがいまいが変わりはない。ノーネームって肩書きが今邪魔ならそれは今どけれるしな」
「こんの屁理屈を……!」
おぉw店員の頭に怒った時のマークが浮かんでるよ。
「で、どうn「やっほーい!く~ろウサギー!」ってなんだ?」
奇妙な大声に全員がサウザンドアイズの入口を見ると白髪和服の少女がダッシュしてきている。
標的は黒ウサギか、このままスルーするのもいいけど……。
「……(十六夜!)」アイコンタクト
「……(あぁ、わかってる!)」アイコンタクト
俺は十六夜と目を合わせるとちょうど俺達のところをとおりすぎた少女の腕をキャッチ。
「おぉ!?」
少女の驚く声と安堵した表情の黒ウサギ、だが甘い!
俺は少女の手を掴んだままジャイアントスリングの要領で回りだす。
回していると「おぉ~~~!」と楽しそうな声が聞こえる。
周りを見ると驚いた表情の女性陣と拳を構えた十六夜。
「士人!」
「行くぞ十六夜!」
俺は少女の持ち方を換え、ある一方向に飛ばせるように調節する。
そして俺が手を離しながら放ると同時に少女の足の部分に十六夜の拳が命中する。
「ぬぉ!?」
「「喰らえ黒ウサギ!人間ロケット!!」」ダンッ!
「え?キャー!?ゲフッ!?」
本来の突撃よりも威力が増していたことと安堵して油断していたことにより思い切り腹に少女の頭部をくらった黒ウサギはおよそ女性が出してはいけない声を出しながら少女とともに水場に落ちていった。