問題児と死にたがりが異世界から来るそうですよ?   作:天月照詠

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第三十四話「一方その頃」

飛鳥がガルドと対面する少し前。

 

 

 

 

 

「次はお嬢様が行ったのか?」

「あぁ、どうやらそうらしい。敵をとるんだとよ」

 

でも、飛鳥がガルドに勝てる確率はほとんどない。

ガルドへの命令は完全にはガルドに通用しない。

例え一瞬の隙が生まれたとしてもそれをアスカが捉えられるとも思えない。

 

「大丈夫ですヨ!」

「? なぜだ」

「飛鳥さんには私、黒ウサギがアドバイスをしましたから」

 

黒ウサギが胸を張りながらそう言った。

 

「しかし、そのアドバイスをうまく使えるかはわからんぞ」

「そうだな、なんか中の様子がわかるもんがあればいいんだが」

「あぁ、そういえば」

 

十六夜の言葉に後ろで控えていたフォレス・ガロのメンバーらしき狼男が手をポンッっと叩く。

 

「なんかあんのか?」

「ガルドさんから『コロシアムに観客席がないのはおかしい』ってこいつを渡されたんだ」

 

男が出したのは……サングラス?

それにイヤホンがくっついてるな

 

「なんだこれは」

「こいつがあるとな?これとセットになっている小型のカメラと連動してサングラスをかけている全員が見れるという優れもんだ」

 

ほいっ!と、放り投げるようにして俺、ジン、十六夜、黒ウサギに渡されていく。

 

「どれどれ……おぉ!コイツはスゲェ!」

 

十六夜が早速かけて性能を確かめていた。

とりあえず見えることは確かのようだな。

俺もサングラスをかける。

そこに見えるのは飛鳥とガルドの姿。

ガルドはすでに虎の形をとっているな。

春日部が言っていたように目も赤い。

飛鳥のほうは……剣を持っているな。

それに対してガルドは怯えているようだが……。

ん?飛鳥が剣を構えたな。

なんかぶつぶつ言ってるけど聞き取れない。

ここからだと飛鳥の背中しか見えないがとりあえずわかるのは耳が真っ赤になっているな。

 

「なんか剣が光ってないか?」

 

十六夜がそう言うとサングラスの視界一面が光に包まれた。

サングラスをかけていた俺たちと、フォレス・ガロ全員が。

つまり……

 

『目がっ!目があぁぁあぁぁぁl!?』

 

もれなく全員ム〇カになった。

 

「なんてこったフォレス・ガロ、まさかこんな方法で俺たちに攻撃してくるとは」

「それはこっちのセリフだ!俺たちは獣のギフトのせいで視力が普通の人間よりいいんだぞ!見ろ、全員ブッ倒れてるじゃないか!」

「そういうお前は大丈夫なんだな」

「俺はかける寸前で光ったからな、すぐに外せた、そして俺はそっちにはいない」

 

俺が話しかけた方向に男はいないらしいが……

 

「目が潰されたんだ、わかるわけないだろ」

「とはいえ、そろそろ目がなれる頃だろう」

 

たしかに、まだすこしチカチカするけど見えないことはないな。

 

「で?何が起こったんだァ?」

もう一回サングラスをかけると飛鳥が持っていた剣が少し変わっていた。

より白くより輝いていた。

 

「あ、飛鳥さん、できたんですね!」

 

後ろで黒ウサギが感極まって涙を流していた。

 

「泣くほどのもんか?」

「これはさっきの光のせいですよ!」

「黒ウサギ、飛鳥さんは一体何をしたんですか?」

「飛鳥さんは、あの剣に命令をして、一時的にギフトにしたんです!」

「ギフトを一時的とは言え作れるギフト、か。すげぇな」

「でもこのままじゃぁお嬢様は負けるな」

「あぁ」

「どうしてですか?」

「飛鳥は剣を使えない」

「使えなければ意味がない」

 

俺たちの言葉に黒ウサギはうつむいてしまった。

 

「だが、飛鳥がこのままやられるとは思えない」

「あぁ、何かしら一矢報いてくるだろうぜ」

 

俺と十六夜の言葉を合図としたかのように飛鳥は剣を構えた。

すると同時に、ガルドの体を周りの枝が縛っていく。

 

「あれも、飛鳥の力か」

 

木にも命令できるとは本当に便利だな。

 

「これで飛鳥さんの勝ちですね!」

 

その映像を見た黒ウサギが大はしゃぎでジャンプしていた。

 

「いや、ちょっとまて」

「? どうしたんですか士人さん?」

「ガルドの様子がおかしい」

 

ガルドは力を抜いたように項垂れている。

今のあいつは獣だ、そう簡単に負けを認めるとは思えない。

よく見ると肺のあたりが膨らんできている。

まさか!

 

「まずい!全員イヤホンを外して耳を塞げ!」

 

俺の言葉にジンと黒ウサギは急いで外し、十六夜は既に元のヘッドホンに戻っていた。

フォレス・ガロの連中もよくわからないちう感じだがイヤホンを外した。

 

『ガアアアァアァアアァ!!!』

 

耳を塞いでいてもガルドの咆哮が耳をつんざく。

その証拠に耳を塞ぎそこねたフォレス・ガロの連中と形上耳を塞ぎきれなかった黒ウサギがまたもや悶絶していた。

 

『耳が!耳があああァァァァ!?』

 

耳版ム〇カ?

 

俺はもう一度イヤホンを付け直して状況を見る。

そこにはさっきまでのガルドはいなかった。

赤かった目は紅く、黄色かった体毛は白くなっていた。

ガルドはそのまま枝を引きちぎって飛鳥に襲いかかっていった。

 

「飛鳥さん!」

 

ジンの必死な声がとなりから聞こえる。

飛鳥はすんでのところで剣を使ってガルドの攻撃を抑えていた。

 

「飛鳥の腕力で抑えられるのか?」

 

よく見るとガルドの手のあたりから煙が吹いている。

どういうことだ?

 

「もしかして」

 

となりでジンが確信を付いたように何かをつぶやいた。

 

「ジン、何かわかったのか?」

「はい、おそらくガルドは……

 

 

『あなた、吸血鬼にでもなったというの?』

「なにっ!?」

 

吸血鬼だと!?

そういえば箱庭に入った時にジンが吸血鬼がいるなんて話があったが……まさか。

 

「そうです、おそらくガルドは鬼種化したんです」

「鬼種化?」

「はい、ガルドはもともと、虎としての体に人としての存在を合わせた生物です。その合わさっていた部分を人から鬼に、つまり吸血鬼化したんです」

「それで、あの剣に触れて火傷したのか」

「だけど、このままじゃお嬢様の敗北は決定したも同然だな」

「あぁ、だけど飛鳥はまだ諦めた顔をしてはいないみたいだぜ?」

 

飛鳥の顔にあきらめはない。

何かをやり遂げようとしている。

 

「とはいえ、俺も行かなくちゃならんだろうな」

 

俺はサングラスとイヤホンを外す。

 

「士人さん?」

「次は俺の番だ」

 

春日部と飛鳥があそこまでやったんだ。

俺も男の意地ってやつを見せないとな。

 

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