問題児と死にたがりが異世界から来るそうですよ? 作:天月照詠
十六夜が世界の果てとやらに向かってすぐに飛鳥と春日部が振り返ってきた。
黒ウサギはそれに気がつかず、意気揚々に歩いている。
「あら、十六夜くんはどこに行ったの?」ヒソヒソ
「世界の果てだと」ヒソヒソ
「あなたはついて行かなかったのね」ヒソヒソ
「こっちのほうが居心地がよさそうじゃないか。両手に花だぜ?」ヒソヒソ
「3人いるよ?」ヒソヒソ
「まぁ、そこは気にすんなよ」ヒソヒソ
「それより、黒ウサギには言わなくていいのかしら?」ヒソヒソ
「いいんじゃねぇのめんどくさいし」ヒソヒソ
「それもそうね」ヒソヒソ
そんなこんなで後ろで3人ひそひそ前で一人(匹?)ウキウキしながら歩いていると階段に腰掛けている少年を発見。
「ジン坊ちゃーん♪新しい人を連れてきましたよー!」
知り合いか?
黒ウサギの声に少年が顔を上げた。
「おかえり、黒ウサギ。そちらの女性二人と男性一人が?」
「YES♪こちらの四名が……ってあれ?もう一人いませんでしたっけ?ちょっと目つきが悪くて、
かなり口が悪くて、全身から"俺問題児!"ってオーラを放っている殿方が」
おおっ!さっきまで輝いていた黒ウサギの顔が一瞬で真っ青に。
「えぇ、十六夜くんなら、”ちょっと世界の果てを見てくるぜ!”って言いながら駆け出していったわあっちの方に」
飛鳥が指さすのは俺たちの後方。
「なんで止めてくれなかったんですか!」
「だって"止めてくれるなよ"と言われたもの」
「ならどうして黒ウサギに教えてくれなかったのですか!?」
「"黒ウサギには言うなよ"と言われたから」
「嘘です、絶対嘘です!実は面倒くさかっただけ
でしょうお二方!」
「ええ/うん」
うぅ……と言いながらうなだれる黒ウサギだがハッっと顔を上げると。
「士人さん!士人さんはなぜ止めてくださらなかったんですか!?まさかあなたもめんどくさかったのですか!?」
どうするか、ここで素直にうんと言ってしまえば黒うさぎのテンションは底辺にまで行ってしまう。
「違うぞ黒ウサギ、俺が止めなかったのは無理に止めようとすれば連れて行かれそうになっていたからだ。四人が三人になるならともかく、四人が二人になるのはさすがにまずいだろうと思ってな」
「そ、そうでしたか」
俺の回答に少しだけ気をよくした黒ウサギ。
すると耳元で
「あら、うまくごまかしたわね」ヒソヒソ
「めんどくさいって言ってたのは池上だったのに」ヒソヒソ
「いいじゃねぇか流石にあそこまで落ち込んでるやつに追い討ちかけるほど俺はSじゃねぇよ」ヒソヒソ
ジンは顔面蒼白にして叫んだ。
「た、大変です!"世界の果て"にはギフトゲームのため
野放しにされている幻獣が」
「幻獣?」
「何それ怖い(笑)」
「笑い事ではありませんよ士人さん!」
「は、はい。ギフトを持った獣を指す言葉で、
特に"世界の果て"付近には強力なギフトを
持ったものがいます。出くわせば最後、とても
人間では太刀打ちできません!」
「あら、それは残念。彼はもうゲームオーバー?」
「ゲーム参加前にゲームオーバー?……斬新?」
「大丈夫だ、死に戻りっていうのがあるはずだから一番最後に来た町に来れるはずだ」
「最後ってどこよ?」
「……どこだろうな?」
「冗談を言っている場合ではありません!それにそんなシステムもありません!」
「そうなのか?」
「そうなんです!」
黒ウサギはそう言うとハァっとため息をつきながら
「………ジン坊ちゃん。申し訳ありませんが、御三人様の
ご案内をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わかった。黒ウサギはどうする?」
「問題児様を捕まえに参ります。事のついでに
ーーーー"箱庭の貴族"と謳われるこのウサギを
馬鹿にしたこと、骨の髄まで後悔させてやります」
黒ウサギの青い髪が一瞬にして淡い緋色というかぶっちゃけ桃色になっていた。
「それではジン坊ちゃん、あとはお願いしますね。皆様も!勝手にどこかに行かないように!」
黒ウサギはそう言い残すと十六夜が言ったであろう方向に跳んでいった。
そして俺は思う。
「あいつの黒ウサギって名前、色々間違ってんじゃねぇか?と」
「口に出てるわよ」