問題児と死にたがりが異世界から来るそうですよ? 作:天月照詠
桃ウサギこと黒ウサギを見送った俺たち一行しばらくそれを眺めていた。
「行っちゃったな」
「箱庭のウサギはずいぶん早く跳べるのね、感心6割呆れ4割ってところね」
「ウサギたちは箱庭の創始者に眷属でもそうですが、様々なギフトの他に特殊な権限も持ち合わせた貴種です。彼女なら余程の幻獣と出くわさない限り大丈夫だと思うのですが」
「何か
「不吉なこと言わないでくださいよ」
「まぁ、それはともかく。池上士人だ」
「へ?」
「自己紹介だよ、お互いに名前を知ってても名乗りあったわけじゃないからな」
「それもそうね、久遠飛鳥よ」
「春日部耀」
「はい、コミュニティのリーダーを勤めています、ジン・ラッセルです。齢11になったばかりの若輩ですが、よろしくお願いします」
『よろしく』
「では、自己紹介も済ませた所で、箱庭に入りましょう。まずはそうですね……軽く食事でもどうぞ」
「あら、気前がいいのね」
ジンはそう言いながら俺たちを箱庭の中に案内した、といっても天幕の中に入るだけなんだが。
天幕をくぐるとそこには青空の広がった街があった。
「外から天幕の中に入ったはずなのに空が見えるなんて」
「太陽もちゃんとあるようね」
「箱庭にある天幕は内側に入ると不可視になるんです」
なるほどな。
「でもなんでそんな風にする必要があるんだ?」
こんなことができるなら人口の太陽とかも作れそうな気がするが……。
「そもそもあの巨大な天幕は元々、太陽の光を直接受けられない種族のために存在するわけですから」
「あら、この都市には吸血鬼でも住んでいるのかしら?」
「えぇ、いますけど……」
「……そう」
吸血鬼なんて架空の生き物の存在に飛鳥は目を伏せていた。
別にいても良さそうだけどな、吸血鬼。
そもそもあんな倒しやすそうな生き物もいないんだし。
「この箱庭には様々な種がすんでいます、それこそ神仏、悪魔、精霊、獣人、人間」
多すぎるだろ。
「もっとも、この東区は農耕地帯が多いので住人たちの気性は穏やかですけど」
「十六夜には合いそうな空気ではないな」
「たしかにそうね」
「気性は荒そう」
「えっと、僕はまだあったことがないのでなんとも……あっ!つきましたよ、詳しい話は食事を取りながらにでもしましょう」
ジンが案内してくれたのは軽食屋だった。
「とりあえず、まずは飲み物を頼みましょう?ここまで何も飲んでいないのだし」
「そうですね、すみません。オーダーお願いします」
遠くからハーイ!という声と共に来たのは猫耳をつけた獣人?の女性。
「ハーイ♪ご注文は何になさいますか?」
「私は紅茶を」
「私は緑茶」
「俺はコーヒーで」
「僕も紅茶をお願いします」
「ニャー、ニャァニャー」
ん?三毛猫も何か言ったか?
「ハイハーイ♪紅茶二つに緑茶を一つ、コーヒーをひとつにネコまんまをひとつですね?」
『え?』
店員の言葉に疑問符を浮かべた三人。
俺?俺は驚かないぞ?注文されたもので誰が注文したかはわかってるし。
「三毛猫の言葉が分かるの?」
「そりゃぁわかりますよ。私は猫族ですから」
そう言いながら店員は耳と尻尾を動かしていた。
「ニャゥニャー、ニャニャニャーゥ(ねぇちゃん、可愛い猫耳に鈎尻尾やなぁ、今度機会があったら甘噛みしに行くわぁ)」
「やだもう!お客さんたらお上手なんだからぁ」
店員はそう言いながら俺たちの机を去っていった。
「箱庭ってすごいね、私以外に三毛猫の言葉がわかる人がいたよ」
「ちょ、ちょっとまって!貴女、もしかして猫と会話できるの?」
「雀、鶯、霍公鳥、水族館でペンギンと話したこともある「「ペンギン!?」」うん、ほかにもイルカ達と友達」
『…………』
春日部の意外なスキルに一同唖然。
「そ、それは心強いギフトですね」
「猫とは普通喋れないしな」
「春日部さんは素敵な力があるのね、羨ましいわ」
飛鳥の言葉が嬉しかったのか春日部は少し頬を染めていた。
「そんなこと、それに久遠さんは」
「飛鳥でいいわ宜しくね春日部さん」
「うん、飛鳥はどんな力を持てるの?」
「あぁ、私の力は……」ドスン!
飛鳥の言葉を遮るように俺のとなりの椅子から音がした。
そっちを見ると何やらガタイのいいタキシードの男がいた。
「おやおや、誰かと思えば東区角の最底辺コミュニティ、名無しの権兵衛のリーダージン君じゃないですか」
「……ガルド」
「どなたかしら」
飛鳥は自分の話を遮られたのがキタのか少しイライラしていた。
「はじめまして、レディース&ジェントルマン。私はフォレス・ガロのリーダーガルド・ガスパーといいます。以後、お見知りおきを」
ガルド・ガスパー、これが俺たちの最初のギフトゲームの相手の名前だった。