とある隠れ里にて―――
後のエターナルヒーローと呼ばれる者達は、テーブルの上で二つの黄金像を見ていた。
「黄金像が2つ…形は違いますが、台座は非常に似ている。ここまで来ると作為的なものすら感じます」
ホ・ラガは黄金像を見て興味深そうな顔をする。
勿論黄金そのものには興味は無いが、これが何か重要なアイテムである可能性は感じ取っていた。
「カフェ、彼等から何か話は聞けませんでしたか?」
ホ・ラガの質問にカフェは首を振る。
「全然。そんな事聞ける状態じゃ無かったし…それにあのスラルって人もレンって人もすっごい怖かったし」
カフェは本当に少しの間ランス達と居たが、カフェはランスよりも女性二人の方が怖かった。
確かに美しい人で、カフェも思わず見惚れる程の美貌と力を持っていた。
だが、二人に冷たい空気を感じ取り、それはどんどんと恐れへと変わっていった。
「あの男に何かされなかっただろうな」
「何かって何? あんなに綺麗な人が側に居る人が私に何かすると思う?」
「…怒るなよ。その様子じゃ何かされたって訳じゃねえみたいだな」
カオスの言葉にカフェが口を尖らせ、カオスがその言葉に安堵する。
どうやらあの男とは本当に何も無かったようだ。
「でもねー。私あの男の人、なんか嫌いになれなかったんだよねー。すっごい子供っぽいって言うか」
「おいおい…マジかよ。俺らを殺そうとしてきた奴だぜ?」
「それに関しては…やっぱりホ・ラガのせいじゃないかな。あの人、本気でホ・ラガの事に殺気を向けてたし…」
カフェの言葉にホ・ラガは苦笑する。
「フフ…中々楽しそうな男でしたが…どうやら私は本格的に嫌われているようでね」
ランスの直感は当たっており、ホ・ラガはまさにホモだ。
よってランスにとっては許しがたい存在であり、殺気を向けるのもやむを得ないだろう。
ましてやランスを狙ったとなれば猶更だ。
「それはいいけどよ…あいつ等も同じような物を持ってるんだろ? そこはどうするんだよ」
この黄金像は何か重要なアイテムである。
それをこの4人は本能的に察していた。
そして問題の男も同じようなアイテムを持っているのだろう。
協力が出来ないのであれば、それこそ奪い合いという事になってしまう。
それはブリティシュ達としても避けたい所だ。
あの男と正面からやりあうのは出来るだけ避けたい、そう思っていた。
「…少し待ちませんか。もしかしたら…もしかするかもしれないのですがね」
「ホ・ラガ?」
意味深な言葉を発するホ・ラガに対してブリティシュは怪訝な顔をする。
「彼女は大分揺れていた。私としてはあまりスマートな手では無いとは思ってますけどね」
魔法ハウス―――
ダンジョンの中から戻って来たランス達は異様な空気に包まれていた。
理由は勿論ただ一つ。
「おい日光。お前、本当に洗脳とかはされてないんだな」
「はい。私は全て自分の意志で、彼等を助けました」
ランスの言葉にも日光は気丈に答える。
そこには自分の行動は何一つ間違っていないと言わんばかりの強い意志を感じる。
まるで上杉謙信のように迷いなく言われては、ランスとしても言いようがない。
JAPANに人間とはそういう頑固な一面を持っているのは知っていた。
そして日光は間違いなく、その頑固な人間であると。
「それよりも…私には何故ランス殿がそこまで協力を拒むのか、それが理解出来ません。私達だけで行動するよりも余程効率が良いと思いますが」
「男はいらん。それだけだ」
日光の言葉にランスは短く答える。
ランスという人間は本当に男には冷淡で、冒険には必要無いとさえ考えている。
せっかくこうしてハーレム状態で冒険をしているのに、余計な連中など必要無いのだ。
それが無害な連中、例えばリックとかならば別にいいのだが、ランスから見てあのパーティーのリーダーであろう男は気に入らなかった。
本能的に、女にもてる男だと感じていた。
ただ、ランスの勘は実は的外れであり、ブリティシュは実はランスの言う安全な男なのだが、当然ランスはそんな事は知らない。
「…本当に必要無いのですか?」
「いらん。それにあのホモ野郎だけは絶対に許さん」
あくまでも頑ななランスに日光ももう何も言えなかった。
そしてあの時にホ・ラガが自分の耳元で囁いた言葉が頭から離れない。
それは彼らが今居るであろう隠れ里の位置だ。
つまりは、自分は彼等に勧誘されている。
(…私の取るべき道は決まっている。いや、もっと前から言わなければいけなかったのだ)
そして日光はある決意を固めていた。
「とにかく! 日光、お前はオシオキだ。分かっているな」
「…申し訳ありません、お断りします」
ランスの言葉を日光は静かに、だが力強く否定する。
「何だと?」
「私は今回の自分の行動は正しいと思っています。ですので、ランス殿にそうされる必要は無いと思いますので」
「ぐぬぬ…」
流石のランスも日光にそう強く否定されては何も言いようが無い。
JAPANの人間はそういう時は本当に頑なで頑固だ。
もし下手に手を出せば、どうなるか分からない処が有る。
「フン、つまらん」
ランスは本当につまらなそうにしているが、それ以上何も言う事は無かった。
そしてそんな日光を、スラルは冷静な目で見ていた。
その夜―――ランスは日光に夜の行為を否定され、レンを激しく抱く事で憂さ晴らしのような事をしていた。
勿論それはレンは強く感じ取っていた。
「もう、少しは落ち着きなさいな」
一度精を放ったが、それでも尚レンを乱暴に抱こうとするランスをレンが抱きしめる。
抱きしめるというが、その力は意外な程に強く、流石のランスも身動きが出来ないほどだ。
「あだだだだ! お前の馬鹿力で抱きしめるな! 痛いぞ!」
「それは私も同じ。そんなイライラした感じでエッチされても嫌なだけ」
レンは力を緩めると、動きを止めたランスのハイパー兵器を引き抜く。
そしてランスを押し倒すと、自分の愛液とランスの精液に汚れたハイパー兵器に舌を這わせて綺麗に舐めとっていく。
「む」
「何があったかは分かるけど、八つ当たりでそういう事はしないでよ」
レンはそう言って、ランスの気持ちを静めるように優しく口と舌で刺激をする。
その刺激はプロと比べれば拙いが、その分気持ちがこもっていた。
だからランスもその刺激に身を任せ、レンの好きにさせる。
しばらくの間、レンがランスのハイパー兵器を刺激する音が響く。
その気持ちのこもった刺激にランスも満足したのか、そのままハイパー兵器が震える。
「出すぞ」
ランスの言葉にレンは何も答えぬまま、ハイパー兵器を奥深くまで咥える。
そしてそのまま皇帝液がレンの口内に放たれる。
レンは少し驚くが、それでも躊躇いなく口の中に放たれた精を飲み込んでいく。
そしてそのままハイパー兵器を綺麗に舐めとると、そのままランスを上目遣いで見る。
ランスもその刺激を受けて気が静まったのか、一度ため息をつく。
「日光が俺様に逆らうから悪いんだ」
「日光だって人間だもの。逆らうときは逆らうんじゃない?」
「フン」
ランスはレンを押し倒すと、そのまま上にのしかかる。
「気持ち良くしてよ? エッチするなら、気持ち良くなりたい」
「分かった分かった。だったらしっかりと気持ち良くしてやろう」
レンの言葉に気分を良くしたランスは、そのままレンに刺激を与え続けていた。
ランスとレンの二人が絡み合ってる頃、日光は一人魔法ハウスの入口に居た。
そしてランスが居る方向に一礼すると、扉を開けようとする。
「待て。忘れ物だ」
その時に声がかけられたかと思うと、日光の手に富嶽と、何かの包みが投げられる。
日光はそれを掴むと、声の主を見る。
「スラル殿…」
「行くのだろう? だったら持って行け」
刀と包みを日光に投げたのはスラルだ。
「…止めないのですか?」
「止めたら止めるのか? お前はそういう人間では無いはずだ。悩んだ末の結論…我はそう見る」
日光は包みを見ると、そこには黄金像が入っていた。
それには日光も驚き、スラルを見る。
「スラル殿…何故これを」
「持って行け。ランスには我が説明をする。それに礼を言う必要は無いからな」
スラルの言葉に日光は怪訝な顔をする。
確かにスラルの目は全く笑っておらず、むしろ冷たさを感じさせる笑みを浮かべている。
「ハッキリ言おう。我はこの黄金像を集めるのには反対だ。確かに我に関係が有るものかもしれないが、その先には良い未来が待っているとは思えない」
「え…?」
「ランスには我と同じような過ちを犯して欲しくないのだ。我の不確かな記憶で、ランスの未来を潰したくはない」
「それはどういう…」
スラルの言っている事は日光にとっては意味が分からない。
「我はお前に酷い事をしようといている。だからお前がこの先恨むのは我だけでいい。だが、ランスを決して恨まないでくれ」
「スラル殿…」
そう言うスラルの目を見て、日光は何も言えなくなる。
スラルとて好きでこういう事を言っているのではないのだろう。
だが、自分がランスとあの者達を秤にかけたように、スラルも自分とランスを秤にかけ、そしてランスを選んだのだ。
「分かりました。ですが、どんな未来であろうとも、私はランス殿もスラル殿も恨みません。むしろ感謝しています」
日光はそう言うと、富嶽から鍔を外す。
それはランスと共に電卓キューブで手に入れた日光のアイテムだ。
「これを…」
日光から差し出された鍔をスラルは受け取る。
「これから私達の運命はどうなるか分かりません。もしかしたらこれが今生の別れになるかもしれません。私もこんな形でランス殿とは別れたくは無かったのですが…」
「顔を会わせるのが辛いのか?」
スラルの言葉に日光は首を振る。
「決意が鈍りそうなのです。ランス殿とこれ以上いれば…私は私の目的を果たせなくなるかもしれない」
「魔人を倒す事か」
「はい。ランス殿と一緒に居ればそれも叶うのかもしれません。でも…私はランス殿と目的を共に出来ないかもしれません」
日光の言葉にスラルは複雑な顔をする。
それは間違いなく、魔人ケッセルリンクとの出会いだろう。
魔人は人類の敵だが、その人類の敵であるはずの魔人とランスが協力している。
いや、それどころか魔人がランスに対して想いを寄せている。
「魔人は…敵なのです。私はランス殿のように割り切る事は出来ません」
「…そうだろうな。それが自然なのだろうな。ランスという人間が異質なのだろう」
「はい。ランス殿にはそんな姿を見せたくないのです。だから…私は黙って消えます。出来ればランス殿の記憶に残らないように…」
日光の顔は笑ってはいるが、その奥には別の感情があるのをスラルは分かっている。
「それでいいのか? 我は…生まれながらにしての魔王、人間の感情には正直疎い。だが、それでもお前の事は分かっている。それでも駄目なのか?」
「ダメ…なんです。もしこのまま私はランス殿と一緒に居たら…私はランス殿に甘えてしまいます。あの人は…私にとっては大きすぎる人です」
日光はランスの行動の全てが正しいだなんて思っていない。
間違っている物は間違っているとハッキリと口にもした。
それでも…ランスという存在は日光にとっては一筋の光だったのだ。
「だから…黙っていくんです。これ以上ランス殿と一緒に居たら、私はただの女になってしまうから…」
「それはランスの望みだろうな」
「だからです。だから私はランス殿に恨まれながら出て行くんです。ランス殿が私の事を忘れられるように」
日光の言葉にスラルは笑う。
「ククク…悪いがそれは無理だ。あいつから逃げようとして、逃げられるとは思わない事だな。あいつは必ずお前の前に現れる。お前はその時…ランスを拒めるか?」
「だから行きます。私が私であるために」
日光はそのままスラルに、そしてランスの部屋に一礼してそのまま走っていく。
それを見送りながら、スラルは日光の置いて行った鍔を見る。
「お前は十分女だよ、日光。ランスに忘れられたいなら、こんな物を残していくはずが無い。だからお前は必ずランスと出会う事になるさ。それも近いうちにな」
スラルはそう言いながら、ランスには何て言おうか今更ながら頭を抱えていた。
「はああああああ!? 何だと!? 日光が出ていっただと!? しかも黄金像を持ってか!?」
翌日、ランスはスラルから全てを聞いた。
スラルも隠す事無くランスに全てを話す。
当然ランスは怒りまくるのだが、それでもスラルは自分の考えを話す。
「日光に関しては…お前と考えが違うのだ。ランス、お前も全ての人間が自分に無条件に従うだなんて思っていないだろう」
「うぐぐ…あいつは俺様の女だぞ」
「それは関係無いだろう」
日光がランスの元から去った。
それはランスにとっては許し難い事でもある。
だが、同時にランスは自分が知ってしまっている事にも頭を悩ませていた。
「だったら何で黄金像まで渡した!」
「それに関しては…ハッキリ言おう。あの黄金像を使ってジルを何とかしようとするのは止めて欲しい」
「そりゃどういう意味だ」
「アレに頼っても間違いなくお前のためにはならない。お前は我とは違う手段でジルを取り戻して欲しいのだ」
スラルの言葉にランスは考える。
ただ、考えると言っても相手は魔王、正直人間のランスではどうする事も出来ない相手だ。
そしてもう一つ、ランスにはやらなければいけないと思っていた事がある。
「あれはスラルちゃんの記憶を取り戻すために必要なんじゃないのか」
それは失われたスラルの記憶のためだ。
記憶が無いと言うのがランスにはどういうものか分からないが、それでスラルが悩み苦しんでいるのは分かっていた。
正直、ランスにとっては黄金像はスラルのために集めているという意識しかなかった。
「必要無い。我に必要なのは過去ではなく、今であり未来だ。記憶を取り戻したからといって、それが自分にとって本当に良い事がどうかは分からない」
スラルはランスの目を見てそう言い切る。
そこには何の迷いも無く、本当にそう思っているのがランスでも分かる。
「スラルちゃんがそういうのなら別に構わんが…本当にいいんだな」
「ああ。我には過去はもう必要は無い。それに、お前と共に世界の謎を探す方がよっぽど刺激的で面白いからな」
スラルは偽らざる本音を話す。
ランスと共にいると、スラルも新たな事を沢山知れる。
魔人の事も知っているようで全く知らなかったと思い知らされた。
そして魔人の無敵結界を破るための手段があるという事を知った。
そんな色々な知識こそが、スラルにとっては何よりの楽しみなのだ。
「…フン、だったら最初の目的を達成するぞ」
「バスワルドの力の欠片だな。それが一番の手掛かりだと我は思う。何しろ神が導いているのだからな」
ランスは黄金像の事はすっぱりと諦め、それ以外の話をする。
そういう切り替えの早さもまた、ランスの良い所だ。
「それに関しては時間に任せるしか無いんじゃない? あの時に戦ったラ・サイゼルって魔人の妹がケッセルリンクの城を訪ねるまでは仕掛けが動かないんでしょ?」
話が終わったと判断し、レンが口を開く。
「そこは我は特に問題視はしていない。このまま時間を移動したとしても、魔王が変わるまでの時間は経たないはずだ。セラクロラスにもそれ程の力はあるまい」
全てはランスの仕掛け…悪だくみが発動するかにかかっている。
「だったらその間は暇になるのか」
「暇になる…というよりも、何もしないのも選択肢の一つではある。どうやらレイはカミーラとは違い積極的にランスを探すようだからな。ランスも面倒だろう」
「カミーラならともかく、野郎に狙われるなどありえんぞ」
「だったら少しの間、カラーの元に身を寄せるのもいいだろう。ケッセルリンクの城も近いからな」
「カラーか…」
スラルに言われて、ランスは考える。
この時代で安心出来るのはやはりカラーの集落だろう。
何処も暗い空気の世界で、カラーの里は美人が多いので視覚的にもそれが良いかもしれない。
「そうだな。一回戻るか」
日光の事は本当に惜しいのだが、これ以上はどうしようもない。
探そうと思えば探せるのだろうが、正直あの連中とはあまりやりあいたくない。
あのホモとは顔も合わせたくは無いし、それに何だかんだ言ってあの連中は間違いなく強い。
勿論負けるとは微塵も思わないが、それでも面倒な事には変わりない。
それよりも、あの魔人サイゼルの妹とやらを探す方が面白そうだ。
(それにサイゼルとはやれなかったしな。今回はズバッとやるのがいいな、うん)
魔人サイゼルとはゼスの時にはやれなかったし、そのサイゼルの妹とやらにも興味は有る。
スラルが黄金像を集める事に固執していない以上、ランスとしても別に黄金像を集める事には興味は無くなった。
どんな効果が有るかも分からない黄金像よりも、確実に存在するものを追いかける方がよっぽど効率的だ。
「がはははは! じゃあカラーの所に戻るぞ!」
「これが彼の持っていた黄金像か…」
「はい。これがランス殿が持っていた黄金像です。ただ、これがどういうアイテムなのかは分かりませんが」
日光はブリティシュ達に黄金像を見せていた。
ホ・ラガが日光の耳元で囁いたのは、ブリティシュ達が逗留している町の名前と、その位置だった。
幸いにも日光はその町を知っており、難なくここに辿り着くことが出来た。
そして事情を話した結果、ブリティシュはそれを受け入れた。
カオスだけは懐疑的な顔をしていたが、結局はブリティシュの言葉に従った。
「ホ・ラガ。これはどういうアイテムなんだろうね」
「今の所分かりかねますが…こうも同じようなアイテムが有るとなると、どうにも作為的な感じもします」
似たような大きさの黄金像が3つ。
ここまでくれば偶然とは思い難い。
「誰かが作って隠した…なんて事は無いのかな?」
「今の時代でこんなモンをか? そんな酔狂な奴が居るはずが無いだろ」
カフェの言葉をカオスが否定する。
ただ、カオスもこの黄金像はかなりの価値がありそうだとは踏んでいる。
傷も無く、つい最近作られたと言っても信じてしまう程だ。
「日光。あなたはこの黄金像の事は聞かされていたはずです。それを話す事は出来ますか?」
ホ・ラガの言葉に日光は首を振る。
「申し訳ありません…これが何なのかは私も知りません。ただ、それ以上の事は私の口からは言えません」
「お前はそればっかだな。ま、無理に聞こうとは思っちゃいねーけどよ」
日光の言葉にカオスはため息をつく。
「申し訳ありません…」
「構わないさ。それにこれが何であるかまでは知らないのは本当だろう。だったら問題は無いさ」
申し訳なさそうにする日光に対し、ブリティシュが笑いながら答える。
「でも3つか…これで全部なのかな?」
「分かりませんね。これが本当に重要なアイテムなのか…それすらも分からない状態ですから」
ホ・ラガは興味深そうに黄金像を見るが、当然答えは出てこない。
ただ、この場に居る全員がこの黄金像はただのアイテムでは無いと感じていた。
日光だけはスラルが最後に自分に言った言葉を思い返していた。
(これは私達を不幸にするかもしれない…か)
元魔王であるスラルが自分に残した言葉。
彼女はランスを不幸にしないために、この黄金像を自分に渡してきた。
「これを使う場所ってのも分からねえしな。だったら色々探しみるしかねえな」
「そうだね。まずは行動をしないと何も始まらないね。で、この後はどうしようか?」
「あなたがリーダーなのです。あなたに任せますよ」
ホ・ラガの言葉にカフェと日光が頷く。
カオスは頷きはしないが、ブリティシュの事を認めており、その決断には従っている。
「そうだね…じゃあ黄金像についてもっと調べてみたいんだけどいいかな?」
ブリティシュの言葉に皆が頷く。
(もう一回…彼と出会えないかな)
リーダーとして決断を下しながら、ブリティシュが思い浮かべていたのはあの規格外の強さを持つ男の事だった。
(上手くは言えないけど…彼ならばもっと大きな事が出来ると思うんだよね)
それはある意味確信とも言える事だが、それを実感するのはまだまだ先の事である。
カラーの隠れ里―――
ランス達が隠れ里へと戻ると、そこは非常に慌ただしく揺れていた。
誰もがその顔に恐れを抱いており、何かあった事は明白だ。
「何かあったみたいね」
「言われんでも分かる。あ、ウトスカ! おい何があった!」
ランスは走ってくるウトスカを見つけ声をかける。
ウトスカはランスを見ても青い顔のまま走ってくる。
そしてランスの手を握ると、
「ランスさん! 大変です!」
何かを懇願するようにその顔を覗き込む。
「いいから落ち着け! 何があった!」
「それが…カラーが魔軍に拐われたんです!」
「何だと!?」
ウトスカの言葉を聞いてランスが驚く。
「ここは変化が無いみたいだけど」
「始祖様が見つけたカラー達が、途中で魔軍に見つかってしまって…」
「世界に散らばるカラー達か」
スラルは苦い顔をする。
カラーを狙っているのは人間だけかと思ったが、どうやら魔軍の中にはカラーを狙っている奴も居るようだ。
「で、ハンティは何処だ」
「ここだよ」
ランスの言葉に合わせるようにハンティが姿を現す。
「始祖様!」
「…拙い状況になっててね…正直諦めるしかない状態なんだけどね」
ハンティは苦い顔をしながらランスを見る。
「何があった。言え」
「ウトスカの言う通り魔軍に拐われたのさ。流石のアタシも逃げるしかなかった…始祖と言われてもこんなもんさ」
皮肉気に笑うハンティに対し、ランスは怒鳴る。
「いいから言え! 何処に拐われた!」
「…魔人の元さ。魔人メディウサ…魔軍を大っぴらに動かせるのはあの魔人しかいないのさ」
エターナルヒーロー結成
こればかりは本当にどうしようもないイベントと割り切るしかありませんでした
これで日光が聖刀にならないとザビエルが復活した時どうしようもないので