「お前達…魔人となり我に仕える気は無いか?」
魔王の口から語られたのは衝撃の言葉だった。
魔人…それは魔王の血の一部を分け与えられ、魔王に従う部下であり、魔物達の上に立つ将でもある。
それは同時にこの世界の支配層の上に立つという事だ。
この世界に24体までが存在可能で有り、その内の一人として魔王が直々に声をかけている。
スラルの予想ではランスならば是が非でも飛びつく話だと思っていた。
人間というのはそういうもの、という認識がスラルには存在していた。
ガルティアの時もそうだった…才能が有るが故に同族から嫉妬され、疎まれ、そしてついには魔人となった。
人間は愚かで、醜く、時には足を引っ張り合い、最後には自分の利益のために仲間すら裏切る存在。
スラルの前に現れる人間は、全て『魔人になりたい』という欲望を隠さない人間が、恐怖で全てを諦めているような奴ばかりだった。
だが、目の前にいるこの男が今まで出会ってきた人間像とはまったく一致しなかった。
魔王を前にしても大胆不敵ともいえる度胸、魔人をも嵌め殺す程の悪知恵、そしてカミーラと戦い生き残る程の強さ。
全てにおいてこれまでの人間とはまったく違うタイプの存在だ。
そしてもう一人の人間であるレダ…彼女もまた素晴らしい逸材だ。
何よりもその盾を使っての防御技能…魔人の攻撃すら防ぐその力はまさに『盾』だ。
傷を癒す魔法の力も素晴らしいと思っている。
全てにおいて高レベルな存在であり、魔人相手にも勇敢に向かっていくその姿がスラルも気に入った。
「嫌だ」
「まあ…私も無理ね」
だからこそスラルはランス達が発した言葉が信じられなかった。
あまりにも驚いたせいで、スラルは目を見開き、口も大きく開けてしまっている。
そしてランスの言葉にはケッセルリンクも驚いていた。
まさかランスが魔人になるという誘いを断るとは思ってもいなかった。
あっさりとその申し出を受けると思っていたが、口から出てきたのはまさかの拒絶の言葉だった。
「………理由を聞かせてもらおうか」
驚きから回復したスラルがランス達に尋ねる。
スラルからすればまさかの回答であり、どうしてもその答えを聞きたかった。
人間が魔王の誘いを断るなど普通はありえない事だ。
「魔人は魔王には絶対服従なんだろ。俺はそんなのは嫌だぞ」
ランスの回答を聞き、スラルは再び目を丸くする。
魔王であるスラルからすればまさかの回答であり、到底納得出来るものでは無かった。
確かに魔人は魔王の命令には絶対服従ではあるが、それ以外の恩恵は非常に大きいものだ。
圧倒的な力、無敵結界、そして永遠の命…それらを考えれば誰もNO等とは言わない、それがスラルの認識だった。
「…そんな事でか?」
「俺には大事な事だ。俺は誰の命令も聞く気は無いぞ」
それはランスにとっては大事な事。
ランスは今まで誰の命令も受けずに、一冒険者としてやってきた。
サテラにも使徒として誘われたが、その時も断っていた。
ランスは誰の下につくつもりもないし、自分のやる事の妨げになるのは全てその手で打ち砕いてきていた。
だから魔人というものにそこまで興味も無かった。
「…本当にそれだけなのか? お前はそれだけのために魔人の力を拒むというのか?」
「それだけとはなんだそれだけとは」
「…レダ、お前はどうなのだ」
「私はランスとは別の意味で断るわ。ランスと同じで魔人になる気はないわ」
レダが魔人にならない理由は単純、元々エンジェルナイトであるレダには魔人という立場には興味が無かった。
それに、自分の任務はランスを守る事なのだから。
「…そう、か」
スラルはそれだけ言うと、ランス達に背を向ける。
そしてそのまま部屋を出て行ったあとで、ケッセルリンクがランス達を見る。
その顔にあるのは困惑と驚愕だった。
「ランス…何故だ?」
ケッセルリンクもまさかランスが魔人になるのを断るとは思ってもいなかった。
確かに自分勝手で、Hのためならば悪魔すらも利用する、自分の欲望に正直な人間だと思っていた。
しかしスラルの言葉には迷う事無く拒絶の言葉を発した。
「お前も変な事を聞くな。何で俺が魔王の下僕にならなきゃならんのだ」
それを聞いてケッセルリンクは驚きよりも先に笑いが込み上げてきた。
それは人間の誇りだの、魔王への抵抗などというものではなく、単純に誰かの下僕になりたくないという絶対的な意志からくるものだからだ。
「そうか…ははは。それがお前という人間なのだな」
ランスという人間が少し分かっていた気になっていたが、実はまだまだ知らない事があった事にケッセルリンクは笑い声をあげる。
この男にとっては強さや権力など全く意味が無いものなのだ。
全ては自分のやりたい事をするために動いているのだ。
「そんなにおかしいか?」
「いや…私もまだお前という男を知らなかったと思っただけだ」
ケッセルリンクは立ち上がると、スラルの後を追って部屋を出る。
「俺は何かおかしな事を言ったか?」
「うーん…魔王や魔人からしたら衝撃的だったんじゃないの?」
少しだがレダはスラルとケッセルリンクの気持ちが分かるような気がした。
初めての出会いからここまでの付き合いで、ランスが魔人だろうが天使だろうが態度は一貫して変わっていない事は分かる。
ランスにとっては、ケッセルリンクだろうが自分だろうが魔王だろうが等しく同じなのだろう。
同じ女としか見ていないのだ。
だから平気で自分達を抱こうとしているのだ。
「でもさ、これからどうする? もしかしたら殺されるかもしれないわよ」
「いきなり殺されるなんて事は無いだろ。それに一回の勧誘で諦めるようなタイプでも無いだろ」
もしこれがジルのような魔王であれば、ランスもそれを受け入れたかもしれない。
ジルならば断われば問答無用で自分を魔人にしているだろう。
しかしあの魔王はジルとはタイプが全然違うように感じられた。
そもそも相手は魔王であり、本気であれば有無も言わさず魔人にされているだろう。
それをしないという事は、魔王と交渉のする余地があるという事だ。
「まあ何とかなるだろう」
ランスの顔はいつもと変わらない。
その顔には不敵な笑みが浮かんでいた。
魔王の間―――そこでスラルは腕を組んで難しい顔をしていた。
普段から魔王に付き従ている者たちも、このようなスラルを見るのは初めてで困惑していた。
魔王はこの世界の支配者であり、悩みなど存在しないものだと思っているからだ。
「スラル様」
「ケッセルリンクか…」
今は日中だが、ケッセルリンクは少し痛む体に鞭を打ち、スラルの前に跪いていた。
ケッセルリンクにはスラルの悩みを十分に理解しているつもりだ。
魔王であるスラルは、今まで全ての事を上手く収めてきたのだろう。
今回のランスの勧誘もあっさりと終わると思っていたに違いない。
しかしまさかの拒否に、スラルはどうしていいか分からなくなっているのだろうと。
「まさか…断られるとは思っていなかった」
「私もです。しかし今思えばランスならば納得も出来るかと」
自分よりランスの事を知っているケッセルリンクがそう言うのであれば、今回の拒否はありえない事では無かったのだろう。
魔王の力は絶対であり、その気にあればランスとレダの意志を無視して魔人にする事は可能だ。
(しかし、な…)
スラルがそれをしない理由は、自分に仕えるのであれば、自分の意志で仕えて欲しいと考えているからだ。
強制的に魔人にしては反発もするだろうし、絶対命令権で命令しても、それでは態々自分が目をかけている意味が無くなってしまう。
「ケッセルリンク…何か奴が望んでいるものは分かるか? 若しくは悩み等はあるのか?」
「そうですね…」
スラルの言葉にケッセルリンクは考える。
ランスが望んでいるのはまあ女だろうが…それならば魔人になる事を拒みはしないだろう。
悩みと言われても、あのランスが悩むと言えばそれこそ女の事くらい…そうケッセルリンクが思った時、ある事を思い出す。
「ランスはレベルが上がらない事に苛立ちを感じていました」
「何? レベルがか?」
この世界に存在する者には等しくレベルが存在する。
その全ての存在には才能限界というものがあり、それを超えてレベルを上げる事は出来ない。
それは魔王である自分とて例外ではないのだ。
神の定めたルールであり、それを覆す事は出来ない―――あくまでも通常の手段ではだ。
この世界にはバランスブレイカーと呼ばれるアイテムがあるが、スラルもまたそれらの回収を行っている。
その中には才能限界を上げるアイテムも存在している…ただしそれは完全に人間用だが。
「レベル…か」
レベルが上がらない事に苛立ちを感じていたという事は、既に限界レベルを迎えているのだろう。
だとすればそこに突破口があるかもしれない。
スラルは早速自分の宝物庫に向かって歩き出す。
これまで集めたアイテムの中には、レベルに関係したものも多数あるはずだった。
「ス、スラル様!」
宝物庫でアイテムの整理をしているケイブリスが慌てて跪く。
「ケイブリス。禁断才能はどこにある?」
「き、禁断才能ですか?」
禁断才能、それは才能限界を上げてしまうまさに禁断のアイテムだ。
神の摂理に反したアイテムであり、しかも人間にしか効果が無いという魔物泣かせのアイテムだ。
いずれは処分しようと思っていたが、自分の収集癖が役に立ってくれたようだ。
「こ、これです」
「うむ、ご苦労」
スラルはアイテムを受け取ると、そのまま宝物庫を出ていく。
ケイブリスは突然の魔王の訪問にため息をついてへたり込む。
「あー…ビビった」
今回ケイブリスがここにいたのは、まさにレベルアイテムを探していたからだ。
今でも彼は自分の目標であるククルククルを超える事を諦めていない。
そのためにはどんな手を使っても成し遂げるという強い決意を秘めている。
だからこそここの整理を担当するのは好都合だったが、残念ながら魔人である自分に効果のアイテムは存在しなかった。
「やっぱり地道に行くしかないよな」
こうしてケイブリスは決意を新たに秘める。
全ては魔物の王となるために。
「ランス、貴様には悩みがあるようだな」
「なんだいきなり」
自信満々の表情で部屋に入ってきたスラルに、ランスは眉を顰める。
「貴様は才能限界に達しているらしいな」
「…はぁ?」
「フッ…言わずとも分かる。人の才能限界は低い…己のレベルに悩むの当然の事だ。ましてやお前のような強さを持つならば当然の事だ」
スラルの言葉にランスは首を傾げる。
ランスからすれば突如として訳の分からに事を言われているのだ。
「だがな…これを見よ」
スラルが取り出したのは、ランスも以前にも見た事のあるアイテムだ。
ランスが何処かの城で冒険をしていた時、ハイレベル神からもらった事があった。
「これは禁断才能…使った者の才能の限界を上げる禁断のアイテムだ」
「そーだな」
「どうだ? これが欲しくは無いか? これがあればお前の才能はさらに伸びるぞ」
スラルとしては、何としてもランス自ら『魔人になりたい』と言って貰いたかった。
そのためにはランスの悩みも解消すれば譲歩を引き出せると考えた。
このアイテムもその交渉材料としてはうってつけの物のはずだった
「いや、いらん。というか俺にはそのアイテムは効果無いんだよな」
「は?」
ランスから返ってきた言葉は、これまたスラルにとっては予想外の言葉。
(効果が無い、だと?)
「そうなの?」
「理由は知らんがな。今まで才能限界とやらにぶつかった事は無いしな」
「へー…」
レダもランスが強い事は知っているが、才能限界にぶつかった事が無いとは思ってもいなかった。
エンジェルナイトである自分を退けるのだから、相当な才能の持ち主だとは思っていたが、自分の予想よりも遥かに優れた才能を持っているらしい。
「…ではお前がレベルで悩んでいるというのは」
「なんか知らんが経験値表示がおかしいんだと。だからどれくらい経験値が貯まっているかもわからん」
「そうか…」
ランスの言う事が正しければ、魔王であるスラルでもどうしようもなかった。
魔物には人間のようにレベル屋でレベルを上げる、という事が存在しない。
経験値が貯まれば勝手にレベルアップし、それ以上レベルが上がらなければそれが才能限界だ。
ランスの場合は、今はその経験値がそもそも機能していないため、レベルが上がらないのだ。
「ではレベルは上がらないのか?」
「幸福ポックルなら上がるがな。だがまだ1個しか見つかっておらん」
幸福ポックル、勿論スラルも知っているアイテムだ。
問答無用でレベルを一つ上げるという、使い方によってはバランスブレイカーになりかねないアイテムだ。
問題なのはそれが完全に人間用だという事…流石に魔王や魔人といった存在には効果が無いようだ。
だからこそ魔王であるスラルには無用の長物、だからといって放置するには躊躇われるため、直ぐに処分をしてしまっている。
(少し取っておけば良かったか…)
今になっては仕方の無い事だが、スラルは少しだけ後悔していた。
「そうか…出直すとしよう」
スラルは少し肩を落として部屋から出て行く。
その様子を見て、
「ねえランス。本当に魔人になる気は無いの?」
「無いな」
「気を悪くしないで聞いてね。人間ってやっぱり目先の欲望に弱いでしょ? ランス煩悩まみれだし、かなり自分勝手だけどどうして嫌なの?」
「つまらんだろ」
「つまらん?」
ランスの言葉にレダは目を丸くする。
まさかこの男からこんな言葉が出てくるとは思ってもいなかった。
「誰かの下僕になるなどゴメンだし、魔人になってもそれが面白いとは思わんからな」
「面白くない…の?」
「魔人なんて偉いのが当たり前だろ。人間の俺様だからいいのだ」
「いや…そこまでいくとある意味感心ね」
人間が魔人を倒すから凄いのであり、魔人が魔人を倒してもそれは当たり前。
ランスとしてはそれはつまらない事なのだ。
だから魔人として生きる事に興味が無いのだろう。
(でもだから面白いのかもしれないわね)
この男は稀代の馬鹿か、大英雄のどちらかだろう。
「そんな理由で拒否されている魔王もかわいそうよね…でもさ、無理矢理魔人にされたらどうするの?」
魔王が本気になれば人間では到底太刀打ちできない。
あの魔王だからランスはまだ人間でいられるだけで、他の魔王ならば躊躇無く魔人にされていたであろう。
「その時はその時に考える。もし魔人にされたら、今度は魔人をやめる方法を探すだけだ」
「考え方が凄い斜め上ね…」
でも、それもランスらしいとレダは思う。
この男は転んでもただでは起きない人間だろう。
もしかしたら本当に魔人をやめる方法を見つけるかもしれない、そう思わせるものがある。
「その時は付き合ってあげるわよ」
「当然だ。黙って俺に付いてくればいいのだ」
―――カミーラの城―――
「カミーラ様」
「七星か…あの男が魔人になったか」
カミーラは気だるげに七星に問う。
人間である以上、魔王の誘いには直ぐに飛びつくだろうとカミーラは考えてた。
自分にとっては魔人になる事などどうでもいい事だが、人間にとっては全く違う。
永遠の命、それは人間にとっては麻薬のような強い刺激である。
「いえ…それが、あの男はスラル様の誘いを断ったようです」
「…何?」
カミーラの目に熱が篭る。
七星はそんな主の目に喜びを覚えながら言葉を続ける。
「理由は分かりませんが、分かっているのは魔人になる事を拒否したという事だけです」
「そうか…」
カミーラは心の中で舌打ちをする。
もし魔人になれば、今度こそ自分が狩ってやろうと考えていた。
あれほどの獲物をカミーラは見逃すつもりは無かったが、まさか魔人となる事を拒否する等それこそ考えてもいない。
だからこそ、カミーラは知りたくなった。
自分は望まずして魔人となり、その結果全てが一度終わらされた。
しかしあの男は魔人となる事を望まれたが、それを拒否している。
「カミーラ様?」
「行くぞ」
カミーラは短くそう言うと、既に歩き始めている。
「しかしスラル様が…」
「スラルには手を出すなと言われただけだ…私はあの人間に話を聞くだけだ」
スラルは王座にて頭を悩ませていた。
勿論悩みの種はあの人間、ランスの事だ。
まさかの魔人拒否、そしてレベルの事での懐柔も失敗に終わってしまった。
(無理矢理…は最後の手段だな)
最終的には強引に魔人にする事も考えているが、今後の事を考えればやはり自分の意思で魔人になってもらいたい。
そのための手段を考えてはいるが、いい手段が思い浮かばなかった。
(魔王の力もこういう時は意味が無いな…力だけでは心は手に入らぬという事か)
若干自嘲するような笑みを浮かべるが、直ぐに頭を切り替える。
(他にあの男が欲しそうなのは…やはり女か)
それが一番スラルにとっては頭が痛い問題だ。
何しろ魔人になる事すら拒む男に、どのような女を宛がうか…いい考えが思い浮かばなかった。
カミーラは論外としても、他の女性はケッセルリンクしかいないし、既にランスとケッセルリンクは親しい間柄のようだ。
後の女性は…自分しかいない。
(いやいや…我はありえんだろう)
自分は魔王、いくら魔人として欲しくてもそこまではするつもりは無い。
(だとすると…)
スラルが思考の海に沈んでいたとき、ペタペタという足音と共にケイブリスが走ってくる。
「スラル様ー!」
「どうしたケイブリス。今度は何が起きた」
「た、大変です! カ、カ、カ、カミーラさんがまたあの人間の所に!」
「何だと?」
スラルはあの時カミーラに釘をさしたはずだが、再びカミーラがランスの元に現れたようだ。
手を出してはならないと命令をしたが、それならば何故カミーラが現れたのかスラルにも見当も付かなかった。
「わかった。我が行こう」
「お、お願いします」
「しかし暇だな…」
「まあ仕方ないわね」
ランス達はまだ一室に軟禁されている。
いい加減ランスの忍耐も限界に近づいてきていた。
そんな時、再び扉が開かれる。
「ん…また魔王ちゃんか…ってカミーラ!?」
そこに入ってきたのはスラルではなく、カミーラだった。
よりにもよって、ガルティアが居ない時に来てしまったようだ。
ランスとレダは一斉に武器を構える。
そのランスとレダを一瞥すると、優雅に備え付けの椅子に座る。
「…警戒する必要は無い。お前達に危害を加える気は無い」
その言葉に二人は未だに警戒心をとかないが、確かにカミーラからはやる気が全く感じられない。
ランスも何処か気だるげなカミーラを見て剣を収める。
「…で、何の用だ」
「ちょ、ランス!?」
剣を収めたランスを見てレダは驚く。
以前の出会いからすればレダのように警戒するのが正しいのだが、ランスは堂々とカミーラの側の椅子に座る。
「ランス…お前は何故スラルの誘いを断ったのだ…」
「お前もそれを聞くのか」
ランスはカミーラを前にしてため息をつく。
流石に何回も聞かれるとは思っても見なかった。
「魔王の下僕になるのが嫌だからだ。それと魔人になって偉くなってもつまらん」
ピクリとカミーラの端正な眉が動く。
「つまらん…だと?」
「魔人だから偉いのであって、俺様が偉い訳では無いだろう」
「…それだけか?」
「当然だ。それ以外に何がある」
カミーラはその言葉に不意を突かれたように口を閉ざす。
この男の強さは不本意ながらカミーラも認めており、スラルが魔人に欲しがるのも納得はいった。
だがまさか魔人にならない理由がそのような事だとは思ってもいなかった。
ましてや相手はカミーラが見下してきた人間なのだ。
「そして魔王の下僕になるのが嫌、か…」
「お前が一番そういうのを嫌うと思ったがな」
「………」
ランスの言葉にカミーラは何も答えない。
カミーラとて好きで魔人になった訳では無い。
そもそも好きでドラゴンの王冠と言われていた訳でも無い。
生まれながらにしてドラゴンの繁殖道具として扱われ、アベルに攫われ魔人となってからはドラゴンからも興味を失われた。
それから今に至る―――
「…ランスよ」
「なんだ」
「貴様…私の使徒になる気はないか」
幸福ポックルがモンスターに効果が無いというのは独自解釈です
もし効果があれば魔人のレベルがインフレ起こしそうですし