ランス再び   作:メケネコ

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これが本当のプロローグです。
イカ? ランス10やったプレイヤーなら誰もがみるENDですよね


プロローグ(真)

「んー…」

意識がはっきりすると同時に自分の周りを見渡すと、昔法王達と会っていた場所だと思い出す。

(イカマンじゃ無いわよね…)

自分の手を見れば、それは自分が一番見慣れた手だった。

(戻ってこれた)

システム神との賭けはどうやら成功したらしい。

「今は…LP7年4月20日か」

出来ればムーラテスト前に戻りたかったがそう上手くはいかなかったらしい。

「まあでも十分ね」

あと少しで魔人と人間の戦争が始まる。

今ランスとモフスを始末すれば何の問題も無く人類は魔物に蹂躙され、創造神が楽しめる世界が再び来る。

(そういえば…クエルプランはどうなっているのかしら?)

 

 

 

 

久しぶりにクエルプランの仕事場に向かう。

(こうしてクエルプランの所に行くのは何年ぶりかしらね…)

神からすれば一瞬の時間だが、妙に懐かしく思ってしまった。

あの場にクエルプランがいない、というのがそもそもの異常事態だったからだ。

「久しぶりね。堅物クエルプラン」

「何の用でしょうか。我侭ALICE」

自分の方すら見ず、相変わらず素っ気無い口調だが、その言葉にむしろ安心してしまう。

(いつものクエルプランね…もう二度とあんな事は無いようにしないとね)

最終的に魔王システムが破壊されたのは、クエルプランが絡んだからだ。

もちろんあんな事を起こさせるつもりはないが、それでも警戒くらいはしてもいいかもしれない。

そしてまずはあの男について尋ねてみる事にする。

「ところで…あなたはランスという人間を知ってるかしら」

クエルプランはこちらに顔も向けず、自分の目の前に1枚の紙を停止させる。

「ランス―――魂名、ぴ―563978 現在のメインプレイヤーの一人ですね。それがどうかしましたか」

「…いえ、何でもないわ」

知らないのであれば何も問題は無い。

このままあの男を始末してしまえば、かつてルドラサウム様が楽しんでいた世界が続いていく。

「本当にそれだけだから忘れていいわよ」

女神ALICEはそれだけ言うと姿を消す。

「…一体なんだったのでしょうか」

言われなくても忘れる準備は出来ている。

クエルプランは女神ALICEが聞いたことを忘れようとして、

「…おかしいですね。記憶にロックがかかっている?」

正確にはランスという名前が忘れることが出来ない。

しかもそれは昔から知っているような感覚。

「一体どうしたのでしょうか」

ランスというメインプレイヤーの紙から目を離す事が出来ない。

(何か…あったのでしょうか)

クエルプランは初めて自分の意思で、今迄止めていなかった作業を止めていた。

 

 

 

 

「次はモフス…」

自分どころか創造神すら欺いたあの法王は断じて許すことは出来ない。

魂ごと消滅させねば気が収まらなかった。

「来なさい、モフス」

 

 

 

「何の用でしょうか。女神ALICE」

法王の格好で来たクルックーに対し女神アリスは鋭い視線を向ける。

クルックーはいつもと違うアリスの視線を内心で?を浮かべながらも何時もの通りの無表情だった。

「ええ…そうねモフス。あなたにプレゼントをしようと思ってね」

そう、これはプレゼントだ。

消滅させる前に何度となく体を切り刻み、凌辱し、最後には完全なる無を与える。

人間に対して当然の事、所詮はメインプレイヤーなど神のオモチャにしか過ぎないのだから。

そうしていつものようにクルックーを殺そうとした時、急に自分の体が動かなくなった。

(え?)

人間を殺すのに指一本動かす必要はないはずなのに、それをする事が出来ない。

殺そうという意思はあってもそれを実行に移すことが出来ない。

「プレゼントとは何でしょうか」

何時もの抑制のない声がやたらに癇に障るが、それでも殺す事が出来ない。

(この感覚…まさかまさか)

以前に殺そうとしても体が動かなかった事を思い出す。

人間達が神異変と呼んでいたあの時期と同じ…地上に干渉出来なくなった時と同じ感覚。

(まさかルドラサウム様の命令が下った時のまま…!?)

それを自覚したとき女神アリスは愕然とする。

「…下がりなさい、モフス」

だからかろうじてその言葉を発するだけで精一杯だった。

「わかりました」

クルックーは内心首を傾げながら消えていく。

「システム神ーー!」

女神アリスの怒声が誰もいない空間を木霊した。

 

 

 

 

「どういうことよシステム神!」

ALICEは怒りを撒き散らしながら同じ1級神であるシステム神がいる空間に乗り込む。

「何でしょうか女神ALICE。それとおめでとうございます」

システム神はALICEの願いを叶えた時と同じように悠然とポテチを食べていた。

「どうもこうも無いわよ! なんであの時のままなのよ!」

(それと何がおめでとうございますよ!)

ALICEの言葉にシステム神はそんなことかと言いたげに首を傾げる。

「言ったはずです。同じ1級神に対してはどうなるか分からないと。

 そしてあなたの頼みを聞くのは一度だけだと」

「-!」

全て分かっている―――そう言いたげなシステム神に対してALICEは言葉に詰まる。

もう自分はお前の頼みを聞かないという言葉に歯噛みする。

あらゆる世界を無限に作り出すと言われるシステム神に対しては、いかに自分でも何も言えない。

何故ならシステム神とはそういう神だからだ。

「…そう」

だからこそALICEもそうとしか答えることが出来なかった。

システム神が出来ないというからには本当に出来ないと理解してしまったからだ。

「ええ。私はこれから忙しくなるんです。出て行っていただけますか」

その言葉に女神ALICEは何も言えずにその場を後にした

 

 

 

 

女神ALICEがその場を去った後、システム神は一人複雑な顔をしていた。

「まあ仕方ないですよね。出来ないものは出来ないんですから」

複雑な感情を抱きつつも、システム神は自分の仕事に戻った。

「これから忙しくなりますからね」

再びメインプレイヤー―――主人公の冒険が始まる。

システム神は自分の役目を果たすために動き始めた。

今度はどれくらい酷使されるのだろうかと思いつつ。

 

 

 

 

「誰でもいいから来なさい」

自分の空間に戻ったALICEは何も無い空間に声を出す。

それだけで全て伝わるからだ。

「何でしょうか、ALICE様」

人間界の悪魔を探し、排除する仕事をしているそのエンジェルナイトは1級神に呼び出された事もあってか、声には緊張を帯びていた。

「あんた名前は」

「レダ0774にございます」

「そう。あんたに仕事を与えようと思ってね」

そう言って空間に一人の人間の姿を映し出す。

緑を基調とした服を着て、黒い剣を腰に下げたただの人間。

「あっ…この人間は!」

レダ0774と名乗ったエンジェルナイトはその男に見覚えがあった。

以前、悪魔の監視の任務のために人間界を飛び回った時に、悪魔の反応があり排除しようとしたが一人の男によって阻まれた。

自分すらも一蹴したその人間は確かにこの顔だった。

忘れるはずもなかった。

「ランス…ですよね」

「…知ってんの?」

ALICEは少し意外そうに声を出す。

確かにメチャクチャな男だが、まさかエンジェルナイトがたかが一人の人間を知っている訳がないと思っていたからだ。

「こ、この男は私を…」

その呼ばれたエンジェルナイトの顔がどんどん紅潮していく。

(え、どういうこと?)

顔を見る限りそれは怒り―――だけでは無いように見えるからだ。

そしてその理由に思い当たる。

(ああ…犯されたのね)

ならば話は早いと思った。

このエンジェルナイトはランスに恨みを持っている。

自分は手を下せなくとも、エンジェルナイトを複数向かわせれば何の問題も無く排除できると。

「なら命令するわ。あなたはこの人間を―――」

始末しなさい―――その言葉を出すことが出来ない。

(まさか…これでも駄目なの!?)

自分が出来なければ他の奴にやらせればいい―――その目論見は脆くも崩れ去った。

干渉を禁じられていた時よりは緩いかもしれないが、それでも命を奪うという行為は実行する事が出来ない。

その事実が女神ALICEをさらに苛立たせた。

「ALICE様?」

目の前のエンジェルナイトが、言葉を発しない自分に対して不思議そうにする。

「し…し…」

始末して跡形も無く消滅させなさい―――その言葉がどうしても出てこない。

逆に自分の喉が焼けるような感覚を覚えるほどだ。

「守護をしろ、という事でしょうか」

そしてエンジェルナイトから出たのは自分の言いたいこととは全く逆の言葉だった。

(そんな訳ないじゃない!)

そう言いたいがやはり言葉が出てこない。

創造神の言葉はそこまで重い事だと今更ながらに実感させられる。

「わかりました」

そして自分の無言を目の前のエンジェルナイトはよりにもよって肯定と受け取ってしまった。

(こいつは何を言っているんだ)

エンジェルナイトになって日が浅い彼女は、神は悪魔の脅威から人間を救済していると思っていた。

だからこそ彼女は自分の仕事を熱心に行っていた。

ランス城付近を監視していたのは、フェリスのような下端を探していたのではなく、この付近に存在する悪魔、第1階級悪魔ネプラカスの動きを見張るためだったからだ。

(ネプラカスがあの人間に目をつけたのかもしれない。あの強さの人間なら納得出来る。悪魔は人間の魂を求めていると聞く)

だから彼女はそんな勘違いをしてしまったのだ。

そして自分にそれを防げ―――女神ALICEが自分にそう言っていると思ってしまった。

「では参ります」

レダ0074はそんな自分の勘違いからくる使命感に燃え、その場を飛び去って行った。

 

 

 

 

「あの人間…ランス」

自分を倒したあの人間の事を彼女は―――別に恨んでもいなかった。

確かに酷い事をされたが、気持ちよかったのは事実だからだ。

(うっ…)

あの時の事を思い出すと自然と顔が紅くなる。

それにまた続きを…と密かに思っていたのだ。

(いけないいけない…重要な任務よ)

相手は第1階級悪魔ネプラカス、自分よりも格上の相手だ。

それを相手にするのは今の自分には厳しいかもしれないが、第1級神ALICEの命令ならば絶対にこなさなければいけない。

女神ALICEの思いとは別に、彼女は早速あの時の人間―――ランスを探すために飛び立った。

 

 

 

 

「いや、違うでしょ!? そうじゃないでしょ!?」

女神ALICEがようやく声を出せた時にはエンジェルナイトはもうそこにはいなかった。

(誰が守れと言った!? 自分は殺せと言いたかったのに!)

だが今更もう遅い。

そのエンジェルナイトが人類に干渉している以上、そのエンジェルナイトに干渉することも出来なくなっていた。

(直接人類に関わっている存在には悪意を持って干渉することが出来ない…か)

システム神は随分と厄介な方向に自分を戻してくれたものだ。

クエルプランはランスの事を覚えていないからまだいいが、あの時と同じ状況になる可能性は捨てきれない。

あの時も、戦争自体には自分は干渉はしなかったためにあの結果になった。

それを止めるために戻ってきたというのにあの時よりも自分の状況は悪くなっている。

(どうすればいいのかしら…)

女神ALICEは初めて自分の状況を呪った。

 

 

 

 

あれから数日がたった。

女神アリスは自分がいる空間で頭を悩ませていた。

メインプレイヤーに対して行動を起こすことが出来ないというのがこんなにも腹立たしいとは思わなかった。

全ての法王は自分の駒であり替えのきく道具に過ぎなかったが、今はその道具に対してもロクな命令を下すことが出来ない。

バランスブレイカーの回収などといった通常の事に関しては問題ないが、命を奪う等といった人類に強い影響を及ぼす行為が禁じられているようだ。

だからと言って他の存在を使っても人類に対する悪意の干渉を行うことも出来ない。

八方塞がりとはこの事だった。

(悪意…悪意か)

しかし必ず何か方法はあるはずだ。

あの人間もとんでもない方法で魔王システムを破壊したのだ。

ならば神である自分が出来ないはずがない。

(そういえば…)

ランスが戦場に立ったのは第2次魔人戦争が始まって少したってからだ。

何故そんな事が起きたのか…それはホルスの冷凍睡眠装置に入ったからだ。

ならばその前は…

(セラクロラス!)

そうだ、あの男はべゼルアイと共にセラクロラスを探していた。

実際にセラクロラスに会っているはず…そしてセラクロラスは…

(もしかしたらいけるかも…)

女神ALICEはこれならいけると思った。

何故なら自分が施すのは善意なのだから。

 

 

 

女神ALICEは知らない。

自分のとった行動がこの世界に何をもたらすかを。

そしてその行動が自分の未来すら変えてしまう事も。

 




今回出てきたエンジェルナイトですが、
ランスクエスト・マグナムに出てきたAの方です。
名前は鬼畜王で出てきたエンジェルナイトの名前をそのまま使っています。
もう本編にエンジェルナイトのレダは出てきそうにないしね…
本作品のレダさんは見ての通りのポンコツです。
第2級神の分裂体もあんな感じですから仕方ないね

この作品は圧倒的な力を持つ女神ALICEが、色々な意味で自滅してしまう物語です。
主役は勿論ランス君です。


レダの件で抜けていたので直しました。
何故自分で考えて抜けていたのか今の僕には理解でない

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