ランス再び   作:メケネコ

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カミーラとノス

「やるではないカ! カミーラ!」

「消えろ…ノス!」

 

 ランスの前では魔人カミーラと地竜ノスとの激戦が繰り広げられていた。

 

「結界は使わぬカ…!」

「必要ない」

 

 カミーラは無敵結界を使わずにノスと戦っていた。

 それによりカミーラの体にもノスの一撃が届いている。

 カミーラのブレスがノスの体にあたるが、その異常なまでに硬い体にはそこまでダメージを与えているようには見えない。

 それはノスも同じであり、ノスのブレスをカミーラはあっさりと回避してみせる。

 

「…なんでカミーラがあの化物ジジイと戦っとるんだ」

 

 ランス達は岩場の陰に隠れ、このドラゴンの戦いを見ていた。

 いきなり始まった人外の戦いには流石のランスも困惑していた。

 ましてや相手はあのノスとカミーラ…ランスが過去に戦った魔人の中でも極めつけの強敵だった。

 

「恐らくはあなたに力を見せつけるためかと」

「うーん…それがなんであのドラゴンと戦う事に繋がるの?」

 

 七星の言葉にレダが疑問を投げかける。

 カミーラがランスを使徒へと誘っているのは知っているが、それが何故あのドラゴンと戦う事になるのかが理解できない。

 

「ランス殿…あなたはカミーラ様の事を知っているようですが、その過去は知っていますか?」

「知らんな。特に興味も無かったしな」

「そうですか…」

 

 七星は少し悩むが、カミーラの事を話す事に決める。

 主のプライドの事もあるが、何よりも主の望みを叶えるのが使徒である自分の役目だと考えた。

 

「カミーラ様は過去にドラゴンの王冠と言われていました」

「ドラゴンの王冠? なんだそりゃ」

「言葉通りです。カミーラ様はドラゴンの女性…ドラゴンを生む事が出来る唯一の存在として、ドラゴンの間で激しい奪い合いが起こってきました」

「ふーん…まあ一番強い奴がいい女を手に入れるのは当然の事だ」

「まだ幼かったカミーラ様には苦痛だったようです…ある日、魔王アベルがカミーラ様をドラゴンの王から奪い、自らの魔人としました。その結果、魔王アベルとドラゴンの王マギーホアの間で戦いが起こり…魔王アベルは破れ、ドラゴンが世界の頂点に立ちました」

「なんだと?」

 

 七星の言葉にランスは驚く。

 あのカミーラが、という感想と、ドラゴンを生む事が出来るという唯一の存在というのが驚きだった。

(そういやドラゴンは何度か見た事はあるが、女のドラゴンは見た事がなかったな…ドラゴン女はモンスターだしな)

 

「その結果魔王アベルは破れましたが…ドラゴンを産めなくなったカミーラ様は既にドラゴンの王冠ではありませんでした。その結果、ドラゴン達は争う理由を無くしました」

「なんだそりゃ」

 

 ランスからすれば意味が分からない話だ。

 子供を産めなくなったから争う理由を無くすなど、人間のランスからすれば馬鹿げた話だ。

 

「ですが全てのドラゴンが争いを忘れた訳では有りません…地竜ノス、彼はドラゴンから闘争本能を奪い去ったカミーラ様を嫌っております。そしてカミーラ様もそんなノスを疎ましく思っています」

「ふーん…まあ何となく分かるな」

 

 こうしてノスの姿を見ている内に、あのリーザス城の時の事を思い出す。

 あの魔人は確かに自分達との戦いを楽しんでいる節があった。

 あの戦闘狂ともいえるノスにとっては、闘争本能を消し去ってしまったカミーラは許せない存在なのだろう。

 

「つまり奴らは仲が悪いという事か」

「端的に言えばその通りです。ですが、カミーラ様には無敵結界が有りますし、ドラゴンそのものが今の世の中に干渉をしないという事から、ノスからカミーラ様に接触する事はありませんでしたが…」

「そんなカミーラが何のために地竜と戦うのよ。しかも無敵結界も使用しないで」

 

 カミーラが今は無敵結界を使用していないのは、カミーラの戦い方を見ていれば分かる。

 本来は避ける必要が無いノスの攻撃を、態々回避しているというのがその証拠だ。

 

「それは私にも分かりませんが…恐らくはランス殿と出会われたからではないでしょうか」

「はぁ? 別に俺は何もしとらんぞ」

 

 七星の言葉にランスはこれまでの事を思い出すが、特に何かをしたり言った記憶は無い。

 命を狙われたから抵抗し、何故魔人となるのを拒んだのかを聞かれたくらいだ。

 

「カミーラ様の御心は私にも分かりません。ですが、カミーラ様はランス殿に自分の力を見せたいのではないかと」

「うーん…魔人の考える事は良く分からないわね」

「あいつは特に難解な奴だと思うがな」

 

 ランスはそう言いつつも、カミーラの戦いを見る。

 かつてランスが戦った存在が、今目の前で戦っているのを見るのは非常に不思議な光景だ。

(まああのカミーラが見てろと言うのならば見てやるか…思えばカミーラとはロクに話も出来んかったからな)

 ゼスでの戦いの後には何度か犯したが、カミーラは特に反応する事は無かった。

(今思うと非常にもったいなかったな…)

 あの時はただ自分が楽しんだだけであり、Hに対して考え方を少し改めた今となっては惜しいとも考えている。

(そうだな。あの時のカミーラは人間を完全に見下していたが…今の状況はチャンスかもしれん。せっかく別の世界に来たんだ。カミーラも俺様にメロメロにさせるのもいいかもしれん)

 ランスは決意を新たにすると、二人の人外の戦いを集中して見始めた。

 

「効かぬナ! カミーラ! プラチナドラゴンといえどもその程度カ!」

「ほざくなよ、ノス!」

 

 カミーラの破壊力のあるブレスがノスの体に当たるが、ノスはびくともしない。

 その巨体と異常に硬い鱗はカミーラのブレスすらも有効打にはならない。

 カミーラは魔法も織り交ぜてノスに攻撃をしかけるが、それでもノスの体はまったく揺るがない。

 

「うーむ、中々勝負がつきそうにないな」

「そうね。無敵結界が無しにも関わらず、ややカミーラが有利だろうけど…それでもあの地竜に決定打を与えられていない」

 

 ランスもレダも一流の戦士であり、この2体のドラゴンの戦いが長引くだろうと予想を立てる。

 攻撃を当てる事が出来ないノスと、ダメージを与えてもその硬さと再生力で決定打を与えられないカミーラ、対照的ではあるがその戦いはやはり凄まじい。

 カミーラもその破壊力がある爪でノスを切り裂くが、その程度ではノスは怯みもしない。

 ノスの巨大な爪も、機動力のあるカミーラにはかすりもしない。

 

「ドラゴンと魔人の戦い…凄いわね」

 

 レダが二人の戦いを見ながら呟く。

 エンジェルナイトとはいえ、流石にこの戦いには戦慄を覚えていた。

 高威力のブレス同士がぶつかり合い、レーザー級の魔法が無数に飛び交っている。

 両方に共通するのは、お互いに傷がほとんど無い事だ。

 ノスはその耐久力と防御力で、カミーラはその高い機動力で。

 

「長くなりそうだな」

 

 人間であるランスは魔人と比較すると当然ながら全てが劣っているため、魔人に対しては速攻で勝負をかける必要があったが、魔人とドラゴンの戦いは長引くようだ。

 その再生力の高さから、どうしても長期戦にならざるを得ないのだろう。

 

「ランス、どっちが勝つと思う?」

「知らん。カミーラが無敵結界を使えば勝つだろ。何で使わないかは分からんがな」

 

 この戦いが成り立っているのは、カミーラが魔人としての特性を使っていないからにすぎない。

 もしカミーラが無敵結界を使って戦っていれば、カミーラが絶対に勝利する。

 しかし、何故かカミーラは無敵結界を使わずにノスと戦っているのは、ランスとしても不可解だった。

 そして何よりも、

 

「随分と楽しそうだな。カミーラ」

「…そう? 無表情に見えるけど」

 

 何時もと同じ様な無表情にレダには見える。

 だがランスには何処となく違うほうに感じられる。

 ゼスでの戦いの時は、怒りと共に襲い掛かってきていた。

 ここでカミーラと戦ったときは、カミーラは確かに笑っていたが、それはどちらかと言えば嗜虐的な笑みに見えた。

 だがこの戦いでは、カミーラは何処か楽しんでいるようにランスには見えた。

 

「ランス殿にはそう見えますか」

「何となくな」

 

 長年カミーラに仕えている七星には、今のカミーラは何処か気負いすぎているように見える。

 無敵結界を使わずにドラゴン…しかもノスとの戦いとなると、主でも危ういのではないかと危惧している。

(ですが…)

 カミーラは淡々とノスに攻撃を仕掛けているが、確かに今までとは違うようにも見える。

 それは狩ではなく、純粋に強敵を倒すというドラゴンの本能と言うべきか…カミーラの顔に生気が宿っているように見えてきた。

(これもランス殿の影響でしょうか…)

 七星はランスとカミーラの間で、どの様な会話が交わされたかは知らない。

 しかしそれから自分の主が楽しそうに過ごしているのも事実だ。

 そして自らこの忌まわしき山に来て、主を敵視し続けているノスに戦いを挑む。

 これまでの自分の主からすれば考えられない事だ。

 

「ククク…カミーラヨ、貴様が最初かラその気概ヲ見せていれバ、ドラゴンは堕落しなかっタだろウ!」

「ドラゴンなど私には関係の無い事だ。貴様が気に入らないから殺す、それだけだ」

 

 カミーラの爪がノスの顔面に突き刺さるが、それでもノスは笑う。

 笑いながらもその口奥には赤い輝きがともり、その口からブレスが吹き荒れる。

 カミーラはその一撃を宙に飛ぶ事で避け、自分もブレスをノスに浴びせる。

 

「無駄ダ! 貴様が攻撃すれバ攻撃する程我ガ体ハ硬くなっていク!」

「ならばその体ごと打ち砕くのみだ」

 

 傷ついたノスの体から新たな肉が隆起し、そこを新たな鱗が覆う。

 地竜ノス、その強さはドラゴンの中でも指折りの硬さと、凄まじい再生能力だ。

 カミーラの一撃も重くノスの体を傷つけてはいるが、その防御力は傷つくたびに上がっていく。

 

「少し旗色が悪くなってきたな」

 

 長時間の戦いの結果、カミーラとノスの戦いに変化が出てくる。

 手数が多いのはカミーラだが、そのカミーラがどんどんと押され始めてきていた。

 カミーラ自身、恐らくはその理由には気づいていないだろうが、魔人や使徒といった強者と常に戦い続けてきたランスには分かる。

 

「どういう事? ランス」

 

 エンジェルナイトであるレダにはその理由は分からない。

 絶対的な強者として作られているため、ランスほど見極める事は出来ていないのだ。

 

「ランス殿…どういう事ですか。カミーラ様が押しているように見えますが」

「フン、だからお前達はダメなのだ。よく見てみろ。カミーラの動きが明らかに鈍ってきているだろ」

 

 レダと七星はランスの言うとおり、カミーラの動きを注視する。

 そして少しだが気づく…ランスの言うとおり、カミーラの動きが少しずつ鈍くなってきている。

 

「ランス! どういう事!?」

「ランス殿?」

 

 2人の問いにランスは鼻を鳴らす。

 

「飛ばしすぎだ。カミーラに比べて化物ジジイは殆ど動いてないだろ」

 

 地を這うノスに対し、宙を舞うカミーラはその何倍もの体力を消耗している。

 それがだんだんと地力の差として現れてきたのだ。

 

「ククク…カミーラよ。貴様ノ、いや、今の魔人ノ欠点だナ」

「何だと…」

「貴様ハ無敵結界に頼りすぎてイル。だからソレに頼らヌ戦いガ出来ぬのダ」

「貴様…!」

 

 ノスの言葉にカミーラが激昂し、ノスに向かって爪を振るう。

 その一撃は確かにノスの頭を貫き、血を噴出させるがノスはそれに構わずに口からブレスを吐きだす。

 カミーラはその一撃を避けるが、完全には避けきれずに、その髪の一部が燃える。

 

「無敵結界を使エ! そうでなけれバ楽しめヌ!」

「よくもそこまでこのカミーラを愚弄してくれる!」

「ククククク! 吠えルか、カミーラ! いカにプラチナドラゴンとイエどモ、貴様に負けルこのノスでは無イ!」

 

 ノスの放つブレスがカミーラを襲い、カミーラも同じくブレスで対抗するが、疲労からかカミーラのブレスがノスのブレスに打ち負ける。

 カミーラは翼を使いノスのブレスを防ぐが、それにより視界を塞がれると、その死角からノスの腕が振るわれる。

 その巨大な腕はカミーラの体を吹き飛ばすだけでなく、カミーラを地に叩き付ける程の威力がある。

 

「やっぱりな」

「ランス? 説明くらいしてくれない」

 

 ランスは納得しているようだが、レダは今一良く分かってはいない。

 

「ああ…カミーラの奴、今まで追い込まれたり、長時間戦った事無かっただろ」

「…その通りです」

 

 ランスの言葉に七星は頷く。

 確かに自分の主がここまで傷つけられる事など無かった。

 その圧倒的な力で、全ての存在を捩じ伏せてきたきたのだ。

 

「だからだな。こういう風になった時、どうするのかっていう考えが無いんだ」

「!」

 

 これはランスが今まで魔人と戦って来た経験からくるものだ。

 魔人は人間を遥かに上回り、ランスとて真正面から魔人と戦おう等とは微塵も思っていない。

 正面から堂々と戦うのはバカのやる事だとさえ考えている。

 勿論、時には正面から戦うしかない状況もあるのだが、基本的にランスはその狡賢さで相手を倒してきた。

 不意打ち、騙し討ち、ランスにとってはそれは全て勝つための手段であり、方法を選ばない事が殆どだ。

 だからこそ、これまでに何体もの魔人を倒し、退けてきたのだ。

 

「哀れだナ、カミーラ。無敵結界が貴様ヲここまで弱クした。貴様ハ所詮、弱者を嬲り者ニしてきタだけニ過ぎヌ」

 

 ノスがカミーラに向かってその巨大な体で迫る。

 カミーラは立ち上がると、鋭くノスを睨む。

 

「ダガこのノスは違ウ! 腑抜けタ奴ラとは違イ、今でモ闘争ヲ忘れてハおらヌ! 無敵結界ヲ使わズにこのノスを倒スだト!? 思い上がるナ!」

「ノス…今すぐその口を閉じろ」

「ククク…今かラでも遅くハ無イ。無敵結界ヲ使うガイイ。貴様にハソレがお似合いダ!」

「…死ね!」

 

 ノスの挑発にカミーラは怒りの表情で突っ込むが、それはその巨大な腕に阻まれ、今度はそのブレスがまともにカミーラを直撃する。

 

「そろそろだな」

 

 ランスは腰に下げていた剣を抜く。

 

「ランス殿! カミーラ様はまだ…」

「勝ち目のない戦いをするのはバカのやる事だ。それにこんな所でカミーラが死ぬのは勿体無いからな」

「そこまで行くと逆に尊敬するわね…」

 

 レダも盾と剣を構えると、何時でも飛び出せるように構えを取る。

 迂闊にノスの前に出る事はしない…今ここでノスを倒す必要性は全くないからだ。

 

「カミーラよ…そノ貴様の生ヲ、同じドラゴンであルこのノスが終わらせテやろウ…」

「…もう勝ったつもりか、ノス」

 

 カミーラも決して地に倒れずにノスを睨むが、ダメージは明らかにカミーラの方が大きい。

 ノスも当然多くの傷を作り体中から血を流してはいるが、その戦意は微塵も揺るがない。

 

「諦めヨ。所詮は貴様ハ王冠でしかナイ。いかニ魔人トなろうとモ、その弱サは隠せヌ」

「…」

 

 ノスの言葉にカミーラは何も言い返す事が出来ない。

 その言葉はあまりにも事実でしか無かった。

 長い間を闘争に明け暮れていたノスとでは、実戦経験の差が如実に出てしまう。

 だがそれでもカミーラはこの戦いを諦めていない。

 

「諦めろ、だと。悪いが私は諦めるつもりは無い」

「それだけノ力が前にモあればナ…」

 

 無論、当時のカミーラが魔王アベルに対抗できるはずも無いが、それでも今のカミーラを見るとノスも複雑な気分となる。

 もしカミーラが今でもドラゴンの王冠ならば、あの時のような事はおきなかったもしれない…今でも覚えているのは、空を埋め尽くすエンジェルナイトの群れ。

 それにより、殆どのドラゴンが死んでしまった。

 雌もいないため、ドラゴンがこれ以上増える事は無い。

 ドラゴンの王も、既にこの世界への興味を失っており、四大聖竜、八大精霊竜も今の世界へ干渉していない。

 ノスのように、今でも闘争本能を失わぬドラゴンの方が珍しいと言える。

 

「さらバだ、カミーラ」

 

 ノスの口奥が赤く光り、まさにそこからブレスが放たれようとした時、

 

「ランスアタタターーーック!!」

 

 突如として放たれた一撃にその目を大きく切り裂かれる。

 

「グォォォォッ!?」

 

 ノスがその一撃を受けて大きくよろめく。

 

「貴様…人間ガこのノスニ!」

「フン、隙だらけなのが悪い! もう一度俺様がころーす!」

 

 ノスの体がランスの剣を受け、大きく傷つけられる。

 

「人間ガ!」

 

 怒りの声を上げながらノスがその爪をランスに向ける。

 ランスはその一撃を避けながらノスの体を斬りつける。

 血飛沫を撒き散らしながらも、ノスはその動きを決して止めない。

 その腕がランスに当たる前に、レダがノスの腕からランスを守る。

 

「ムゥ…防ぐカ!」

 

 ノスは自分の腕が小さき人間に防がれた事に驚く。

 

「がはははは! くたばれ化物ジジイ!」

 

 再びランスの強烈な一撃がノスの顔を切り裂く。

 ノスは自分の体が人間に斬られた事に、そして自分の体すら切り裂く武器がある事に驚く。

 ランスの嵐のような連撃がノスを襲うが、それでもノスは全く怯まない。

 

「ククク、人間モ楽しませテくれル!」

 

 笑いながらランスとレダに攻撃を仕掛ける。

 ランスはその剣で攻撃を受け流し、レダはその盾で攻撃を防ぐが、先程倒したグリーンドラゴンとはまさに力が違いすぎる。

 

「ちょっと、ランス! まずいわよ!」

 

 レダもノスの一撃を受け、このままでは持たない事を気づく。

 ランスの一撃も確かにノスへのダメージとなっているが、その耐久力と再生力の前では微々たるものでしかなかった。

(うーむ…やはりこいつは強いぞ。こうなったら…)

 このままではやはりノスを倒す事は不可能だと感じたランスは、カミーラの方を見る。

 カミーラの元には使徒の七星がカミーラを担いでいた所だった。

 

「カミーラ様!」

「七星、貴様…」

「お叱りは後で…今は退きましょう」

 

 七星は有無を言わさず、下に向かって駆け出す。

 ランスはそれを見ると、

 

「ラーンスアターーーーック!」

 

 その一撃はノスを狙った物ではなく、その大地をあえて狙った一撃。

 

「ムゥ!」

 

 ノスの前の現れたのは、岩と土の壁だ。

 人間がこれほどの力を持つのに驚きつつも、全てを焼き尽くそうとブレスの構えに入るが、

 

「浄化!」

「グゥ!」

 

 その岩の壁の向こうから、ノスの残った眼前に光が突き刺さる。

 本来は霊体に放たれる神魔法であり、ドラゴンのノスには効果はないが、その光はノスの目を眩ますことに成功する。

 ランスの一撃で目の一部を損傷していたため、思わずノスは目を瞑ってしまった。

 そしてその目を開いた時には、既にカミーラ達の姿は無かった。

 

「逃げタ、カ。カミーラの使徒カ? どちラにしロ、人ノ身でやるでハないカ」

 

 ノスはその口に笑みを浮かべる。

 あのカミーラが自分に挑んできたのは正直嬉しい誤算だ。

 さらにはあの二人…地竜の自分の体を傷つけ、ドラゴンの攻撃をも防いで見せたあの防御力。

 

「人モ楽しませテくれル…」

 

 ノスは不適に笑うと、自分の住処へと消えていった。

 

 

 

 ―――天界―――

 

「ALICE、いますか?」

「あら、クエルプラン。何の用かしら」

 

 女神ALICEは予期せぬクエルプランの訪問に少し驚いていた。

 まだ手探り状態の自分に比べ、魂管理局としてクエルプランは忙しいはずだ。

 

「何かしら。まさかあなたが此処に来るなんてね」

「ええ、これは人類管理局であるあなたの意見も聞く必要があると判断しました」

「ふーん…で、何なの」

「私の管轄に無い魂が存在しています」

「んー?」

 

 女神ALICEはクエルプランの言葉に首を傾げる。

 この世界の魂の量は大よそに決まっており、全ては創造主ルドラサウムに帰結する。

 そしてその膨大な魂を管理するのが、魂管理局クエルプランの役目だ。

 

「それってどういう事?」

「魂番号が不明のため、何の情報も有りません。ただ、人間という事は分かっています」

「…どういう事?」

「言葉通りです。完全なイレギュラーと言うべき存在です」

 

 クエルプランの言葉にALICEは何でも無いと言わんばかりに首を振る。

 

「なら直ぐに消し去ってしまえばいいじゃない」

「と、いう事は、一緒にいるレダタイプのエンジェルナイトは、あなたの指示では無いという事ですね」

「エンジェルナイト? 知らないわよ」

 

 今現在の人類の状況において、エンジェルナイトを派遣する理由はまったく見当たらない。

 悪魔が地上にて少し動きはじめてはいるが、人類に対しては動いていないはずだ。

 

「そうですか。一応あなたに報告する必要があると思いましたから」

「あなたがそんなに気にするなんてね…」

 

 もしここでALICEが動いていれば、結果はALICEの望みどおりになったかもしれない。

 しかし、今現在においてALICEの考えは違う。

 

「でも魂に関してはあなたの管轄でもあるのではないかしら?」

 

 女神ALICEも、自分の創造主同様に、新たなメインプレイヤーに夢中と言っても過言ではなかった。

 ドラゴンと違い、弱く、愚かで、自分の欲のためには仲間すらも裏切る。

 その結果、人類からは新たな魔人が生まれるという結果にすらなった。

 それがALICEには愉快でたまらなかった。

 

「そうですね。ではこの件は私が処理をするという事でいいですか?」

「ええ、構わないわ」

「そうですか」

 

 それだけを言うと、クエルプランはALICEの前から消える。

 クエルプランが消えた後、ALICEは下界を覗き見る。

 そこには魔物に襲われる人間、人間同士で争いを始める光景が映っている。

 

「もっと争いなさい…創造主はあなた方の苦痛を望んでいるのだから」

 

 女神ALICEは一人酷薄な笑みを浮かべていた。




ノスとカミーラの戦いですが、色々と考えましたが、結局ノスが優位という事になりました。
ランス10でのカミーラの図鑑や、ケイブリスとカミーラの対決シーンから考えた結果こうなってしまいました。
実際問題ノスって03で勝つのは不可能だろ…と思うんですけどね。
だってノスはあの時点ではフルスペックでしょうし。
ちなみに無敵結界があればカミーラが負ける事はありません。
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