ランス再び   作:メケネコ

4 / 270
ここからが本当のプロローグ
主人公のターン!


プロローグ(主人公)

―――???―――

今日も何処かで人が死ぬ。

貧困、災害、魔物、そして同じ人の手によって人は殺される。

「くす、くすくす……あはは……はぁ…」

それは今まででずっと見てきた光景。

リーザスと呼ばれる地方、ヘルマンと呼ばれる地方、ゼスと呼ばれる地方、

自由都市と呼ばれる地方、JAPANと呼ばれる地方、何処も変わらない。

今までと変わらず行われる光景…メインプレイヤーが苦しむ光景。

それがルドラサウムの楽しみだ。

そのため、人類はドラゴンと違い弱く作られた存在だ。

しかしルドラサウムは何故かため息をついていた。

今までと同じく何度も繰り返された楽しみのはずなのに、何故か心が満たされなく感じていた。

何か重要な事を忘れているような、そんな感覚。

「……あの人間」

その人間を見るのは楽しみだった。

死にそうで中々死なない人間。

最後には必ず死ぬだろうと思っても、その人間はそれを回避してきた。

『もう……かも……。お前も……せよ』

そんな事をその人間に言われた気がする。

そしてその背中を見ていた気がする。

あれは何なのだろう? そしてその人間は一体何を言ったんだろう?

『魔………は、あな………ち……です。……助け………』

『楽し………か?』

そして誰かに何かを言われた気がする。

それを思い出そうとすると、それだけで何故か非常に楽しくなった。

何なのかが自分でも思い出せない、だがそれでも構わなかった。

今までとは何か違う感覚、でもそれは決して不快ではない。

創造神はその何かを楽しみながら、その男を見ていた。

 

 

 

 

 

LP7年4月21日

遺跡探索の少し前。

「見つけたわよ、人間」

その天使はいきなりランスの目の前に現れた。

「て、天使さんですか」

ランスの奴隷であるシィルが突然の天使の登場に目を丸くする。

「え、エンジェルナイト…」

ランス付きの忍者である見当かなみはその存在感に圧倒され、

「ランス君、またなんかしたの?」

力の聖女の子モンスター、ベゼルアイはランスがすでにやらかしたと決めつけ、

「なんでエンジェルナイトがこんな所に」

魔人サテラはその登場を不振に思い、

「ラ、ランス様…」

「お前は別にどうでもいい」

「ひ、酷いだす…」

ロッキーはランスに何時ものようにぞんざいに扱われる。

「グーーーーッドだ!!」

当のランスは目の前に現れた天使―――に対し何時ものように喜びの声を上げる。

「さすが俺様。俺様のようないい男にはやはりいい女がやってくるのだ」

「それは無いと思うわよ」

ベゼルアイの突っ込みも意に返さずにエンジェルナイトに近づいていく。

「おい、心の友!」

ランスの腰に下げられている魔剣カオスがランスを静止するべく声をかけるが、勿論ランスはその程度では止まらない。

そのエンジェルナイトに近づき―――そして気づいた。

「…お前、もしかして前に俺様の城に来たやつか?」

「そうよ」

「あーそうだ。フェリスを襲いに来て、俺様がおしおきした子ではないか」

ランスの言葉にその場の全員が納得した顔をする。

「ランス様…」

「ランスが襲わないわけないわよね…」

「うーん…天使とまでしてたんだ」

「ランス…お前という奴は」

当のエンジェルナイトは顔を真っ赤にして怒鳴る。

「そ、その事は言わないでよ!」

ランスはその彼女の怒りなど何処吹く風と言わんばかりに彼女に詰め寄る。

「うむ、俺様には分かるぞ。君は俺様とのセックスが忘れられなくて来たんだな」

「な、何言ってんだ!」

先程とは違う意味で頬が紅潮する。

「がはははは! 照れるな照れるな! どれ、俺様がめくるめく快楽を…」

「いい加減話を聞け!」

エンジェルナイトの怒声には流石にランスも驚く。

「私は別にお前とセックスしに来たんじゃない! お前を守るために来たんだ!」

「は?」

「ランス君を…守る?」

その言葉に疑問を持ったのはベゼルアイだった。

神は人を守るために存在するのではなく、どちらかというと人を苦しめてきたというのが彼女の感覚だ。

その神の部下であるエンジェルナイトが一人の人間を守るという事が信じられなかった。

「悪魔があんたを狙っているみたいだから、私が来たのよ」

「あん? 悪魔?」

(悪魔…フェリス達の種族だよな。だが狙われる覚えなどまったく無いぞ)

今までの事を思い返しても、フェリス以外の悪魔とは何の接点も思い出せない。

その辺の雑魚悪魔なら幾度と無く殺してるが…少なくともランスの記憶には無かった。

最も女性以外の記憶などランスはほとんど無いのだが。

「感謝しなさい。このエンジェルナイトがあんたを助けてやるんだから」

「よく分からんが美人が増えるのはいい事だ」

まあランスにとっては美人が増える、この事だけが重要だった。

それも極上の美人…

「ぐふふふふ…」

前はゆっくり楽しむ時間が無かったが今回は…と誰もが分かる笑みを浮かべる。

改めてみるとやはり人間からはかけ離れた美しさだ。

美しい金色の髪に、出たところは出てるとわかるスタイル。

そして背中から出ている羽もランスにとっては中々のポイントだった。

(背中の羽を使って色々試せるかもしれんな…)

「ところで名前は?」

「私はレダ0774よ。覚えておきなさい」

「なんか妙な名前だな…まあ単純にレダでいいか」

ランスの言葉にエンジェルナイト―――レダ0774は苦笑いを浮かべる。

(レダ…か)

自分は4級神レダを模して作られた個体だ。

力は当然4級神には遠く及ばないが、何れはそれに近づきたいと思っている。

「まあ何にせよ美人が増えるのはそれだけでグッドだ! がはは!」

 

 

 

 

LP7年5月3日

ヘルマン北北部、シベリア地方―――

巨大戦艦内部―――

シィルの日記

私達が巨大戦艦に入ってはや十日が過ぎました。

戦艦の中はとっても不思議な遺跡です。

外では見ないような材質の壁に何に使うか分からない機械ばかり。

その上、中はとっても広く、まだまだ果ては見えません。

ランス様は聖女の子モンスターである、セラクロラス様を探しに来たのですが、

この調子ではいつ見つかるか…

あっ、でもその代わり、天使のレダ様という方がランス様を守るといって私達とお友達になりました。

そして、この遺跡に暮らす種族である、ホルスの方、三人ともお友達になりました。

最初は言葉が通じなかったのですが、翻訳機なるもので言葉が通じるように。

すごいですね、魔法のようで魔法ではないそうです。

 

「おいシィル、何を書いてる」

「きゃっ! ランス様!?」

「あ~? なになに? 私達が巨大戦艦の中に入って……」

「きゃー! ランス様、やめ、やめて下さい~!」

ランスがシィルの日記を取り上げ、その内容を読んでいると、

「やめなさいよ。乙女のプライベートよ」

ランスの側にいた天使がその日記をランスから取り上げる。

「はい。シィル」

「あ、ありがとうございますレダ様」

「おいこら。これは俺様の奴隷だ。俺様の奴隷の日記は俺様のものだ」

「私はシィルの友達として乙女の秘密を守っただけよ」

「ぐぬぬ…口の減らん奴だ」

「あはは…いいんですレダ様。突然の事でびっくりしただけですから」

天使―――レダは「シィルはホントいい子ねぇ…」と言いながら軽くランスを睨む。

女神ALICEの命令を受けた―――と勝手に勘違いをしている天使はランスと共に遺跡の探索をしていた。

「でもレダ様…本当に強いですね」

「エンジェルナイトだもの。当然よ」

「ふん。俺様の方が強い」

シィルの言葉にランスは何時ものように『自分の方が強い』と胸を張る。

「いや、ちょっと前ならランスの方が強かったけど、今は私の方が強いわよ」

レダの言葉にランスは少し面白くない顔をしてる―――とシィルは思った。

(ランス様…レベルが下がるのも早いから…)

ランスという男はレベルが上がるのも早いが、怠けるときは全力で怠けるためすぐにレベルが下がってしまう。

かつてレダ0774ともう一体のエンジェルナイト―――コスモス0596を退けたときはもっとレベルが高かった。

それがランスの強さであり、同時に弱点でもある。

人類で誰よりも強くなる可能性がありながら、それを求めず女と宝(貝)を求めるのがランスという男なのだ。

「それよりも…モンスターが来てるわよ」

「フン! 俺様の経験値にしてくれるわ!」

男の子モンスターと呼ばれる存在がランス達に襲い掛かる。

相手はイカマンやミートボール、るろんた等といったあまり強くはないモンスター達だ。

「こんな雑魚共では経験値の足しにもならんわ! 死ねー!」

ランスが無造作に放ったとしか思えない一撃は、それだけでモンスターを仕留める。

生き残ったモンスターがランスに攻撃をしかけるが、

「甘いわね」

レダが手に持った盾でモンスターを弾き飛ばし、もう片方の手に持った剣でモンスターを仕留める。

(私…あまりやる事ないかな)

シィルの目から見てもやはり二人はモンスターを歯牙にもかけずに仕留めていく。

何しろ新しい仲間―――レダは凄いガードなのだから。

モンスターの攻撃も、そして魔法もその盾で防いでくれる。

シィルも冒険の中で色々な実力者を見てきたが、レダはその中でも群を抜いている。

(パットンさんとは違う意味で凄いです)

かつて一緒にゼスで戦い抜いたガードの男はその凄まじい体力と肉体にものをいわせて皆を庇っていたが、

彼女は盾や剣を用いて華麗に相手の攻撃を防ぐガードだ。

その上神魔法まで使える。

ランスもやはり冒険者として超一流で、そんな彼女とは見事に連携をとっていた。

彼女が防ぎ、ランスがその強烈な一撃を叩き込む。

それの繰り返しで十分すぎた。

「がはははは! 止めだ!」

最後のミートボールをランスが粉砕する。

負った傷はかすり傷程度でしかない。

「うーむ…本当に何のたしにもならん奴らだったな」

「この辺の魔物は弱い魔物が多いみたいですから…」

レベルが上がる必要経験値をまったく満たせないことにぼやくランスにシィルがフォローを入れる。

「俺様は天才だが、こうも雑魚ばかりではレベルが上がらんではないか」

ランスがレベルに拘るのは、やはり隣にいるエンジェルナイト、レダが原因である。

ぶっちゃけランスは彼女を襲いたかった。

(無理矢理やるのは何となくイカン気がする…)

あの時は無理矢理襲ったが、ランスもあの時とは違うのだ(ただし性的な意味で)

(あの子は確か俺様とのセックスを続けたそうだった…だから一発ヤれば後はいけるはず)

ランスという男はHのためならどんな事でもする。

それこそそのためには普段は面倒なレベル上げすらも厭わないのだ。

そんなランスの視線に気づかず、レダは周辺を警戒している。

(悪魔の気配は…無いか)

ネプラカスの領域は人間でいう所の自由都市という所にある悪魔回廊だが、それでも油断は出来ない。

悪魔も自分達同様に空間を移動することが出来るため、警戒は最大限にしなければいけないのだ。

「たーーっち!」

「ひゃん!」

ランスはそんな彼女を見て突如として胸をさわる。

「うーむ…やっぱり鎧の上からでは楽しくないな」

「だったら触るなー!」

レダは顔を真っ赤にしながらランスの手を逃れるためにその翼で宙に飛ぶ。

「がはははははは! 冗談だ!」

(ううう…絶対嘘だ)

やっぱりこの男はエロだ。

エロエロだ。

だから悪魔も目をつけているのだろう、と彼女は勝手に納得してしまっていた。

彼女は今でも自分の勘違いに気づけていないでいた。

「ランス様ーッ」

「この声は?」

「探しましただー! ランス様ー!」

ランスキーックが炸裂。

「ぶぎゃ!?」

「きゃあ、大丈夫ですか!? ロッキーさん!?」

「何やってんのよランス!」

「こいつの濃い顔見たら不愉快になった。憂さ晴らしだ。

 だいたいお前ガードのくせに役にたたんではないか。

 レダに勝てるところが一つも無いではないか」

「うう…ひどいだす…」

ランスの言葉にシィルがフォローを入れる

「でもロッキーさんがいないと食事が…」

「そ、そうよ。私よりも上手よ」

レダもロッキーの作った料理の味を思い出し、フォローに回る。

(そもそも私料理なんてしたこと無いし…)

「まったく、こっちはお前らを心配して探しに来てやったっていうのに。

 勝手に舞台からはなれるんじゃねぇよ。ヌヌヌ」

ロッキーと共に現れた人では無い奇妙な存在―――ホルス種のメガフォースがランスに文句を言う。

「ふん、いい気分だったから、シィルとレダと散歩がてら戦ってただけだ」

「三人だけで戦ってたの!? て驚きたいけど、あなた方なら納得よね。ヌヌヌ」

同じホルス種のメガワスが頷く。

ランスはホルスの格闘大会で優勝した事のあるメガフォースを軽く倒す実力を持ち、

レダはガードとしてだけでなく、そして神魔法使いとしても一流だ。

そして魔法使いのシィルが居れば、この辺のモンスター等相手にならないだろう。

「まあ皆で協力したほうがより楽になるでしょ。ヌヌヌ」

「そうですランス殿。ヌヌヌ」

ランスと出会ったホルス種の最後の一人、メガッスもメガワスに同意する。

「ふん。分かってるわ!」

(まあ俺様が最強なのだ。どんな奴が来ても問題は無い)

「サテラとベゼルアイは入らないからな」

紅い髪の魔人―――サテラは魔人では一番若いながらも魔人としての矜持は高い。

だから人間と一緒に戦う等ありえないと思っている。

「そもそもサテラ達はお前ら人間とは生物としての格が違うんだ。変な勘違いするんじゃないぞ

聖女の子モンスターのベゼルアイも同じだろう。違うか?」

「え? 私は別に一緒に戦っても構わないけど?」

ベゼルアイの言葉にサテラは無言で睨む。

「はいはい、参加しないでおくから、そう睨まないで。

 でも彼女は別みたいだけど」

ベゼルアイは空から降りてきたレダを見て笑う。

「そもそもなんでエンジェルナイトがランスを守ってるんだ」

サテラは不満気な表情を隠さずにレダを睨む。

「私は任務で来ているんだ。魔人に指図される筋合いは無い」

レダは使命感を隠さずに堂々と言い放つ。

雲の上の存在―――自分の元となった4級神よりも高位の存在である1級神直々の命令なのだ。

それだけ困難な任務だと思っているし、やる気もある。

自分の邪魔をすればただではおかない―――サテラにはそう言っている様に見えた。

サテラはそれが面白くないが、だからといって天使と戦う気も特に無かった。

「フン! なんでこんな奴が狙われるんだ!」

レダとサテラが若干剣呑な雰囲気になるが、

「落ち着いてください、サテラさん、レダさん」

シィルにそう言われればお互いそれ以上睨みあう気は無かった。

「それはともかく…間違いなくセラクロラスはいるんだろうな」

「ええ、それは間違いないわ。必ずセラクロラスはこの中にいる。

 同じ聖女の子モンスターとして保障するわよ」

「うむ、そうか」

「ようやく追いついたー! 酷いじゃない! なんで追いてくのよ!」

その時、ランスが偵察に出し―――30分で置いていった見当かなみが泣きそうになりながら走ってくる。

いや、むしろ少し泣いている。

本来であればもっと先にホルスの罠で合流するはずだが、この世界ではベゼルアイ達のすぐ後に合流していた。

いるはずの無い存在、エンジェルナイトのレダがランスの側に存在する事が、その歴史を崩していた。

「私はランス付きの忍者でしょー! なんで置いてくのよ!」

「ちゃんと待ったぞ。30分」

「たった30分じゃないのよ!」

「というかお前はレダが目印残していったのに、10日もかかったのか…」

「それだけ広いのよ! それに私一人でモンスターの群に勝てるわけ無いでしょ!」

「あーわかったわかった」

ランスがかなみのあたまを撫でるだけで、かなみは頬を緩ます。

実に「安い女」である。

「とにかく! セラクロラスを探すぞ!」

 

 

 

 

 

ホルスの冷凍睡眠装置の一室、

「あ、いたわ」

「何!? じゃああれがセラクロラスか!?」

ランスはべゼルアイの言葉に歓喜し、今見えている足の持ち主に元に走り―――そして愕然とする。

「すぴー。すぴー」

目の前に眠るのは少女、完全にランスの守備範囲内からかけ離れている少女がいたからだ。

「…本当にこれがセラクロラスなのか」

「ええ、間違いないわよ」

べゼルアイの言葉がさらにランスを愕然とさせる。

この目の前で寝てる少女が、明らかにハイパー兵器が入りそうにもない少女がセラクロラスだというのだ。

「そうだ! まだ子供なんだよな!?」

「残念だけど、セラクロラスは子供も大人もその姿よ」

「ぐっ…」

ランスは思わずその場に膝をついた。

「残念だったの。心の友」

腰に下げたランスの剣、カオスが慰めの声をだすが、それは明らかに笑いを含んでいた。

「やかましい!」

ランスはカオスを床に叩きつけ、げしげしと踏む。

「ランス様!」

「儂のせいじゃないじゃろ!」

ランスがやり場のない怒りをカオスにぶつけていると、セラクロラスが目を覚ます。

「んー…あれ、べーだ」

「久しぶりね、セラ。それとべーはやめなさい」

セラクロラスは寝ぼけ眼で周囲を見回し、

「あれ、ランスだ」

その言葉にランスはカオスを踏むのをやめると、

「あん? 俺様名乗ったか?」

 

 

 

 

少し前―――

「セラクロラス…セラクロラス…」

女神ALICEはセラクロラスに声をかける。

「んー…何?」

セラクロラスは大きな欠伸をしながら返事をする。

(セラクロラスなら…やれるはず)

女神ALICEは現在悪意を持ってメインプレイヤーに接することが出来ない。

どこからが悪意なのかはまだALICE自身にも把握が出来ていなかったが、

他の神への頼み事くらいならできる、という事も分かっていた。

勿論メインプレイヤーを害する頼みはする事ができないが…善意ならば話は別だ。

「もう少しでランスがそこに行くと思うんだけど…その時ランスを若返らせてほしいのよ。それもうんとね」

(やった! 言えた)

自分の予想通り、その言葉を言う事が出来た。

時のセラクロラス、その力は強力で、人間を若返らすなど容易いことだ。

そして寿命の短い人間を若返らせるのはセラクロラスにとっては善意なのだ。

結果は二の次、人は永遠の命を望む儚い存在…だからこそセラクロラスの存在は人の望みなのだ。

「んー…いいよー」

その言葉に女神ALICEはようやく心から笑みを浮かべる事が出来た。

「じゃあお願いね」

そしてセラクロラスとの交信をやめる。

「はぁ…上手くいったわね」

これが女神ALICEの計画、直接始末出来ないのであれば、やはり魔物達に殺させればいい。

しかしそのままならば、恐らくランスは死なない。

それどころか、あの天使の力でもっと楽に魔物に勝ててしまう。

正直、あの時もランスがケイブリスに勝つという結末が起きるとは思ってなかった。

ランスは死に、ケイブリスが魔王となり人類の暗黒の時代が始まると思っていた。

人類が纏まったのはランスという存在がいたからだ。

ならばそのランスが死ねば、いや死なないまでも無力化させる事が出来れば、とALICEは考えていた。

そしてその選択肢の一つが時のセラクロラスだった。

セラクロラスは人よりの神ゆえに、自分の頼みを善意として解釈してくれたのだ。

そしてランスが若返る―――それも自分で動くことも出来ぬ赤子程に若返れば、人類は纏まる事など出来ずに魔軍に蹂躙される。

そうすればルドラサウムの望む世界が続いていくのだ。

女神ALICEはようやく心から安堵する事が出来た。

 

 

 

 

 

「んー…じゃあランス、てやぷー」

そのその言葉と共に不思議な感覚がランスを襲う。

「な!?」

「セラ!?」

べゼルアイは突然ランスに力を使った事を驚く。

「ランス様!?」

「ランス!」

ランスには皆の声がやけに遠く感じた。

(な、なんだ!? 何が起きてる!?)

だがその力に抗う事が出来ない。

「ランス!!」

その時他の誰よりも力強い声でランスに飛びつく存在がいた。

「レダ!?」

ランスに飛びついたのはレダだった。

彼女はランスを守る、それを愚直に実行していた。

(これは…!?)

同じ神であるレダには何がおきてるか理解できた。

これはセラクロラスの力…だが何故急にランスにその力が振るわれたのかは理解出来なかった。

そして自分でもこの力は止められない。

レダがそんな自分に歯噛みをしているとき、

「ランス様!?」

突如としてランスと、そしてレダの、セラクロラスの姿が消える。

「え…ランス?」

「心の友!」

かなみとカオスの声がやけに大きく響く。

ほんの一瞬、だがその間に3人の姿が消えてしまった。

「ランス様!」

シィルの悲鳴に近い声が響き渡った。

 

 

 

 

 

―――???―――

「…どうしよう」

創造神ルドラサウムは初めてそんな声を出したのかもしれない。

『…さんを…助け…いね』

急にそんな声が聞こえた気がしたのだ。

その人間を見ていると、神の一人がその人間に対して何かをしようとしてた。

それは何故か悪い事の様に思った。

そして初めて―――ルドラサウムは現世に干渉してしまった。

今まではずっと3超神が作ってきた世界をただ見てきただけだった。

つまらなければ世界を崩壊させてきた。

その度に3超神は新しい世界を作ってきたが、初めて崩壊させるためでは無いことで干渉したのだ。

「…でも」

何故かそれは正しい事のように感じられた。

自分はあの人間を、……を助けることが出来たのだ。

「そうだ…どこいったんだろう」

少し力を籠めすぎたのかもしれない。

「…あれ?」

だがその存在を感じ取ることが何故か出来なかった。

今ここに、再び、そしてあの時よりも遥かに早く、異変は始まっていた。

 

 

 

 

 

(ルドラサウム様!?)

上手くいったと思った。

セラクロラスはランスを若返らせ、無力化したと思った。

ランスの力無しに人類は纏まる事が出来ずに、再び暗黒の時代が来ると思った。

しかしその自分の予想は、自分の遥か上の存在によって防がれた。

(まさか…ルドラサウム様も!?)

システム神は問題が起こるかもしれないとは言っていた。

だから、自分がメインプレイヤーへの干渉が難しくなっていたのがその問題だと思っていた。

想像もしていなかった。

自分の創造神にすらも影響を与えてしまう可能性を。

「うっ…」

自分の意識が遠のいていくのがわかる。

そして突如として光り輝く自分の間―――

(光の神…G.O.D?)

「やりすぎ」

そんな声が聞こえたと共に、女神ALICEは完全に意識を失った。

 

 

 

 

 

「んー…ここはどこだ。俺様は確か遺跡の中にいたはずだが…」

(そこでセラクロラスに会って…)

ランスが覚えているのはそこまでだ。

なんか光ったと思ったら、気づいたらここにいた。

確かにダンジョンにいたはずなのに、今の場所は

(森…か?)

「シィーーール!」

自分の奴隷の名前を呼ぶが、返事は無い。

それどころか、かなみ、ロッキー、ホルス達、サテラとシーザー、ベゼルアイの姿が見えない。

「うーん…」

居たのは自分に飛びついた気がする―――レダだけだった。

「起きたか、レダ」

「ここは…」

レダも周りを見回すが、何故か森にいる事に驚きを隠せなかった。

「ランス。一体どうなって…」

レダが言葉を続けられなかったのは、別の驚きがあったからだ。

「まったく…一体どうなっとるんだ」

若い。いや、ランスもまだ人間の基準でも若かった。

それなのに―――今のランスはさらに若くなっていた。

20に届くか届かないか、そんな年齢に若返っていたのだ。

(まさか…セラクロラスの力!?)

エンジェルナイトの自分にはセラクロラスの力は意味は無いが、

(レベルが下がってる…)

それでも影響があったようだ。

それも自分にとって最悪の形で。

「それよりも…」

ランスの声にいささかの警戒が含まれているのを、戦士であるレダは気づいた。

「囲まれてるわね」

「ふん。返り討ちだ」

そう言ってランスは腰のカオスに手を伸ばし―――その手がすかる。

「あ…」

そこでランスは思い出した。

セラクロラスと出会った時、カオスを地面に叩き付け、踏みつけたのだ。

(イカン、イカンぞ。俺様は最強だが、剣が無いのは…俺様ピンチか!?)

レダもランスの腰にカオスが無いのを確認し、ランスを守るように前に出る。

しかし感じられる気配は思ったよりも多い。

森の中のため、隠れるところはいくらでもある。

「動くな」

その声と共に矢がランス達の足元に突き刺さる。

そして取り囲んでいた者達が木から下りてくる。

それはランスも知っている種族、カラーと呼ばれる者達だった。




レダの設定は完全に独自のものです
某女神転生シリーズに完全に毒されてますね…
この作品のレダさんは4級神レダさんのコピーみたいなものです。
神視点でみると手っ取り早く天使を増やすならコピペが一番ですから。
カラーから天使を増やすとなると流石にエンジェルナイトの数が…と思いまして。

最後のランス君の姿に関しては、03辺りの姿だと思ってください。
そしてここから主人公のターンが始まります。

イブニクル2が出るまでに少しでも筆を進めたい…

▲ページの一番上に飛ぶ
Twitterで読了報告する
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。