ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争52

「…めんどい」

「まあそうかもね」

 ランスの言葉にもハンティは特に気を悪くする様子はない。

 ハンティ自身、ランスは普通の人間なのによくやっているとさえ思っている。

 これまでの人類の英雄である藤原石丸、MMルーンのような大きなバックアップも無い。

 それこそ自分とその少ない仲間だけでこの場を乗り切っているのだ。

 正直今回の闘神都市Θの件も、ランスが生き残ったのは運が良かっただけだと言われてもおかしくはない。

 そしてその運が次に続くか誰も保証できないのだ。

「始祖様。闘神都市がこのペンシルカウに落ちてくるとでも?」

「どんな事でも可能性だけはどうしても有るのさ。魔人だって計画的に闘神都市を落としている訳じゃ無いしね」

 ランスは風呂の中で少し考える。

 正直言えば闘神都市Θの件は結構堪えた。

 何しろイラーピュの時の様に脱出艇も用意されてなかったし、何とか生き残った先にあったのは豪雪地帯…よく生きのびたと誰もが思うだろう。

 今こうして何とかペンシルカウに戻って体を休めてはいるが、やはり疲れているのは事実だ。

(うーむ…しかし魔法ハウスもどうにかしなければならんからな)

 今回ランス達の命を守った魔法ハウスだが、豪雪地帯を超える代償として破損してしまった。

 所々壊れており、それはランスにはもうどうしようもない。

 聖魔教団の連中なら何か知っているかもしれないが、そもそも今の魔法ハウスがこれ程までに快適なのはパイアールが色々と手を尽くしてくれていたからだ。

 だとすると頼るのはパイアールなのだが、そう都合よく会える存在でも無い。

(やれるか? だが、やらんといかんしな…)

 何だかんだ言っても、ランスにはやるという選択肢しか残されていないのだ。

 次に待つという選択肢もあるにはあるのだが、その次が何時来るか分からない。

 もしかしたら直ぐにでもセラクロラスがやってきて、今の時間帯から飛ばされる可能性も十分にある。

 それにハンティの言う通り、不確定要素としてペンシルカウに闘神都市が落下する可能性も捨てきれない。

「チッ」

 ランスは舌打ちをするが、その場に居るランスに近しい者…レンとケッセルリンクとジルは理解した。

「少し休ませろ。それじゃ無いと無理だ。それにあのカインのバカが居ないと闘神都市には行けんだろうが」

「…自分で話を振ってるけど、いいのかい?」

「フン、俺様には俺様の事情が有るという事だ」

「ランス様…大丈夫ですか? 私、心配です…いたっ」

 ジルが心配そうにランスを見るが、ランスはその頭を叩く。

「俺様が負ける訳が無いだろうが。しかし今度の魔人は何だ? まさかまたあの化物ジジイじゃ無いだろうな…」

 魔人の相手はやはり面倒だが、その中でもノスは最大限に面倒くさい。

 硬すぎるのと凄まじい再生能力で、カオスか日光が無ければ今のランスでも倒すのはほぼ不可能だろう。

「大丈夫だと思いますよ。ノスは今動いていないみたいですから」

 ランスに抱き着いて体を温めていたハウゼルが囁く。

「そうなのか。後面倒なのはカミーラか…」

「カミーラも大丈夫じゃ無いかな? 最初は闘神都市に攻撃していたけど、今はあんまり動いてないみたいだし」

 ノスと同じくらい面倒なのがカミーラだが、そのカミーラも今は動いていないようだ。

 シルキィの言葉にもランスはやはりあまり気乗りはしないようだ。

 どんな状況だろうとやっぱり魔人の相手は面倒なのだ。

 カオスか日光があれば本当に話は変わる―――いや、歴史が変わってしまうのだが、無い物を言っても仕方が無い。

「今あんた達の状況じゃ良く無いのは分かってるよ。本調子に整えてから…と、言いたいけど、魔人の力は未知数だ。時間の事は気にした方が良いよ」

「でも本当にここに闘神都市って落ちるの? そうじゃない限りはペンシルカウは安泰だと思うんだけど」

「…そうでも無いのさ。どんな時でも偶然って事は回避できない。アンタ達と関わって完全に破壊されなかった闘神都市Θのようにね」

「フン、まあいい。とにかく邪魔する奴はぶっ殺す」

 ランスはしばしの間、体を休める。

 そして数日後―――ランスでも予期しない者がペンシルカウを訪れる事となる。

「…えーと、ここがペンシルカウか? 母さんも七星も詳しくはおしえてくれないんだよなあ。自分で探せって」

 森の中を歩いていたのは一人の少女―――ルナテラスだ。

 だが、その容姿は変わっていた。

 長かった髪はショートヘアとなり、頭部の角も背中の翼も存在していない。

 完全に人間の見た目になっているルナテラスが地図を片手に唸っていた。

「でも隠れ里なんだよなあ…オレ、魔法の類は使えないし…空を飛べれば簡単なのにな」

 容姿が変わっているルナテラスはため息をつく。

 母であるカミーラから驚くべき提案をされた。

「ルナテラス…お前はランスの元へと行け」

「え? どういう風の吹き回しだよ。母さん」

 今この場に居るのはカミーラ、ルナテラス、七星、ラインコックだけだ。

 ルナテラスはこの三人と居る時だけ、カミーラの事を母と呼んでいた。

 それを七星に徹底された結果、しっかりと実践できている。

「お前自身が言っているだろう。伸び悩んでいる、とな」

「…まあそうだけど」

 母が自分の事を気にかけてくれている事にルナテラスは嬉しそうに笑う。

 それを見てもカミーラは表情一つ変えないが、それでもルナテラスは母の気持ちは分かる。

 何だかんだ言っても、カミーラの己の使徒に対しての情は本物だし、娘である自分を想ってくれているのも本物だ。

 ただ、それを決して表に出さないだけだ。

「私はお前にドラゴンの力を教える事は出来る。だが、剣に関しては教える事は出来ぬ」

「…まあそれは」

 魔人の中でも剣をメインに戦う者は少ない。

 ガルティアやケイブリスは剣も使うが、ガルティアはムシを使うのが本命だし、ケイブリスに関してはそもそもの体格が違う。

 それにカミーラはケイブリスが本当に嫌いなので、ルナテラスと引き合わせる事すらも嫌っている。

 バークスハムは剣を使うが、カミーラはバークスハムのあのうさん臭さが気に入らない。

 だからあまり娘を近づけたくなかった。

「ならばランスの元へと行け。そして奴の剣を盗め」

「それはいいなあ。でも、物理的に難しくない? オレが父さんの所に居たら、ほぼ確実に他の魔人が気づくだろうし」

「問題無い。七星」

「はっ、カミーラ様」

 七星はアイテムを持ってっ来る。

 それが何かは分からないが、七星が持っているという事はきっと有用なアイテムなのだろう。

「お前のドラゴンとしての力を封じる。そうすればお前の事をこのカミーラの使徒だと気づく奴はおらぬ」

「…ああ、そうだったな」

 ルナテラスはカミーラの使徒、という事になってはいるが、実際には使徒でも何でもない。

 だから魔人と敵対したとしても、容姿以外でルナテラスだと気付く者も存在しない。

 何故なら魔人はそこまで同じ魔人の事を気にしていないからだ。

「そしてこのアイテムを使えば、あなたの容姿を誤魔化す事が出来ます」

「へー、そんなアイテムが?」

「探すのに苦労したんだよ。こんなアイテム、見た事も聞いた事も無かったし」

 七星の手にしたアイテムを見て、ラインコックもため息をつく。

「髪の色も変わりますし、何よりもあなたの気配も変わる。魔人や魔物もあなたを『カミーラ様の使徒』であるルナテラス様と気づく者もいないでしょう」

「へー…でも人間は? ランス…父さんの側にはケッセルリンクさんとかも居るんだろ?」

「そこは問題無いでしょう。ランス殿はあなたをカミーラ様の使徒だと思っているでしょうし、ケッセルリンク様はそもそもあなたの存在を知らない。例え気づいたとしても、それをばらすような方ではありません」

「そっか…でもやるからには徹底的にな」

 そう言ってルナテラスは自分の長い髪を無造作に掴む。

「待ってルナちゃん。まさか…ってあーーーーーーーっ!」

 ラインコックはルナテラスが何をしようとしたのか理解して止めようとするが、その暇もなくルナテラスは無造作に自分の長い髪の毛を切ったのだ。

「もーーーーーーっ!! ルナちゃんそういう所だよ! 折角カミーラ様と同じ綺麗な髪をしてるのに、それをそんなに無造作に扱って!」

「え? だって正直戦いは何の影響も無いし…」

「そういう事じゃ無いの! もうっ! 適当に切ったから変な風になってるじゃないか! ボクがきちんと整えるから待っててよ!」

 そう言ってラインコックはルナテラスの髪を整えるための道具を取りに何処かへと走っていく。

「ルナ、ランスから学べ。奴の姿勢はお前の役に立つだろう」

「…母さんってやっぱり父さんの事評価してるんだね」

「フッ…奴はこのカミーラを恐れることも無く向かって来た人間。そして叩けば叩くほどに強くなる。その最も強くなった時にこそ…このカミーラに跪く。そしてこのカミーラの血を受け取るのだ」

「えーっ…オレ、父さんが母さんの使徒になるとか凄い嫌なんだけど…」

 カミーラの言葉にルナテラスは非常にゲンナリした顔をになる。

 その顔を見て、カミーラも思わず無言になる。

 娘の言葉にはやはりカミーラでも思う所があるようだ。

「…とにかく、このカミーラのモノになるのだ。奴はまだ強くなる…この戦いでもその実力を確実に上げているだろう」

「そういう事にしとくけどさ…でも新たな境地に辿り着けるなら、オレは構わない。父さんと共に強くなるさ」

 そう言ってルナテラスは父あるランスの様にニヤリと笑うのであった。

 

 

「うーん、自分で探すのってやっぱり難しいな。まあそれも経験か…あ、そんな警戒しなくていいぞ。オレはカラーと戦う気なんて無いから」

 ルナテラスは周囲に居るであろう存在に向けて言い放つ。

 既に囲まれているのは分かっているが、殺気は無いので放っておいたが、もうこうなったらカラーに頼るしかない。

「オレはランスって奴に用があるだけだから」

 その言葉に数人のカラーがルナテラスの前に現れる。

「…人間ですね」

「ああ。見ての通りな。ここにランスって奴が居るって聞いて会いに来た」

 ルナテラスの言葉にカラー達は顔を見合わせると、

「ちょっと待ってなさい」

 そう言って一人のカラーが姿を消す。

 残ったカラーは警戒しており、弓に手を伸ばしている。

 それを見てルナテラスは苦笑する。

(人間ってカラーから警戒されてるって聞いてたけど、本当だったんだな)

 ルナテラスはカラーと人間の関係は七星から軽く聞いただけだ。

 あまり深く知っているとルナテラスの立場が難しいものになる、それを考慮した上で七星は全てを話さなかった。

 ルナテラスが待っていると、そこに男が現れる。

「俺様を訪ねてきた女が居ると聞いたが…おお! 中々可愛いではないか!」

 ランスはルナテラスを見て目を輝かせる。

 今のルナテラスはカミーラの使徒を名乗っていた時とは違い、髪も服装も大幅に変わっている。

 顔立ちは変わっていないが、それでもランス達にはあの時のルナテラスとは違う風に見えているはずだ。

 変身魔法をかけて貰い、あくまでも人としてランス達に接近してきたのだ。

「可愛い…か。へへ」

 ルナテラスはランス―――父親にそう言われて少し恥ずかしそうに頬をかく。

 ラインコックからは良く可愛いと言われたりはしているが、正直ラインコックに言われても非常に微妙だった。

 カミーラ…母親はルナテラスの容姿を褒めるという事は無い。

 あの母に今更そんな事は期待はしていないが、ちょっとだけ寂しいと思っていたのは事実だ。

 七星はそんな母娘を見て色々とフォローしてくれて居たのを思い出す。

「で、お前は何をしに来た」

「ん、ああ。オレはお前と一緒に行動をしたくてな」

「何だと?」

「えーと、変なアフロの奴にお前の事を聞いて…」

 ルナテラスは七星に言われた事を思い出して口を開く。

 七星はカミーラが望むことをするように人間界の情報を収集していた。

 その情報を元にルナテラスがランスの所に潜り込めるように色々と手を回していたのだ。

「アフロ…? ああ、あいつか」

 アフロと言われてランスは納得してしまった。

 男の事などほぼ覚えていないランスだが、流石にあのアフロ一族の事は覚えていた。

 中々強いというのもあるが、やはり凄く分かりやすい特徴があったので男でも記憶にあったのだ。

 もしこれがアフロじゃ無かったらランスは確実に忘れていただろう。

「お前でも男を覚えている事はあるのだな」

 そしてランスの隣に現れたカラーを見て、ルナテラスは目を見開く息を呑む。

 口から思わず言葉が出そうになるが、それを何とかして抑える。

(…え? まさかケッセルリンク?)

 ルナテラスはカミーラから、そして使徒達からケッセルリンクの事は聞かされていた。

 あのカミーラが『ケッセルリンクの事は覚えておけ』とまで言われていた。

 そして魔法を使ってケッセルリンクの容姿を見せられ、それを記憶していた。

 七星に見せられたケッセルリンクとは服装が違うが、その髪型や少し金色が混じった髪は間違いなくケッセルリンクのものだった。

「しかしランスと行動を共にしたいとは?」

「あ、ああ。オレは強くなりたくてさ。それならお前と居る方が良いって聞いて…」

「ふむ…」

 ケッセルリンクの目が細くなる。

 まるで何かを見抜くかのような視線にルナテラスは居心地が悪くなるのを感じる。

「フン、まあいい。美人なら歓迎だからな! がははははは!」

 ランスは特に何も考えることも無く受け入れる。

「いいのかい、ランス。僕達の相手は並大抵の存在じゃない。彼女がそれについて来れるか、という問題はあるよ」

「む…」

 ブリティシュの言葉にランスは少し考える。

 これが普段の冒険…気ままな冒険なら少しくらい能力が足りなくてもランスは気にしない。

 だが、今回の相手は魔軍であり、そして魔人なのだ。

 能力が足りなければ死に至る、そんな戦いの連続なのだ。

「じゃあ試してみるかい? オレはそれでも構わないからさ」

 そう言ってルナテラスは大剣を抜いて笑う。

 その笑みを見てケッセルリンクの目が細くなる。

(…何だ? この違和感は)

 口元から牙のように見える歯、そして不敵な笑み…それがケッセルリンクの良く知る男を彷彿とさせるのだ。

(だが、そんなはずは無い…ランスにそんな暇は無いし、何よりもこの年頃の娘が今の時代に居るはずが無い。しかしこの感覚は何だ…?)

「じゃあいいかい? ランス」

「フン、好きにしろ」

 ランスとしても、目の前の少女の力は気になる。

 ただ、ランスも最早達人を超える力を持っているので、対峙した相手の実力は分かる。

 目の前の少女は強い―――それこそランスが良く知る者達と同じくらい…いや、それを上回るくらいの気配を感じるのだ。

「で、君の名前は?」

「ルナ。オレはルナだ」

「そうか…じゃあ行くよ!」

 ブリティシュとルナの剣がぶつかり合う。

「…これは!」

「ハッ! 中々やるじゃないか!」

 押されたのは実際にはブリティシュだった。

 純粋な腕力だけでブリティシュを押しているのだ。

 ドラゴンとしての肉体を封じられている訳では無いので、肉体としてはやはり人間よりも遥かにアドバンテージが有る。

「でも…まだ甘いね」

 ブリティシュはルナの剣を受け流すと、その盾でルナを押す。

 それだけでルナの態勢が崩されるが、それでもその強靭な肉体は態勢を崩されたまま、ブリティシュの盾に膝蹴りを入れる。

 その衝撃にはブリティシュも驚くが、驚いただけでその戦い方は非常に冷静だ。

 やはりエターナルヒーローのリーダーで有る事、そして高い技能レベルを保有する事、そして長年の戦闘経験だ。

 彼等の経験はランスにも勝るとも劣らないものがあるだろう。

 GL期を生き抜いてきたというのは伊達では無いのだ。

「おおっ!? な、何だ!?」

 自分の剣があっさりといなされた事にルナは驚愕の声を上げる。

 だが、それでも果敢にブリティシュへと斬りかかる。

 が、その全てがブリティシュには通用しない。

 それを感じ取り、ルナもまた少し苛立ちを隠せない顔をしている。

「ランス、お前なら二人の違いは当然分かってるのだろう?」

 ケッセルリンクはランスの横で戦いを見ながらランスに尋ねる。

「フン、何でか知らんが分かるようになったな」

 ランスは女に対しては鋭い観察眼を持っている。

 そして運命の悪戯で剣LVが3という伝説級の技能となったため、相手の剣の動きで何となく察する事が出来るようになっていた。

 だからこそ、ルナと名乗った女の剣の腕前が分かる。

 確かに彼女は強い…フィジカルに関してはブリティシュを確実に上回っている。

 だが、その肉体と技が釣り合っていない。

 力任せに剣を振るっており、凡そ技と呼べるものが存在しない。

 ブリティシュもそこを突き技術だけでルナの攻撃を防いでいるのだ。

「ああもう! 何で当たらないんだよ!」

 そしてそれに苛立ち更に力任せの攻撃をしている。

 が、それこそがブリティシュの狙いだったようだ。

「ハッ!」

 力任せの攻撃を盾で弾くと、そのまま剣をルナの首元に突き付ける。

「終わりだね」

「…ちぇっ」

 首元に突き付けられた剣を見て、ルナはつまらなそうに舌打ちする。

「力は凄い。でもそれに技がついて行っていないね」

「技ねえ…そんなの教えてくれる奴なんて居なかったしな」

 ルナ―――ルナテラスはこれまでの事を思い出し頬を膨らませる。

 ルナテラスに戦いを教えたのはカミーラだが、剣を教えてくれる奴は居なかった。

 何しろ彼女はドラゴン、その身体能力だけで相手をねじ伏せる事は容易い。

 完全な独学…ランスと同じなのだが、ランスと違ってドラゴンの力がある。

 ブレスを剣に纏わせるだけで十分であり、技なんて考えた事も無かった。

「中々やるじゃねえか。力だけならお前を上回るんじゃねえか? ランス」

 黒部はニヤニヤと笑いながらランスの肩を叩く。

「フン、バカを言うな。俺様の方が上に決まってるだろうが」

「げ、またちょっと剣が変になってる…やっぱ適当に選んだのはダメだな」

 力任せにブリティシュの盾に剣を叩きつけていたせいで剣が明らかに刃こぼれがある。

 母であるカミーラに言われ、持って行く武器も自分で選ばされた。

 その中から本当に適当に選んだのだが、どうやらルナテラスの腕力に耐えられなかったようだ。

「まあいい。それよりもお前は俺様についてきたいんだな?」

「ん? ああ! オレはお前の強さが知りたい。そして強くなりたいんだ…今よりも」

 ルナはキラキラした目でランスを見る。

「だからオレにお前の剣を教えてくれ!」

「お、おお…」

 ここまでの目で自分に剣を教えてくれなんて言う奴は見た事が無い。

 ランスに剣を教わろうとする物好きなどそうはいない。

 一応ランスもチルディに教えた事はあったが…生憎と全く役に立たなかった。

 ランス自身教えるのが下手だし、ランスの剣が非常に独特だからだ。

 それにぶっちゃけランスは人に何かを教えるのが下手だ。

「で、ランス。そのお前から見て、彼女の剣をどう見た?」

 ケッセルリンクが興味深そうにランスに尋ねる。

「フン、取り敢えずだな」

 ランスはルナから剣を奪い取る。

「こんなものはいらん」

「あ」

 そしてそのまま剣を投げ捨てる。

「明らかにお前の手にあっとらんだろうが」

「う…そ、そうなのか」

「それすらも分からんのか、お前は」

「…誰も教えてくれなかったし」

「フン、体だけ一人前な奴だな」

 ランスはルナを見て呆れたようにため息をつく。

「まあいい。俺様が鍛えてやるか」

 そう言ってランスはやっぱり下心有り有りな笑みを浮かべるのだった。

 

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