ランス再び   作:メケネコ

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第一次魔人戦争53

 カラーの隠れ里ペンシルカウ―――そこに初めて入ったルナテラスは目を見開いていた。

「お帰り、ランス君」

「ランスさん、その人は?」

 何故ならそこに居るのはこの戦争に参加していない魔人…それも一人は母と同じ魔人四天王の一人だ。

 魔人シルキィと魔人ハウゼル、ルナテラスも見た事はあったが、話しかけた事は無い魔人がそこに居た。

 話しかけた事が無いのは母であるカミーラの意向である事が大きい。

 カミーラは基本的に愛想がない。

 本来の歴史のように怠惰という事は無いが、ある意味孤高の存在と見られていた。

 そして親しいのは同じ魔人四天王であるケッセルリンク只一人―――という話だが、そのケッセルリンクも今現在は行方不明という扱いだ。

 後に第一次魔人戦争と呼ばれるこの戦争に参加していない魔人が居るという事はルナテラスも当然知っていた。

 ただ、別にその魔人と関わり合いが有る訳でも無いし、そもそもルナテラスにもこの戦争での完全な自由は存在していない。

 だが、まさかこんな所で魔人と遭遇するなど考えても居なかったのだ。

 ルナテラスは魔人シルキィとハウゼルの名前を呼ぶのを必死で堪えた。

 ここで迂闊に話すと絶対に疑われる―――それは避けるように母に徹底されていた。

「え、えーと…ランス、この人達は?」

 なのでここは父に話を振る事で案内させるように仕向けたが、本人としては不自然だったらどうしようかと内心焦っている。

「俺様の女だ」

「私はランス君の姉だからね?」

「ええい、お前は初対面の奴にそういう悪質なデマを流すのをいい加減に止めろ!」

「…悪質なデマ? 私、そんな事してないけど?」

「不思議そうな顔をするな!」

 何時ものやり取りを見てルナテラスは困惑する。

(え? 父は母だけじゃ無くて他の女の魔人とも親しいのか? ケッセルリンクは凄い近い存在だって母が言ってたけど)

 ケッセルリンクの事だけは母からは聞かされていた。

 ただ、その時の母が本当に微妙な表情…何とか無表情を保とうとしていたが、やはりどこか複雑な感情を持っているという事は娘であるルナテラスには分かった。

 その他の魔人については特に聞かされても居なかった。

 ただ、それはカミーラが他の女魔人について興味を持っていなかった…悪く言えば眼中に無かった故の結果だった。

「ま、まあまあランスさん。シルキィは本当にランスさんを弟の様に思っていて心配しているんですから…」

「勝手に弟呼ばわりするのがありえんと言っているのだ」

「ランス君だって人の事を自分の女って言うじゃない」

「それは事実だから良いんだ」

「だったらランス君が私の弟なのも事実だから良いじゃない」

「何時まで続けるのよ、この不毛な言い争い」

 ランスとシルキィの不毛な言い争いにレンが突っ込む。

「で、ランス君。その子は?」

 シルキィはルナを見る。

 同時にシルキィは魔人としての気配を解放する。

 その視線をルナテラスは真っすぐ受け止める。

「…へぇ」

 そんなルナテラスをシルキィは感心したように見る。

 自分を只の人間じゃ無いと分かって尚、その目は挑戦的だった。

「ちょっとシルキィ」

「ランス君が連れてきたんだから普通の人間じゃ無いと思ってね。そうじゃないとこの戦争を生き残れないもの」

「もう…シルキィってそういう所は厳しいんだから」

 そんなシルキィを見てルナテラスは背筋がゾクゾクするのを感じる。

(これが魔人シルキィ…母は何も言わなかったけど凄いな)

 魔人四天王、それが今現在の魔人筆頭に次ぐ力を持つとされる存在。

 その中でもシルキィは新参者ではあるが、それでも実力でその立場についたという事が分かる。

(そしてもう一人が魔人ラ・ハウゼル…こっちは母も少し警戒しているみたいだったんだよな…)

 あのカミーラが魔人ハウゼル、そしてその姉とされる魔人サイゼルを少し警戒しているようだった。

 それが何かは母は何も言わなかったが、あの母が警戒するという事は何かがあるんだなとは思っていた。

 ただ、こうして目の前にその存在が居ても、母が何を警戒しているのかは分からない。

(うーん…でもやっぱりオレも警戒はしないとな)

 それでもルナテラスは母の態度を素直に受け止める事にする。

「でもランスさん、闘神都市の件はどうするんですか?」

「そんなの後だ後。まだ余裕あるだろ」

 闘神の強さはランスは知っている。

 そう簡単に倒せる相手では無いし、何よりもハンティがまだそれほど切羽詰まった様子を見せていない。

 闘神都市がこのペンシルカウに落ちるというのもあり得ない。

 何故なら、ランスの時代にこのペンシルカウは残っているからだ。

 つまりはペンシルカウに闘神都市は落ちない。

「で、ランス君の見た感じとしてはどうなの? この子」

「そこそこだな」

「これからの戦いについて行けるくらいに?」

「それくらいはやるだろ」

 ランスもルナテラスの力は十分に感じ取っている。

 確かに剣は粗削りだが、基礎体力がずば抜けているのは間違い無い。

 力だけならば謙信を…いや、あのミネバだって上回るだろう。

「私と比べたら?」

「お前とは比べ物にならんだろうが」

「…へぇ。ランス君って、実は人間だった頃の私の事結構認めてくれてたんだ」

「アホか」

 ランスの言葉と態度にシルキィは昔を思い出して嬉しくなってしまう。

(…まあ流石にコイツとはまだ比べ物にならんな)

 ルナテラスは確かに強いが、それでも人間だった頃のシルキィにはまだ及んでいないとランスは感じていた。

 というよりも、流石に人類の英雄であったシルキィと比較するのは酷と言うものだ。

 シルキィは剣だけでなく、武器に通じたスペシャリストであり、得意の付与技術によって魔人とも戦えた言葉通りの英雄なのだ。

「で、早速だけどさ…オレはランスと戦ってみたい」

「フン、こいつにも勝てんくせに俺様と戦おうなど100年早いわ」

「オレが怖いのか? まさか負けるだなんて思って無いんだろ? だったらいいだろ。やろうよ~」

 まるで子供のようにねだって来るルナに対してランスは呆れてしまう。

「武器も無いくせに何言ってやがる。もうちょいマシな武器を持ってこい」

「う…それを言われたらなあ…」

 ランスの言葉にルナテラスは何も言えなくなってしまう。

「ランス。お前が良ければあの刀を貸してやればどうじゃ?」

「あの刀?」

「闘神都市で手に入れた鬼切丸があるじゃろう。どうせ今は使えぬ刀なのじゃから、この娘に貸しても損はあるまい。アレは貯蔵しておくのは勿体ない名刀じゃからな」

「そういやそんなのあったな」

 闘神都市Θで手に入れたJAPANの刀である鬼切丸。

 かなりの名刀らしいが、流石にランスの持つ剣には及ばないし、魔人に対する特効力も無い。

 手には入れても死蔵するのが目に見えていた刀でもあった。

 だからランスはシルキィに渡してもいいかなくらいに思っていたのだが、確かに使ってない武器なら渡しても別に惜しくない。

 ランスは別にそこまでモノに固執している訳でも無いのだ。

「おいジル。あの刀を持ってこい」

「あ、はい。ランス様」

 ランスの指示を受け、ジルが鬼切丸を取って来る。

「…へえ。これが刀って奴か」

 ジルが持って来た鬼切丸を見てルナは目を輝かせる。

「何だ。刀を見た事が無いのか」

「そうなんだよなー。不思議と縁が無くてさ」

 ルナは鬼切丸を手に取りじっくりとその刀を見る。

(あの時ランス…父さんが使ってるのを見て使ってみたいなと思ってたんだよな。流石に父さんみたいな非常識な腕にはならないだろうけどさ)

 あの時一度だけ、それも短い間の父娘の戦い。

 その中でルナテラスはランスの剣の強さ、そして母の言葉の真意を悟った。

 

「ルナ。お前には確かに『剣』を使うという才能はあるようだ」

「母さんが素直にオレの腕を褒めるなんて珍しいね。雷雨でも振るのかな」

 母の言葉に娘は軽口を叩く。

 カミーラのはその言葉に顔色一つ変えないが、ルナテラスもそれに不満を思う事は無い。

 こういう母だが、実際には自分を大切に思ってくれているのは分かっている―――少々やり方は荒っぽいが。

「だが、お前はランスのような剣を振るう事は出来まい」

「…そうなの?」

「ああ。それが現実だ。だからこそ私はお前にドラゴンとしての力をお前に教えている。幸いにもお前はドラゴンとしての才能もあるようだがな…」

 カミーラは少し複雑そうな顔をして娘を見る。

 母としての目を抜きにして、カミーラは娘のドラゴンとしての力を感じ取っていた。

 間違いなくこの娘は自分の血を…そして父の血を受け継いでいると感じされる強さを秘めていた。

「父はそんなに凄いのか?」

「理解が出来ぬ剣だ。恐らくはあの男にしか扱えまい。だからこそ…」

 カミーラは目を細めて娘を見る。

「己の力を活かせ。全てを糧として取り込み、己の血と力へと変えよ。それがお前のドラゴンとしての宿命」

「…何か話が凄い壮大になってきたんだけど」

「今はまだ分からぬだろう。しかし何れその時は来る。お前が抗うというのであれば強くなる事だ」

「勿論さ。まずは母を倒せるようになるくらいにな」

「…フッ」

 娘の言葉にもカミーラは薄く笑うだけだった。

 

 そして娘は父と戦い―――剣に関しては完全に敗北だった。

 ドラゴンの力を解放してもダメだったのだから、今ドラゴンの力を封印している状態ではそれこそ勝ち目など無い。

 だが、それでもこの娘は諦めない。

 強さに対しては貪欲、そこがランスとは違う所で有り、誇りを取り戻したカミーラと似ている所だ。

「…使ってみたいな」

「ほう」

「オレは強くなりたいんだ。それこそ何よりも」

「ふーん」

「なあ、ランス。お前は強さに興味が無いのか? 強ければ何だって出来るだろ?」

 ルナの言葉にランスはくだらんと言いたげなため息を放つ。

「いいか、強さなんて好きな事をするための一つに過ぎん」

「一つ?」

「別に強いから何でも出来る訳じゃ無いだろ」

「…それは」

 ランスの言葉にルナが思い浮かべたのはやはり母であるカミーラの事だ。

 何者にも束縛されたくない、完全な自由になりたい、カミーラがそれを願っているのがルナには分かる。

 しかし、母の生まれた時からの境遇がそれを許さなかった。

 母からはその過去を全て聞かされた…ルナテラスを同じ境遇にしないために。

 そしてルナテラスのドラゴンとしての誇りを穢させないために。

 カミーラは常にドラゴンとしての強さをルナテラスに叩きこんでいた。

 剣はあくまでもルナテラスの趣味のお遊びで、ドラゴンとしての力を伸ばすための特訓を受けた。

 その際にルナテラスの剣の才能が発覚し、それをドラゴンの力を組み合わせるという戦術を見せた時はカミーラは何も言わなかった。

 だが、それを否定することなく強くなるように自分を鍛えてくれた。

 それだけ強い母ですら完全なる『自由』では無いのだ。

 表面的には自由に見えるが、実際には魔王という強大な枷に捕らわれているとも言える。

 ましてや母やドラゴンの雄という強大な枷に捕らわれているとも言える…それをルナテラスにはさせないように苦慮していさえいるのだ。

「まあ…そうかもな」

 そんな母の事を思い出し、父の言葉が心に突き刺さる。

「でも…オレにとっては強さが力なんだ。だから…強くなりたい」

「別にお前の生き方に口を出す気は無いがな。それよりもランス、お前とやってみたい」

 ルナは渡された刀をランスに突き付ける。

「まあいい。女が俺様に挑んでくるとかそう無いからな。だが、俺様が勝ったらお前とズバッとセックスを…」

 そう言うランスだったが、ルナテラスの体を見て少し考える。

 確かにいい体だが、不思議とそんなに魅力を感じ取れない。

 ヤろうと思えばヤるだろうが、その周囲に他の魅力的な女が居るので別にやらなくてもいいかな、と思ってしまうくらいだ。

「…お前、何か呪いでも受けてるのか」

「え? そんな事は無いけど」

「うーむ…俺様のハイパー兵器が鈍ったか?」

 ランスは不思議そうな顔をしてハウゼルの大きな胸をムニムニと揉み始める。

「ちょ、ちょっとランスさん!?」

「うむ、きちんと反応しているな」

 ハウゼルの胸を揉む事でハイパー兵器が反応する事に安堵するが、やっぱりルナに対してハイパー兵器が反応しない。

「…変なアイテムを装備しているとかそういうのも無いよな」

「いや、そんなの知らないけど…」

「まあいい。その内何とかなるだろ。ほれ、来い」

 ランスも剣を構える。

 その構えを見て、ルナは不満そうな顔をする。

「刀は使わないのか?」

「お前相手に必要無いだろ」

「…言ってくれるな。だったら!」

 ルナテラスは刀を片手にランスに一直線に近づいて行く。

 その速度はやはり早い―――が、ランスは当然のようにその一撃を受け止める。

「フン、少しはやるな」

 ルナテラスからの一撃にランスは少しだけ感心したような声を出す。

 ランスへの一撃はあの上杉謙信よりも遥かに強い。

 単純な肉体的腕力ならば、ランスが知っている女性で最強である謙信すらも上回る。

 しかもその速度もまたあの謙信よりも早い。

「少しは堪えろ!」

「がはははは! まだ甘いな!」

 しかしランスはその強さを持つ相手でも最早動じない。

 何しろ魔人と長い間戦い続けただけでなく、人類最高峰の男である藤原石丸と戦い、そして魔王とも戦い抜いて来た。

 そのランスがいくら強いとはいえ、今のドラゴンの力を封じているルナテラスに苦戦するはずが無いのだ。

 そしてランスはルナテラスにある弱点を当然ながら気づいていた。

 ブリティシュとの戦いから何となく気づいていたが、改めて打ち合う事でランスはその弱点をハッキリと理解する。

(こいつ、確かに身体能力はあるが、技術が全く足らんな)

 それは剣と使っていながらも、剣を扱いこなせてないという剣士としては致命的な弱点だ。

 確かに並の相手ならばその身体能力だけで圧倒出来るだろう。

 しかし、それがランスやブリティシュのような剣士として格上の相手ならばそうはいかない。

「ほれほれ」

「あ、くっ…」

 ランスに剣は完全に見切られ、適当に放たれているように見えるランスの一撃をルナテラスは割と必死に受け止めていた。

(くっ! 重い…いや、本当に人間か!? 母さんが言っていたより遥かに強いぞ!?)

 速さと重さだけでなく、ルナテラスの重心をずらし完全には受けさせないというランスの剣術にルナテラスは困惑していた。

 前に打ち合った時はドラゴンの力を全開にして戦っていたので気づかなかったが、こうしてランスと剣だけで戦う事でその強さを嫌という程思い知らされていた。

 肉体的な力は劣っているはずが無いのに、こうして圧倒的な力の差を感じさせる。

 その事に―――ルナテラスは心の底から笑みが浮かんできた。

「む…」

 突然楽しそうな笑みを浮かべたルナテラスにランスは少し嫌な記憶が脳裏に宿る。

 それは間違いなくランスの味方であり、ランスも強い奴だと認める程の剣士、リック・アディスン。

 ただ、リックは戦闘中に突然笑みを浮かべたり、とにかく手数が半端じゃなかったりとランスとしても有る意味嫌な相手ではある。

 そのリックを彷彿とさせる笑みをルナテラスは浮かべたのだ。

「はははははは! 楽しいな! こんなに打ち込まれているのに…楽しいと思う事なんてあるんだなあ!」

 そう言ってランスの剣を力任せに弾くと、バランスを崩したランスに向けて真っ直ぐに向かって行く。

 そしてランスに斬りかかる―――と思いきや、刀を地面に突き刺したかを思うとそのまま刀を中心にして飛び上がり、ランスに向かって飛び蹴りを放って来た。

「うお!?」

 剣を使うと思ってみたらいきなりの飛び蹴り―――これにはランスも驚いた。

 その蹴りを剣で防ぐも、やはり身体能力がずば抜けているので、ランスでも耐えきれずに尻もちをつく。

「おおおおおおおお!」

 そこで更にランスの予想もしていない一撃が飛んできた。

「何だと!?」

「まさか…ランスアタック!?」

 その姿勢を見てランスとレンは驚く。

 それは間違いなくランスの必殺の一撃であるランスアタックの態勢そのものだった。

 その証拠にルナテラスの持つ刀がランスのように輝き、そこから凄まじいオーラを放つ。

「チッ!」

 ランスは舌打ちをして起き上がると、その右手にも刀を手に取りルナテラスの一撃を迎え撃った。

 避けられないと判断し、相手の必殺技を受ける事を選んだのだ。

 ガキッ! という鋼と鋼がぶつかる音が響き、その闘気の余波が二人の体を震わせる。

「お前、俺様の必殺技を!」

「必殺技!? オレはお前の必殺技を見た事なんて無いぞ!」

「やかましい!」

 今度はランスが力と技でルナテラスを弾き飛ばす。

 ルナテラスは直ぐに態勢を立て直すが、その時にはランスは既に必殺の態勢になっていた。

 左手に刀え、居合抜きの要領でルナテラスに必殺のオーラを放つ。

「ランスアターーーック!」

「え!?」

 今度はルナテラスがランスの一撃に驚く番だった。

 その刀がどれ程の威力だろうが、距離を取っているルナテラスには当たらないはずだった。

 しかし放たれたオーラは確かな一撃となってルナテラスに襲い掛かった。

「ぐっ!」

 何とか刀で防ぐが、その威力には驚愕するしかない。

「がはははは! 続けていくぞ!」

 そしてランスは剣と刀を交互に振るい、凄まじい威力の衝撃波をルナテラスに放つ。

「く、あっ!」

 それはルナテラスも感じ取ったあの衝撃波に他ならない。

 只の衝撃波ではなく、非常に重く鋭い切れ味を持った衝撃が次々に飛んでくるのだ。

 それに必殺の一撃は無いのだが、それでもルナテラスの姿勢を崩すには十分すぎた。

「がはははは! まだまだ甘いな!」

「何時の間に!?」

 何とか衝撃波を捌いていると、その近くにランスが既ににじり寄っていた。

「フン、少しはやるようだが所詮はそこまでだな。新ランスアターーーーック!」

 ランスが凄まじい速度で居合斬りを放とうとした時、

「はいそこまでね」

 ランスとルナテラスの前にシルキィが立ちはだかった。

「シルキィ!?」

 既に放った必殺技は止められい―――が、魔人相手ならばその必殺技も意味はない。

 魔人の持つ無敵結界によって必殺の居合は全て防がれる。

「熱くならないでよ、ランス君。いくら彼女がランス君の予想よりも強かったからって言ってもね。まあ手加減できる相手じゃ無かったのも事実だけど」

 シルキィはランスを抱きしめるような形でランスが動くのを防ぐ。

 その華奢に見える肉体とは裏腹にその力は非常に強く、ランスでも動けない程だ。

「…分かった分かった。だから俺様から離れろ」

「もう何もしない?」

「何もせんわ! 大体俺様だって手加減する気だったぞ。俺様の手加減攻撃は絶妙だからな」

「はいはい。でも凄い一撃だったわ。もしこれで日光があったら私でも只じゃすまなかったかもね」

 そう言いながらもシルキィにはまだまだ余裕が有る。

「………」

 そしてルナテラスは茫然とランスを見ていた。

「む、どうした。俺様の必殺技に感動したか?」

 ランスが何時ものように軽口と叩くと、

「す、すっげえええええ! 今の何!? 何て技!? メチャクチャカッコよっかった!」

「う、うお!?」

 もの凄い勢いでランスに食いついて来た。

「なんかこう…力と技が合わさったというかV3というか…とにかく凄かった!」

「…お、おう」

 メチャクチャな語彙力のルナテラスには流石のランスも押され気味だ。

「初めて見た! カッコよっかった! 教えて欲しい!」

「ほう、そんなにか?」

「すっごい教えて欲しい!」

「がはははは! お前は中々見どころが有るな! まあいい、少しくらい教えてやるか!」

「やったあ!」

 非常に嬉しそうなルナテラスを見て、ケッセルリンクは目を細める。

(…この少女、見た事が有るな。気配は隠しているようだが、何となく私には分かる)

 ケッセルリンクはこの少女に確実に会った事がある、それを確信していた。

 いくら気配が変わろうとも、その本人の気質というものは隠せないものだ。

(だが、彼女に悪意はない…いや、どちらかと言えばランスに対して信頼すらも寄せているように見える)

 ルナと名乗った少女には全く悪意も敵意も無い。

 純粋にランスと出会い喜んでいるのは間違って無いはずだ。

(魔軍からのスパイ…はあり得ないな。そんな者には見えないし、大体彼女はモンスターの類ではない)

 彼女の事は気になるが、無邪気にランスに対して色々と聞いている彼女を見てケッセルリンクは苦笑する。

(まあいい。今はまずは目の前の事を片付ける事が先か)

 




ルナテラス
LV 75
才能限界 ∞
技能 剣戦闘LV2 ドラゴンLV2 冒険LV1
目標 とにかく強くなる事

ランスの子供なので当然才能限界∞
ただ、親が親だけにレベルの上りは非常に遅いですが、レベルが上がった時の上昇値が大きい
魔法は使えません
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