神城彩芽(ドッペルゲンガー)の誕生   作:桜月


原作:DX3rd
タグ:DX3rd
・ダブクロのPC説明

1 / 1
神城彩芽(ドッペルゲンガー)の誕生

ある日の夜、ある町の路地裏で一つの生命体が誕生した。

人には様々な欲がある。その中でも多くの人が一度は強く感じたことのある想い。『ああ、もう一人自分がいたらなあ。』それは何かをやりたくない時、それは何かを物凄くやりたい時、それは同時に何かをしたい時、そんな時に生まれる思念。強い思念の塊には昔から何かが宿ると言われている。そんな集合意識から産み落とされるのがレネゲイドビーイングのオリジン:レジェンドと呼ばれる者達である。

 そしてその思念は都市伝説であるドッペルゲンガーを核として、意識を確立させた。

 

 少し時が巻き戻る。そこには神城早月の妹、神城彩芽がいた。彼女は好き好んでそのような場所へ来たわけではない。そしてこの場所にいるのに彼女自身も驚いていた。少し前である、普通に家に帰ろうとしていた時に彼女はある男に後をつけられていた。警戒し、その男の方へ意識を集中させていたらいつの間にかこの場所に立っていたのである。

 

 追手の男は巨大企業グループである、神城グループの反会長派であった。そして彼は考えた。どうすれば会長である神城早月を失脚させられるかを。彼女の能力は凄まじく、力任せではどうにもならない。そこで考えたのは身の回りのものへの攻撃である。特に身内を消すことで精神的ダメージを与え、彼女のレネゲイドウイルスを不安定化させることでうまくいけばジャーム化させることが出来るのではないかと考えた。そして彼は妹である彩芽を殺すことにした。

だが、彼の計画には一つ誤算があった。それは彼女がAWF(アンチワーディングファクター)であったことである。そのため、彼のワーディングが効かなかった。そのためディメンジョンゲートにより、路地裏へと移動させた。騒がれても人が来ずらいここへと。

 

 神城彩芽は恐怖を感じていた。誰かに追われていると思ったら突如としてみたことのない場所にいるのだ、無理はない。彩芽はスマートフォンを取り出した。

「あれ、なんで繋がらないの」

 彩芽は焦る。スマホには電波が入っていなかった。それはおかしいことだった。トンネルや山奥でもないのに今の世の中電波が入らないなんて普通では考えられない。今の世の中何か困ったことがあってもスマホがあればなんとかなると安心している人は多い。そのスマホが役に立たないとわかった今、彼女は途端に今の状況が深刻に感じてきた。

 すると今まで見えていたものが全く違ったものに見えてきた。頭上を通る電線や横のビルから伸びる配管、果てには道端の小石に至るまでが彼女の脳を不安に揺らす。

「う、あ、ああ、な、何、なんなの」

 彼女の脳は徐々に恐怖と不安で満たされていく。もう少しでその内で抑えられなくなりそうだった時、異変が起きた。

 

―プシュン

 

 サイレンサーを摩耗し、火薬の臭いが漂う。彼女の目の焦点がいつの間にか目の前に立っていた男へと向けられる。男は小さく笑う。

 

 小さな音が鳴った時、時が止まったように感じた。そして次に私の体に異常が起きた。

胸が熱い、思わずはその場所へ手を当てる。すると手にありえない感覚が襲う。考えたくなかった。気づきたくなかった。だけど私の首は無意識のうちに下がっていた。

「え」

 気付いた瞬間、止まったかのような時間は動き出す。胸が焼けるように熱いのに対して、体の末端から段々冷えてくる。それと同時に力が入らなくなり、膝が落ちる。私は無様に倒れ伏せる。派手に倒れたはずなのになぜか痛みを感じない。目の前には小石が見える。

「これで会長ももう終わりだろう。くく、これで俺の声もでかくなるはず」

 男の声が聞こえる。姿は見えなかったが、それ以上何も聞こえなかった。

 私は今自分に何が起こったのかわかってしまった。あの男は姉を失脚させようとして私を狙った。そして私は無様にこうして地に伏している。悔しい、そんな感情が湧いた。そんなことのために消え行こうとしている私のいのち。そして姉の事を支えてあげることが出来ずに、逆にこうして悲しませて、進む道を妨げてしまいそうになってしまっていることに。

 姉を残して死にたくない。悲しませたくない。あの男の思い通りになんて、なりたくない。私は、もう、無理だけど、でも、ああ、もう一人の自分がいたらなあ。

 

 ボクは突如として意識を持った。誰かの代わりになるために、ドッペルゲンガーである、そういう意志だけを持っていた。だけど、まだ欠けていた。生まれたというのにはまだ何かが足りない。自分という存在が産み落とされるにはまだ過程が残っていると、そう本能が告げた。なら、何が足りないのか。

 その時、ふと何かが聞こえた。

『ああ、もう一人の自分がいたらなあ』

 その言葉はボクが生まれた理由だった。それを叶えるためにボクは意識を持った。ボクは誘われるようにその声の元へと向かった。

「い、やだ、誰か……」

 そこには一人の少女が胸元を血で濡らし、倒れていた。彼女が声の主だ。今もなおとても強い意志を持って何かを願っている。……いや、何かをではない。ボクが来たということは、誰かにとって代わってほしい、そういうことなのだ。

『わかった、ボクは君になろう』

 そう思った時、ボクのもう一つの姿が確定した。ヒューマンズネイバーとしての姿、それが目の前の少女のものになった。そして声も少女のものとなった。

「わかったよ、ボクが君になろう。君について教えて」

 ボクは彼女の頭に手を当てる。すると、彼女について断片的だけど、伝わって来た。これが生まれるときだけの特別なものだとわかった。ボクの核を取り巻く情報が足りていなかった。だからちゃんと生命として生れ落ちるためにこの子、神城彩芽の情報をもらい受ける。これでようやくボクは完全に産み落とされる。レネゲイドビーイングとして。

「お姉ちゃんを、支えて」

 生み出される喜びに埋もれていたら声が聞こえた。それは彩芽の声だった。もうしゃべれるような状態ではなかったはずの彼女の言葉。その言葉はボクを象る一部になった。

「任せて、私が、神城彩芽が君の代わりになってあげるよ」

 ボクは彼女を安心させるように笑う。すると、彼女の表情は少し柔らかくなり、それ以上何も言わなくなった。そして、胸の止まっていた血が流れだした。

 彼女、神城彩芽はこの土壇場にオーヴァードとして覚醒し、ブラム=ストーカーの力で自身のから出に延命処置を施していた。その為、うたれてから時間が経った今まで意識を保つことが出来ていた。それが彼女にできる反抗だった。そして、それは果たされた。

 

 こうしてこの日、一つのレネゲイドビーイングが誕生した。

 


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。