ダンジョンで彼に出会うのは間違っているだろうか 作:melu-
では、始まりです
「僕に1つ考えがある」
そう言ったリオの目はどこか懐かしいようでこんな状況にもかかわらず胸が少し苦しくなった
キィン!
『ゴォアァァ!!』
後方ではフィンとガレス、ルナが強化種のインファントドラゴンと激しい攻防を繰り広げている
フィンとガレスは、ドラゴンの右側、フィンの槍が突き刺さったままの潰れた右目側を執拗に攻める
フィンは予備の短剣を装備し確実にドラゴンの右脚に切り傷を与えている
ガレスはそのタフさから多少の、とはいってもかなり大きなダメージだが、攻撃を受けながらも重い一撃を与え
ルナは前衛に飛ぶ火球を魔法ですべて回収し魔素に変換し蓄えている
「このままだとフィンかガレスが耐えられなくなるのは時間の問題だ」
確かにフィンの耐久では先ほどの一撃で大きな負担がかかっているだろう
「どうするんだ?」
「僕たち単体の魔法でやつを倒すのは無理だ。だからみんなの魔法で倒す。まず、1つ上の階層には霧が溜まっている、ドラゴンの熱気で上に逃げた霧だ。それを僕とリヴェリアの魔法で凍らし下に落とす。で、それをルナに増幅、強化してもらうんだ」
確かにこの階層の天井は先ほどの揺れでパッカリと割れておりその先には白い靄がかかっている
この状況で、血が足りない体でそこまで頭が回るのか
静かに戦慄した
「、、分かった」
時間がないのは事実、私たち一人ひとりの魔法で倒すことができないのも事実だろう
リオに肩を貸し、立たせて詠唱を開始する
「【終末の前触れよ、白き雪よ。黄昏を前に--」
リオは短文詠唱のため、魔力をひたすらに溜めている
(あたたかい、、)
リオと体が触れているため、リオから微量の魔力が流れてくる
決して嫌なものではなく、リオの使う魔法からは考えられないあたたかさを感じた
「、、我が名はアールヴ】」
「【
お互いの魔力の高まりを感じながら同時に砲声する
「【ウィン・フィンブルヴェトル】!」
「【グレイシア】!」
いくつにも重なった極寒の冷気はドラゴンの頭をかすめて上へ伸び10階層へと侵入した
10階層では急激に冷却された空気が、霧が礫と形を変えて重力に従い落下を開始する
「フィン!ガレス!退けっ!」
私は前衛2人に声を投げ
「、、お願い」
リオは虚ろな目でルナに視線を飛ばす
「分かったわ」
視線に応えるためルナは魔法陣の色をその髪色と同じ淡い藍色に変化させ叫ぶ
「【リグレイション】!」
フィンとガレスが大きく後退し、それを追いかけようとしたドラゴンの頭上から尋常ではない量の氷の礫が落下しドラゴンの動きを鈍らせる
さらにルナの魔法陣もドラゴンの頭上へ形成され、そこを通る氷の礫を拡大かつ複製を行う
『ゴアァァァァァァア!!』
ただの氷でも量が量だ
ズガガガガガガガ!!!
激しい音を轟かせながらドラゴンの頭を、体を滅多打ちにする
「ハッ!!」
ルナは声をあげて魔法陣の色をまた変えた
すると魔法陣を通過した氷の礫は形状を変えてツララのような姿になりドラゴンの体に深々と突き刺さる
「、、凄い」
私は、一魔導士としても、エルフとしてもルナに憧れた
「、、ルナは、いつも僕を助けてくれたんだ、、こんな風に」
リオがそう呟きがっくりと首をうなだれる
途端にリオの重みが増し危うくこけそうになった
「マインドダウンか、、」
体力的にもきつかっただろう
耐久が低いなかよくドラゴンの一撃を受け生きていた
それにそんな状況で打開の一策を講じたのも賞賛ものだ
静かにその頭を撫でねぎらいの言葉をかける
「、、よくやった」
永遠とも思える氷の礫の落下が終わりその下には、ドラゴンのものとは思えない残骸が残っていた
「終わったか、、」
「そうだね」
フィンとガレスは尻もちをつくように地面に腰を下ろした
ルナは魔法陣を消滅させるとこちらへやってきた
「ありがとう、あなたたちが動いてくれなかったらジリ貧だったわ」
「ああ、この作戦は全部リオの発案だ、礼ならリオに言ってやれ」
ルナと微笑みを交わし合い一息つくために私も腰を下ろそうとした瞬間
「あーあ、こんなあっさりやられちゃうもんなんかねぇ」
私たちの誰のものでもない声が響いた
「「!」」
声の主は、尖った岩塊の先端に立ちこちらを見下ろしていた
その男は黒ずくめで目深にかぶったフードのせいで顔は見えず口元だけ辛うじて見える
飛び降りた男はドラゴンの死骸の上へ着地した
「使えねぇなぁ、やっぱり耐えられないんだなぁ、普通のやつらじゃ」
意味の分からないことを呟きながらドラゴンの頭だった部分を蹴り飛ばす
「貴様は誰だ、、?」
リオを抱きかかえながら、警戒をする
フィンたちもそれぞれの獲物を手に取り、静かに囲むように男を見据える
「おーおー、姫を守る騎士とは配役が逆じゃないかぁ?リオ?」
「!どうしてリオの名前を知っている、、!」
警戒を強め鋭い目で睨む
ルナはいつでも魔法を発動できるようにすでに詠唱を開始している
「怖い怖い。そんな目で睨むなって。俺はただお迎えに上がっただけだよ。そこで寝てる王子様を」
男はこちらへ向かって歩いてくる
「それ以上近づいたら斬るよ」
いつの間にか男の真後ろに移動したフィンが短剣を男の首にあて語気を強める
「、、はぁ、迎えに来ただけって言ってるじゃん。危害を加えるつもりはないんだけどなぁ」
「得体のしれないやつに仲間を渡すわけないだろう」
「ハッ、仲間ねぇ。そいつの正体知ってて言ってんの?」
1つ間を置き男は声をあげる
「そいつは、リオは、
「「!?」」
モンスター?そんなわけないだろう
今までともに行動してきた私たちが断言できる
「そんな戯言、信じるわけないだろう」
1度は衝撃が走ったがロキファミリアは誰もそんなことを信じない
「ありゃ、そりゃ残念」
男はわざとらしく両手をあげやれやれと振る
「どうしても渡してくれない?」
「当たり前だ」
こんな訳の分からないやつにリオを渡してたまるか
「、、じゃあ、力ずくだね」
「!」
瞬間姿がかき消えフィンは動揺する
するとフィンの後ろから男が現れ、フィンを手刀で気絶させた
「なっ!?」
明らかにフィンのほうが優位な状態だったのに、どうやって!?
「おぉぉ!!」
ガレスが砲声しながら突進し男をその斧で切り倒そうとするが
「そんな大振りあたるわけないだろう?」
またしても姿を消した男に斧は空を切り、ガレスは体勢を崩す
そしてまたしてもガレスの後方から現れた男は手刀でガレスを沈める
レベルが違う、、
そんなリヴェリアの心の声を読み取ったかのように
「キミたちじゃ俺には勝てないね、なんせレベルが違うんだから」
そう言った男の顔には気持ち悪い笑みが張り付いていた
「さぁ、ケガする前に渡してもらえると嬉しいんだけど」
「渡すわけないだろう!」
私は無茶だとわかっていながらも詠唱を開始する
「【リグレイション】!」
ルナは先に詠唱していたので魔法を発動し、ドラゴンの死骸近くから氷をかき集め魔法陣によって増幅し、発射した
「便利な魔法だねぇ、けど意味ないよ」
またしても男は姿を消した
「っく!」
ルナの魔法は標的を見失い、壁に大きな氷の壁画を残した
(もうすぐ、詠唱が終わる、、)
終わったところで姿を消されてしまっては当てることはできない
が、何もできずにやられるのは不本意だ
しかし、相手は無情にも私の前に現れた
「詠唱がおそいよ」
男の腕が後ろへ振りかぶられ、数瞬の後に私は殴られるだろう
あまりにも、スローに見えたその状況
(ここまでか、、、)
しかし、その瞬間私は抱えていたはずの重みがなくなっていることに気づいた
「!」
私に当たるはずの拳は氷の壁に阻まれていた
「リヴェリアは、、やらせない、、」
そこに立っていたのは息も絶え絶えで立っているのがやっとな、、
「リオ!!」
「おーおー、守られっぱなしの王子様がお目覚めかい?」
拳を氷の壁に撃ち込み、血を流す男はニヤリと笑いながらそう言った
「、、消え失せろ」
リオのその声が響いたとたんに男の足元から氷柱が立ち上ぼり、男を氷の牢に閉じ込めた
あまりにも自然な魔法の流れに私はしばし瞠目した
「、、リオ?」
纏う雰囲気が普段と違うことに気づき首をかしげる
「リオ、あなた、、」
ルナが心配そうな声で話しかける
「、、うん」
その時のリオの顔は生涯忘れることはないだろう
「、、思い出した。僕がなんで倒れていたかを」
リオの顔は、苦痛に歪み今にも泣き出しそうな顔をしていたから
「、、思い出した。僕がなんで倒れていたかを」
きっと今の僕は酷い顔をしていただろう
(いやなこと、思い出したな、、)
リヴェリアとルナは心配そうな目でこちらを見つめてくる
「、、そうか。聞きたいことは山ほどあるが取りあえず今は地上に戻ることを優先しよう。」
「そうね、ガレスとフィンも早く治療してあげないと」
こちらの気持ちを察してくれて、今は何も聞かないでくれる二人にはとても感謝している
でも、、
「ごめん、僕行けないや」
うつむき、言いたくもない言葉を口に出す
「どういうことだ?」
リヴェリアが戸惑いの声をあげる
「ごめん、ホントにごめん。僕のために今まで頑張ってくれたのに」
そう、リヴェリアたちが僕のために頑張ってきてくれたからこそ僕は一緒に居ちゃいけないんだ
「理由なら、あとで聞く。今は早く安全な場所に、、」
「理由なら俺が教えてやっただろう?」
声のする方を見るとそこには、氷の牢に閉じ込めたはずの男が牢とは別の離れた場所に立っていた
「リオ、てめぇはモンスターだもんな?」
「何を言っている!?そんなこと誰も信じないと、、」
「そうだよ、僕は正真正銘のモンスター、化け物だよ」
「なっ!?」
僕は酷い顔をしているだろうから、それをリヴェリアに見せないように下を向く
「わかってるじゃねーか。なら早くこいよ、こっち側へ」
男は僕を求めてる
いや、僕の中の僕を求めてる
けど、それはいけないことだって学んだ
顔をあげ、男を睨む
「僕は二度と君たちのもとへは行かない。絶対に許さない」
「、、そうかよ。結局力ずくか」
僕はなけなしの魔力をふりしぼり戦いにそなえる
「リヴェリア、早くフィンたちを連れて逃げるんだ。僕はもうそっちに行けない」
リヴェリアは声を荒げ
「何を言ってるんだ!?早く帰るぞ!?」
そんな言葉に仲間ってやっぱりよかったな、と感慨を感じていると
「余計なこと考えてる暇なんてないぞ?」
いつの間にか僕の横に移動してきた男の拳が眼前に迫っていた
「もちろん、分かっているよ」
とっさに首を捻りかわすが、頬をかすめ軽い傷ができる
そのまま、体も捻り地面に手をつき地面から氷柱を無数に出現させる
男は姿をけし僕の視界から消えた
(どういう魔法だよ)
魔力も少ないので、魔法の発生を抑制しできるだけ温存しておく
横を見るとリヴェリアたちがガレスとフィンを引っ張って安全な場所まで避難させていた
(よかった、このまま帰ってくれたらいいんだけど)
先程までの様子だと帰るどころか加勢してくれそうな勢いなんだけど
「だから、余計なこと考えてる暇なんてねぇっつってんだろ!」
今度は後ろから男が現れ全力の拳を後頭部に受けてしまった
実を言うと、もうほとんど動けないんだよね
空を飛んでいる間そんなのんきなことを考え、壁に激突した
「ケハッ!」
血の塊を吐き出しむせた
ドラゴンとの一戦でほとんどの魔力と体力をもってかれて立ってるのがやっとなんだ
「リオ!」
遠くからリヴェリアの声が聞こえた
実際どれだけ離れているか分からないがとても遠く感じる
(このままだと不味いな~)
相変わらず他人のような感想を頭に浮かべこちらにやってくる男を見る
「けっ、てこずらせやがって。早く行くぞ、ゴルがお待ちかねだぞ」
男の手が僕に伸びた時
ゴッ!
伸ばされた腕が地面に落ちた
「なっ!?」
男に残った腕の傷口からは血が吹き出し、僕の目の前に血溜まりをつくった
腕がちぎれた理由はすぐ横にいた
「こいつは、我が主神が選んだ者だ。貴様に私はしない」
頭から生えるちょこんとした獣耳と、その大きな体格は、ボアズのそれだった
「、、オッタル」
リヴェリアたちに聞いたことがある
フィンたちと同時期に設立されたファミリアにもうLv2になった人がいると
ギルドには確かに彼のような顔が掲示されていた
男は忌々しげにオッタルの顔を睨み付け瞬時に飛び退く
オッタルが持つ大剣は血に濡れていた
きっと、いや確実にその血は男のものだろう
「どうして、貴様が邪魔をする?」
男は素早く服の裾を引きちぎり、それを腕に巻き付けて止血をする
「言っただろう?フレイヤ様がこいつを気にかけている。フレイヤ様の意思は我らの意思」
「ちっ、めんどくせぇ。覚えとけよ」
そう言って男は姿をかき消しどこかへ行ってしまった
そこで、ちょうど僕の限界も来てしまったようだ
遠くからリヴェリアとルナがこちらへ向かってやってくるのが見えた
ここで僕の意識は途絶えた
僕は、、、
「ん、んん、、」
目が覚めるとそこはロキファミリアのホームの自室だった
(もどってきちゃったのか)
横を見るとベッドに突っ伏したリヴェリアがすやすやと寝息をたてていた
思わず手を伸ばして髪を撫でたくなったが、そんなことができる手ではないことを思い出した
リヴェリアを起こさないようにベッドを抜け出し部屋のドアに手をかける
「、、リオ」
寝言で僕の名を呼ぶリヴェリアを心苦しくも、放っておきドアを開く
廊下に出ると横には腕を組み壁にもたれているフィンが立っていた
「やあ、起きたかい」
「、、、」
「記憶が戻ったんだって?」
「うん」
「僕たちは君が何者でも構わないよ。もう大切な仲間だから」
「!」
「ルナから全部聞いたよ。ルナは、君の記憶を全て知ってた」
「え、どうして、、」
「とりあえず、僕たちがルナから聞いたことを全て君に伝えるよ」
リオは生まれながらにして多量の魔力の持ち主だった
幼い頃、両親をなくしたリオはその魔力を付け狙われ闇派閥にとらわれてしまった
リオが思い出したのはここから
檻に囚われ日々魔力の強化を強制される日々
さらに、彼らはモンスターの魔石をリオの体に埋め込んだのだ
これがリオが自身をモンスターだと言う理由
さらに強化種がリオを狙う理由
同種を喰らうことによって強化されていく強化種はリオの魔力に引かれていたのだ
しかし、リオは魔石を埋め込まれたことによって体が拒絶反応をおこし、魔法が使えなくなってしまった
ここで、リオは金髪の男に役立たずと罵られ放置されてしまった
リオは隙を見て逃げ出そうとしたが道を見失い孤独に耐えながら森のなか、18階層の森のなかを歩いていた
そこで、多量の魔力と、魔石に体が耐えきれず意識を失ってしまったのだ
その後遺症として記憶がイカれてしまった
「そうルナは言っていたよ」
「その通りだよ。だけどどうしてルナが知っているんだい?」
「それは本人に聞いてみたらどうだい?」
そう言ってフィンは体を壁から離し
「もう一度言うよ。僕たちは君が何者でもあっても仲間だよ」
そして、スタスタと廊下を歩き去ってしまった
バンッ!
自室のドアが勢いよく開きリヴェリアが駆け出してきた
「ッ!リオ!」
僕は訳が分からないままリヴェリアに抱き締められた
「、、どうしたの?」
「何も言うな、、」
僕はただひたすらリヴェリアに抱き締められたまま暫く立ち尽くしていた
フィンがリオに語った記憶は半分に過ぎない
リオが本当に失った記憶は、幼き日々の思い出だ
アリア、リヴェリア、リオ
この3人で過ごした日々
それは遠く昔、まだ世界が平和だった頃
彼はまだ思い出せない
魔石を埋め込まれたときにこの記憶を抜かれたから
大切な思い出を
えと、書きたいことが上手にかけない作者です