ダンジョンで彼に出会うのは間違っているだろうか   作:melu-

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リオはどんな気持ちでいるのか想像すると複雑でござる





では、始まりです


化け物

リヴェリアと中庭にやってきた僕は外の新鮮な空気を胸いっぱいに吸い込む

 

しばらくぶりの空気を堪能した後

 

「先生、まず何をしようか?」

 

「だから先生はやめろと、、、はぁ、何でもいい」

 

リヴェリアはその手を顔にあて、やれやれと首をふる

 

僕はニコニコしながらリヴェリアの言葉を待つ

 

「まずはいつもと同じように魔力の制御からだ」

 

そう言ってこちらに両手を差し伸べてくる

 

僕はその手を握り

 

「、、やっぱり先生の手ってあったかいね」

 

「なっ!!」

 

僕の不意の言葉にリヴェリアは赤面し硬直する

 

「何を馬鹿なこと言ってるんだ!はやくするぞ!」

 

僕はその言葉に従いいつものように魔力を少し開放した

 

そう()()()()()()()

 

ゴォ!!

 

僕とリヴェリアの間に淡い水色の氷の竜巻が生じ爆発した

 

「くっ!」

 

僕が魔力を開放したとたん強大な魔力の奔流がリヴェリアを襲ったのだ

 

繋いでいた手は離れリヴェリアは尻もちをつきその顔を歪める

 

その光景は僕の心を折るには十分だった

 

 

 

「そいつは、リオは、モンスターだよ」

 

 

 

頭の中にはダンジョンで出会った男の声が響く

 

僕がモンスター、、?

 

目の前の光景はその事実を顕著に表しているだろう

 

僕の魔力の奔流で地面は抉れ辺りは僕の氷で覆われていた

 

リヴェリアのほうを見ると氷で頭を切ったのか額から少し血を流している

 

 

 

「化け物の僕を欲しているなら、化け物の僕で対抗するね」

 

 

 

化け物は化け物でしかないんだ

 

先ほどの自分の言葉に辟易とする

 

大切な仲間を傷つけておいてどんな顔でいればいいんだ

 

 

 

「、、やっぱり先生の手ってあったかいね」

 

 

 

じゃあ僕の手は、、?

 

僕の両手は今氷に包まれている

 

冷たい手だ

 

誰とも手を取り合うことができない氷の手

 

僕の瞳から涙があふれ出ようとするが、凍って固まってしまい目尻に氷の粒をつくる

 

涙も流せない僕の体

 

「やっぱり、、僕は、、」

 

僕は凍った地面を割りながらその場を駆け出した

 

「リオッ!」

 

リヴェリアの叫び声が後ろから聞こえてくるが無視する

 

僕は一緒に居られないんだ

 

心のどこかで「違う!そうじゃない」と叫ぶ声を押し殺し僕は駆けた

 

 

 

 

 

 

「リオ、、」

 

私は額の傷を押さえながらリオの小さくなっていく後ろ姿を見つめた

 

やはり、心の中で自分の存在を気にしていたんだろう

 

今のは(魔力の暴発)きっとリオが魔石と完全にリンクしたことによって魔力の大幅な上昇があったからだろう

 

大きすぎる魔力なんてすぐに制御できるわけない

 

今のは事故なんだ

 

そう言いたかったが、リオの顔はとても悲痛に歪んでいて今にも泣きだしそうな顔で、、

 

「やっぱりこうなったわね、、」

 

突然後ろから声が聞こえてきたのでビックリして振り向く

 

「こうなったらもう彼自身の心に、強さに任せるしかないわね」

 

そこにはルナがふわりと浮かびながら言葉を続けていた

 

「ルナ!見ていたのか。はやくリオを探しに行こう!」

 

「無駄よ。今のリオはきっと私たちを拒絶するでしょうね。私たちを想って」

 

私はルナのそんなあっさりした感想に苛立ちを感じて思わず声を荒げる

 

「リオが私を傷つけたのは事故だった!魔力があまりにも大きくなりすぎていたんだ!」

 

「そんなこと冷静に考えたらリオならすぐにわかるわよ」

 

「じゃあ、」

 

「さっきも言ったでしょ。リオの心に任せなさい」

 

「どういうことだ?」

 

「彼の心の中には本物の化け物がいるわ。それに打ち勝てるかが彼の存在を決めるわ」

 

私はわけが分からず困惑する

 

「心の中の化け物?なんだそれは。それにお前はなんでそんなにリオのことを知っているんだ。過去のことも」

 

「、、、私は、ーーー」

 

「なっ!?」

 

ルナが放った言葉は私の驚きを容易に引き出した

 

「だったら、なおさら!」

 

「無駄だって言ってるでしょう。何度言ったら分かるの。あとは彼が自分で何とかするしかないわ」

 

ルナの言葉に私はもう何も返せなくなってしまった

 

「リオ、、」

 

ただ彼の身を案じることしかできなかった

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、、」

 

走り続けた僕は気づいたらバベルの塔の前まで来ていた

 

ダンジョン、、

 

無意識にたどり着いた先、それがダンジョン

 

やっぱり僕は暗い世界に引きこもっているのが正解なんだ

 

僕はためらうことなく歩を進める

 

すれ違う人々はこちらを見てぎょっとした顔をしている

 

不審に思ったけどそんなこと気にしないでダンジョンに向かっていく

 

誰かが僕を呼んでいる気がする

 

それがなになのか大体予想はつく

 

これから僕はどうするんだろう?

 

無意識に動く足を止めないでなぜか朦朧としてきた頭で考える

 

まぁ、いいか。どうせ僕は1人だ

 

辿り着いたダンジョン1階層

 

目の前にはゴブリンが1匹

 

普段ならフィンたちが瞬殺する状況

 

だけど、今は1人

 

僕は手をゴブリンに向け呟く

 

「消えろ、、」

 

それは化け物であるゴブリンに向けて言ったはずなのにどうしてか胸が痛む

 

僕の手から伸びた一筋の氷の線は容赦なくゴブリンの胸を貫き絶命させた

 

そうか、僕は目の前の化け物(ゴブリン)化け物()を重ねてしまったのかもしれない

 

魔石を貫かれて瞬時に灰になったゴブリンを虚ろな目で眺める

 

「1人、、」

 

最近はしばらく1人じゃなかったなぁ

 

戻った記憶では僕は実験されている間は基本1人檻のなかにいた

 

そこを抜けだした後からはルナ2人で冒険してたなぁ

 

それにフィンたちに会って賑やかになった僕の日々

 

それを自分の手で壊すなんてできやしない

 

望んでなったこの1人という状況

 

なんか、ひどく寂しいや

 

化け物である僕は化け物らしくダンジョンにこもるのがお似合いかな

 

自嘲しながらダンジョンの奥へと進む

 

 

 

『お前は1人じゃないぞ、、』

 

 

 

「!!」

 

突然の声に身を固くし警戒する

 

『まぁ、そう固くなるなよ』

 

どこから聞こえてくるかわからない声に警戒しつつ

 

「誰だ!?」

 

と叫ぶ

 

周りには誰もいない

 

聞こえてくる声はどこかから聞こえてくるとかじゃなくて、僕の内側から、、?

 

『俺はずっとお前といたぞ?生まれたときから』

 

生まれた時から?いったい誰なんだ?

 

『邪魔者が()()からいなくなって広く使わせてもらってるぞ?』

 

「ここ?いったいお前は誰でどこにいるんだ!?」

 

『おいおい、そんなことも分かんねぇのかよ。俺は()()だぜ?』

 

途端に頬に激痛が走り思わずその場に膝をつく

 

「ぐぅぅ!?」

 

体から嫌な汗が吹きだし体温が下がっていく

 

周りは僕から出る冷気に影響されどんどん凍っていく

 

「がぁああ!?」

 

頬の痛みから体中に痛みが移り叫んでしまう

 

駄目だこのままじゃモンスターが来たら、、

 

そう思った瞬間に、冷気と叫び声につられてやってきたゴブリンたちが数匹現れた

 

たとえ下級のモンスターでもこの状況で襲われたら、まずい

 

そう思い動こうとしても体が自分のものじゃなくなったかのように動かない

 

『どうしたんだ?俺が助けてやろうか?』

 

そんな声が聞こえた瞬間僕の体の真下から氷の剣山が出現しゴブリンに向かって伸びる

 

伸びた氷はしっかりとゴブリンの胸に突き刺さった

 

さらにそのままゴブリンを氷漬けにしてしまい数匹のゴブリンの彫刻が出来上がった

 

!?

 

僕は何もしていないのに

 

全身に走る激痛に悶えながら頭を働かす

 

『言ったろう。俺はお前だって』

 

氷の剣山はそのまま大きさを増しうずくまる僕の体を押し上げる

 

僕は何がどうなっているか分からないままあまりの激痛に意識を手放した

 

 

 

 

 

 

 

「ウラノス!ダンジョンで異常事態が起きているらしい!」

 

ギルド深部祈祷の間

 

数本のろうそくに囲まれ一人の老神が鎮座している

 

「、、ああ、こちらでも感知している」

 

「上層にて謎の氷漬けのモンスターたちが発見されているらしい」

 

フェルズは大神ウラノスに続ける

 

「、、さらにそれを調査しようとしたバカな新米冒険者も同様の状況で発見されたらしい」

 

ウラノスは静かに目をつむり息を細く吐く

 

「上級冒険者に任せておけばいいものを、、」

 

「至急クエストをだせ。詳細はお前に任せる。ただ原因は生け捕りにしろ」

 

「生け捕り?どうしてだ?」

 

ウラノスはフェルズの問いにゆっくりと答えた

 

「おそらく、この騒動の中心人物は彼らの息子だ」

 

「、、そういうことか。じゃあこの騒動で闇派閥が出張る可能性があるな」

 

「あぁ、ゼウスとヘラ、アストレアに通達を出す。よろしく頼むぞ」

 

「任された」

 

ギルドの裏のトップである彼らの会話はそこにある小さなろうそくの灯の中に消えていった

 

 

 

 

 

 

「おい、このクエストやばくねぇか?」

 

「こんなやつが今ダンジョンにいるのかよ」

 

ギルドのクエストボードの周りには大勢の冒険者がいた

 

その多くの注目を集めているのは数刻前から話題になっている『氷の魔導士』だ

 

ダンジョンですれ違うモンスターを瞬時に凍らし彫刻にして歩き続ける人

 

声をかけても反応はなくある新米の冒険者が不用意にも

 

「おい、てめぇなに無視してんだよ」

 

と絡んだらしい

 

それでも反応がなかった魔導士に新米冒険者は腹がたって剣を抜いて脅した

 

それを見ていた仲間は次に起こった光景を見て腰が抜けてしまった

 

剣を抜いた冒険者を敵とみなしたのか、先ほどまでまったく反応がなかった魔導士だが、氷の礫を不意に出現させそれを冒険者に放ったのだ

 

突然の行動に新米冒険者はなすすべもなく滅多打ちにされ最後には氷漬けにされてしまったのだ

 

その噂の魔導士は着実に階層を下り、ダンジョンの下へと向かっているようだ

 

通った道はすべて氷で覆われ壁や天井すらも氷で覆われているのだった

 

その外見は十代半ばくらいだが目の色は暗く沈んでおり、体中はいたるところが氷で覆われていてまるでローブを着ているような風体だ

 

そして一番の特徴はその頬にある花のような模様だった

 

 

 

「リオ、、、」

 

ロキファミリアはリヴェリアとルナから中庭での出来事をききリオを探すことになったのだ

 

オラリオではリオらしき人物の目撃証言は得られなかったのでダンジョンへ探しに行くところだった

 

たとへリオがそれを拒んでも

 

そこまでにリオはもうロキファミリアの大切な家族だった

 

「このクエスト、明らかにリオのことを指しているよね」

 

「あぁ、この『花のような模様』っちゅうのは強化種に共通して見られたやつじゃろなぁ」

 

私たちクエストボードの前で立ちつくしていた

 

「このままじゃリオがほかの冒険者に捕まえられてしまう。ほかの人たちよりはやくリオに会って連れて帰るんだ」

 

ロキファミリアは1人の家族を連れ戻すためにダンジョンへと足を踏み入れた

 

その様子を影から見られているとも知らずに

 

 

 

 

 

 

「ここは、、?」

 

僕が目を覚ますとそこは真っ白な場所だった

 

遠くも近いも高いも低いも分からないただただ真っ白な世界

 

辺りをキョロキョロと見回すも何も、誰もいない

 

「どこ?」

 

1人呟きを落とした時

 

『やぁ、俺』

 

真後ろから声が聞こえた

 

振り向くとそこには()が立っていた

 

「僕?」

 

『あぁ、お前だよ。俺でもあるがな』

 

もう1人の僕には頬に花のような模様があった

 

僕がもう1人という状況、またこの真っ白な世界に戸惑い首をかしげる

 

「ここは?」

 

先ほどから同じような言葉しか発していない僕に

 

『ここはお前の中だよ。心の中さ』

 

なるほど、道理でさっきまで感じていた激痛もないし体が軽いし、思考もクリアなわけだ

 

『そんなにゆっくりしている暇はないぞ?』

 

「?まったく意味が分からないんだけど。僕はどうしてもう1人の僕としゃべっているんだ?」

 

『まぁいいか。今からお前は俺になるんだから』

 

その瞬間僕の足元から氷のツタが伸び僕の足、体を絡めとる

 

「なっ!?何するんだよ!?」

 

どんどんツタが上ってきて僕は完全に身動きが取れなくなった

 

『言ったろう、俺になるんだって』

 

その言葉の後僕はまたしても意識を手放した

 

 

 

 

と思ったらすぐに目が覚めた

 

ここは、、?

 

ん?声が出ない

 

視界ははっきりしている、ダンジョンだ

 

だけど体は勝手に動くし、声は出せない

 

すると目の前にニードルラビットの群れが現れた

 

ニードルラビット?もうそんな階層に?

 

僕が意識を手放している間に勝手に僕の体は動いていたのか

 

 

『お前は俺になるんだから』

 

 

さっきのもう1人の僕の言葉を思い出し僕は戦慄した

 

そんなことを考えている間にニードルラビットが石斧を投げ飛ばしてきた

 

僕は避けようとするが、体は動かない

 

瞬間僕の体は手を振り上げ石斧の倍の数の氷の礫を飛ばした

 

ニードルラビットはなすすべもなく体を撃ち抜かれ絶命した

 

さらに氷の礫はそのまま床や壁を凍らしニードルラビットすらも氷漬けにした

 

そして僕の体は勝手に歩き出す

 

どうなったんだ僕の体

 

「おいっ!お前!ちょっと待て!」

 

後ろから声がしたので振り向こうとしたが僕の体は無視してスタスタと歩く

 

待て待て無視はよくないぞ

 

「おい!お前もしかして『氷の魔導士』か!?」

 

氷の魔導士?なんだそれ

 

「無視するんじゃねえよ!」

 

ほら怒ってるじゃないか!

 

殺気を感じた僕の体は身をひるがえし避けた

 

何を?

 

飛んできたのは矢だった

 

先ほどまで僕がいた場所に突き刺さっている

 

その矢を放った人物のほうを見ると

 

なっ!

 

オラリオに住んでいる冒険者ならだれでも知っているであろう人物だった

 

、、ゼウスファミリアのエース、Lv4ヘラクレス

 

「おぉ、やっとこっち向いてくれた」

 

こんな人がなんで僕のこと?

 

「まぁ、とりあえず腕の1、2本は覚悟してもらおうかな。『氷の魔導士』」

 

、、、存じ上げませんそんな人

 

何で僕襲われてるんだ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ヘラクレスさんはオリキャラです

リオのキャラが崩壊していく今日この頃

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