ダンジョンで彼に出会うのは間違っているだろうか 作:melu-
では、始まりです
僕たちがロキファミリアに入団した後しばらくはダンジョンに潜れなかった
理由は二つあった
まず、リヴェリアの回復を待っていたこと
エルフの彼女はもともと耐久が低く、強化種の一撃でなかなかにダメージを負ってしまったこと
その療養に時間を割いたことだった
次に、ダンジョンそのものの封鎖だった
僕たちがオークの強化種と戦ったあとギルド、特にその上層部はその異変を調べるべく一度ダンジョンへの冒険者の侵入を禁止し、ゼウスファミリアとヘラファミリアの精鋭を送り込んだのだ
結果からすると、成果はゼロだった
異変の「い」の字もなかったらしい
それはおそらく僕がいなかったからだろう、ルナ曰く
今はパントリーや、深いところで力を溜めているのだろう
もう一つ、ダンジョンとは関係ないがフィンが気になることがあると言っていた
確か、、
「最近
そう、オラリオの治安もなかなかに悪いらしい
正義を掲げるアストレアファミリアをはじめとした正義派閥とでもいうのだろうか、彼らの尽力によってまだ今のところ大きな被害は出ていない
強化種に対抗するにも、闇派閥と戦うにも力がいる、フィンはそう言っていた
その時の顔はどこか悲痛に歪んでいた気がする
僕が一人思考の海に漂っていると、横からいつもの声が聞こえてきた
「ちょっと、リオ。何ボーっとしてるの。あなたも自分が住む家なんだから少しは関心を持ちなさい」
「ごめんごめん。僕はこの家いいと思ってるよ」
「おっ!わかってるなリオ!ウチが選んだ家が気に入らんわけがないからな!」
僕たちは今ロキファミリアの
僕たちが入団する前にロキが拠点候補地を探していたらしい
そこは大きめの館だった、外見はこれといって普通の館だったが立地はいい
1階はずいぶん広いリビングとキッチン、2階は個室がたくさんある
館の形がちょうど「コ」の字になっていて、中庭には鍛錬するのにちょうどいい広さの空きがある
僕たち6人で住むには少々大きいとは思うが、ロキは
「ええんやええんや、これからもっと家族が増えても困らんやろ!」
「ロキ、それはいいんだけど。いくらするんだい?ここは」
フィンが多少ひきつった顔でロキにたずねる
「ん?あぁ、ローン組ましてもらったから安心せい!自分らがしっかり稼いで来たら、一年で返せる額とだけ言っておくわ」
「そうかい、、もう組んじゃったんだね」
その傍ら、ガレスとリヴェリアが口論をしていた
「ワシがここの部屋じゃ!異論は認めんぞ!」
「何を言う!貴様はあの日当たりの悪い部屋で十分だ!」
、、なんとまぁ可愛い喧嘩だこと
僕は肩に乗っているルナに
「楽しいね、ファミリアって」
「そうね。賑やかなのはいいことだと思うわ」
僕たちは、騒がしく部屋割りを決めた後ひさしぶりに解禁されたダンジョン探索に行こうとしていた
ダンジョンに行く前にギルドに寄って現在のダンジョンの状況を聞きに行くことにした
こういった情報収集は大事だ、とリヴェリアが言っていた
ギルドにつくとあの赤毛の少女、モミジが瞬時に僕たちを見つけて走ってきた
ちなみに彼女とはもう何度か面識はある、ルナはないけど
ファミリアの団員登録の時とか、ダンジョンについて何度かフィンたちとたずねたことがある
なぜか知識は僕並みに無かったけど
ルナについては人目にふれると厄介なことが起きるらしい
ロキ曰く
「まぁ妖精、ましてや精霊ってなると闇派閥のやつらが黙っとるわけないからなー」
らしい
そんなことをぼんやり考えていると
「ひっさしぶり~!君たちが来てくれたおかげで助かったよ~」
と、息を切らしながらモミジがそう言う。その言葉にフィンは
「どういうことだい?」
定番の疑問を投げかける
「いやぁ~、上司がね山ほど仕事投げつけてきてねー、死にかけてたところなんだ」
やっぱりそういうことだったらしい
フィンはある程度予想できていたようでいつもの苦笑いを浮かべる
「モミジや、今のダンジョンはどんな様子なんじゃ?」
ガレスが声をあげる
するとモミジはそのしっぽをブンブン振り回しながら
「ギルドから発表されたように異常は全くないみたいだよ。むしろモンスターがいつもより少なくて取り合いがあるぐらいだって」
モンスターが少ないのはおそらく強化種が力を得るためにモンスターたちを喰らっているだろう
異常ありありじゃないか
その後僕たちは仕事に戻りたくなくてフィンに抱き着いていたモミジと別れてダンジョンに行った
「、、ひさしぶりじゃな」
「そうだね」
「次は必ず凍らせる」
ガレス、フィン、リヴェリアの順で真っすぐ前を見据えながら口を開く
いつの間にか出てきていたルナは
「気合入ってるわね、私たちも頑張らないとね」
「そうだね、僕も頑張らないと」
こうして気持ちを一つにしたロキファミリア一行はダンジョンを進む
6階層
とあるルームにて
ここに至るまでに数々のモンスターを倒してきたが、フィンたちに疲れは全くみえない
最後のウォーシャドウを真っ二つにしたガレスは一つ落胆のため息を零す
「ここのやつらこんなに骨がなかったかのぅ?」
その言葉にフィンはその槍の先についた血を「ビュンっ」と振り払いながら
「そうだね、この前の強化種と戦ったおかげで僕たちのステイタスがだいぶ伸びたからね」
そう言って魔石を回収し始める
その作業は基本フィンとリヴェリアが行っている
ガレスが魔石を回収をしないのは、彼がモンスターを抉るときに不器用すぎて何度も魔石を砕いてしまっているからだ
そして今日からはリオとルナも魔石回収を手伝っている
リオたちは器用なので、回収スピードが格段に上がり早く次の行動に移れるようになったのだ
「ともあれ、早く強くなって18階層に行けるようにならないとな」
魔石をすべて回収し立ち上がったリヴェリアはほこりを払う
リヴェリアとガレスはすでにフィンとロキからリオの記憶について聞いていた
2人は命の恩人がそういった状況にあることを聞きフィンと同様に協力的な姿勢をみせた
リヴェリアにいたっては
「魔法が制御できない?なら私が教えてやろう」
と意気込んで本屋で魔法書を読み漁っている
リヴェリアと同じく魔石を回収しバックバッグにしまったリオは一つ息をつく
「みんなすごいね、僕はもう疲れてきたよ」
言葉の通り顔に疲労の色を浮かべているリオ
実際フィンたちとリオとルナには大きいステイタスの開きがある(魔力は除くが
恩恵を授かったタイミングやモンスターとの直接戦闘経験が全然違うのだ
そんな事情はもちろん団員全員が知っているので気をつかってダンジョンを進んでいるがどうしても疲労の差は出てきてしまう
「なんじゃ、情けないのぅ。それでも男か」
ガレスにそう言われたリオはしゅんとした
「まぁ、そう言ってあげないでくれガレス。リオだって頑張ってるんだから」
「脳筋の貴様と同じにするな」
すかさずフィンとリヴェリアのフォローが入りリオは顔をあげる
フィンはその場に腰を下ろし続ける
「まぁ、そろそろ
そう言って、ルームの壁を魔石回収用のナイフでガリガリと削る
この作業はルームで
ダンジョンの壁や床を削ることでダンジョンはモンスターを産み落とすことよりも壁や床の修復を優先しルームはしばらく安地になるのだ
慣れた手つきで壁を削るフィンに倣いリオは壁を削り始める
一通り壁を削り終えた一行はルームの入り口に目を向けながら7階層進出に向けて会議を始めた
団長であるフィンを中心に話が進む
「7階層からはモンスターがより群れを成してやってくる。一匹一匹相手に手間取っていたらあっという間に敵の波にのまれてしまう」
7階層初出のモンスター
甲羅が固くなかなかダメージを与えられず、瀕死になると仲間を呼ぶフェロモンを出すキラーアント
「そこでだ。僕とガレスが敵を食い止めている間にリヴェリアとリオ、ルナの魔法で敵を殲滅してほしい」
フィンは頼もしい魔導士たちのほうを見る
6階層までは杖術でいなしてきたリヴェリア
「ようやく私の本職だ」
しばらくサポーターとして働いてきたリオとルナ
「僕にできるかな、、」
「きっとできるわ、私がついているもの」
今まで、フィン、ガレス、リヴェリア、の3人だったときはリヴェリアの
「その前にワシが全部倒してやるわい」
不敵な笑みを浮かべて新たな敵に期待をしているガレス
「そうだね、この前の強化種に比べたらって考えるとね。けど油断は禁物だよ」
「分かっておるわい」
そしてフィンは立ち上がり声をあげる
「よし!行こう!」
7階層
「ウウオォ!」
ガレスの斧がキラーアントの首をはねとばし絶命させる
固く刃が通りにくいといわれていたキラーアントの甲殻を軽々と切り裂けたのはやはり強化種との戦いで得たステイタスの影響だろう
しかし軽く30は超えているモンスターを前にガレスとフィンは防戦を強いられていた
「リオ!ルナ!まだなのか!」
斧を盾にしてキラーアントの突進を防ぎ叫ぶガレス
フィンは的確に甲殻の間を槍で射抜き着実に数を減らしていっているが顔は苦渋の色に染められている
(数が多い、前衛2人でこの数はしんどいかな)
いくらステイタスが伸びているとは言えモンスターに物量で押されるのはキツイところだ
後方ではリオとルナが魔力を練り上げその周りでリヴェリアが杖術で2匹のニードルラビットをいなしている
魔力の高まりを感じたリヴェリアは前衛に向かって叫んだ
「さがれっ!」
その声に即座に反応したフィンたちは武器で大きくキラーアントを弾き、戻りざまにリヴェリアが対峙していたニードルラビットを仕留めた
「
気合の入った詠唱とともにリオは右手を敵の大群に向かって伸ばす
そしてその先から極寒の冷気が伸びキラーアントたちを包み込む、さらにダンジョンの壁すらも凍らし産まれかけていたキラーアントすらも固まってしまった
一瞬にして銀色の世界になったダンジョンをみてフィンたちは呟いた
「あいかわらず凄いね、、」
「
「ガハハハッ!」
ガレスにいたっては大声をあげて笑っている
「けど、やっぱりルナがいないと制御できないや」
そう言って自分の右手を見つめるリオ
「地上に戻ったらしっかり教えてやるから覚悟しておけ」
リヴェリアはそう言い魔石回収を始めた
その後しばらくは軽いキラーアントの群れと4~5回遭遇しリヴェリアとリオたちが交互に魔法を撃ち危なげなく撃破した
「危なかったのは一番最初だけだったね」
パンパンになったバックバッグを背負いながらフィンは話す
「そうじゃな、道中これといった変な色のやつもおらなかったしのぅ」
「そうだね、今日はそろそろ帰ろうか。魔石もいっぱいだしね」
そしてリヴェリアたちのほうを見て
「
と問う
「そうだな、撃てて後2発くらいか」
「僕も初めのでそこそこ無くなっちゃったから、、」
一行は足の向きを変えて、6階層へと向かう
そんな様子を影からこっそり見ていた者には気づかないまま
危なげなく地上に帰還したフィンたちは魔石を換金した後ヴァリスを山分けし、それぞれのやりたいことをするために一度別れた
具体的には、ガレスはお酒を飲みに。フィンはモミジとダンジョンについて勉強しに。リオとルナリヴェリアはホームの中庭でリヴェリアが言っていたようにリオの魔法の特訓だ
特訓するにあたってリヴェリアがふと疑問に思ったことがあった
「ルナ、リオに魔力の扱い方について教えなかったのか?」
そう、長いこと一緒にいるルナが先に教えていなかったことが疑問だったのだ
「そうね、私も最初はそう思ったけどできないのよ」
そう言ってピンと指を1本立てて言葉を続ける
「
くるくる舞いながら説明する
「まぁ、私も全部体外の魔素で魔法を使ってるわけではないけど、要領が違うから説明が難しかったのよ。それに基本一緒にいてリオの魔法を形創っているからね、しばらくは必要ないと思っていたの」
リオの肩にとまりリヴェリアをみる
「分かったかしら?」
「ああ、概ね理解した」
リヴェリアはリオの顔を見据え
「私は故郷で散々魔法について習ってきた。時にはお前のような魔法がうまく使えない者の世話もしたことがある。だから安心して私の教えを覚えるといい」
「はいっ!リヴェリア先生!」
ピシっと姿勢を正して声をあげるリオ
その姿を見てリヴェリアは
「先生はやめてくれ、、」
と零すのだった
「フィンくーん、これ分かんないよぉー」
そう言って、開かれた『ゴブリンでも分かる、ダンジョンについて。その4』に突っ伏すモミジ
余談だが、「その10」まである
「頼むよ、モミジ。君がしっかりアドバイスしてくれないと僕たちダンジョンでやられちゃうよ」
フィンがそう棒台詞で嘆くとガバッと起き上がり
「それはヤダ!フィン君にはいなくなってほしくない!」
とさらっとうれしいことを言って本を睨むモミジ
しかし数秒すると
「だめぇ~。この文字読めない~」
と言って本日4度目のダウンをした
そんな様子を見てフィンは
「やれやれ、、」
といつもの苦笑を浮かべるのだった
「この酒はうまいのぅ」
1人酒場に入りジョッキで酒をあおるガレス
現在空の色は赤く染まり始めガレスのように酒を飲みにくる冒険者は少なくなかった
しばらく酒を飲みながら冒険者たちの会話に耳を傾けていると気になる話が聞こえてきた
「なぁ、この前ダンジョンの封鎖があっただろう?」
「あぁ、なんか異変が起きたからってゼウスファミリアとヘラファミリアの団長たちが確認しに行ったんだろう?」
「そうなんだよ!しかも上層なんだぜ。そんなとこにやつらが行く必要があると思うか?」
「よっぽど、どえらいことが起きてたんじゃねぇの?」
「それが!何もなかったんだってよ!」
「へぇー、そりゃよかったじゃねえか。何もないほうがいいじゃねえか」
「バカ!そんな訳ねえだろう?ギルドの上がもみ消したんだよ!上層にはあまりにもイレギュラーすぎることだったから。ずっとダンジョンを封鎖してるとおかしいから仕方なくダンジョンを開放したんだよ」
「なんでそんなことお前知ってるんだ?」
「ゼウスファミリアのやつらがしゃべってるの聞いたからだよ!なんとな、上層のパントリーのほとんどが同じような食い散らかした跡が残ってたんだってよ、、変な色の羽根と一緒にな」
「へぇー、そりゃこえぇ」
「お前!信じてないだろ!」
ガレスは酒をグイっと飲み干し
(変な色、、か)
一応気にはしておくべき内容を頭にとめ
「おやっさん!同じのもう1つ!」
と叫んだのだった
そのころ、薄暗い部屋の中
「ゴル、彼を見つけた」
「何?本当か」
「ああ、それと一緒に面白いやつが一緒にいたぞ」
「?」
「それは連れてきてからのお楽しみってことで」
暗がりで男二人のそんな会話
その間に割って入ったのはけたたましい怪物の雄たけびだった
「グゥォォオ!!」
ガシャン!と自らを捕らえている檻を揺らし脱出を試みるが檻はビクともしない
「まぁ、誰でもいい。リオを手に入れれば俺たちの作戦は完成する。はやく捕まえてこい」
手に持つ漆黒の槍でズブっと檻の中のモンスターを黙らせる、ゴルと呼ばれた男
「あの日リオを逃がしたのが俺の人生で2番目の失策だな、、」
漆黒の槍を握りしめ、声を漏らす
「じゃあ、1番は何だい?」
「お前が知ってどうする、アーク」
「いや、興味本位さ」
威嚇するようなゴルの声に両手をあげ肩をすくめるアーク
そんなアークを無視し
「ああ、もうすぐこのオラリオを俺の、彼女のものに、、!」
恍惚の表情を浮かべその部屋の中心、緑のクリスタルが輝くほうを見つめた
最近花粉がひどくて朝からつらい作者です
本来1パーティーはどのくらいのペースでダンジョン攻略するんでしょうか
ベル君たちは早すぎますよね
成長系スキルほしいなーと思ったり