ヨルムンガンド ChiNaTsu, She Can Stain Her Life. 作:伯方のお茶
ホテルの一室でココ・ヘクマティアルが叫ぶ。
「諸君!次の仕事はこれだ!」
いつものメンバーが長机を囲んで座っている。
レームは相変わらずタバコを吹かし、その横ではバルメが心底煙たそうにしている。
トージョ、ワイリ、ウゴは資料に目を通しており、ルツ、マオ、アールはココの方を見ている。
ヨナもココの方を見ている。
「えー、お手元の資料に書いている通り、アフリカG国政府軍へライフル各種、対戦車ランチャー、カノン砲や迫撃砲の砲弾をいっぱいお届けする予定です。
そんなに難しく無い仕事だからみんな安心して。」
「ココ、ちょっといいか」
「おっ、レーム隊員、質問をどうぞ!」
「ここに書いてある、"担当官と接触 G国北部難民キャンプ"ってのはどういうことだ」
「そのままの意味だよ、レーム。」
ココがそう言い、言葉を続ける。
「さっき難しく無い仕事って言ったけど、簡単な仕事でもないんだ。
依頼主はアフリカG国政府軍で間違いないんだけど、G国はお隣のK国と油田の権利を巡って紛争状態だったけど今は停戦中。
おおっぴらに武器を運ぶとまたK国とのいざこざが発生する可能性がある。
K国がG国を攻撃する大義名分にもなる。
だから今回の商談はなるべく目立たないようにしないといけないってこと。」
「なーるほどねぇ、だから人が居ても誰が誰だかわかんない難民キャンプで商談しようってか」
「そういうことだ、レーム隊員っ!」
そう言うと立っていたココが椅子に座り、足を組む。
「担当官はもう難民キャンプにいるんだ。
そんで、そいつをキャンプから連れ出して、もしくはキャンプ内で商談するつもり。」
「行くのはいいけどよぉ、ココ。
武器持った人間が、しかも現地人じゃ無いやつがそんな所にぞろぞろ行ったら怪しまれるぜ。K国の諜報官や協力者やらが居ても不思議じゃねぇ。
さっき言った、誰が誰だかわかんないってのはあるがさすがに全員で行ったらバレちまう。
今回はドンパチ出来ないんだろ?」
「そう!そうなのだよ!今日は冴えているな!レーム隊員!」
ココがビッシっとレームを指差す。
「いつも冴えてるぜ、俺は。」
レームが笑う。
「担当官の顔写真は持っているからいいけど、どうやって見つけ出すか!」
少し間を置きトージョが答える。
「ヨナに行かせればいいんじゃないか?」
「なるほど。トージョ、意見を聞かせて。」
ココが言う。
「ヨナなら子供だし、キャンプにも入りやすい。
それなりの格好をしていけば怪しまれることも無いと思う。
担当官と歩いてれば親子連れかなんかと思われるかもしれねぇから、連れ出すのもそんなに難しくないと思うぜ。」
「ダメだよ、トージョ。」
ヨナがトージョに対して言う。
「僕、アフリカ語は話せない。」
「英語くらい通じるだろ。アフリカは公用語が英語の国が多いからな。
あと、ナリにも軍関係者だろ?英語ぐらい話せなきゃ、それこそ話にならないぜ。」
トージョが話し終えるとバルメが言う。
「私はヨナくん一人で行かせるのには反対ですね。
あと、トージョ。G国の公用語はフランス語です。」
「じゃあ、次はバルメの意見を聞こうかな。」
「わかりました、ココ。
あの区域全体は治安が悪くて、しかも警備が厳しいことで有名なんです。
以前、G国北部難民キャンプ近くのNGOが治療支援をしていた病院に襲撃があり、
民間人に死者が出てそれ以降警備が厳しくなったんです。」
「続けて、バルメ。」
「それとさっきトージョは子供だからと言っていましたが、ヨナくんの出で立ちはここらの子と違います。
警備の目に付く可能性は高いです。
警備に何か言われて、答えられなかったりしたら面倒なことになります。」
吸っていたタバコを消すとレームが言う。
「おぉそうだ、バルメ。お前が行けばいいじゃん。」
「何故です?レーム?」
「バルメは前はアフリカにいたからアフリカの事情もわかるし、
フランス語でもスペイン語でも話せるだろ?
記者かなんかのふりして行けばいいじゃん。」
「潜入調査ということですか…私は良いですが…
ココはどう思いますか?」
バルメがココの方を向き言う。
「そうだねぇ、悪く無い方法だと思う。
無理に一回で交渉しなくても大丈夫だし、バルメが潜入、確認して
それから交渉しても問題ないね。」
さらにココが詳しく説明する。
「まず、バルメが難民キャンプに潜入、G国担当官と接触する。
その場で交渉の日時、場所を決定、もし既に注文内容が決まっていたらならその情報を回収。
商品の輸送は何回かに分けて行う。武器を運んでるとは言わずに、医療品などを運んでいると情報を流す予定。
その時はみんなにも護衛してもらうから、よろしく。
護衛の内容はまた詳しく説明するね。」
「は~い」
皆が一様に返事し、立ち上がりそれぞれしたいことをする。
「バルメ」
バルメが部屋を出る前にココが呼び止める。
「何ですか?」と言いながらバルメは振り返る。
「バルメ…アフリカだと色々思い出すことがあるだろうと思うけど…」
ココが少し黙り込んでいる間にバルメが笑顔で答える。
「大丈夫です、ココ!
ココの為なら火の中水の中どこへだって行きます!」
「うん、よろしくね、バルメ。」
「もちろんです!」
バルメは部屋を出て自室へ向かい、ココは今いる部屋の椅子に腰掛ける。
バルメなら大丈夫だろう不安は無いが、だが心配はしてしまう。
アフリカという立地、単独行動、二人組で行かせたほうがいいのだろうか、
しかしあまり目立った行動はしたくない。二人組くらいなら問題ないか。
ココは足を組み、腕も組み、床を見つめ考える。
1分程思考し両腕を上げ伸びをする。
「あーあ!お腹空いた!
ヨナー!一緒にご飯でも食べに行かないかーい?」
「あっ、ヨナ坊だけずるいぜ。
お嬢、俺も行く。」
ルツが声を上げる。
「なら俺も行こうかな。」
トージョも声を上げる。
「では、諸君!みんなで行こうではないか!
準備してー、準備!
ヨナ、バルメを部屋から呼んできて?」
「わかった」
ヨナが部屋から出てゆき、皆がそれに続いて行く。
夜にまたバルメと相談して詳細を決めよう、ココはそう思いながら