ヨルムンガンド ChiNaTsu, She Can Stain Her Life. 作:伯方のお茶
登場人物が行っている医療行為に関してはなるべく調べてから書いているつもりですが、正確な内容でない場合が多々ありますのでご了承ください。
若干グロテスクな内容があります。
苦手な方は飛ばしてお読みください。
ヨナのあとを追いかけていたレームと東野が大通りを歩いているとパシ、パチと突如乾いた破裂音がする。
「レームさん、銃声が。」
「あぁ、アルシュロップショッピングモールの方だ。急ぐぞ、ドクター。」
「わかりました。」
二人は大通りをショッピングモールの方へ走り出す。
距離が近くになるにつれて乾いた破裂音が、火薬が着火し銃弾が発射されたときのバシン、バシンという炸裂音になる。拳銃の音と共にアサルトライフルやサブマシンガンが発砲した連発音も聞こえ始めてきた。
遠くから警察車両のサイレンも聞こえる。
「だいぶ派手にやってやがるな。」
「そのようですね。こんな街中で銃撃戦なんて。」
「さっきも言ったが街中の方が不意打ちしやすいのさ。俺が殺し屋でもそうする。」
「私もそうしますね。」
二人が3,4分程走るとアルシュロップショッピングモールの入り口へ着く。
警察も既に到着していたようだが、入り口にパトカーが1台破壊され、煙を上げながらなぜか垂直に立っている。
その傍らには警察官が倒れている。
「おいおい、マジかよ。」
「レームさん、警察の方を助けないと。」
「ほっとけ、行くぞ。」
「いえ、悪いですが見捨てられません。
レームさんは先に行ってください、すぐ行きます。」
東野はレームの目を見つめ訴える。
東野は仲間や善良な人間の人命がかかっていると頑固になり、割と言うことを聞かないということをレームはしっている。少し前、平時に足を捻った時も大丈夫だと言っているのに、しつこく具合を見せてくれと東野に言われ結局レームが折れてしまった。レームも、確かにいつもよりは治りが早かったから感謝はしている。
説得するだけ無駄だと思いながら、レームは東野に言う。
「ドクター。お前の悪い癖だ、時間がない。」
レームの言葉に食い気味に東野は答える。
「1分、1分で全員の確認、処置をします。」
「30秒、いや45秒やろう。」
「さすがレームさん、優しいですね。」
東野は口角を上げニコリと笑う。
「へっ、知ってるよ。とっとと来いよ。」
そう言うとレームはショッピングモールの中に入り銃声の方へ向かう。
東野の周りには3人の警官が倒れている。見る分には派手に出血している人間はいない。
一人に駆け寄ると脈もあり息もしている、「大丈夫ですか?」と呼びかけると「あ、あぁ…早く応援を…」と返事もある。負傷は腕や足に擦過傷。メディカルバックからガーゼと包帯を取り出し「これ自分で巻けますね?」と警官に渡すと「大丈夫だ、ありがとう…」と返答があった。
壁にもたれかかっている二人目は後頭部に挫傷と傷がある、多分後ろの壁に強く打ち付けたのだろう。この人も意識は覚醒している。冷感パック取り出しタオルでつつみ「これを後頭部に当てておいてください。」といい三人目に移動する。脳挫傷、脳震盪はこの場ではどうしようもないので救急隊に任せることとした。
三人目は座り込み無線で本部と連絡を取っている様だ、処置は必要ない。
煙を上げるパトカーのからシートの布やプラスチックが燃える臭いとガソリンの臭いがする。
それと一緒に肉が焼けている香ばしい、臭い。
動物の毛が焼けるときの硫黄臭の混じった、臭い。
慣れない人間がこの臭いをかぐと吐き気を催す。
車両の中から黒焦げた左腕がダラりと力なく出ているのを東野は見つける。パトカーへ東野が近づく。
中を覗くと一応人間の形をしている警官がいた。
顔面が焦げ燃え尽きた薪のように炭化、胸あたりの衣服は燃え皮膚に癒着しておりその皮膚も真皮、皮下組織が見えてしまっている。腹部からは赤い腸が出ている。
右腕は方から先、右足の膝から先は吹き飛ばされており骨とみずみずしい筋肉が見えている。
それを見た東野は顔色一つ変えず何も言わずに振り返りレームの元へ走り向かう。
レームは中庭に入る直前の壁の前にいて、インカムで他の仲間に応援を呼んでいた。
「はいはい、皆さん状況開始ですよぉ。」
東野はレームの後ろにつく。
「着きました、ちょうど45秒です。」
「オッケー、一応武器構えとけ。」
「わかりました。」
そう言われた東野はM92を取り出しマガジンを挿し、セーフティを外しスライドをコッキングする。
「まだ撃つな。合図したら俺の後ろから撃て。
落ち着いて撃てば当たる。訓練通りにするんだ。」
「わかりました。」
状況を見ようと東野は中庭の方をうかがい見る。
そして初めて見る殺し屋とはどういうものなのか気になった。
殺し屋 オーケストラを見た東野は目を疑った。
「片割れが、こ、子供、しかも女の子じゃないですか…!?」
「子供だからって油断するなよぉ。もうバルメが撃たれてる。」
大丈夫だ、足撃たれただけだし、バルメは頑丈だからな。」
東野の頭の中から殺し屋に子供の女の子がいたという驚きは頭から離れ、レームに問いかける。
いつも朗らかで明るい東野に少し焦りが見える。
「えっ、足のどこですか?」
「太ももだよ。」
「太腿のどこらへんでした?」
「そこまではさすがに見えなかった。」
「早く止血をしないとマズいです。」
「もちろん、わかってるさ。
ヨナくんもいるから大丈夫だ。」
そう話していると中庭の花壇に隠れていたヨナが師匠に向かってMP5を乱射しながら突撃する。
師匠もヨナに向けてAKを乱射している。
「まったく、これだから少年兵ってのは嫌いなんだよ。」
レームはそう呟くとカラビナを取り付けたパラコードとポケットから取り出すとカウボーイの様にくるくると回し「よっ」っと言いヨナの足元目掛け投げる。
投げられたパラコードはヨナの右足に絡みつき、ヨナは転倒する。
「命中、さすが俺~。」
レームはパラコードを引っ張りヨナを、自分と東野の方へ引き寄せる。
師匠の追撃は無い。チナツが止めたようだった。
「ヨナくん一本釣り~。」
ヨナを引き寄せるやいなや、レームの顔面にヨナの蹴りがクリーンヒットする。
「おぉ…痛そう…」
思わず東野が言葉を漏らしてしまう。
「何するんだ、レーム!!
あと少しで仕留められた!!」
ヨナは怒りの表情でレームに怒号をぶつける。
「落ち着けよ。
どうしたいつもの紳士的な君が今はまるで獣の様だぜ。」
レームはいつもの口調で諭しながら、ヨナの足に絡まったパラコードどほどく。
「確かに仕留められただろうよ、だが君も死んでたね。
殺し屋の乗りに乗せられてじゃねーよ。邪魔されてムカつくか?
俺はそれ以上にムカついてるぜ。少年兵の戦い方ってのは本当に頭にくる。」
レームは加えていたタバコに火をつけ、息を吸い吐き出す。
「いいか、覚えろ。」
「うちは殺し合いなんてやらない。やるとしたら一方的な殺し。
捨て身の突撃が必要な状況は訓練に訓練を重ねたテクニックで補え。
そして忘れろ、少年兵よ。」
横で見ていた東野は戦闘時のレームを見るといつも驚いてしまう。
普段のレームと戦闘時のレーム、まるで別の人間だと思う程のオーラを感じる。
まさに殺しのエキスパートなのだろう。
レームがヨナへの説教を終えるとココとバルメが向かってくる。
バルメは左足の太ももを撃ち抜かれておりココに肩を貸してもらっている。
ココが呼びかける。
「ヨナ、レーム、ドクター。」
「ヨナ、こいつで誘導して援護もする。
ココを守って逃げ回れ、出来るか?」
レームがヘッドセットをヨナに渡すと、ヨナは頷く。
「ココ、手を離さないで。」
「了解。」
ココとヨナはショッピングモールの裏手へ回るように走り出す。
「ドクターはバルメの手当をしてやれ。」
「そのつもりです。
バルメさん、そこに座ってください。」
「ったく、何ヘマってんだよ。」
レームはそう言うとオーケストラに向けて発砲を始める。
しかしチナツがレーム達の方を向き盾で防ぐ。
「チッ、クッソ防ぎやがったマジかよ。」
「45口径は重いよ!」
チナツは盾で.45ACPを受けながら言う。
「絶好の不意打ちのタイミングだったんだがねぇ、いいカンしてるぜ。」
「敵を褒めないでください、レーム!」
「バルメさん、早く座って頂けます?」
東野がバルメにそう促す。いつもより少しだけ顔が怖い。
「あ、はい…」
バルメはちょっと萎縮してしまった。
東野はバルメが座るとメディカルバックを床に置き、
救急用ハサミを取り出し左足太腿部分のジーパンを切り、傷の具合を確認する。
撃たれたのは左足太腿の外側部分、大腿動脈に損傷は到達していない、貫通射創ではなく深い擦過射創。
とはいえ銃創自体は負傷の中では重傷だ。
ドクターが手当をしている横ではレームと師匠が撃ち合っている。
師匠は「シケた音混ぜんじゃねぇ!俺の音楽をブチ壊す気か!この野郎!!」と叫びながらこちらにAKを乱射している。
それに向けレームも軽口を叩きながら応戦している。
東野はそんな銃声にも気を留めずに淡々と処置を行う。
「弾は抜けてます、とっとと止血しましょう。
あと、あまり見ないほうがいいですよ。気分が悪くなりますから。」
止血帯を取り出し傷口より上の部分を縛り上げる。これで一時的に出血を止める。
続いてコンバットガーゼを2枚取り出し傷口に二重にして当てる。
その上から更に救急用外傷包帯を、手早く巻きつける。
ものの1分程で処置が終わる。
「包帯は巻き終わりました、止血帯を緩めます。
一旦血がまた出て来ますが、ガーゼに止血剤が入っているので直に止まります。
というか、カスッたとは言え風穴開けてるのによくピンピンしてますね。」
「身体が頑丈なのが取り柄ですから…」
バルメは驚いた。
いつも動きがゆったりと緩慢である東野がとても素早く傷の手当をする姿、手の動きに一切の迷いが無く正確に必要な動作を行う。
表情を見てもいつものニコニコした顔ではなく、自分たち傭兵や軍人と変わらない目付きで手当を行っていた。
それに普通の人間なら怖がる銃声の中、しかもこっちに向かって乱射されている状態で平然と処置を行う平常心、一応は銃声に慣れているとはいえ中々肝が座っているとも思った。
「うるせぇ!死ね、ジジイ!」
銃声が一旦鳴り止むとオーケストラの師匠が叫びながらAKをこちらに投げつける。
「こんな奴ら放っといて行こ!師匠!」
チナツが盾を捨て師匠の手を引きショッピングモールの外へ飛び出す。
レームがオーケストラが立ち去ったのを確認してから言う。
「行ったか。よし、移動だ。
ドクター、バルメを支えてやれ。」
「すみません、ドクター…」
「いえ、これが私に出来る唯一の仕事ですから。」
東野はバルメに肩を貸し立ち上がる。
レームは携帯で他の仲間にピックアップするように伝える。
バルメが口を開く。
「レーム、あのテンガロンの小娘があのイノシシ男をうまく制御しています。」
「バルメもそう思った?まるで武器管制システムだ。」
「しかし、多分まだ16,17歳くらいの子供ですよ?そんなこと…」
東野が口をはさむ。
「それくらいの年齢なら社会的に働ける年齢だ。
多分、あのテンガロンは何人も殺ってる。」
「嫌な世の中ですね、本当に。」
「ドクター、あなたらしくないですね。」
肩を借りているバルメが東野の顔を覗き込む。
「いえ、子供を殺さないと誓いながら子供に殺されそうになるなんて。
少し滑稽に思えまして。」
「君は君の信念があるならそれでいい。
他の人間がことを済ますだけさ。」
普段ネガティブなことを言わない東野がそんなことを口走ったのので、レームは東野を励ます。
「あの男と、テンガロン、なんとか切り離しを考えよう。」
大通りに出ると他の仲間が乗ってきた車が到着しバルメと東野が乗り込み、トージョ降りレームと共に指揮に回る。
ウゴが運転する車はスキール音を上げ発進した。
どうも、作者の伯方のお茶です。
お気に入りが80件、しおりも25件と!!!
皆様本作品をお読みいただきありがとうございます!!!!!!!
本当にありがとうございます!!!!!!
喜びのC4爆薬が私の身体を粉々に吹き飛ばしております!!!!
今回は地の文を多めに書かせて頂きました。
(意訳:ドクターの活躍を書きたかった。)
今回も原作のセリフなどと被っている部分が多くなっていましました。
ご容赦ください。
では、引き続き本作品をお楽しみください!!!!
モハメド警備兵「ドクターは元気ですかなぁ。」
東野「へっくしゅ!誰かが噂してますね、モハメドさんですかねぇ。」