ヨルムンガンド ChiNaTsu, She Can Stain Her Life.   作:伯方のお茶

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※お断り※
登場人物が行っている医療行為、医療用語に関してはなるべく調べてから書いているつもりですが、正確な内容でない場合が多々ありますのでご了承ください。
ストーリーの都合上、アニメでの内容、セリフが多くかぶります。ご容赦下さい。


第十話

ウゴの運転する白いSUVは交差点を抜け海岸線沿いの道へ出る。

海岸線の歩道を走っているココとヨナをアールが見つける。

 

「いた!見つけた!」とアールが声を上げると、マオが「拾いますか?」とバルメに判断を仰ぐ。

「いいえ、並走です。この車を盾に。」

バルメがそう言うとウゴはココ、ヨナの盾になるように車が並走させる。

 

その後ろからは既にオーケストラ チナツが運転する赤いピックアップトラックが追いかけてくる。

荷台には師匠が仁王立ちしており、ネゲヴLMGを片手で軽々と持っている。

 

オーケストラの車がウゴの運転する車と並走する為に加速し、間を待たずに横並びとなる。

 

「軽機関銃を片手で持つなんてどんな腕してやがるんだ!

 ドクター俺の足押さえて支えてくれ!」

アールはそう叫ぶとAUGを手に持ち、車から身を乗り出すと射撃を始める。

 

「わ、わかりました!」

東野はアールの両足を腕で抱きかかえるようにしてアールが車から落ちないように踏ん張る。

 

「タイヤ撃て、アール!」

マオもサンルーフから身を乗り出しG36で射撃を始める。

「わかってるよ!喰らえ!」

アールはタイヤを狙って引き金を引くが。ただでさえ不安定な射撃姿勢に加え地面のギャップを拾った車がバンプし照準が定まらない。

車内にいるバルメも東野のメディカルバックから取り出したMP5で応射する。

 

荷台に乗っている師匠はネゲヴを腰だめで乱射している。発射された弾丸は容赦無くウゴの運転する車に襲いかかる。

幸いEN-B6相当の防弾化をしている車なので5.56mm FMJでも耐弾性があり、弾は車体にめり込んだり跳弾している。

ガラスももちろん防弾ガラスだ。

 

マオの撃った弾がチナツの運転する赤いピックアップトラックの後輪にあたり、パシュという空気が抜ける音と同時にピックアップトラックが左右に振られる。

そのままスピンするかと思いきや車を立て直し加速し、先のブロックを左折する。

 

「…あ゛っ、ヤバイ、ヤバイヤバイ!!」

いつも冷静なマオがいきなり焦り始める。マオは横を走っているココに向けて叫ぶ。

 

「ココさん!M2です!

 奴らリアシートにM2重機関銃を固定してる!」

 

「えっ、何考えてんの!?」

走っているココの顔が呆れと驚きが混じった顔になる。

 

「50口径だとこの車の防弾板だと防げませんよね?」

東野がバルメにきくと、バルメは答える。

「えぇ、そのとおりです。この車の防弾板なんていとも容易く貫通してきます。」

 

「それはなかなかスリル満点ですね。」

 

「なーに言ってんだドクター!

 当たったら腕や足なんて簡単に吹き飛ぶぞ!」

アールが車内に視線を向け東野の顔を見ながらいう。

 

「えぇ、今まで何回も見たことありますから大丈夫ですよ。」

 

「ハッ、なら問題ないな!」

 

「撃たれたこともありますよ。」

東野が口角を少し上げ、ニヤリと笑う。

 

「二人とも敵が来てるのに雑談してる場合ですか!!!

 後ろから奴らが来てますよ!」

 

アールが車の後ろに視線を戻すと交差点をドリフトしながら赤いピックアップトラックが曲がってくる。

 

「来た!」

「エンジンを狙え!エンジン!!」

マオ、アールが叫びフルオートで射撃する。

 

「よ、横薙ぎにされるっ!」

ヨナに手を引かれながら走るココが言う。

 

オーケストラの車はどんどん距離を詰めてくる。

荷台では師匠がネゲヴを腰だめで撃ちまくっている。

マオ、アールもエンジンを狙い射撃を加えている。

 

もう、オーケストラの車、ウゴの車。3台分も離れてない距離になる。

「ダメだもうヤバイ!車内に戻れ!」

アールがマオにいうと二人は車の中に戻る。

 

「アンサンブルだぜ!」

車が近づき、そして師匠が叫ぶとチナツはアクセルを踏み込みハンドルを素早く切り、パワースライドの要領で車を横滑りさせM2の銃口を皆の乗っている車に向ける。

 

「発射!」

 

ハンドルに増設した赤いボタンを押すとM2重機関銃の発射レバーがチナツお手製工作によって押され弾丸が発射される。

重機関銃という名前の通り重々しい名前とは裏腹にダダダダダダという軽快なリズムだ。

しかし、周りの音が聞こえなくなるくらいの発射音、車の中にいてもわかる衝撃波、音速の3倍で飛来する弾丸の3つがごちゃまぜになりながらウゴの運転する車に突き刺さる。

 

リヤガラスは粉々に砕け、車体後方にも数発当たる。

被弾の衝撃で車体が左右に振られ、左後輪にも被弾しタイヤとホイールが粉々に砕け散る。徹甲弾ではなく通常弾だったため後方の防弾板はギリギリ耐えている。

しかし、このまま並走すると横っ腹を撃ち抜かれる。

 

「対ショック姿勢!!」

ウゴが叫ぶ。

「「「とっくに対ショック!!」」」

マオ、バルメ、アール、東野は頭を下げ腕で頭を抱える。

 

ウゴは左後輪が無くなりハンドルが左に取られるのを押さえつけ右に精一杯ハンドルを切り、アクセルを踏み込む。

4輪駆動のSUVは残りの3輪で無くなった1輪を引きずりながらガラガラと音を立て歩道に向かう。

 

歩道に歩行者がいないのが幸い、歩道と車道を隔てるポールに車が激突し停止する。

車は慣性に従い、激突した勢いのまま前方につんのめり後方が完全に浮いた状態となった。

 

「なにっ!?」

M2重機関銃を撃ちながらオーケストラの車はポールに激突し止まった車の横を通り抜ける。

横薙ぎには出来なかった。

M2重機関銃の弾薬が尽きそのまま走行しているとエンジンオイルに引火しフロントグリルから火が上がる。

 

「師匠!急ぐのだ!」

「チッ、クソがッ。」

チナツが運転席から降り、師匠も荷台から飛び降りコンテナ群の方に走り出し身を隠す。

 

ウゴの運転していた白いSUVは後方がゆっくりと地面に向かい落ちだし、そして完全に着地する。

「痛ってぇ…マジかよ…頭がクラクラするぜ。」

アールは頭を擦りながら身体を起こす。

 

「みんな大丈夫か。」

ウゴが皆に呼びかける。それぞれが「あぁ。」「問題ありません。」など返事をする。

「とりあえず、外に出よう。」

マオが皆を移動させるように促す。

 

全員が外に出ると東野は乗っていたメンバーの怪我の具合をすぐさま確認する。

「皆さん、外傷はなさそうですね。無理せず座ってて下さい。

 もしかしたら、むち打ちになってるかもしれないので後で確認しましょう。」

 

マオが右手を東野に差し出しながら話しかける。

「ドクター、手を捻ったみたいだ…

 車が衝突した時にダッシュボードの所に手をついてしまってね…」

東野が差し出された右手を見ると手首から小指にかけて手の甲側が腫れている。

 

「ちょっと触ります、痛かったら言って下さい。」

「わかった…」

東野はマオの右手を左右から掴む。ちょうどゲームのコントローラーを持つ感じだ。

左右の親指をマオの指の付け根から手首に向かって数回押し上げながら移動させる。

 

「痛っつ…!」

 

「ここですね?」

東野は再度マオが痛がった部位を軽く押す。

「そこ、そこだから押さないで。」

状況と疼痛を訴える場所から察するに掌側橈骨手根靭帯損傷および骨間手根間靭帯損傷。いわゆる手首を強くついたときにする捻挫の一つだ。

見たところすべての指に力が入っているので靭帯が完全に断裂している場所はなさそうだ。

 

「捻挫です、軽く固定しましょう。

 なるべく力を抜いて下さい。」

メディカルバックからテーピングバンドと医療用ハサミを取り出しマオの手をどんどんテーピングで固定してゆく。

親指の付け根あたりを斜めにグルリと一周、その後それを覆うように手首から親指と人指し指の間に一周。

これで橈骨と手根骨の緩みをもとに戻す。

手首から薬指と小指の間をまたぎ、斜めに手首に戻るように巻き橈骨と手関節を締める。

そして手関節に2周強めに巻き、手首を固定するとともに橈尺関節の固定を行う。

 

「これでしばらくは大丈夫です。

 少しなら動かしても痛くないようにキツめに巻きました。」

 

バルメが驚いたようにマオも東野の素早く正確な手さばきに息をのむ。

「もしかして、君ってすごい優秀な医者だったりする?」

マオは思わず聞いてしまった。

 

「いえ、ただのお人好しなそこら辺にいる人間です。」

東野はニコッと笑い答える。

 

その横ではバルメが車に身を隠しながらあたりを見回している。

バルメがあたりを見渡すと海に通じる階段の所にココとヨナを見つけた。

ヨナは階段をゆっくり上がり様子を伺おうとしている。

ヨナが頭を少し出した瞬間銃声が聞こえる。

 

「まだ、奴ら生きてます。ヨナくんを援護しないと。」

バルメは立ち上がり車の中から銃を取り出そうとする。

「うっ…!!」

だが、ショッピングモールで怪我をした左足から崩れ落ちる。

 

「ダメです、バルメさん。

 あなたも立派な怪我人です、無理しないで下さい。」

 

「しかし、ココとヨナくんが。」

 

「レームさんとトージョさんが既に裏に回っています。

 先程、無線が来ました。身を隠して安全を確保しろとのことです。」

東野はヘッドセットをつけている右耳あたりをコンコンと叩く。

 

「そうですか…わかりました。」

バルメは表情を曇らせながらも座り込む。

 

「俺は大丈夫だ。」

「俺もとりあえずは大丈夫だ。若干、頭が痛いがな。」

ウゴとアールがドクターに伝える。

 

「わかりました。

 アールさんこの後はどうしましょう。」

 

「レームが身を隠してろって言ってたんならそうしてよう。

 ルツとワイリが狙撃ポイントで待ち構えてるんだろう。

 というか、ドクターは大丈夫なのか?」

 

「私は大丈夫です。メディカルバックがクッションになったようです。」

 

「医者が自分のこと大丈夫って言うなら大丈夫か。

 ドクター、あのコンテナの方に銃構えとけ。」

 

「わかりました。」

東野はM92を構えボンネット越しにコンテナの角、オーケストラの方向に照準を合わせる。

ウゴは後方の警戒を行いアールも車体後方で銃を構えている、マオとバルメは前方の警戒を行っている。

 

まだ、ヨナと撃ち合っているようだ。

オーケストラの師匠が大声で話しているが何を言っているかまではわからない。

 

そして、オーケストラの師匠がコンテナの角から飛び出してくる。

東野が指をかけた引き金を引くよりも早く、.338ラプア・マグナムの弾丸が師匠の心臓を貫通する。

 

師匠が崩れ落ち膝を着く、同時に銃声が聞こえ頭が脳をぶちまけながら弾け飛ぶ。

その約3秒後に2回目の銃声が聞こえてくる。

 

「これが狙撃…」

東野はそう呟く。

 

師匠が頭を撃たれ倒れると、甲高い金切り声の様な悲鳴が聞こえてくる。

「あの女の子ですか、無理もないです…」

東野は照準器を覗いている目を細める。まだ、チナツが何か叫んでいるのが聞こえる。

叫び声が終わるとフラフラとした様子でコンテナの影からチナツが出てくる。

 

「私は…無力だ。」

東野は目をつぶり、銃声を待った。

 

銃声より先にガキュンという金属が破断されるような音が聞こえ目を開ける。

倒れ込んでいるチナツが東野の目に映る。チナツは横に落ちているベレッタM8000とロザリオについていた十字架を拾うと立ち上がり東野の方を一瞥する。

 

目が合う、だが双方とも銃を撃たない。

すぐにチナツは走り出しコンテナの奥へ消え東野の視界から消える。

 

奥にいるレームとトージョが発砲する音が聞こえる。

その銃声もすぐに無くなりインカムから「行っちまった。」というレームの声が聞こえる。

 

その声を聞いた東野はM92のセーフティをかけると腕をダラリとさげる。

「行ってしまったようです。」

 

「そうか、他のみんなと合流しよう。」

アールは皆に呼びかける。

 

「いえ、このまま戻るみたいですよ。」

バルメはココが手をグーにして、腕を振っているのを見るとそう言う。

横に柄の悪そうな細身の男と警察官がいるのも見えた。

 

「姉御、支えるぜ。」

「ありがとうございます。」

バルメはウゴの肩を借りて立ち上がる。

 

「こっちの道だ、行こう。」

アールが先導しその後ろに他のメンバーはついて行く。

 

ゆっくりと元いたホテルへ戻る。

歩いていると皆、空腹を感じた。もう、1時をとうに過ぎている。

 

東野は胸ポケットからタバコを取り出し火をつける。

ふぅー、と息を吐き出す。

空腹は紛れたが心の霧は晴れなかった。




どうも、作者の伯方のお茶です。
お待たせいたしました、第十話でございます!!!!
そして、お気に入りが150件を突破しており非常に驚いています!!!
最初書き始めたときは50件くらいの行けば良いなぁと思っていましたので非常に驚いています!!!!
まさに、ハートショットされております!!!!

次話も必ず書きますので、(いつになるかわかりませんが…)
引き続き本作品をお楽しみ下さい!!!!
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