ヨルムンガンド ChiNaTsu, She Can Stain Her Life.   作:伯方のお茶

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※お断り※
登場人物が行っている医療行為に関してはなるべく調べてから書いているつもりですが、正確な内容でない場合が多々ありますのでご了承ください。
また、医療知識に関してもなるべく調べてから書いていますが、正確な内容ではない場合がありますのでご了承ください。


第十五話

初日から何事もなく3日が経過した。

 

チナツは逃げ出そうとした夜以前から変わらず、東野とは必要最低限の会話以外をしなかった。

 

朝起きると前と同じようにチナツの血圧を測る。

(上が142の下が99、心拍数は88。初日に比べたら下がっていますね、いい傾向です。)

 

ルームサービスで朝食を注文する。程なくして部屋に朝食が運ばれると二人はそれを食べる。

朝食を食べ終え東野は食器をまとめる。そしてチナツに話しかける。

 

「さて、どこからお話しましょうか。」

チナツは何も言わずに東野の方を見つめている。

 

「そういえばチナツちゃんの本名とか歳を聞いてなかったですね、あとは出身国とかも。私と同じ東洋人らしい顔つきですがそちらの出身ですか?」

この話題なら不自然ではないだろうと思い聞く、それと東野はさりげなくココからもらった情報の確認をしようとした。

 

「チナツ・ヴィアダーナ、今は17で今年で18歳、生まれはイタリア。」

 

「チナツというと日本人的な名前なのですが、親類に日本人の方がいたのでしょうか?」

 

「おじいちゃんが日本人だったらしい。私が小さい頃に死んじゃって本当かどうかしらないけど…」

 

「そうですか…すみません…」

どうやらココの情報はあっている。

 

「とういうか、このくらいのことならもう調べてあるだろう?何でわざわざ聞くんだ。」

 

さすがの鋭い指摘だ。この子は頭の回転が速いし自頭も良いと感じれる。それに加え勘も冴えている。学校ではきっと優秀だったに違いない。

 

東野はその質問に答える。

「半分正解半分不正解といったところでしょうか。殺し屋としての素性はわかってますが、チナツちゃんあなた自身の情報は無いのでそれで聞いています。」

 

「なんだそれ…」

チナツは眉間にシワを寄せ呆れた顔をする。

 

「他にも質問があればお答えしますよ。」

 

「今のとこは無い。」

 

「そしたら私からお話することがあります。」

東野は椅子を引き座り直すとチナツの方へ体を向ける。

 

「誤魔化しは効かなさそうですから率直に言いましょう。私はあなたを治療する、そしてその後私達の仲間の一人になってもらいたいのです。」

 

それを聞いたチナツの顔に怒りの表情が現れる。眉間にシワが寄り、顎を引きこちらを下から見上げるように睨む。

 

「…やっぱりな、お前もあの女から命令されてやってるんだ!何が私の独断ですだッ!!ふざけるな!!」

チナツはベッドから身を乗り出し東野の白衣を掴み叫ぶ。

 

東野は白衣を掴んでるチナツの手を下ろすようにゆっくりとなだめる。

「まぁまぁ、落ち着いて。私の言い方が悪かったです。」

「治療の結果次第で私が判断をする予定です。仲間になれなそうなら安全な国で新しい生活をするとか、名前を変えてイタリアに戻るとかそういう感じになると思います。」

 

「私はあの女を、師匠を殺した奴を殺すんだ!情けはいらない!!治療なんて、私はどこもおかしくないッ!!」

手を強く握り震わせながら東野を睨みつけ叫ぶ。呼吸が荒く浅く速くなる。息を吸い込み吐くまでのテンポが上がってくる。

 

「大きく息を吸って吐いて。」

「大丈夫、私の呼吸に合わせて。」

東野はしっかりとチナツの目を見てゆっくりと話す。吸って吐いてと語りかけるように言う。荒かった呼吸も徐々に戻ってくる。

 

2分ほど深呼吸するとチナツも落ち着いたのか白衣を掴んでいた手を離す。ダラリと腕を下ろすと顔を下に向けうつむく。

 

「…どうして…私が…こんな目にあうの……」

チナツの肩が震えると顔を手で覆う。その後に嗚咽のような声と鼻をすする音が聞こえ泣いているとわかった。チナツの声にならない声が、空調の音だけが聞こえた部屋に入り交じる。

 

東野は何も言わず何もせずただそれを見ていた。

 

PTSD症状の1つ情緒不安定。感情制御がしにくくなり怒る泣く、と落ち着きがなくなる、不安感、疎外感が急激に襲いかかる。また、それの移り変わりが早い。

それと、人をは泣くとリラックスできる。泣く事自体が良くないことと捉えられがちだが、意外とそうではない。副交感神経が刺激され泣くことによって落ち着きを取り戻す効果もあり、人の前で泣くというのはその人を信頼しているということの現れでもある。

 

チナツは腕で目を拭ったり鼻を押さえたりする、目からはまだ涙が流れる。東野は机の上においてあるティッシュ箱をそっとベッドの上に持ってくる。

チナツは目を赤く腫らし口をつぐんだ顔で東野を一瞥するとティッシュを2、3枚とり軽く鼻をかむ。また2、3枚取ると目を拭く。

 

ひとしきり泣くとチナツは落ち着きを取り戻した。

 

「大丈夫ですか?お水どうぞ。」

チナツはミネラルウォーターを受け取り一口飲むと、東野の問いに頷きで答えた。

 

「…大丈夫、少しは落ち着いた。」

 

「私の話の切り口が良くなかったですね。こちらこそすみません。」

東野はまた椅子を座り直す。話を切り替えるときの癖だ。

 

「最初の話です、チナツちゃんの心を治療します。それから私達の仲間になるか、それとも新しい人生を送るか考えましょう。」

 

「さっきも言ったけど、私はどこもおかしくない。それと心を治療すると言われてもピンとこない。」

チナツは東野の顔を見つめて言う。

 

「それを認識するところから始めましょう。」

東野も机に置いてあったミネラルウォーターを飲む。外の日が直接当たっていたので生温るくなっていた。

 

「チナツちゃんから話を聞いてないのでまだわかりませんが、チナツちゃんの歳では中々に想像し得ないことを既にしてます。他に感情の起伏が極端に激しい。あとこれを見てください。」

東野は血圧の記録をチナツに見せる。

 

「これが初日の値、上が165の下が105、心拍数は105回です。2日目が160の104の99、3日目が152の102の98、それで今日が144の99の88です。」

 

「…何かおかしいのか?」

 

「では、試しに私の血圧を今測ってみましょう。」

東野は血圧計のバンドを腕に巻くとスイッチを入れる。ブブブと聞き慣れた音がたち計測が始まる、そして終わる。

 

「上が129の下が85、心拍数は72回、これが少し高いですが安静時の通常ぐらいです。チナツちゃんは毎朝測っていますか安静時にこの血圧は異常値です。高齢者ならありえますが17歳では余程の緊張状態か激しい運動後以外は考えられないです。」

東野はバンドを外しながら話を続ける。

「安静時にこの血圧ということは常に何かしらに対して緊張している。正確には警戒していると言ったほうがいいですね。心当たりはありませんか?」

 

「まぁ、ある…」

チナツは伏し目がちにそれを言う。こうして見るとまさか殺し屋をしていた少女には見えず、か弱い年頃の女の子そのままだ。

 

「なるほど。それを聞けただけでもありがたいです。」

血圧計を片付けて、先程チナツに見せたノートにそのことを書き込む。

 

「心の治療というのは身体的苦痛を引き起こすことがよくあります。頭痛、腹痛、下痢、フラッシュバック…しかしそれよりも辛いのは治療そのものです、自分の思い出したくない記憶を整理し自分の心と折り合いをつけて克服してゆく。私はチナツちゃんの記憶、また無意識の整理の手伝いをします。

どうでしょう?」

 

東野が問いかけるがすぐには答えは帰ってこなかった。チナツは彼女自身の中での葛藤、不安があるのだろう。自分はどうなるのか、激しい動乱の後に心の余裕が出来てしまうと考えてしまうこと。私は許されるのだろうかという、罪の意識。殺し屋として生きてきたのに普通に戻ってもいいのだろうか。

チナツは自分の思いをそのまま東野へ言う。

 

「…私は許されるのか?」

 

その問いに東野は悠然と答えた。

「神が許さなくても私が許しましょう。」

 

目を丸くしたチナツは続けざまに言う。

「東野…お前はいったい何なんだ…?」

 

東野はフフと笑い答える。

「そこら辺にいるただのお人好しの凡人医者ですよ。」

 

 




クソお待たせいたしました!!!!!
作者の伯方のお茶です!!!!

リアルがクソ忙しく中々に書くことが出来ずに本当に申し訳ないです!!!!!!!!
 
お気に入り登録、しおり、評価、感想をありがとうございます!!!こんな亀更新でも読んでくださる方がいらっしゃるのは本当に嬉しいです!!!!!

何回も書いてますが時間をかけても完結はさせるので気長にお待ち下さい!!!!!

それではごきげんよう!!!!
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