ヨルムンガンド ChiNaTsu, She Can Stain Her Life.   作:伯方のお茶

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第三話

(ここがキャンプですかね。)

 

バルメはG国北部難民キャンプの入り口の前に着く。

難民キャンプというが周りには簡単な柵があり、テントも区画化されている。

以前は大規模でだんだん縮小されたということが見るものが見ればわかる。

取材の名目で来ているのでキャンプ入り口の写真を数枚撮影し入口へ向かう。

 

「止まってください。

 取材される記者の方ですね。」

先程、東野と雑談してたモハメド警備兵がバルメを入り口の前で呼び止める。

 

「はい、エリナ・コルホネンです。フリーの記者をしています。」

もちろん用意していた偽名だ。

 

「わかりました、所持品の確認とボディチェックをさせていただきます。

 ご協力願います。」

 

「えぇ、もちろんです。」

バルメは笑顔で応じる。

カバンの中身の確認、簡単なボディチェック30秒もかからずに終わる。

作業が終わるとモハメド警備兵はバルメに礼を言う。

 

「ご協力ありがとうございます。

 AAMSTのドクターが医療テントにいらっしゃいますので、

 そちらにお向かいください。赤十字が描かれているので直ぐにおわかりになると思います。」

 

「ご親切にありがとうございます。

 お気をつけて。」

バルメは軽く頭を下げキャンプ内に入る。

 

(警備兵の武装はAK-47、妥当といった所でしょう。

装備もチェストリグに予備マガジン程度、ぶっちゃけ軽装備ですね。

特に書類の確認もされずにすんなり入れたのは意外でした。こちらとしてはありがたいですが。

さて、医療用テントはどこでしょう。)

 

テントやバラックの中心らへんに赤十字が描かれているダークグリーンのテントがある。

バルメはそのテントに近づき中へ入る。

 

「すみません、AAMSTの医師の方はいらっしゃいますか?」

テントの中に入るとフランス語で呼びかける。

 

「はいはい、私です。どうかしましたか?」

フランス語で返答が帰ってくる。白衣を着た男、東野である。

 

 

テントの中は机2つ、椅子が数脚ある。

また、医薬品が置いてある台、診察台、発電機、心電図を読み取る心電計、簡易的な手術器具等がテント端に置いてある。大掛かりなことはこちらでするのだろうと予想できる。

1つの机の上には包帯やガーゼ、使い捨て舌圧子、ゴム手袋等がある。内科や簡単な怪我の診察はこちらで行うのだろう。

医療用のものはきちんと整理されて置いてあるが、東野が座っている眼の前の机の上には書類や本が雑多に置かれている。

 

東野は読んでいた本を机の上に置きバルメの方を見る。

「あぁ、あなたが取材の方ですね!どうぞ、こちらにお座りください。

 お一人ですか~?」

 

「えぇ、まぁ。

 あ、すみません。」

バルメは東野が持ってきた椅子に座る。

バルメが座るなり東野はバルメの向かい側に座り直すと話し始める。

 

「遠いところお疲れ様です。

 私はここの難民キャンプで医療支援をしている、アフリカ地域医療支援団体の東野達といいます。

 よろしくおねがいします~。

 あっ、これよろしければどうぞ。今日は暑いですからね~。」

東野が頭を下げる。その後、机の下のダンボールからミネラルウォーターを取り出しバルメに渡す。

バルメはそれを受け取る。なかなかに忙しい男だと内心思った。

 

「どうもありがとうございます。

 申し遅れました。私、フリーの記者をしておりますエリカ・コルホネンです。

 本日はよろしくおねがいします。」

バルメも軽く頭を下げる。

 

「エリナ・コルホネンさんですね?

 失礼ですが、コルホネンという苗字ですとフィンランドの方ですか?」

 

「そうです。よくご存知ですね。」

これで相手に怪しまれずに済む。バルメは心の中でよしと思った。

 

「はい~、以前にフィンランドの方でコルホネンという苗字の方が居てその人に教えてもらいました。

 何でもフィンランドで一番多い苗字だとか!」

 

「えぇ、その通りです。エリナと呼んで頂ければ幸いです。

 ヒガシノさんは日本の方ですか?」

 

「おぉ、そうです!エリナさんもよくご存知ですね!」

東野は驚いた顔になる。

 

「えぇ、前に少し本で読みまして。」

 

「なるほどぉ。あっ、ちなみに英語は話せますか?」

 

「話せます。英語の方が良いでしょうか?」

バルメは話題も忙しく変わるのかとまた思った。

 

「そうですね、英語の方が話し慣れていますのでそちらのほうがありがたいです。

 あ、私のことは適当に呼んでください。」

 

「では、警備の方がドクターと言っていられたので私もそうします。」

 

「はい~、どうぞ~。」

 

話が一段落終えるとバルメはカバンからメモ帳を取り出し、記者らしく質問を始める。

 

何故医者になったのか、キャンプの過去と現在を比べてどう思うか、アフリカの医療のこと、

政府の方針や難民のこと、今まで大変だったこと…

 

バルメの質問に東野は小説を感情たっぷりに読み聞かせるかの様に答える。

時々、具体例を出すがいまいちわかりにくい。

きっと彼の頭の中には映像のように記憶が残っており、その場面を頭の中で渦巻く言葉を選んで思いつた順から口に出している。

彼は自分の答えを明確に持っているが、それらを言葉としてただ口から発している。

話の道筋がうねうねと曲がりくねった山道の様になっている。

だから、完全にわからないとは言わないがわかりにくい。

 

しかし、彼の人を救いたいという熱意は十分に感じることが出来た。

 

「ドクターは何故AAMSTの活動に参加したのですか?」

バルメは質問する。

 

「私はですね、いつか正確には忘れてしまったのですが、私が15歳か16歳の頃にある本を読みまして。

 その本に載っていた写真、子供達が銃を持っていたんですよ。他の写真には子供が食料を求めて道端に座り込んでいる写真がありました。親が居なくなってしまった子供、ゴミを漁る子供…

 私は絶望しました。

 自分と同じくらい、もしかしたら自分より年の小さい子供たちがこんな生活をしているなんて。

 あれ?これさっき言いましたよね?」

 

「大丈夫です、続きをお願いします。

 (さっきも同じようなことを言っていましたよ、あなた…)」

 

「すみません、重ね重ね。

 で、とにかく自分に与えられた環境を考えたら、医者になり子供たちを救いたい。

 彼ら子供には選択肢が無いのです。だから、選択肢を増やしてあげたい。

 そうすれば彼らはもっと自由になれるのかもしれない、彼らがしたいことが出来るのかもしれない。そういう思いにだんだん成りました。

 AAMSTに参加したのも日本で医師免許を取り3年程働いたら直ぐに飛び出しました。」

 

「なるほど、ありがとうございます。」

バルメは自分が武器商人の私兵だと知られたら、この男はどれほど激昂するだろうと想像した。

 

「ドクター、このキャンプ内の写真などを撮影しても大丈夫でしょうか?」

これを口実にしてキャンプの中を移動しG国の担当官を探す予定だ。

 

「もちろんです!バシバシ取りまくってください!

 私も一緒に行って案内します!」

 

「ぜひ、お願いします。」

二人は椅子から立ち上がりテントの外にでる。

 

誰かしらと一緒にキャンプ内を回るのは想定済みである。

一緒に移動したとしても事細かに監視されている訳ではない。

紙切れ一枚、相手のポケットに入れたり、目の前に落とすくらい動作もない。

別に見られたとしても、これはおばあちゃんから習ったあなたにが健康に生きられるためのおまじないですとか適当にごまかせる。

しかも、この能天気な医者だ。「おぉ、それは素晴らしいですね!」なんていうに違いない。

 

バルメと東野はキャンプ内を回る。

東野がここがトイレですね、衛生管理は最初は大変でした~、こっち側には前もっとテントがあったんですよ~などと横を歩いているバルメに説明しているが、そんなものは聞いていない。

左手に紙の入ったファイルを持ち、右手はカメラを構え適当に写真を取りつつ歩いている人の中でG国担当官を探す。

 

2分程歩くと見覚えのある顔の男が前から歩いてくる。

バルメはカメラを下ろし、目を凝らしてよく顔を見る。

 

(あの男で間違いありませんね。)

 

前から今回のターゲットが歩いてくる。

 

東野の言葉などバルメには聞こえていない。

よく確認し、素早く行動に移す、自然に。




作者の伯方のお茶です。
多くの方に自分の作品をお読みいただき感動してる次第であります。
お気に入り登録されている方もいらっしゃり、本当にありがとうございます。

一話あたりの文字数が多くないので更新は頑張って行うつもりです。
完結は必ずさせたいです。

では、次話をお楽しみに!
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