ヨルムンガンド ChiNaTsu, She Can Stain Her Life. 作:伯方のお茶
「彼らはG国でクーデターを企ていたんですよ」
東野がそう言うとバルメとトージョは驚いた様子を見せる。ココは無表情の顔だ。
「油田権利の争いが一時休戦状態。
G国とK国はお互いの損害をこれ以上出さないようにその権利の交渉に望むということでしたが、
国内でそれを良しと思わない派閥もいるみたいでして、その一人があの高官ナビルさんです。
クーデターを起こすために武器、弾薬その他色々なものが必要になるということも話していました。
武器商人が接触してくるなんて話も聞きましたよ。」
「そして不必要になったら武器商人を殺すとも。
どうしようもないほどの強硬派とお見受けしましてね。
今の軍司令官に全ての責任をなすりつけて、自分たちが新体制の首長になると目論んでいたんでしょう。
あの、ヘクマティアルさんタバコを吸ってもいいですか?」
東野は胸ポケットからタバコ箱を取り出してココに笑いながら見せる。
「あぁ、いいぞ。」
ココは表情、体勢一つ変えずに答える。
「ありがとうございます、医者の不養生とはこのことで。」
「軽口はいい、生きて帰りたいなら話せ」
「もちろんです、そのために来ました。」
東野は息を吹き出し煙を吐く。バルメが向かい側で煙たそうにしている。
「そこでバルメさんがキャンプへ来た。
あんな話を聞いた後です、誰だって警戒くらいします。
このメモさっきは拾ったなんて言いましたが、私がワザとくすねたんです。」
ココが東野が話し終わると同時に話し始める。上半身をを反らし少し顔を上げ東野を見下すようにする。
声には怒りの感情が現れている。
「ほう、貴様いい度胸をしているな。
私の商談をふいにして損害を出させたのか。クーデターなど私にはどうでもいい。
貴様はこの損害をどう償うんだ?貴様の臓器を全て売ったとしても全く足しにならないぞ。」
その話を聞いた東野はココから視線を外し下を向く。
灰皿に置いてあるタバコから出た煙が、机の方へ顔をを向けた東野の顔を包む。
東野はココの方を見ないで、そのままの体勢で言う。
「私にはどうしようもありません。
だが、私は医師だ。救える命は救う。
例えそれが死の商人、武器商人であろうと。」
東野がココの方を向き続けて言う。先程の笑顔は消え真剣な顔つきである。
「そしてまた国同士の戦争が起きれば両国の戦争難民で溢れかえる。
大勢の人間が死んでしまう。そうならば私にはそれを止める義務がある。
好奇心でここへ来たという話は本当ですが、この話も本当です。」
無表情のココの口元がだんだんとピクピクと動いてくる。
「ッフ、ッフフ…」
頑張って我慢していたがもう限界だ。
「あーーっはははは!!!!!
無理、もう耐えらんない!!ハッハハハハ!!!!!」
ココの隣のトージョが腕を組み、ため息混じりにいう。
「ココさんが笑うのも無理ないぜ。
お前、バカじゃないの?」
「えっ、えぇ、えっ?」
東野はてっきり捕まるとばかり思っていて、とっさに逃げられる様に力を込めていた足が緩む。
バルメといえば、力なく首を横に振っている。
笑うのが一旦落ち着いたココが東野へ言う。
「っはっは、はぁー、あー、呼吸困難になる!
あんたみたいな医者がいるなんて、長らく世界を旅してきたつもりだけど世界はまだまだ広いわ!
あぁ、失礼ドクター東野、貴方のような素晴らしい正義感と好奇心をお持ちの人間に会ったのは初めてです。
ご心配なく損害を償えという先ほどのお話は冗談です。あの程度の利益は我々にしてみればほんの微々たるものです。」
「そ、そうなのですか?」
東野がそう言い終えると、震える手でタバコを口元へ持ってくる。
「はい、ご心配なく。」
ココは思う。
(面白い、この人間は。自分の命の危険を犯してまで武器商人の命を救おうとする人間などそうそういない。殺さ れそうになったことはいくらでもあるが、自分の仲間達以外の人間が自分を救おうとしたのは初めてだ。
ぶっちゃけ、トージョとの会話が終わり自分と話し始めてくらいから笑うのを耐えていた。
バルメがこの医者はキャスパーに似ていると言っていたが、私はそうは思わない。
さっきは少しそう思ったが違う。むしろ反対方向、私と似ている。この医者と私の思うところは本質的には恐ろしくらい一緒だ。)
「ドクター東野、ご忠告そしてご報告ありがとうございます。
我々の私兵といえど一軍隊を一気にに相手にしたらやられてしまいます。」
ココはうやうやしく東野へ頭を下げる。
「あ、あぁ、いえ、こちらこそ。」
若干まだ落ち着かない東野が答える。
「そしてドクター東野、提案が一つあります。」
頭を上げたココは少し見を乗り出しながら東野へ言う。
「何でしょう。肺ならタバコのススでもう真っ黒ですから売り物になりませんよ。」
ココは苦笑いをする。
「我々武器は売りますが臓器は専門外ですので。
いえ、そうではなくて。東野さん。」
「我々の仲間になりませんか?」
「ココ、そんないきなり!」
驚いたバルメがココの方を向く。
「いきなりって、バルメのときだってーウゴのときだってー、
いきなりだったじゃーん。」
「確かにそうでしたが…」
バルメの声が小さくなる。
「俺は良いと思うぜ、ココさん。
同じ日本人だし、同じ男だし。賛成だな。」
トージョは椅子に深く座り直し頷くように首を縦にふる。
「素性がわからない医者で、最初だって嘘ついてましたし。」
バルメはココに疑問を投げかける。
「AAMSTの派遣医師でしょ?
嘘ついてたのは話の流れをわかりやすくするのと私達を助けるためだよ。」
「あ、そうですね…
というかなんで医者なのですか?」
「みんな銃を撃つのは上手いけど、医療に詳しい人はうちにはいないじゃない?
怪我をしてもしっかりとした医師がいればみんなが生き残れる可能性アップアップ!」
「アネゴ、ココさんの言っていることは一理あるぜ。
医者がいたほうが俺たちも少しは安心できる、間違いない。」
「トージョは黙ってください。」
「すんません。」
「私はみんなの命を預かっている立場でもあるから、
みんなが生きられるようにするのは私の仕事でもあるの。」
「ココ、私のことを思ってくれるんですね!」
「バルメだけじゃなくてみんなのこともね。」
「アネゴも良さそうだから、いいんじゃないか。ココさん。」
「ココがそういう思いなら、私も賛成です!」
「んじゃ、けってーい―――」
「待ってください!待って待って!」
東野が慌てて3人を制止する。
「私はまだイエスなんて言ってませんよ!?
3人で勝手に盛り上がらないでくささい。」
ココ、バルメ、トージョが顔を見合わす。
(((あっ、そうだった。)))
東野は言う。
「個人的には賛成です。しかし、私にもAAMSTの医師という立場があります。
難民キャンプの皆さんを置いてAAMSTを脱退するなどということは出来ません。」
「その点はおまかせあれ!」
ココは右手でグッドサインを作る。
――――――
「えっ、えぇ?」
東野が難民キャンプに戻るやいなや「H&C Logistics Incorporated」と書かれたバスやトラックが入り口の前に並んでいる。
「あっ、ドクター!ドクター!」
警備兵モハメドが入り口あたりで手を振り東野を呼ぶ。
それを聞いた東野はキャンプ入り口に駆け寄りモハメド警備兵と話をする。
「モハメドさん!この車は一体何なんですか!?」
モハメド警備兵はバス、トラックを手で指しながら説明せする。
「HCLI社が出資をしてくださっての方々が難民キャンプにいる人達を正規の戦争難民保護施設や医療施設に移送して頂けることになったんです。テントやバラックの処分など行ってくれる予定のようです。
他にも停戦になって故郷に戻れる方の支援もするとおっしゃっておられました。
ドクターが戻られる1時間ほど前から車両が続々と来たので、我々も驚きました。」
「そうなんですね、教えていただきありがとうございます。」
東野がココ達と話していたホテルから難民キャンプまで車と徒歩で2時間半程かかる。ヘクマティアルさんは1時間半の間にこの車両を手配したのかと東野は驚く。
モハメド警備兵は東野の顔に疲労が浮かんでいるのを見て声をかける。
「ドクター、お疲れのようですから我々の詰所で休憩されてはどうでしょう?
私もそろそろ交代の時間なのです。
キャンプ内で何か発生したらすぐに伝えるよう他の警備兵に言っておきますのご安心を。」
「あぁ、お気遣いありがとうございます。お言葉に甘えてそうさせていただきます。
今日は色々疲れました。」
はぁ、と息と付くと肩の力も抜ける。
「そのようですね。コーヒーでも飲んで休みましょう。」
東野とモハメドは警備兵の詰所へ向かう。
太陽が照りつける昼下がり。
風が吹き埃が辺りに舞い、空に霧散する。まだまだ暑い日が続く。
どうも作者の伯方のお茶です。
またまた新たにお気に入り登録して頂いた方ありがとうございます!!!!!!!
また、ここまで呼んで頂いてる方々作品を呼んで頂いた方々ありがとうございます!!!
嬉しさがミニガンで掃射された様に体を貫いております!!!!!
内容についてですが、あと一話程で導入を終えようと思っています。
この話か次の話までは東野を仲間にするための話となります。なるべく自然というかキャラクター達(特にココ)が納得するようにしたかったっため長くなってしましました。
そろそろオーケストラが出てきます。
ココ「私達の運命や如何に!!」
レーム「それ俺たちが言ったらダメじゃね?」
(ちょっとふざけたかったので許してください!!)