ヨルムンガンド ChiNaTsu, She Can Stain Her Life. 作:伯方のお茶
G国北部難民キャンプにHCLIの支援が入ってから一週間、全ての難民がそれぞれの場所に向かった。
東野は最終のバスを見送る。
「せんせー!ありがとーございましたー!」
「げんきでね!せんせー!」
バスの窓から子どもたちが東野に手を振る。
「みんなも元気でね。」
東野も手を振り返す。
彼は既にAAMSTを脱退した。
1日前にAAMSTの施設班が来て医療テントや医療機器を回収した、そのときに脱退する旨を伝えたのだ。特に強く引き止められることも無く脱退することができた。任期はあと半年程残っていたが難民キャンプがなくなるということで任期もなくなったのだ。
そして、AAMSTには東野の名前は残して置くのでもしまた協力してくれるなら是非頼むとも言われた。
東野は最後のバスが土煙を上げながら走り去るのを見送った。
一緒にバスを見送っていたモハメド警備兵が東野に話しかける。
「これが最後のバスですね。ドクターともお別れとなると私も寂しいです。」
「私も寂しいです。でも、キャンプのみなさんの生活がより良いものになると思うと嬉しい気持ちもあります。」
「同感です。
ドクターはこの後どうされるのですか?」
苦笑いしながら東野が言う。
「実はHCLI社にスカウトされまして。そこで働くことになりました。
キャンプの皆さんの移動を支援してくれたのも私の心残りが無いようにと、のことで。」
「そうなのですね。
ドクター東野、あなたなら大丈夫です。どうかお元気にしていてください。」
「ありがとうございます。モハメドさんもお体にお気をつけて。
こちらの寄ることがあれば必ず会いにゆきますので。」
東野とモハメドは堅く握手をする。役目は違うとはいえ共に戦った仲間。
そして東野は歩き出す。新しい仲間に会うために。
――――――
待ち合わせの場所は以前ココ・ヘクマティアルと会ったホテル。時間は以前と違い夕方だが。
東野はその場所に着いた。ドアを通りロビーに入ると声をかけられた。
「あれなら心残りも無いでしょう?ドクター東野。」
「ヘクマティアルさん。」
東野が向いた先にココが腰掛けていた、以前と同じ場所に。東野はココの向かい側の席まで歩き、カバンを置くと椅子に座る。
「ようこそ、私の仲間へ。歓迎しよう。」
ココが両腕を広げ言う。
東野は膝に肘を付き、手を口の前で組んだ姿勢になる。下から目線だけをココに向ける。
「ヘクマティアルさん。私を雇うにあたって一つだけ条件があります。」
ココは無言で広げた腕を戻し手を組み、脚の上に置く。
「私は、子供は何があっても殺さない。そして、殺させない。」
「それでもいいのなら、私を雇って頂いて結構です。」
ココは一呼吸置いて答える。
「あぁ、構わない。今の隊員にも似たようなのがいるからな。」
「わかりました。これからよろしくおねがいします。」
それを聞いた東野は体を起こし立ち上がり手を差し出す。
「こちらこそ頼むよ。ドクター東野。」
ココも立ち上がり手を差し出すと東野と握手をする。
握手を終えるとココが言う。
「では、案内しよう。新しい仲間の元へ。」
「お願いします。
あとヘクマティアルさん―」
東野の言葉を遮りココが言う。
「ヘクマティアルじゃなくていい。
名前のココって呼んでもらって大丈夫。」
「わかりました。
ココさん、私のこともドクター東野でなく東野でいいですよ。」
「うーん、東野って言いにくいから…
ドクター、ドクターでいい?バルメもそう呼んでたし!」
「えぇ、構いません。その呼ばれ方は慣れてますので。」
東野はニッコリと笑いながら答える。
「オッケー、じゃあ行きましょう。」
ココがエレベーターホールへ向かう。東野はカバンを持ち上げその後をついて行く。
ココがエレベーターのボタンを押すと扉が開く。
エレベーターに乗ると東野はココの後ろ姿を見ながら思った。
(成熟した大人のような風格もあれば、あどけない少女のような無邪気さもある。
氷のように冷ややかな冷酷さもあれば、寛大な情け深い心もある。
そして、心の中に大きな物を秘めている。何かは正確にわからないですが、何か莫大な物。
それを表に出さないようもしている。)
「難民のあれ、ビックリしたでしょ?」
ココは振り返り東野に言う。
自分が考えてことについて何か言われるのかと思っていたので、声を話しかけられ東野は少し動揺した。
「あっ、あぁえぇ。もちろん驚きました、まさか私が戻る間にあんな風になるなんて思っていませんでしたから。
そして一週間で作業を終えたことにも驚きました。」
そして薄ら笑いしながら言う。
「一番驚いたのは武器商人という職業の方があんなことをする、ということでしたね。」
その言葉にフッと笑うとココは答える。
「なぁにそれ、皮肉のつもり?
私達だって慈善事業してますよ!会社のイメージアップの為に!」
「あれ、そういう目的だったんですか…」
「まっ、それもあるけど。実際、心残りが無いようにってのは私からの配慮のつもり。
前の職場に未練があってうちで働くのに支障があるー、なんてことになったら困るからねん。」
ピースサインをしながらココは微笑む。
「だから、君にはバリバリ働いてもらうよー!よろしく頼むぞ、ドクター隊員!」
ピースサインをしていた手で東野の方をバシバシ叩く。
「ココさん、痛いです。痛い、痛い。
というか結構、力あるんですね。」
そんな話をしているとエレベーターが止まりチーンと音がなる。
またココが東野を先導する。
廊下を歩き、部屋の扉の前に来るとココが言う。
「ここで待ってて。私が呼んだら入ってきて。」
「わかりました。」
ココは扉を開け仲間達がいる部屋に入る。
「みんな注目!」
ココがそう大きな声でいうと、皆ココの方へ向く。
ヨナだけソファで寝ており、起き上がってこない。
「予め言っておいたが、我々の部隊に新しい仲間が加わる!
さぁ、入ってきたまえ!」
十分に大きな声だったので廊下にいる東野聞こえた。それを合図に東野が部屋の中へ入る。
部屋に入った東野を手で指しながらココが紹介をすると。
「彼が新しい仲間となる東野、東野…
東野、なんだっけ?」
ココが東野の方を見て首をかしげる。
(((えー…知らないで雇ったの??)))
一同、考えることが一致した。
「東野達です。」
ココへ東野が耳打ちする。
「えー、東野達だ!
彼は医者なのでー、ドクターと呼んでくれたまえ!
では、自分で自己紹介を!」
「医師の東野達です。呼び方はお好きにどうぞ。
よろしくお願いします。」
東野は頭を下げる。それを見た一同も軽く頭を下げる。
自己紹介を終えるとココが再び話し出す。
「彼には普段の皆さんの健康管理などを行ってもらいます。
また、戦闘時はコンバットメディックとしても活躍してもらいます。
これで皆さんの生存率が上がること間違い無し!」
ココの言葉に続けて東野が話す。
「あとカウンセリング、心理療法も出来ます。」
「という訳でみんな、仲良くしてやってくれ。
あとみんなも一人ひとり自己紹介して。」
皆、自己紹介をする。名前を言い、よろしくと言ういくら位の簡単なものだ。
皆が自己紹介を終えると窓際でタバコを吸っていたレームが手を挙げる。
「質問良いか?」
「どうぞ、レーム。」
ココが答える。
「ドクター。あんた、銃を握ったことはあるか?」
レームが東野に言葉を飛ばす。声はいつもの調子で言っていて、真意は読めそうにない。
「あります。撃ったこともありますよ。」
「じゃあ、人を殺したことは?」
レームは同じ声のトーンで話す。
いきなりそんなことを聞かれた東野は軽く眉間にシワを寄せ言う。
「それは私の医師としての実力不足で人が亡くなってしまったことがあるか、ということですか?」
「あー、質問の仕方が悪かったか。
何しろうちに来るのは元兵隊が多くてな。」
タバコを口元へ運び、息を吸い込み吐く。それと同時に白い煙も渦を巻きながら出てくる。
「銃で人を殺したことはあるか?」
兵隊ならいざ知らず、医師が銃で人を殺したなんてことがあるならそれはただの殺人だ。
あるとしても気軽に首を立てに振ることなど出来ない。
東野はココの方を見る。その困惑した表情を見たココが東野にいう。
「ここにいる全員は人を殺したことがある。何人殺したか数えらないくらい。」
それを聞いた東野は「あります。」と答えた。
ヘヘ、と笑いその後にレームがいう。
「わかった。変な質問して悪かったなぁ、ドクター。
確かタバコ吸うんだろ?ココから聞いたよ、喫煙者仲間が出来て嬉しいぜ。」
レームが東野を手招きする。東野がレームの近くに行くと「ほれ。」といいレームがタバコを渡す。ありがとうございます、とそれを受け取ると口に加え火をつける。ふぅ、と息を吐き出す目線を動かすととソファで寝ているヨナが目に入る。
「子供…?」
「もー、ヨナ寝てたのー?
ヨナ、起きて、ヨナー。」
ココがヨナが寝ているソファまでゆき、ヨナを揺さぶり起こす。
「なんだよ、ココ。夜ご飯?」
「あそこにいる白衣を来た人。私達の新しい仲間だ。
ドクターと呼んでいい、挨拶して。」
ヨナは起き上がり、普通に座ると東野の方を見て言う。
「よろしく、ドクター。」
「お、ヨナ偉いぞー!」
ココがヨナの頭をワシワシと撫でる。横でバルメが私にもやってほしいという顔をしている。
その姿を見ていた東野はレームに質問する。
「レームさん、彼は?」
「彼はヨナくん。武器を憎む元少年兵だ。」
「元少年兵、ということは彼も戦うのですか?」
「もちろん。もう何回も俺たちと一緒に戦ってるベテランさ。」
「なるほど、ありがとうございます。」
レームに礼を言うと東野は思う。
「ヨナくん、ちょっといいですか?」
東野はヨナのもとに行き、しゃがんで目線を合わせる。子供と接するときの癖だ。
「なに、ドクター。」
「君は何でココさんの元で働いているんですか?」
小さく首を傾げながらヨナに問いかける。
「世界が見れるから。あと、みんな優しいから。」
ヨナは迷わず言う、東野の目を真っ直ぐと見つめて。
その答えに東野はうなずき、立ち上がる。
「ありがとうございます。
確かにヨナくんの言うように皆さん優しそうですね。」
まっすぐ自分を見つめて話したヨナの言葉に嘘は無いと確信した。
彼は自分の意志でここにいる、だからその意志を尊重しなければならないと東野は思った。
それを見届けたココが口を開く。
「よっし、じゃあ晩御飯だ。
ドクターあなたに作ってもらうから、よろしく!」
「構いませんよ。」
「ちなみに卵料理を作ってもらう。
これが私の隊の入隊儀式だ。
あなたは今日、軍、国家、組織、家族を一新した卵くんだ。」
「よろしく頼むよ、東野達。」
――――――
「うめぇ、超うまいじゃん!」
ルツが叫ぶ。
「ルツ、わかったから静かに食えよ。」
アールが呆れる。
「ヨナ坊の時とは大違いだな。」
トージョが肩をすくめる。
「ハッハ、ホントだよ。」
ワイリが笑う。
「私よりも上手いかも…」
バルメがつぶやく。
「医者は料理が上手いのか?」
レームが問う。
「うん、明日も食べたいくらいですね。」
マオが微笑む。
「俺もそう思う、明日もう一回でも良いくらいだ。」
ウゴが頷く。
「素晴らしい、ドクター!
医療担当と料理担当も頼むよ、君!」
ココが言う、
「ドクター、おかわり。」
ヨナが皿を差し出す。
「えぇ、もちろんです。」
東野はヨナくんの言ったことは間違いじゃないと改めて実感した。
どうも作者の伯方のお茶です。
またまたまた新たにお気に入り登録していただきありがとうございます!!!!!
そしてここまで呼んで頂いている読者の方々ありがとうございます!!!!!
感謝の気持ちがフレシェット弾の矢のように全身から放出されています!!!
内容に関してですが、これで東野が仲間になる話は終了となります。
そして、第八話に進む前に第七.五話としてちょっとしたギャク?日常?の話を入れるかどうか悩んでおります。
そこでアンケート機能というものがあるのを発見いたしまして、これを使ってみようと思いました。
よろしければ投票の方をよろしくお願いします!!!!
では、引き続き本作品をお楽しみください!!!!!!!!
バルメ「ドクター、何であんな美味しかったんですか?オムライス。」
東野「味の素ってご存知ですか?」
バルメ「えっ…なんですかそれ…?」
そのまま本編(第八話)にいくか日常?ギャク?回(第七.五話)を書くか。
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本編へGO!
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寄り道してもOK!