妖精さんの勧めで提督になりました   作:TrueLight

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22.ようせいさんのぎじゅつはせかいいちぃー!

 

「これが……改造……」

 

 勢いで工廠へ赴き、妖精さんに導かれるままにコンソールの改造キーを選択。やる気に満ちた様子の夕立が建造ドックに横たわってしばらく経った。

 

 役目を終えたドックが自動で開き、そこから歩み出てきた夕立の姿を見て、思わず僕は呆けた声を出してしまった。

 

 確かに彼女は夕立なのだろう、と思う。顔立ちやパッと見の印象の差はそこまでじゃない。でも、明らかに改造前とは違う点がいくつもある。

 

 瞳の色は紅に染まり、煌めく金の毛先も薄っすらと赤みを帯びている。改造の副産物なのか、纏っている艤装からも迫力を感じる。

 端的に言って、凄く強そうな見た目に変わっていた。

 

「ぽい……。夕立、凄く強くなれたっぽい……!」

 

 身体の変化に戸惑ったのも束の間、夕立は嬉しそうに広げた自分の両手を見つめて呟いた。

 その様子を見て、妖精さんたちも良い仕事をした、とばかりに腕を組んでうんうん頷いている。

 

「いいしごとをしましたな」

「さすがわれわれ」

「ようせいさんのぎじゅつはせかいいちぃー!」

 

 というか口に出して言っていた。どや顔で成功を喜ぶ姿は見ていて微笑ましい。

 

「すごい……。凄いわ夕立! とっても強そう!」

Хорошо(ハラショー).上手くいったみたいだね」

 

 夕立の改造成功に、傍らで様子を見ていた雷と響も喜色満面と言った様子だ。しかし。

 

「何よ、これ……」

「そんなことって……ある、のかな。……いや、おかしい」

 

 やはり五十鈴と時雨は訝し気な表情を浮かべていた。

 

「やっぱり、妖精さんの言う通り改造できたのはおかしいのかな」

 

 僕がそう問いかけると、五十鈴は眉を寄せて首を横に振る。

 

「この際それはどうでもいいわ。……いえ、良くないけれど。ぜんっぜん良くないけれど、夕立のこれに比べたら些細なことだわ」

 

「それってどういう……?」

 

「あのね、提督。一口に改造といっても色々あるのだけど、基本的には段階を踏むの。

 まずは未改造の状態。これは今の五十鈴たちね。次に一次改装の改。例えば時雨が一度改造に成功すると、時雨改、という状態になるの」

 

「ふむ……じゃあ夕立は今、夕立改なんだね?」

「違うわ」

 

「へ?」

 

「夕立は今、第二改造状態の夕立改二……。一次改装をすっ飛ばしてるのよ」

「前代未聞だよ、こんなの……」

 

 五十鈴の説明を引き継ぐように時雨が息をついた。

 

「前例は全くないの?」

 

「無いわね。一次改装で基礎を強化、二次改装で本格的に能力を向上って言うのが定説なの。

 だから改になっても見た目はほぼ変わらないわ。……でも、夕立のこれは明らかに一次改装の結果じゃない改二改装。頭が痛いわね……」

 

「でも、強くなったんでしょ?」

「それは、まぁ……」

「うん、そうだね。改より改二が当然強い。でないと改造する意味がないからね」

 

 五十鈴の言葉を引き取るように時雨が肯定した。彼女も夕立の様子に気付いたんだ。

 

 僕と五十鈴のやり取りを聞いて、さっきまでの嬉しそうな表情から一転、不安げな様子でこちらの様子を窺っている、寂しそうな姿に。

 

 ……五十鈴が懸念しているのは、多分大本営への報告についてだったり、今後の身の振り方についてだと思う。

 

 でもそれは人間の都合を考えてのことだ。

 夕立が強くなった。それの何がいけないんだ?

 

 それを可能にした妖精さんが、彼女たちと会話ができる僕が、大本営や他の提督から後ろ指をさされる謂れはあるんだろうか。

 

 答えは否だ。そんなことは絶対にない。

 

「夕立」

「っ、ぽい……?」

 

 びくりと身体を震わせる夕立に、出来るだけいつもの調子で笑いかける。

 

「改二改装、おめでとう。僕も嬉しいよ。これからも助けてくれると嬉しいな」

 

 ぱぁああっと頬を染めて喜びを浮かべる夕立を見て、改めて一つ決心する。

 妖精さんのため、だけじゃない。僕の身を案じて、支えてくれる艦娘たちのためなら、僕はきっとどんな敵とだって戦える。

 

「っぽい! 夕立、全力で提督さんのお役に立つっぽい!!」

 


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