「それでそれで、提督さん! これからどうするっぽい?」
「あー、そうだな。えっと……」
井戸端会議を続ける妖精さんたちから視線を外し、小首をかしげて問いかけてきた夕立へと向き直って大淀ノートを確認する。
えーとなになに……鎮守府運営にあたり、当面の目標は資材の安定供給と鎮守府近海の制海権獲得である。まずは水雷戦隊の編成を目指すべし。
最低一隻以上の軽巡洋艦。三隻、可能であれば五隻の駆逐艦を建造せよ。
「……とにかく、この鎮守府には艦娘の数が足りない。引き続き建造を行う予定だ」
「やっぱり! 頼られるのは嬉しいけど、一人じゃ遠征も厳しいっぽい~!」
ノートの指示に従うだけなんだけど、夕立の反応を見ると間違いはなさそうだった。
というか、夕立の「ぽい」ってのはなんなんだろうか。口癖?
まぁいいか、とりあえず建造を続けよう。
「えーと、次は軽巡洋艦、かな。こいつを旗艦だかにしないと、水雷戦隊ってのにならなかったはず……」
座学で学んだことを
「なにかおなやみのようですね」
「それはずばり……こい?」
「ゆーだちのはーとをどうやっていぬくか」
「そーいうことですね」
「うん、軽巡洋艦を建造するのに、投入資材はどうしようかと思ってね。ノートには200~300で統一することを推奨する、ってあるけど……」
「つれませんねぇ」
「もう、まじめなんだから」
「おとこたるもの、ちょっとはよゆうがなきゃだめよ?」
「でもそういうところがすきー♡」
「300で統一してみよう。夕立の時の10倍だし、資材に余裕も無さそうだから、失敗するより割り増しでも一回で済んだほうが良いよね」
「まーまちたまえよ」
「んっとね、それでもつくれるんだけどね」
「むだがあるねー」
「さっきのといっしょでいいよー」
「えっ、30で統一するってこと? 資材増やさないと造れないんじゃ?」
「つくれるよー」
「ふれはばがあるだけー」
「さっきのでけーじゅんとくちくができるのよ?」
投入する資材数で作れる艦種って確定じゃないのか。
……まぁ仮に確定だとしたら、資材を多く投入するほど大型艦が建造できる、なんて曖昧な書き方しないか。
決まってるんなら艦種ごとに投入資材数を分けておけばいいんだから。
それにさっき、妖精さんはドックが海に浸かっていないと艦娘を「よべない」と言っていた。
資材を使って建造する、と言っても、妖精さんが艦種を自由に選べる訳じゃないんだろう、きっと。
妖精さんのおすすめ通り、投入資材数を30ずつにして、端末の操作を進める。
「これで良しっと。それじゃあ妖精さんたち、またお願いね」
「おまかせー!」
「きたいはうらぎらないのよ?」
胸を張る妖精さんたちを頼もしく思いつつ建造開始のキーをもう一度押すと、またもや慌ただしく工廠内に散っていった。
「早めに軽巡洋艦が建造できるといいんだけど……」
呟きつつ建造ドックに向き直ると、ポカンとした様子の夕立と目が合った。あれ、なんだか既視感だ。
「提督さん、妖精とお話できるっぽい……!?」
……妖精さんと話すたびに、それを初めて見る艦娘が驚いてくれて、ちょこっと誇らしい気分を味わえるのなら。
提督って仕事も悪くないな、なんて