神喰らいは人造勇者である   作:たぴぃ

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 バーテックス:2

 バーテックスは最下級の【星屑】が群体を成して攻めてくる。リアルタイムで学習した内容を実践してくるが今の自分達では対処しきれないと悟った瞬間に結集し、自らの身体をパーツにして【進化体】と呼ばれるモノを造る。
 ソレは星屑よりも圧倒的に強く、それにより人類は敗走を余儀なくされた。


初陣

 ゾワリと首筋に悪寒が走り、それと同時に世界が静止する。その感覚は知っている。【樹海化】と呼ばれる現象で、神樹が人類を護り勇者が戦いやすくする為の手段だ。窓から外を見れば宙を舞っていた木の葉が空中で停止しており、本当に時間が止まっている事を想真に告げている。

 彼は自分の武器が置いてある場所へ行くと、武器を担いだ。ガシャ、と武器が機械が稼働する様な音を立てると巨大な剣は4つの砲口を持つ大型の銃に変わっていた。

 想真はビルの屋上に登ると、まずは勇者の姿を探す。それを見つけると彼は勇者から()()()()()()()()に移動し、勘が告げている【星屑】が来るであろう方向に武器を向け、狙撃する様な姿勢になる。

 

 「…こういうのは朔夜(サクヤ)さんとかジーナの領分なんだがな」

 

 そう独りごちると、彼は自分の出番が来ない事を祈りつつ観察を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「うおおおおおおおおっ!!」

 

 1キロ程度の距離を一跳びで消滅させ、星屑の集団に肉薄した若葉は鞘から抜き放つ一閃で先頭集団を斬り捨てた。

 

 「勇者達よ、私に続け!!」

 

 刀を振り上げ号令を掛ける若葉。それに続くのは球子と友奈だが、千景は変身はすれど動かず杏に関しては変身すら出来てはいない。それを見た彼は内心舌打ちをし、いつでも援護出来るようにはしておく。

 

 (教育も終わらせてないとは…役立たずが)

 

 戦える3人はバラけ、それぞれ勝手に戦っている。若葉は最前線で最も多くの星屑を請け負い、その後ろの友奈と球子はそれぞれ千景と杏を守る様に立ち回っていた。

 戦場での一方的な庇護の関係がロクな事にならないのは知っている。見る限り千景の手は震えており、それは初陣特有の恐怖なのはまだ解る。だが、ハッキリ言って杏に関しては論外だ。変身していないという事はつまりただの人間が戦場で突っ立っている事と同義で、一撃でも星屑の攻撃が当たれば致命傷に成り得る。それを守る球子の負担は大きくなるし、何より勇者の死は今の人類にとっては大き過ぎる痛手だ。せめて変身して貰わなければ安心して援護も出来ないだろう。

 更に前線で戦うメンバーにも問題点は有る。まず若葉は突っ込み過ぎていて味方の援護が追い付かない。星屑は頭が良く、若葉の攻撃が痛手と学べば分断して若葉のみを殺しに来る事すら有り得る。

 球子は自分の武器である楯を投げている。投げるのが正しい使い方なのかも知れないが、投げるというのはつまり武器がある程度の時間手元から離れる事を意味する。ワイヤーで繋いであるとは言え数秒のタイムラグが有るのは避けられない為、今の球子の戦い方は非常に危ういものと言える。

 友奈は以前の模擬戦のお陰で使用武器は知っている。体術をメインに戦うのは良いが、圧倒的にリーチが足りない。1番立ち回り的には問題点が無いが、そのリーチの不足という慢性的かつ根本的な問題が立ちはだかっている。むしろ味方全員を見て、かつ自衛もこなすという戦い方は中距離と遠距離どちらも対応出来て、しかも楯という庇う事も出来る球子がやるべきものだ。

 

 (幾ら初陣とは言え、互いの欠点も戦いへの心構えも出来てない…大社は何をしていたんだ?あんなクソの役にも立たない映像資料なぞ見せても意味は無いというのに…)

 

 千景に星屑が襲い掛かる。それを見ていた友奈は即座に千景の元へ駆け付け、千景を助けるがその隙を突いて星屑が友奈を喰らおうと突進してくる。流石に危ないと引き金を引こうとしたその時、千景が動いた。身の丈程もある大鎌を振り抜き、星屑を両断する。そのまま少しだけ友奈と千景は会話を交わすと千景の眼が変わり、2人は共に星屑を倒し始めた。

 一見すれば覚悟が出来たようにも見えるその一幕だが、それを見ている想真の目は依然として厳しいままだった。

 

 (危ういな…ああいう手合いは最悪に近い。友奈とは似て非なるあの性質はいずれ身を滅ぼすぞ)

 

 友奈は『他人の為に強くなれる』タイプだ。所謂主人公気質とでも言うのだろうか、土壇場に追い込まれたとき程最高の力を発揮するタイプ。だが、千景は『他人が居るから戦える』タイプだ。そのタイプは土壇場に追い込まれると途端に戦えなくなる。自分の価値を信じていない者が陥りやすいタイプでもあり、それ故に危うい。それを想真は知っていた。

 

 (土居が不味いな…観察に徹するのもこれまでか)

 

 球子が楯を投げる。その行動に隙が有ると学習していた星屑が球子に殺到する。これは不味い、そう思った瞬間、視界の端に光が映った。大紫羅欄花(アラセイトウ)を思わせる紫の装束に身を包んだ杏は球子に群がる星屑を纏めて撃ち抜いた。

 

 (大切な人の為になら戦える、か。もし土居が死んだ時…いや、そんな事はどうでも良いか。流石に援護しなければ不味いな)

 

 マイナスの方面に思考が傾き始めたが、そういう時の対処法は嫌でも解っている。思考を自然に、かつ無理やり打ち切ると彼は武器の引き金を引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――あんずが助けてくれた。ただ、あのデカさの星屑は処理出来ない。

 

 球子はそう思った。通常の星屑の3倍程度の大きさはある星屑が迫っていた。杏である事に不満を唱える訳ではないが、今ここに居るのが若葉か千景なら幾らでも対処のやりようは有っただろう。だが、武器がクロスボウという突破力に乏しい杏と現在手ぶらの球子では厳しい。

 だが、せめて杏だけは守りたい。そう思った球子は杏を抱き締めて痛みに備えて目を瞑るが、いつまで経っても痛みは来ない。恐る恐る目を開けて後ろを見れば、赤みがかった紫色の光線が巨大星屑を貫いている所だった。

 

 「まずは、1匹目か」

 

 そして跳んできた男が巨大星屑の口に大きな銃を捩じ込み、星屑を内部から爆裂させていた。バラバラと散る不自然な白い欠片は紛れもなくバーテックスのもので、彼の真っ白な髪の毛とどこか似ている気がした。

 

 「上に跳べ」

 

 その言葉が自分達に向けられたものという事にいち早く気付いた杏は球子の手を引いて上に跳ぶ。男は――想真は自分が持つ巨大な銃の砲口から火炎放射器の様にオーラの様な何かを発生させると、そのまま1回転。周囲に群がっていた星屑をたった2手で壊滅させた。

 

 「…ここで待っていろ。ヤツらを連れ戻す」

 

 銃を構え、4回引き金を引く。独特な発射音の後に先程見た紫色の輝線が尾を引き、何体もの星屑を貫通していく。想真はそれを確認する事無く跳躍し、まずは友奈と千景の所へと向かった。

 

 「――ソーマ君!?」

 「……フッ!」

 

 想真は星屑の包囲網を突破、先ずは友奈の襟首を掴むと呼気と共に友奈を放り投げる。唐突に飛んできた友奈を咄嗟に球子は受け止めるが、次の瞬間には千景も投げられていた。それを察していた杏が受け止めるが、既に想真は若葉の所(危険地帯)へと足を踏み入れていた。

 

 「橘さん、何を!?」

 「…っ、少し大人しくしていろ!!」

 「ごっ…!?」

 

 星屑を捌きながらも若葉の腹部を殴り、一時的に沈静化する。かなり力を入れて殴った筈だが、それでもまだ投げられまいと抵抗している所を見る限りやはり勇者、身体はかなり丈夫なようだ。

 投げても変に抵抗され、飛距離が落ちるのが関の山だと思った想真は自分も4人が待つ場所へと移動する。身体が丈夫なら優しく降ろす筋合いも無い。雑に放り投げるが若葉はどうにか受け身を取ったらしく、咳き込みながらも立ち上がった。

 

 「何故、あんな事を…」

 「黙れ。…見ろ、お出ましだ」

 

 バーテックスの数が5分の1を切った頃、残党が2箇所に集まり始める。これは3年前にも起こった現象と全く同じものだ。バーテックスは最下級の星屑と言われるモノが集まり、【進化体】を形成する。リアルタイムで学習したものに対する対抗策を最も効率的な形で具現化するのだ。

 そして現れた進化体は2体、全く同じものだ。この戦いで残存する星屑がソレを形成したという事は、裏を返せばつまりあの進化体さえ倒せばこの戦いは終わりという事でもある。それを解っている杏は自分の武器であるクロスボウを進化体の片割れに向けた。

 

 「まずは私が…!」

 

 金色の軌跡を描いて杏の矢が進化体に突き進む。が、棒状バーテックスから赤い板状組織が発生した。

 

 「…!?」

 

 杏の矢はその板状組織に触れた瞬間に軌道を180度反転させ、本来の持ち主である杏にその切っ先を向けた。神の力を宿したソレを自らの武器を楯に変形させた球子が杏に襲い掛かる矢を全て叩き落とすが、他のメンバーにも矢は飛んでいく。守れない、そう直感した瞬間に機械音が響き、その矢は叩き落とされていた。

 

 「…伊予島、迂闊に手を出すな。進化体は何を仕掛けてくるか分からない。今のお前の1手で壊滅する事も充分有り得る」

 「…ごめん、なさい…」

 「想真さん、何もそこまで――」

 「――だが、そのお陰でヤツの能力は割れた。その点は良くやったと言える」

 

 ガシャ、とまた音が響く。前面を覆っていたのは円状の板ではなく盾だ。その盾が収納されると現れるのは以前にも見た、あの大きな剣。見た限り彼が武器を持ち替えている様子は無く、故にあの大きな銃とこの剣、そして先程の盾は全てこの武器1つが変形したものなのだと全員が理解する。

 

 「ヤツは別に強くはない。だからお前らにあの片割れを任せる。やれないなら俺がやるがな」

 「やれるよ!私が倒して見せるから…!」

 「なら任せた。あの片割れは俺が殺す」

 

 そう言って跳び出す想真。勇者達があの棒状バーテックスを倒すには近接攻撃が得意な若葉、千景、友奈の協力が必要なのだろうがそれには期待していない。友奈の発言、それ自体が協力しての戦闘などまだあの5人には出来ない事を如実に語っていた。

 だがそこを改善するのは彼の領分ではない、大社のやるべき事だ。彼のやるべき事はとても単純で明快、たった1つだ。

 

 「――喰い殺す」

 

 ただそれだけだ。高速のステップ、その勢いを利用しての縦斬りはその装甲に防がれる。この棒状バーテックスは他者を喰らう為の牙を持たない代わりに、自分を守る為の装甲には困っていないらしい。だが、彼にとっては関係ない話だ。

 想真は斬撃を加えながら跳び上がる。だがそれは全て装甲に弾かれて意味を成していない。ならば、と彼は空中で武器を変形させ、棒状バーテックスに向けてある弾を撃った。

 

 「想真さん!!」

 

 爆音とオレンジの光が場を染める中、杏の悲鳴にも似た声が響いた。爆心地に想真の姿は無く、通常ならばもう生きてはいないだろう。そう、()()()()

 

 「上だ…ッ!!」

 

 想真は上へと移動していた。彼が先程撃ったのは【モルター】と呼ばれる弾種の1つで、扱いが難しい弾だ。その特徴は何と言っても軌道が重力に引っ張られる事と何かに触れた瞬間に爆発する事で、その威力はただの星屑なら数体纏めて吹き飛ばせる程の威力を誇る。

 その爆発の勢いを想真はシールド()を展開し、まるで武器をホバーボードの様に使う事で上へと飛んだのだ。だが、幾ら落下速度を加算したとは言え棒状バーテックスの装甲を破壊できるかは判らない。だが、破壊する必要は無いのだ。そもそも、彼が今やろうとしているのは斬る事では無いのだから。

 武器に力を籠める。武器が脈動し、あらゆるパーツが開く。その中から黒い泥の様なモノが溢れ出し、あるモノを創り出す。それはまるで刀身を舌の様にして、完全に形を形成した時にはまるで獣のアギトの様になっていた。獣の唸り声すら聴こえてくるソレはそのアギトを最大限に開くと、棒状バーテックスの頂点に喰らい付いた。

 

 「【神機】、解放…!」

 

 金色と黒が混じったオーラが想真の身体を包み、収束する。想真は着地すると先程より圧倒的に速くなったステップを駆使し、巧みに距離を詰める。棒状バーテックスは板状組織を展開して近付けさせまいとするが、そんな事は関係ないとばかりに想真の振るう神機(武器)は板状組織を破壊し、棒状バーテックスの身体に四角形の穴を空けた。

 

 「…身体の中にソレは展開出来るか、試してみろ」

 

 瞬時に銃形態に変形させた神機を空けた穴に突っ込むと、連続して引き金を引く。鈍い手応えが神機を通じて伝わってくる。銃は撃つ度にあるモノを必要とするが、ソレが尽きたと同時に棒状バーテックスは崩れ落ち、直後には形を残してはいなかった。

 勇者達の方を見れば友奈が風を纏い、棒状バーテックスを殴り殺している所だった。これで終わりだ、そう思った時若葉の後ろに最後の星屑が迫る。不味い、ここからでは間に合わない上に撃つ事も今は出来ない。そう思った時、信じられない光景が目に映った。

 

 ――ギリィ、ブチッ!!

 

 そんな音が聴こえた気がした。事実、若葉は迫る星屑を最低限の動きで躱すと同時に自らの歯で噛み千切ったのだ。それを嚥下すると同時に刀で両断し、この戦いは終わりを告げた。

 想真は自分の神機を見る。確かに神機はバーテックスを喰らうが、まさか生身で同じ行為をする者が居るとは思っていなかったのだ。半ば呆然としている想真は一言零した。

 

 「…乃木は怒らせない様にしておくか」




 ちなみに今の想真の神機パーツはショート、アサルト、バックラーです。
 なんでアサルトでモルターが撃てるんだこのクソ作者と思う方も居るかも知れませんね。お答えしましょう。
 レーザーを撃っているのを見ても判る通り彼の神機って無印の神機なんですよね。無印版の銃身はどんな弾でも撃てます。スナイパーでエミッターも撃てますし、ブラストでHレーザーとかスプレッド(レーザー)も撃てます。タグにも書いてあるので、どうかご了承下さい。
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