神喰らいは人造勇者である   作:たぴぃ

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 神機

 ゴッドイーターが1人につき1つ所有する専用武器。製造方法は最高機密であり、一部の幹部とゴッドイーターしかその方法を知らない。現在ではその殆どが失われている。
 橘想真が扱う神機は銃身、刀身、装甲とパーツが分かれており、彼は刀身と装甲を変えて戦う。銃身を変えない理由は単純で、それ以外の銃身を使う事が苦手だからである。


反省

 「若葉ちゃん!あんな変なものを食べちゃダメでしょう!」

 

 帰ってきて開口1番、言われたのはひなたからの有り難いお説教だった。確かに、バーテックスを本当に喰ったという前例は無い。どんな毒素を含んでいるか判らない上に、もし毒素を含んでいた場合、解毒出来ないという可能性すら有り得るのだ。その点で言えば、若葉の行動は短絡極まりない行動だったのだろう。

 

 「だが…」

 「だがじゃありません!」

 「奴らは昔、私達の友達を喰らっているのだ。だから、その…何事にも報いというか、仕返しをだな…」

 「それでお腹を壊したらどうするんですか!?」

 「う、むぅ……」

 

 あの鬼神の如き戦いぶりを見せた若葉を、こうも丸め込めるものなのだろうか。だがそれで良い。若葉は暴走しやすく、だからこそ私生活で御せる者が居なければ早死にするだろう。

 

 ――どうしてあんなムチャするんですか、ソーマ先輩!?

 

 脳裏に走る少女の声。希少な【新型】の自分と彼女は当然の如く最前線に送り込まれ、その度に死にそうになりながらも醜く生に縋っていた。何度目の前の味方を見捨て、それでも互いに互いを護り、生還は不可能と嘆かれる程の戦場を超えてきたのだ。

 

 「想真さん、あなたもですよ!」

 「……は?」

 

 突然向いた矛先に彼は気の抜けた返事を返す。事実、彼からすれば何故自分が叱られそうになっているのか解らないのだが。

 

 「あんな独断専行して…死んじゃったらどうするんですか!?」

 「……あんなザマの戦いで良く吠えられるな」

 「え?」

 

 想真は自分専用の神機を置くスペースに神機を置く。メンテナンスの為にロボットアームがしっかりと神機を保持し、そのまま整備室へと運んでいく。それを見届けると、気を抜いている勇者達に向き直った。

 

 「ハッキリ言って拍子抜けだった。大社の連中はお前らに何を教えていたのか、是非ともご教授願いたいな」

 

 ご教授願いたい、その丁寧な言葉が心からの侮蔑と嘲笑から来るものだと気付けない者は居なかった。想真は基本的に感情を表情に表す事は無い。声音に滲み出る事は有れど、基本的に無表情だ。想真が笑った所を見た事がある者は恐らくこの場では千景しか居らず、それも昔の事。再会してから表情が変わった所など殆ど見ていない。

 そして、今も彼の表情は変わってはいない。だが、眼は違った。その眼は心からの侮蔑と嘲笑に染まっていて、聴く者が底冷えする程に声音は冷徹だった。

 

 「リーダーの乃木は独断専行、前衛防御(タンク)の土居は油断して死にかけ、最も懐に飛び込まなければならない高嶋は足手纏いの介護。ちか…郡は高嶋に手を差し伸べられなければ戦えず、伊予島に関しては土居が危機に陥らなければ変身すら出来ない。よくもこんな無様な勇者が人類を護ろうとか言えたもんだ」

 「でも、あなただって単身で進化体に突っ込んで…!」

 「言っておくが、あの進化体は進化体の中でも最弱クラスだ。あの程度の進化体を1人で殺せないなら、これからの戦いでは生き抜けないだろうよ。別にこの戦いの規模なら、俺1人でも簡単に殲滅できた」

 

 むしろ、と想真は続ける。

 

 「お前らが居る方が邪魔だ。この程度でも()()()()()()な、死なれちゃ困る」

 「なっ…!!」

 

 全員絶句する。当然だ。先程まで乱雑でも助けてくれた想真が、その助けた理由が『勇者だから』という打算に満ちたものだったのだから。その理由はまだ精神的に未成熟な勇者達の心に刺さるものだった。

 

 「人間ですらないバケモノが、勇者様にそんな口を利けるな。そんな行為が許されるとでも思っているのか?」

 

 これ以上精神的なショックを与えまいと現れる大社職員。暴れだした時の為に、恐らく麻酔銃であろう銃口が幾つも向けられる。だが、彼は全く恐れない。話し掛けてきた大社職員の胸倉を掴むと、彼は言った。

 

 「そのバケモノを造り出したのはどこのどいつだと思っている…?そのバケモノを御し切れず、何人も死なせたのはどこの無能だ?お前らが語る、人類の切り札の教育も終わらせてない職務怠慢のクソ野郎共はお前ら自身だろうがッ!!」

 

 そう言うと彼が胸倉を掴んでいた職員の鼻っ柱に向けてパンチを繰り出す。仰け反る職員を左手で引き戻し、更にもう一撃、二撃と殴れば当然鮮血が鼻から溢れ出る。

 やっと事態に脳が追い付いたのだろう。銃を構え、発砲する職員達。だが、素直に当たる程彼は諦めが良くない。殴った職員の身体は想真より大きく、それ故に盾にするには丁度良かった。職員の背中に無慈悲に突き刺さる麻酔銃、想真の身体には掠りもせず、本来戦闘員ですらない職員は止め時が解らずひたすら職員の背中に麻酔を撃ち込み続けていた。

 

 「…早く手当てをしてやるんだな。死ぬぞ」

 

 もう弾を撃ち切ったと確信し、職員を適当に投げ捨てる想真。余りにも容赦が無いその所業に、その場の想真を除く全員が固まっていた。想真は振り向き、1人で歩き出す。姿が見えなくなると職員達は騒ぎ出し、その中で杏はただ1人想真を追って走っていった。

 

 「乃木様、端末のキルコマンドを!」

 「…事実、今回の戦いは問題点が多いものでした。それより、バケモノを造り出したとはどのような事で?」

 「…それは…」

 

 若葉からの問い掛けに答える事が出来ない職員の1人。それを見かねた1人が仕事をその職員に言い渡し、その問いに答える者は誰も居なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バケモノ、その言葉には慣れている。純粋な土地神の力を用いて戦う勇者、それに対して想真達ゴッドイーターの力の源流は根本的に違う。それを考えれば、大社職員の言い分は正しいものだ。

 だが、それで納得できるなら初めからしている。想真は自分の事に無頓着だ。しかし、仲間の事を悪く言われる事だけは我慢ならない。ゴッドイーターは存在自体が機密であり、それ故に世の中にはゴッドイーターの存在は知られていない。今の人類が四国に居て、方舟が形成された事が勇者の力ではなく、多くのゴッドイーターの血と骸の上に成り立っている事を誰も知らないのだ。だからこそ想真だけは死んでいった仲間達の尊厳を守り通さねばならない。

 

 「……何の用だ、伊予島?」

 「バレてましたか…」

 「バレたくないならもっと足音を消して近付くんだな。それぐらい、見なくても判る」

 

 それには彼自身、普通の人間よりも感覚が鋭いという事も含まれているのだが、そこまで言う必要は無いだろう。それよりも自分を避けているイメージが有った杏が突然自分の元に来た事に驚いていた。来るだけなら構わない(どうでも良い)のだが、先程の騒動が有った直後に来るとなれば話は別だ。気弱な彼女がこうして想真の元に来る意味、彼にはそれが解らなかった。

 

 「もう1度訊く、何の用だ?」

 「お礼を…言いたくて」

 「……お礼?」

 

 先程までの騒動でお礼を言う要素など有りはしない。実は杏は腹黒く、想真が殴って盾にした職員が大嫌いとか、そういう類の話なら話は別なのだろうが。それなら戦いを恐れるのだろうか、と思うがそんな性格ならそもそも神樹が杏を選ぶ事は無いだろう。

 

 「あの進化体に攻撃して、反撃された時の事です」

 「…あぁ、アレか」

 

 あの矢が反射された時の事だろう。だが、想真からすればあの時の事は自分に降り掛かる危険を防いだだけであり、勇者達を守ろうとして守った訳ではない。ただ自分を防いだ結果が勇者達を守ったというだけで、礼を言う必要は無い。それならあの進化体バーテックスを倒した友奈に言った方が数倍有意義だろう。

 

 「別に、礼を言われる様な事じゃない。ただそうなっただけで、守ろうとした訳じゃないんだからな」

 「でも、守ってくれたのは事実ですから。言っておかないと気が済まなくて」

 「…………」

 「それじゃあ、失礼しますね」

 

 そう言って室内へと戻っていく杏。優しく吹いてくる海風はまだ少し肌寒く、それでいて想真にとっては丁度良かった。何でもない事の様に海を眺めていた想真だが、1度だけ全力で手摺を殴り付けると自室への道を辿る。手摺を殴った意味は、彼にしか解らない…

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