神喰らいは人造勇者である   作:たぴぃ

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 乃木若葉

 14歳。使用武器は日本刀で武道の心得が有り、抜刀術と剣術を得意とする。現在の勇者の中で総合的に最も優れた勇者ではあるが、バーテックスへの復讐心からか暴走が多く見られる。
 好物はうどんで、諏訪との通信では蕎麦とうどんのどちらが優れているか争っている模様。ちなみに勝敗は全て引き分け。


証明

 想真は神機を肩に掛けて持つと、ビルの上からまた勇者達の奮戦を眺めていた。襲い掛かるバーテックスを以前使っていた刀身とは違う、更に巨大なノコギリの様な刀身を用いて斬り殺し、他の所へ逃げようとするバーテックスをH(ホーミング)レーザーで撃ち殺していた。

 今回の襲撃は前回と比べるとバーテックスの数が多く、更に友奈がきていない為負担が桁違いだ。現に前回なら捌けていた量も捌き切れず、彼の銃撃に必要なエネルギー――オラクルも尽きつつある。

 彼の使う銃身の【アサルト】は全体的な燃費は良いものの、他の銃身からすると威力はパッとしない。今撃っているレーザーを最も活かそうとするのなら、想真が才能的な面で使えない銃身である【スナイパー】ならもっと正確に、かつもっと多くのバーテックスを屠れるだろう。又は今回は使っていない【ブラスト】なら圧倒的な火力と爆発の範囲でバーテックスを鏖殺出来ただろう。器用貧乏とまで言われるアサルトだが、それでも使い続ける理由は有る。今は定点からの銃撃なので強みは活かせていないのだが。

 

 「ハッ、ハッ…間に合った!?」

 「…高嶋、今回は休養じゃないのか?」

 「ソーマ君だけじゃなくて、みんな戦ってるのに私1人だけ休んでるなんて出来ないよ!じゃ、行ってくるね!」

 「あ、オイ…クソっ」

 

 友奈を見ていると、どうしても彼女が頭にチラつく。想真の呼び方もそうだが、彼女の在り方がどうしても重なってしまうのだ。いつも笑顔で、不安など一切抱えていない様な態度を取る友奈。武器の影響も有るのだろうが、率先して最前線で戦うその様子など、正に彼女と同じだ。解っている。それがただの未練がましい投影だと、ただのまやかしだと解っている。だが、してしまうのだ。解っていても、どうしても。

 

 「っ…鏖殺する…!」

 

 神機の本来の姿を解放。捕食形態(プレデターフォーム)に変形させるとその辺のバーテックスを捕食する。神機が目醒め、本来の機能が励起する。金と黒が混じり合ったオーラが収束し、想真自身の運動能力も強化される。

 腰を落として神機を肩に担ぎ、力を籠める。神機の刀身を赤黒いオーラが包み、刃の厚みと長さを徐々に増大させる。それが最大まで『溜め』が終わったと感覚で知覚した瞬間に全体重を掛けて振り下ろす。振り下ろされた禍々しい刃は直線上に居たバーテックスを全て破砕し、無数の骸を造り出した。

 今の想真が扱う刀身の種類は【バスターブレード】。3種類ある刀身の中でも随一のリーチと威力、重さを誇る刀身だ。その刀身にのみ使える技、その名を【チャージクラッシュ】と言い、刀身を構成するあるモノを活性化、励起させリーチと威力を大幅に増大させるというものだ。だが神機の構成要素を励起、活性化させると言っても持続性には著しく欠けており、それ故にチャージクラッシュは単発のみでしか繰り出す事は出来ない。また、その重さ故に連撃には向いておらず動きは他の2種類の刀身と比べて鈍重であり、使い手を選ぶ刀身と言われる所以がソレだ。

 だが使い手を選ぶ難点が有るという事は、裏を返せば使いこなせば難点を補って有り余る利点が有るという事だ。この場合、利点に当て嵌まるのは単純なものだ。それは『威力』、ただそれだけに尽きる。

 

 「チッ、小賢しい…!」

 

 想真の振るう剛剣がバーテックスを粉砕するが、やられてばかりではない。想真の後ろから喰らい付こうとするバーテックスに向けて装甲を展開する。普通なら間に合わないが、これも技術でカバー出来る。その刀身の重さ故に鈍重になってしまうバスターブレード、だから必要に迫られて考案されたのが【アドバンスドガード】という技術だ。

 アドバンスドガードとは、バスターブレードを使う際に徹底的に叩き込まれる型のどこからでも隙が生じる事無くガードを差し込める技術の事だ。所謂剣術の型の様なものだが、実戦で磨かれた喧嘩殺法に近いものなのでそこまで遵守する必要は無い。だがその型の範囲内なら攻撃後の硬直がガードでカバー出来るのだ。

 そして、バスターブレードと併用される組み合わせが最も多い装甲は厚く堅いが展開が遅い【タワーシールド】。最も攻撃を通しにくいタワーシールドは展開の遅さがネックだが、それはアドバンスドガードでどうにでもなる。謂わば要塞、それがバスターブレードの戦い方だ。

 

 「クソ、全く学んじゃいないな!」

 

 戦況を見渡せば友奈が苦戦している。若葉は変わらずワンマンプレー、球子と杏は2人で固まり、千景もワンマンプレーだ。これでは1vs1vs1vs2vs多数という、チームワークや弱点の補完など全く出来ないままだろう。しかも友奈は直前まで入院しており、体力は同年代の女子と比べれば格段に多くとも少なからず落ちている筈だ。

 本来勇者達の戦い方は団体戦が前提で、単体ではどうしても明確な弱点が存在する。それを仲間が互いにカバーしていく筈が、今はそんなものは殆どない。だからここまで想真が奔走しているのだ。

 友奈の背後まで移動すると彼は装甲を展開し、友奈の背後から攻撃しようとしていたバーテックスを受け止め、弾く。あまりの質量に骨が軋み、筋肉が悲鳴を上げる。弾いたバーテックスを斬って退かすが、違うバーテックスに突進され吹き飛ばされる。

 

 「ガッ…!クソ、痛っ…!」

 

 少なくとも骨が1本はイカれているだろう。痛みで頭は染まっているが、だが戦わねばならない。想真はポケットの中に入れているピルケースから錠剤を口の中に放り込む。そのままガリゴリと噛み砕いて呑み込むと、身体が傷を治そうとしているのが解る。折れたか、ヒビが入ったか解らないが骨がメキメキと無理やりに繋げられ、脳がアドレナリンを大量に分泌して痛みを誤魔化す。

 既に神機解放(バースト)は切れている。こんな事をしている間にも友奈は疲弊し、戦況は劣勢に傾いている。躊躇している暇は無い。彼はピルケースから注射器を取り出すと、首筋に突き刺して中の薬剤を注入した。

 

 「やっぱ、堪えるな…!」

 

 先程飲んだのは【回復錠】。ゴッドイーターにのみ効果を発揮する、回復と銘打ちながらも戦い続ける為に飲む興奮剤の要素も含むものだ。そして今打ち込んだのは【強制解放剤】と呼ばれる、無理やりなロジックで神機を神機解放状態にする為のものだ。ただ、本来はバーテックスを喰らう事で起こる神機解放を薬物で再現する為肉体に多大な負担が掛かり、継戦能力は著しく落ちてしまう。だから、短期決戦で決めねばならない。

 

 「ブッ飛べ!!」

 

 大きく跳躍すると、空中を踏んでもう1度跳躍する。下に向けて撃つのは爆発する(バレット)。しかし、以前使ったモルターとは全く違うものだ。バーテックスの1体に命中すると着弾点に球が発生し、その中から無数のレーザーが針の様に放たれる。そのレーザーに命中したバーテックスは全員、きっかり3秒後に爆発して砕け散った。これは大社が用意したバレットではなく、想真オリジナルのバレットだ。

 だがこの一手だけで終わる程甘くはない。このままでは勝てないと察知したバーテックスは寄り集まり、進化体を形成する。前回の様な棒状ではない、星屑の口だけを肥大化させたような姿をしていた。ソレは若葉の方向を向くと、無数の矢を発射した。

 

 「グッ、ァァァァアアア!!」

 「橘さん!?」

 「大丈夫!?血が、こんなに…!」

 

 武器が日本刀の若葉ではどう足掻いても防御は出来ず、回避も難しい。なら、今なら速く動けてかつ装甲を展開出来る想真が受けるのが最適解だろう。若葉と友奈を守る事には装甲の大きさが間に合ったが、肝心の自分を守る事が出来ずはみ出していた右手と右足がハリセンボンの様に針に埋め尽くされてしまった。

 痛みで朦朧としながらも回復錠を噛み砕き、戦場を見回すと球子が杏を守っていた。が、千景を守る者は誰も居ない。足を踏み出そうとするが凄まじく鋭い痛みが脳髄を駆け抜け、力が抜けてしまう。食い縛った歯の間から呼気が抜け、名前を呼ぶ事すら叶わない。誰も間に合わない。千景が、無数の矢に貫かれて――

 

 「――甘いわ」

 

 想真は目を疑った。想真だけではない、他の勇者も理解が追い付いていない様だった。確かに進化体が放った矢は千景を射抜き、殺した筈だ。だが、虚空から現れた()()1()()()()()が進化体に斬り掛かっていた。いや、1人だけではない。計7人の千景が進化体を取り囲み、蹂躙していたのだ。

 精霊【七人御先】、千景が力を引き出した精霊の名だ。その精霊の力が及ぶ限り、千景は『七』という数字から変わる事は無い。例え6人が死んでも1人居れば再び生き残り、完全に同時に7人を殺さねば千景が死ぬ事は無い。

 正に強力無比だが、その性質を知る想真は思う。まるで七人御先は今の千景の在り方を象徴している様だと。仲間と協力する必要が無く、1人で全てが完結してしまうその性能に、危うさを感じる。

 進化体バーテックスは結局千景に蹂躙され、後は残った少数の星屑を倒せば終わりだ。だが、血を流し過ぎた上に多大な負担が掛かった想真の瞼は重く、瞬きをする毎に意識を保つのが難しくなっていく。行って殺さなければ、そうは思いながらも彼は神機を握ったまま倒れ、そのまま意識を失ってしまうのだった…




 隻狼やってました…(自白)
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