神喰らいは人造勇者である   作:たぴぃ

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 土居球子

 14歳。使用武器はワイヤーが仕込まれた楯で、主に中距離での戦いを得意とする。が、膂力は強化されているとは言え勇者の中でも特に小柄な彼女は純粋な膂力では他の勇者に劣る為、ガサツと称される性格とは対局の技術による受け流しを主に行い、その器用さと技量は勇者トップである。
 友奈と同等クラスのフレンドリーさを持ち、想真とマトモにコミュニケーションを取れる内の1人。むしろ想真とのコミュニケーションなら友奈よりも取れる。伊予島杏とは実の姉妹と嘯く程に仲が良く、全員に発破を掛けられる存在。


友話

 また悪夢を見た。慣れはしたが気分が悪い事には変わりなく、やはり目覚めてしまう。それでも珍しく朝まで眠れていたらしく、カーテンすら着けていない窓からは青空が見える。清々しい青空とは反対に寝間着は汗で張り付き、悪夢を見た事も有って気分は最悪だ。だから想真はシャワーを浴びる事にした。

 温かいお湯が身体を伝う。やはり今回も吐き気を催すが、どうにか抑えてシャワールームから出る。取り敢えず下だけ履いて、タオルで濡れた頭を拭いていると突然自室の扉が勢い良く開いた。流石に驚いた想真は咄嗟にタオルを構えるが、開いたドアの先に居た人物は想真が予想していた大社の職員ではなく、予想だにしていない人物だった。

 

 「な、なんで裸なんだよ想真さん!?」

 

 そこにいたのは昨日想真が怒鳴った球子だった。ノックも無しに部屋に入ってきた癖に理不尽な物言いをする球子に、想真は溜め息を吐く。想真の元に来た意味も解らないが、怒鳴られたにも関わらずその怒鳴った本人の、しかも男の部屋に単身で来るのは度胸が有るのかそれとも馬鹿なのか、想真は分からなくなった。

 

 「ハァ…俺の部屋だ。どんな格好で居ようが俺の勝手だろうが」

 「う、まぁ…それもそうだけど…」

 「それに、大して知らない男の部屋に単身で来るとか――」

 

 想真は球子の手を掴んで部屋の中に引きずり込むと、ドアを閉めて球子をドアに押し付けた。驚いている顔の横に手を付くと、驚かせるつもりでこう言った。

 

 「――何されても文句は言えんだろう?」

 「…………」

 

 このままビンタでもして軽蔑してくれたら御の字だった。だが、球子はキョトンとした表情で真っ直ぐに想真の目を見つめてくる。中学2年ならそういう()()()事に敏感な年頃だろうと思っていたが、そんな事は無かったらしい。相手が理解しないならやる意味も無い。想真は後ろに下がって着るシャツを探す事にした。

 

 「…怖くないのか?」

 「だって、想真さんだから」

 「あ?」

 「想真さんはいつも勇者だからって言って、絶対タマ達を守ってくれる。そんな想真さんがタマを傷付ける訳無いじゃん」

 「……フン」

 

 不機嫌そうに息を吐いた想真を、球子は笑顔で見つめる。

 

 「で、何の用だ。わざわざ俺の部屋に来る程の事が有るのか?」

 「キャンプに行こう!」

 「…………」

 「キャンプに行こう!」

 「…いや、聴こえてはいるが…お前、休養日は?」

 「2日貰ってる!」

 「なら自分の為に使え。誘うなら伊予島やら高嶋が居るし、何より俺と行った所で楽しくないだろう」

 「みんなタマと休養日が被らなくてさ。そりゃまあ勇者が何人も同時に居なかったら困るからなんたけど。だからタマ1人になるんだよ。でも、1人キャンプより2人でする方がタマは好きなんだ。それで大社の人に想真さんは良いかなって訊いたら良いって言ったから、想真さんを誘いに来たんだ!」

 「消去法か」

 「まぁ、今回は個人的に想真さんと行きたいなって思ってたのも有るけど」

 「…どうしてまたそんな事を」

 「昨日、タマは想真さんに怒鳴られたろ?タマも考えてさ。自分の事を大して知らない人にあんな言い方されると、確かにイライラするよな。だから、今回のキャンプをキッカケに想真さんの事を沢山知っていこうと!そういう訳なんだけど…その、どうかな?」

 

 自信満々に話す、その癖に最後は想真の顔色を窺うのだ。正直な所、想真に行く理由など欠片も有りはしない。この提案を一蹴して、眠れもしないのにベッドに横たわって無為な時間を過ごす事が出来る。だが、それをした所で何も良い事は無い。それに球子本人がやりたいと言っているのだ、大社の機嫌を取る意味でも行った方が賢明だろう。少しだけ、ほんの少しだけ球子の今の表情が『彼女』に似ていた事も理由ではある。

 

 「…行くのは構わないが、俺はキャンプの道具なんて持ってない。それで良いなら行くぞ」

 「ホントか!?なら荷物持ってくるから、ちょっと待っててくれ!」

 「待て」

 「うぇ!?」

 「俺も行って荷物を2人で持った方が効率も良いだろ。俺も行く」

 「…そうだな!じゃあ手伝って貰おうかな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『方舟』から出る事が出来ないという事と、幾ら休養日と言えど流石にこの丸亀から離れられない都合上、キャンプはそれなりの近場に限られる。自転車で行こうとした球子だったが、何と想真がバイクを運転出来るという事でバイクに荷物を積んで本来より遠いキャンプ地に行く事が出来た。

 

 「まさか想真さんがバイクを運転できるとは…」

 「バイクなら運転した事が有ったからな。…あと、名前」

 「え?」

 「呼び捨てで良い。そも口調がタメ口なんだ、呼び捨てでも変わらん」

 「そっか、そうだな。じゃあ…想真!」

 「………」

 「返事!」

 「…あぁ」

 「むぅ…もっと元気良く!」

 「教師かお前は。で、ここで良いのか?」

 「お、やっぱりバイクだと早いな〜。人もあんまり来ないし川は近いし、良いところだろ!」

 「…まぁ、野営地としては優秀だな」

 「そんな堅っ苦しい言い方じゃなくてさ、キャンプだぞキャンプ!もっとテンション上げてこう!」

 「良いから、早く(ペグ)を打ち込むぞ。川が近いんだ、魚も釣れる筈だ」

 「そうだな。…結構手際良いじゃん」

 

 まずは水がテントに染みない為と多少の寝心地を確保する為にグランドシートと呼ばれるシートを敷き、迷いなく杭を地面にハンマーで打ち込むと紐を掛ける。しかも、素人は杭を地面に垂直に打ち込むものだが想真はしっかりと30度程度の角度を着けて打ち込んでいた。次に支柱(ポール)を組み立ててテントに通し、固定する。中では球子が断熱性が高い厚手のシートをテントに敷いている。

 そこまで大人数で寝る訳ではないのでテントも大きくなく、それ故に作業はアッサリ終わった。球子は想真に教えながらするものだと思っていたので、拍子抜けする程に想真は作業が手慣れていた。

 

 「想真はどっかでキャンプした事有るのか?かなり手際良かったけど」

 「ゴッドイーターの任務は遠征任務が大部分を占めてたからな、野営になる事が多かった。テントぐらい設営出来なきゃ、クソみたいに寒い中寝なきゃならなかったからな。嫌でも出来る様になる」

 「………」

 「…なんだ、その顔は」

 「いや…結構素直に話してくれるんだなって」

 「お前が俺の事を知りたいとか言ったんだろうが。なら、俺が答えなきゃ誰が答えるんだ?」

 「っへへへ…それもそうだな!」

 「何故そこで笑う?変わったヤツだな、お前は」

 「想真程じゃないぞ」

 「…まぁ、確かに俺は普通じゃないがな」

 

 球子は一応食べ物を持ってきてはいるが、流石にそれだけでは味気ないと釣りをする事になった。だが、想真は釣りのやり方が分からない。今までやる必要が無かったからだ。球子に丁寧に教えて貰い、どうにか形だけはやれる様になった所で球子が訊いた。

 

 「テントは張れるのに、釣りは出来ないんだな」

 「…悪いか?」

 「そんな気を悪くすんなって!別に嫌味とかそんなんじゃなくて、野営するなら釣りとかしないのかなって思ってさ」

 「別に、俺はレーションとあの飲料で終わらせてたからな。そういうのをやるヤツも居た。釣りに野草採りに…釣りは竿が無かったからやり方は教わらなかったが、捌き方は知ってるし野草も見分け方とか美味い喰い方なら知ってる。あぁ、そういえば…っ」

 「――どうかしたのか?」

 「いや、済まん。何でもない」

 

 ――『アイツ(彼女)』はお前に似ていたよ。

 そう口が滑りそうになった。身長は『彼女』の方が少し大きかったが、雰囲気は似ている。友奈のフレンドリーな優しさと球子の活発な雰囲気を足してちょうど良い所で割れば、きっと『彼女』の様な人間になるのかも知れない。

 食事を最低限のレーションとゼリー飲料で済ませようとする想真に、美味しい食事を無理にでも摂らせようとする点では全く一緒と言って良いかも知れない。

 

 「あのさ、レーションとかゼリー飲料って美味しいか?」

 「美味くはない。そもそも必要な栄養とカロリーを摂取する為だけのモノだからな、味は度外視だ」

 「じゃあ味の種類とかも無いよな…」

 「あぁ。無味のゼリーと味の無いパサパサのパンを食ってる感じだな」

 「…それ、ゴッドイーターの人みんな食べてたのか?」

 「さっきも言ったが、だから釣りをしたり野草を採って揚げて食ったりしていた。隊長が釣って同期と俺が野草を採ったりウサギとか鹿を狩って捌いて、副隊長ともう1人が調理してな。…全く、お人好しな連中だった」

 「…良い人達だったんだな」

 「あぁ、良い仲間達()()()

 

 「仲間達だった」という、その言葉の意味が解らない程球子も鈍くないし、見えている地雷に踏み込む程愚かではない。まだ想真から言ってくれないのなら、球子から訊く必要は無い。他愛のない話をしながら、釣りの時間を静かに楽しむのだった。

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