神喰らいは人造勇者である   作:たぴぃ

42 / 62
 戦時中の戦況

 ゴッドイーターは当初バーテックスとの戦争は優位に事を運んでいた。だが、ゴッドイーターの一部がバーテックスとの和解を唱え離反。それにより戦況は五分となったが、あくまで五分五分であった。
 ある要因が引き金となりゴッドイーターは壊滅的な被害を受け、殆どが戦死したとされている。


約束

 ――バーテックスの正体は何なのか?

 

 それは、人類が未だ正解に辿り着けていない問題である。突如現れ、対話すらせずに人類の殆どを壊滅させた化け物。既存の兵器は通じず、アメリカは自国の領土を犠牲に核攻撃を決行したがそれすら効かず、むしろその選択により国力が弱まったアメリカは先進国の中でも真っ先に滅亡した。

 バーテックスに対抗出来る力として、神樹が齎す勇者の武器(神器)と想真達ゴッドイーターが用いるバーテックス由来の武器(神機)が存在する。勇者達の神器は神樹――つまりは元より日本に存在する八百万の神々の力を清廉潔白なる乙女の身体に降ろし、その力を借りるものだ。しかし、想真の神機は違う。彼は乙女ではないし、やむを得なかったとは言え人を殺した経験もある。清廉潔白とは決して言えないだろう。どちらも同じ、バーテックスを殺せる力。なら、その源流は同じ所なのではないか?

 

 (…勇者も俺も、どちらも武器を用いて敵を倒す。俺は当然生身じゃバーテックスを倒せないが、それは勇者も同じだった。衝撃は与えられても、どれだけ殴っても殺せない。恐らく、神機と神器はほぼ同一の力と見て間違い無い。なら、まさか神樹とバーテックスの正体は――)

 

 真理へと近付く。だが、1つだけ解らない点が有った。もし想真の予想が合っていたとして、バーテックスが人間を殺す理由と神樹が人間を守る理由が解らないのだ。正確に言えばその理由も予想はしている。だが予想が当たっていたとして、それならとても馬鹿らしい。余りにも人間らしく、余りにも愚かだ。

 

 「――だが、もし人間が神々の被造物だとしたなら、それは――」

 

 人間も神々も、どちらも滑稽で。そして正に諺の通り、子は親に似るという事なのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 丸亀城の一角で神機を構え、自分なりの身体の動かし方をなぞる。毎日欠かさずにやっているが、少し時間を空けると慣れた行為でも何かが違うと思うものだ。

 想真は少しずつ神機を振る速度を速めていき、自分の理想だと思う型へと持っていく。それを見ていた球子は唐突に想真に話し掛けた。

 

 「なー想真、最近暖かくなってきたよな」

 「…いきなりどうした、藪から棒に」

 「いやぁ、夜は空気も澄んでるしさ。そろそろキャンプとかどうかなって思ってさ」

 「悪くない。肌寒いなら厚着すれば良いしな。…そろそろ襲撃が有るが、勝ったら行くか」

 「その前にお花見もしたいよな〜」

 「…お前の事だ、もう誘ってるんだろ?」

 「へへ、バレたか」

 

 神機を地面に突き刺し、額を伝う汗を腕で拭っていると球子からタオルが投げ渡される。突然投げ渡された為、少し驚くが身体が勝手にタオルをキャッチしている辺り、流石と言った所か。

 木の下に置いておいたスポーツドリンクを流し込むと、想真は目の前の桜の蕾をじっくりと見た。

 

 「桜…いや、花見か」

 「何か嫌な事でも有るのか?花粉症とか?」

 「…いいや、それは違う。ただ、じっくり花を眺めるなんて初めてだからな。どういう事をするのかあんまり分からないだけだ」

 「ん〜、そんなに気負う事無いと思うけどな。みんなで桜見て、美味しいご飯食べてさ。あ、暖かかったらみんなで昼寝ってのも悪くないかもな!」

 「…風が無ければカードゲームとかも良いのかもな」

 「お、それ採用!想真も分かってきたなぁ!」

 「まぁ、お前らと過ごしてれば少しはな。…1番はお前のお陰だな、球子」

 「タマだけじゃない。友奈とか若葉もだろ?」

 「確かにそうだが…いや、俺がお前に感謝したいだけだ。大人しく褒められておけ」

 「ははっ、なんだよそれ」

 

 球子は想真の言葉に笑う。茶化したが、実際に想真は球子に1番感謝していた。球子の言う通り友奈達のお陰も有るが、何だかんだで想真に1番構ってくれたのは球子なのだ。愛想も悪く、ユーモアが有る訳ではない。一緒に居ても特に楽しい事が無いであろう橘想真という人間と最も正面から、根気強く向き合ってくれた彼女。想真にとって球子は、勇者の中でも特に大事だと思える存在に変わっていた。

 

 「あー、早くバーテックスの奴ら来ないかな〜!」

 「…中々不穏な願望だな」

 「いや、だってさ。桜は直ぐに散っちゃうんだぞ?花見してる最中に来られたら堪んないし、来るなら来るで早く来て欲しいって思ってさ!」

 「全く…まぁ、球子らしいと言えば球子らしい考えか」

 「…それ、褒めてんのか?」

 「さあな。そっちの感じ方に任せる」

 「なら褒めてるって事で」

 「ポジティブだな、お前は」

 「悲しい事、悪い事なんてこの世界に沢山有るんだぞ?だから、ちょっとでも楽しい事とか嬉しい事を見つけて笑えるように、前を向いて歩くしかないだろ?」

 「……カッコいいな、お前は」

 「へへ、そうだろ?」

 

 ゴッドイーターの強化された五感が、仄かに香る桜の香りを感じる。昔は血と煙の匂いしかしなかったが、ここに居る間はきっと春の優しい匂いを感じる事が出来るだろう。優しい、球子のように暖かい匂いを。

 想真は花見を心待ちにする。満開の桜の木の下で、勇者達の笑顔を見る日の事を。

 

 「…花が散る前に、な」

 

 嗚呼、そうだ。美しい花が散るのは早いから。花びらが、散ってしまう前に――

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。