2015年に突如現れた化け物。無数の群体から成る化け物であり、既存の現代兵器は効果を成さない。現れてから数日で世界各国に甚大な被害を与え、未だにその侵攻は続いている。
バーテックスに有効なのは【神樹】から与えられる神霊の力のみであるが、その高い学習能力により対策を取った姿を造り出す。人間が進化すればバーテックスも神化する、イタチごっこの様な状態が今の状態である。
封印
あの日、化け物――もとい【バーテックス】の襲来から3年の月日が経った。人間の生存圏は人類を護る神霊の集合体【神樹】の庇護化である四国とその周辺のみになり、それ以外の場所で人間が生きているかどうかは不明になった。
人類最後の生存圏、四国。そこに居る5人の
「なー、まだ着かないのかー?」
「確かに遠いね〜。でも全然先が見えないし、まだ着かないみたいだよ、タマちゃん」
「えええぇぇ!?多分30分はここ降りてるんだぞ!?」
「まぁまぁ落ち着いて、タマっち先輩。すっごい声反響してるし、ね?」
「そうだぞ、土居。まぁ確かに長いのも事実だが…あの、まだ着かないのでしょうか?」
ぼやいている活発な少女は
「まずは1度寄り道させて頂きます。申し訳ありませんが、ご容赦下さい」
「寄り道だって!どんなのかな〜。ね、ぐんちゃん!」
「…私は訓練したいのだけど…」
寄り道と口にした大社職員の言葉に反応した少女が
「ここです、お入り下さい」
「うわっ、何だアレ!でっかいなぁ…」
「本当だね…コレ、誰が使うのかな…」
5人の目の前に有るのは巨大な剣だ。その大きさは千景の持つ大鎌以上で、コレをマトモに扱うには恐ろしい程の修練が必要だろうと若葉は直感した。
「本当に大きいね、あの剣」
「じゃあコレ、タマが使って――」
「――いけません!!」
「ふぇっ!?」
意気揚々と剣に触ろうとした球子に、鋭い声が飛ぶ。びっくりして手を止める球子を見て職員はホッとした表情をしていた。その表情は安堵の表情だが、本質は球子への心配ではない事を全員直感的に解っていた。何かへの恐れなのだろうか、そう思ったが思考は職員の声で打ち切られた。
「…これから行くのは化け物の元です。襲ってくる事は無いと思いますが、どうか気を抜かぬ様にお願いします」
「…だから武器の携行を?」
「はい、命の危険を感じたら絶対に躊躇わないで下さい。勇者様達に、代わりは居ないのですから」
更に階段を降り、やっと最深部に辿り着いた。職員は若葉に鍵を渡し、言った。
「これより先は勇者様達だけでお行き下さい。良いですか、危険を感じたら決して躊躇わないで下さい」
「分かりました。ではみんな、行こう」
5人分の足音が響く。灯りは道の両側に立てられている燭台だけで、揺らめく炎の光が不気味だ。数分歩くと大きな鉄の扉が有り、そこに掛けられている南京錠に若葉は鍵を差し込む。ガキン、と音を立てて外れる南京錠。鉄の扉を開けようとするが、重くて開かない。力を入れて押すとギギギギギ、と軋んだ音を立てて扉が口を開けるように空いた。
「中々雰囲気あるね…ここ」
「あんずはタマが守るからな!タマに任せタマえ!」
「これは、前に進めば良いのか?」
「ねぇみんな、アレ…」
「…牢屋…?」
殆ど光が入らない空間。全員が持つ手持ちの蝋燭では光量が足りず、入口付近しか照らせない。そんな中、やっと暗闇に目が慣れた5人が牢の様なモノを視認した時、奥から声が響いた。
「――何の用だ?」
声こそ出さないが、球子と杏はびっくりしたせいで思考が止まっている。友奈はどういう人物か探ろうとしており、千景は本人の性格的に話せそうにない。ならば自分が、そう思った若葉は声に返した。
「私の名は乃木若葉、勇者の1人だ。何の用だと聞かれても、私達も目的は分からない。私達だって何故ここに案内されたのか、皆目見当もつかないのだ」
「…勇者、か。なんだ、俺達もとうとうお役御免って訳か」
「お役御免…?どういう意味だ?」
「俺達はお前ら勇者が完成するまでの繋ぎだ。大方、勇者の訓練過程が終わったから顔合わせ、後は――」
「――想真…?」
千景がそう漏らした時、声が止まった。それなりに反響するとは言え、普通なら聞こえはしない距離。どうかしたのだろうか、そう思った瞬間何かがへし折れる様な音と共に金属が地面に落ちる音がして、足音が響く。近付いてくるソレに球子は庇うように自分の身体を杏の前へと持っていき、若葉は腰に帯刀する刀を構え、友奈は拳を構えた。この場で構えていないのは千景だけだ。
「…まさか、千景なのか…?」
「…そうよ…」
「…どうして」
「…え?」
死んでいたと思っていた想真と再会できた。その事で千景の頭はいっぱいだったが、対する想真の反応は淡白なものだった。「どうして」という一言に含まれた意味を推し量る事が出来ず、戸惑う千景を尻目に他の勇者を見た想真は言った。
「この程度で人類を守れると思ってるのか?」
「…何だと?」
「本物だと聞いてたが、ハッキリ言って期待外れだな。この程度であの化け物から人類を守れるなら今頃人類はバーテックスを駆逐してるだろうよ」
「お前…タマ達をバカにしてるのか!?」
「馬鹿になんてしてはいない。ただ、事実を言ってるだけだ。実戦を知ってる者としてな」
そう言う彼の視線は本当に馬鹿にしている訳ではない様に見えた。有るのはただ諦観に似た感情、千景を見る時だけはその瞳の奥が揺れるが、その諦観に変わりは無かった。
「御託は良い、牢獄から出ろ、No.5」
「…大社か。どう転んでも俺達を化け物扱いか?」
「黙れ、両手を上げて前に出ろ。変な動きをすれば撃つぞ」
「俺にソレが当たるとでも?」
牢獄の鉄棒を破壊した音が聞こえたのだろう。拳銃を構えて想真に命令する職員に向け、彼は笑う。そのまま手を上げる事なく無造作に足を1歩踏み出すと職員は迷い無く発砲した。
「…俺だけにならまだしも、周りにはお前らの大事な
想真は右手を身体の前に構え、職員が撃った弾を弾いていた。彼の右手には赤く大きな腕輪が嵌っており、それが銃弾を弾いたらしい。
声音と視線から解る大社への凄まじい軽蔑と憎悪。それを体中から放ちながらも彼は両手を上げ、そのまま職員の前へと歩みを進める。
「連れて行けよ、抵抗はしないでおいてやる」
「…連れて行くぞ」
「…想真…!」
「………………」
扉からわらわらと銃を構えた職員達が入ってきて、そのまま想真を連れて行く。千景は想真の名前を呼ぶが、彼はそれに反応する事は無くただ成されるがままに連れて行かれるのだった。
ちょっと不完全燃焼感はありますが、これからですよ…