人類を滅ぼすバーテックスに対抗し、人類の味方をする神霊が現世に現界して大樹の形を取った存在。神樹の声である【神託】を受け取る存在【巫女】と神霊の力をその身に降ろし、力を振るう【勇者】のシステムを作り出した。人類の最後の砦であり、神樹が倒された瞬間に人類の滅亡が確定する。
「あの人、一体何なんだ?タマ達が弱いって言いたかったのか?」
「う〜ん、それとは違う気がするんだよねぇ…」
「どういう事だよ、あんず」
「その説明が難しいんだよね…なんって言うのかなぁ」
「覚悟、じゃないか?」
「それ!それです、若葉さん!」
地下から教室に戻り、彼に言われた事がどういう事か考える勇者一行。だが、彼の意図を掴む事は何よりも難しく、それ故に難航していた。
「実戦を知る者として…か。彼からすれば私達は甘く見えるのかも知れんな」
「…でも、それっておかしくないですか?」
「何がおかしいんだ?ひなた、言ってみてくれ」
「バーテックスとの実戦を知る者って勇者って事ですよね。でも、勇者って今のところ少女…私達ぐらいの女の子しか確認されてないんですよ。でも、その人は男の人だったんですよね。なら、バーテックスとの実戦なんて知らないと思うんですけど…」
「ね、ぐんちゃん。あの人って何歳なの?」
「…私と同い年…だから、あなた達より1つ上よ…」
「それにしては随分と大人びてたよなー」
「きっと何か大変な目に――」
「――乃木さん、少し良いですか?」
「分かりました、今行きます。みんな、あまり騒がないようにな」
職員から呼ばれた若葉は全員――というより球子に釘を刺して席を立つ。後ろから球子の「分かってるよ、ったく」という声が聴こえるがそれはスルーし、廊下に出る。居ると思っていた職員が見つからず、左右を見回すと普段は使わない相談室の前に職員がおり、若葉はそこに向かう。すると職員は相談室の扉を開け、若葉に中に入るよう促した。
「あなたは…!」
そこに居たのは想真だ。首には明らかにアクセサリーとは思えない
「…さて、じゃあ話を始めさせて貰いますね。明日から、この男があなた達のクラスに編入する事になりました。これは決定事項です」
「…この方の素性をある程度聴かせて貰う事は出来ますか?いくら皆さんの紹介と言えど、素性が全く分からないというのは怖いので…」
「それもそうですよね。この男は橘想真、現在唯一の自由に動かせる【ゴッドイーター】であり、言わば勇者様達以外で唯一バーテックスに対抗できる存在です」
「バーテックスに…!それなら――」
「――共闘するつもりは無い」
「…え?」
勇者を除いた人類で唯一バーテックスに対抗できる存在、その言葉を聴いて若葉は当然共闘しようとする。当たり前だ、バーテックスの数は凄まじく、勇者5人では捌き切れないかも知れない。故に1人でも戦力が増えるのは願ったり叶ったりだ。
だが、その言葉を想真は無慈悲に断ち切った。
「俺は俺のやり方で戦う。正直、お前らと足並みを揃える事は難しいだろうからな」
「それは私達が弱いから…ですか?」
「あぁ、そうだ。少なくとも俺達の方が――」
「――黙れ、化け物が。人間の皮を被った化け物風情が、勇者様にそのような口を利いて良いと思っているのか?」
「…戦えもしない無能が」
「……っ!!」
想真の表情は揺らがない、どんな事が有っても。若葉は今のところ彼の表情が変わった所を1度も確認していない。声音を聞くに千景と会った時は多少変化したらしいが、どれだけ大人に脅されようが彼の無表情と輝きの失せた瞳に揺らぎは無い。本当に年齢が自分の1つ上なのか、怪しくなるレベルだ。
「乃木さんにはこのアプリをインストールして貰いました。ご確認ください」
「これは…?」
「この男の監視と
「ちょ、ちょっと待って下さい。殺処分って、そんな動物みたいな」
「それだけの事が必要なのです。他のゴッドイーターならまだ良かった。ですが、この男は禁忌を犯した。故に、あの地下に幽閉せざるを得なかったのです」
「そんな…」
「殺処分をするかどうか、許可を常時出すかどうかは乃木さんにお任せ致します。ただ、この男は何をするかどうか分からない事、これを留意して頂きたい」
「…は、はぁ…」
そう言って相談室から出ていく職員。残された2人はどちらも会話を切り出さず、暫しの間座っていた。そして、意を決した若葉は話を切り出す。
「…あの…」
「…………」
「さっき、俺達って言ってましたよね。あなたにも、仲間が居たのですか…?」
「…あぁ、居た。みんな死んだ。目の前で死んだヤツも居れば喰われたヤツも居る。…全員、良いヤツだった」
若葉から見える彼の右手は固く握り込まれ、震えていた。案外悪い人ではないのかも知れない、そう思いながら若葉は席を立ち、想真に向けて言った。
「まずは教室に行ってみませんか?みんな、良い人ですよ」
「……フン」
不機嫌そうに着いてくる彼に、やはり悪い人ではないと若葉は認識を改めた。