vsギーシュ。
右腕と右足が切断されます。注意。
ルイズは、あきれ返っていた。
っと…いうのも。
「あんた、そんなぶっとい剣持ってるくせに、使い方が分からないってどういうことよ?」
「知らん。」
ウォーの見かけ倒しな弱さに呆れたのだ。
2メートルはありそうな巨体ではあるが、非力で、背中に背負っていた剣をとりあえず握ってみても、落とすぐらいだ。
しかも剣を所持しているにもかかわらず、その使い方すら覚えていないらしかった。
覚えていたのは、たった一つ。
名前だけだ。
コルベールは、ウォーの今の外見や、人型になる前の姿から、未知の亜人の一種ではないかと分析しており、ウォーが名前以外を失っているのは、ルイズの失敗魔法による影響があるのではとルイズに言った。
人型になる前の強大な竜の姿について、ウォーに聞いてみても、覚えていないらしく、コントラクトサーヴァントの段階で、何かしらの弊害が起こってしまったのではないかと見られている。
ルイズは、失望と同時に、ウォーに対して申し訳なくなった。
見るからに戦士である彼から名前以外を奪った可能性を。
そんな風になってしまったウォーの噂はあっという間に学院中に広まり、端から見ても、ウォーが苛立っているのをルイズは感じた。
「気に入らねぇな。」
自分が見かけ倒し状態なのは認めてはいるものの、それが理由で馬鹿にされ、ちょっかいを出されるのは気にくわないらしい。
ルイズとしても、なんとかしてやりたいが、ウォーの本来の力や、あの竜の姿を戻す方法がいまだ分からないため、歯がみするしかなかった。
使い魔召喚の儀式から、後日。
ルイズが目を離した隙に、ウォーがいなくなった。
慌てて探していると、広場の方でなにやら騒ぎが起こっていた。
慌てて近くにいたメイドに聞くと、ギーシュとその取り巻き達が魔法でウォーを攻撃し、憤慨したウォーが足下に作られた氷で足を滑らせこけたのを、彼らが笑い、そして見ていた他の生徒達も笑ったのだそうだ。
怒りにブルブル震えたウォーが剣を抜いて、ギーシュに向けたため、ギーシュは遊び半分のつもりで決闘として受け入れ、広場にウォーを連れてきてこの騒ぎだ。
このままでは、ウォーがサンドバックにされてしまう!
青ざめたルイズが生徒達の人だかりをかき分けてウォーを助けようとしたが、逆に押し出され、ウォーとギーシュの戦いの場に放り出されてしまった。
「おや、君のご主人様が助けに入ったじゃないかい。」
「や、やめて! ウォーを傷つけないで!」
「それはできないよ。なにせ彼は僕に決闘を申し込んだんだからね。受けるのが礼儀というものさ。」
「邪魔すんな!」
「なによ! 剣ひとつ持ち上げられないくせに、なんで喧嘩を売るのよ! 今すぐ謝って!」
「うるせぇ!」
「さあ、決闘を始めようじゃないか。僕はメイジだ。だから魔法を使うよ?」
「…それがどうした?」
「その勇気は買うよ。いや、無謀か? まあどっちでもいいさ。」
そう言って、ギーシュは、ワルキューレ達を錬成した。
ワルキューレ達があっという間にウォーを取り囲み、殴ろうと拳を振るった。
ガキンッ!
青銅製のワルキューレ達の拳が、弾かれた。
「へえ? 鎧を着てるぐらいだから、さすがに頑丈か。これは、いたぶりがいがあるな。」
「っくそったれ!」
ウォーが無理矢理剣を横へ振った。ワルキューレ達は、ヒョイッとそれを避けた。
途端に、周りにいる野次馬の生徒達から笑い声があがる。
振るった反動で体勢を崩したウォーが倒れる。
ウォーは、ギリッと右腕を握りしめた。
「ウォー!」
「来んじゃねぇ!」
「なによ! 心配しているのに!」
「クソガキどもが……。」
ユラリとウォーが立ち上がった。
体に浮かぶ、七つのルーンらしき光の紋章が、ひとつ、揺れていた。それは、まるでウォーの怒りに反応しているかのように。
「やれやれ、主人が能なしのゼロなら、使い魔も能なしか。土下座するなら、まあ勘弁してやらなくもないけど? どうする、馬鹿な能なし君?」
「……………………………………あぁ?」
ブチンッ
ウォーの中で何かがキレた。
その瞬間、バチンッという放電と共に体にある紋章のひとつがウォーの体か離れて宙に浮いた。
「えっ?」
ルイズも、ギーシュ達も、野次馬達もそれを見て驚いていると、浮いた紋章が宙で砕け散って消えた。
「誰が……。」
ウォーが剣を握りしめ、ブオンッと振り上げた。
ついさっきまで剣の重たさに振り回されていた状態ではない。熟練した戦士のソレだった。
それに気づいたのは、ルイズだけだった。
「馬鹿な能なしだと?」
「君のことさ。」
「そういや…これは決闘だったな?」
「ああ、そうさ。君が売ってきた決闘さ。」
「そうか…。」
「?」
確認を取ったウォーが、剣を横へと振った。
その瞬間、彼を取り囲んでいたワルキューレ達が一刀両断され、破壊された。
ウォーは、倒れずフードから垂れさせている白銀の髪を翻して構えていた。
「なっ!」
突然のウォーの変化に、ギーシュは驚愕し、野次馬達もざわついた。
「う…、ウォー?」
ルイズが恐る恐る声をかける。
「どけ。」
「きゃっ!」
ルイズをどかし、ウォーが剣を右肩に乗せた状態で、ギーシュに歩み寄り始めた。
ハッとしたギーシュは、慌てて再びワルキューレを錬成した。今度は武器を持たせている。
しかしそのワルキューレも、ウォーが剣を振るって破壊した。
「クソガキが……、散々馬鹿にしてくれたな?」
「ひ…、こ、こうさ…、っ?」
ワルキューレを作る精神力を失ったギーシュが目の前に来たウォーの迫力に、思わず短く悲鳴を上げ、降参しようとした時。
右腕と右足が消えた。
いや……、離れた位置に飛んでいった。
「あ…、ぎ…ぎゃあああああああああああ!?」
「うるせぇ!」
ギーシュの首を掴み、軽々と持ち上げたウォーが怒鳴る。
「ギーシュ!」
「おまえ、ギーシュを離せ!」
ギーシュの友人達が勇気を出して杖を向け、ウォーに魔法をぶつける。
しかし、まるで堪えておらず、ギロリッとウォーの青白いだけの目が向けられた。それだけで、ギーシュの友人達は怯えすくんだ。
「これは、決闘だ! なんびとも邪魔立てするじゃねぇ! どっちかが死ぬまでやるんだよ!!」
「やめて! ウォー、やめて!」
「邪魔すんな!」
「お願い! お願い! ギーシュを殺さないで!」
ルイズが必死にウォーの体にしがみついて、涙と鼻水でグチャグチャの顔で必死に止めようとした。
「……………………………………チッ…。」
ウォーは、本当に仕方なさそうにギーシュから手を離した。ギーシュは、失血と恐怖により意識を失っていた。
その後、遅れてきた教師陣がギーシュを搬送し、ウォーは、自分に杖を向けてきた教師陣にも剣を向けようとしたが、その直後、体にある残り六つのルーンが放電し、気絶。そうして倒れたウォーは、鎖や縄で雁字搦めにされ、地下牢に閉じ込められた。
ギーシュは、奇跡的に命を取り留め、また失った右腕と右足もくっつけられた。
一つ目の封印破壊。
これにより、剣の使い方と戦い方を思い出したウォー。
でも、残る六つの封印により、ぶっ倒れるウォー。
そして、地下牢に雁字搦めで閉じ込められるウォー。
果たして、怒ったウォーが怒らせてきた相手を生かしてくれるかどうかは、分かりませんが……。