鉄血のオルフェンズ 赤い悪魔、翼を開いて   作:カルメンmk2

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 翔んで埼玉を見た埼玉人の感想ですが許せないところが一つありました。大宮、浦和、草加が前に居るのは許せるし、納得もできる。
 けど、川口と行田と蕨。てめぇらは後ろだろうが!!(魂の叫び








 ――レッドのことかい? アンタが邪推するような関係じゃないことは確かだね。私とアイツは家族さ。姉弟さ。言っておくが私の方が姉貴だからね? アイツは手のかかる弟だよ。それを言うと逆だって騒ぐけどね。恋仲じゃない。
 ――まあ、いいかなって思うことはあったけどね。何というか、どうしても手の届かない所に行っちまったよ。あの愚弟は。


 タービンズ二代目社長 アジー・グルミン






Go! 歳星!

 

 

 

 模擬戦という名の潰し合いが終わって早三日。私事、レッド・ウェイストは30億ギャラーの借金を背負う宇宙一の借金王になり果て申し(そうろう)

 

 

「タービンズがマルバに払う予定だった契約金も君持ち。三日月君への後遺症の賠償として、得たCGSも引き渡した。うーん――――――すべてが丸く収まったネっ」

「収まってねーよ!? 30億ギャラーとか多すぎね?! 高く見積もっても20億弱だろ?」

「それはアレさ―――――僕のカッコつけを台無しにしたからっ♪」

「そんな理由で!?」

 

 

 借金返すために仕事を探しに来て、さらに借金負って、借金王とかどういうことですかね?

 いや待てよ? 事故に見せかけて始末すればワンチャン?

 

 

「親族は喜んで相続すると思うけど? だって税金払ってもバカみたいに余るし」

「orz」

 

 

 殺しても解決しない案件とはなんとも厄介な! まあ冗談ですよ? 2割くらいはね?

 あ、そうそう。変わったことと言えば―――

 

 

「……なんていうか、すまねぇな?」

「ならタダで譲れよぉ。そのまま資源採掘衛星に逝けよぅ」

「物騒な話はやめてもらえんかね!?」

 

 

 歳星までの道をマルバ・アーケイが同伴することになったぐらい。え? どうして歳星に行くのか? ヴァサゴとバルバトスが半壊状態で地球までの航行に支障が出てるからだよ。

 

 

「そうやって整備と修理で借金漬けになると。何時になったら返済できるのやら」

「当面、利子とちょびちょびの元本返済ですよ」

「火星で回収したグレイズも半分はタービンズ行き。それを売ってなおの30億だね」

「というか、テイワズが火星の拠点を欲しがってたじゃないですか? 名瀬さんはよかったんですかね」

「子どもから奪うつもりもないだろうし、何より彼は真面目な弱者には気を遣う人物さ。昔の君に重ねているんだろうね」

「そういうもんですか」

「そういうものさ」

 

 

 小生意気なガキが自分で生きるんだって息巻いていた。ああ、青臭い青春の日々よ。何故、我が身は穢れてしまったのか!

 

 

「返済能力を超えた借金なんか背負うからだよ」

「違ぇねえ」

「黙れクソジジイ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆―――――☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ミカの右腕がおかしくなった。細かく言えば、右手に痺れを感じる程度らしい。

 

 

「ミリアムさん。ミカは大丈夫なんですか?」

「ミリィって呼んでオルガちゃん。あと、ミカちゃんなら大丈夫よ」

 

 

 この目の前でクネクネとしている筋骨隆々の男―――ミリアム・ヴァンハイムとかいうオカマはウェイストが大金をはたいてスカウトした医者だとか。

 俺と明弘、ビスケットはハンマーヘッドでの今後の打ち合わせの帰りにグリコへ寄っていた。理由は言った通り、ミカがこの船の医療設備で治療を受けているからだ。

 

 

『火星ヤシが食べたい』

「ダメよ。固形物を入れちゃうと大きい方の処理が大変なの」

『大袈裟だよ。右手ぐらい』

「ノンノン! その右手が動いていればって思う時が来るわよ? 幸い、リハビリをすれば以前ほどとはいかないけど戻るもの」

 

 

 後遺症ってんだから一生治らないと思っていたが本当なのか?

 

 

「本当ですか?」

「本当よ。握力が若干落ちて、力加減が慣れるまで大変でしょうけどね。…………にしても、貴方たちはみんな付けているのね」

「それが働くための条件だったんです。ここにはいないけど明弘もあります」

「ようやく肉親(おとうと)と出会えたんだもの。あの大胸筋に頬擦りするのは今度にするわぁ」

 

 

 ――イサリビのスキンシッ―――健康診断が待ち遠しいわね。

 ミカ? お前はまだ三日月だよな? 汚れてないよな!?

 

 

『最近、起きると下半身がムズムズするんだよね。なんでだろ』

 

 

 Noooooooooooooooooo!!!?

 

 

「無理やりなんてしないわよ、人聞きの悪い。単純にカテーテルのせいでそう感じているだけよ」

「よかった――――待て。無理やりじゃなければいいのかよ?」

「熟れた果実もいいけど青い果実もス・キ・♡」

「ミカ帰るぞ。こんなところに居たらどうなるかわかったもんじゃねぇ」

「あぁん! 待って頂戴な」

 

 

 胸元のはだけたぴっちりとしたボディスーツを着るこの男はまるで、股間をアピールするかのように足を組む。

 正直、ミカが世話になってなければ近づきたくもないが仕方がない。

 

 

「健康診断はホントの事よ。CGSでどんな待遇かは知らないけど、ある程度の精密検査はするわ」

「どこも病気なんかしてねーよ」

「素人が偉そうな口を利くんじゃないの。肝臓なんて沈黙の臓器って言われているぐらい早期発見ができないのよ? マルバちゃんの一件が終わっても地球で発病、そのまま………ってことだってあるんだから」

 

 

 ビスケットがどうしてそんなに検査をしたがるのか聞く。一応、食っていた物も野菜ばかりだがまともなもんだったはずだ。

 

 

「ブルワーズの子たちよ」

「明弘の弟っスか」

「ええ。寄生虫はいるわ、内臓疾患はいくつも患っているし、酷い子は薬物依存の症状も出ていたの」

「よく生きてこれましたね」

「運がよかったのよ。レッドちゃんは馬鹿だし、(かしこ)ぶっていても何も考えてないわ。けど、人並みには正義感や優しさもあるし途中で投げ出すような卑怯者でもないわ。気に入ったら世話を焼きたがるのもね」

 

 

 ……………だから今回の沙汰ってことか。

 

 

「詳しくは知らないけど、自分の昔と重ね合わせてるのよ。独りになって、残ったものを守ろうと死に物狂いだった頃にね。名瀬さんみたいな素敵なダンディに出会えたから、自分もそんな男になるって言ってたわよ」

「………僕ら、本当に運がよかったんだね」

「だな」

『気に入らないのに変わりは無いよ』

「ミカ………一応、俺らにとっちゃ恩人で……」

『オルガに言われても気に入らないのは気に入らない。上手く言えないけど……なんか気に入らない』

「はぁ………」

「あらあら」

「あははは…………」

 

 

 何時もなら個人的な感情なんて出さないほうなのに、なんでこうなったのやら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆―――――☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっほー! あたし、ラフタ! ラフタ・フランクランドっていうの。タービンズの社長、名瀬・タービンの奥さん―――みたいな感じかな? ベッドで可愛がってもらってるし!

 

 

「ラフタ。サボってないでイモの皮を剥きな」

「いや、台本にそう書いてあったんだって。アジーもレッドから渡されなかった?」

「渡されてないし、そもそも台本なんて必要ないじゃないか」

「む、確かに………またからかわれた?」

「だろうね」

 

 

 おのれ、借金王レッドのくせに! と言っても、あたしにとってはお兄ちゃんみたいなんだよね。アジーと並ぶと恋人みたいだし………同い年だっけ?

 

 

「そうだね。なら年上に敬語を使うべきじゃないか」

「同じクルーだし、だーりんのこと好きじゃん。同士同士♪」

「はぁ……。まあ、アイツがまともだったら恋人――――ないな」

 

 

 うんざりしたような顔で眉間にしわを寄せ始めた。久々に見たね、その顔。

 

 

「ご隠居やマクマードのオヤジさんに言われてるのさ。イイ男は居ないのかってね。まぁ色仕掛けで繋ぎ留めろっていうのもわかるけど、そういうのは自分で決めたい」

「だーりんぐらいには格好良くイイ男でないとね」

「そうだね。―――――――――同期からは行き遅れ、なんて言われるしさ(ぼそっ」

「なんか言った?」

「言ってないよ。ほら、さっさと剥く! 明日に間に合わないよ」

「はーい」

 

 

 いやぁ………多すぎだね。こんなに必要かな? というか歳星に着くまでもつの?

 

 

「食料や水にも余裕はあるよ。名瀬が言うには鉄華団はこういったことに無頓着らしいから私たちで教えるのさ」

「あたし達みたいなのは時間とか日付が曖昧になるしね」

 

 

 変わり映えのしない宇宙で生活が長いと日付とかが狂っちゃうからね。タービンズは表向き運輸業だから日付指定とかあるし、何よりも皆で同じご飯を食べて連帯感を養おうという考え。

 だーりん曰く、宇宙に出られないぐらい昔の地球の船乗りたちは毎週金曜日に食べてたらしい。

 

 

「丁度いい具合に明日は金曜日だ。レッドのところはカレーだったはず」

「シチューじゃないんだ?」

「タービンズじゃシチューとデザートが出るけど、あっちはほぼ男所帯だからね。ギャラルホルンもカレーらしいし」

「あのお髭のオジサンと色白ね」

 

 

 聞けばついこの間まではギャラルホルンのモビルスーツ乗りだったとか。それで明弘って、ガチムチの代わりにグレイズで哨戒任務に出ている。

 

 

「あっ、それで思い出したけど」

「何を?」

「明弘のこと。いやぁ、もうしつこくってしつこくって」

「なんだい。言い寄られているのかい? だったら名瀬に……」

「違う違う。シミュレーターの相手をしてくれって必死でさ。阿頼耶識なしのやつね」

「マニュアルで勝てると思ってるのかい?」

「じゃなくて、グレイズが阿頼耶識に対応してないからマニュアルで乗るしかないんだって。そのために鍛えたいってさ」

 

 

 それを聞いてアジーも柔らかな顔つきになった。向上心があって、なおかつ仲間―――家族の為に頑張れるヤツはアジーの気に入るタイプだ。明弘はそんなやつだ。

 

 

「だからこそ、おねーさんと揉んでやろうと思った―――んだけど、負けず嫌いでね」

「アンタとお似合いじゃないか。レッドに負けて、涙目になりながら最後に姐さんに泣きついて―――」

「妹に優しくしないアイツが悪いの!」

「はいはい」

 

 

 むーっ! ………まあ、あんなに必死で頑張るやつはあたしも好きだけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆―――――☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 言っては悪いが今度、社長に相談しよう。あ、アイン・ダルトンです。自分は今、鉄華団の船のイサリビにクランクさんと一緒に出向しています。出向と言ってもあと数日ですが……。

 

 

「グレイズ、哨戒から帰ってくるぞぉ! お前ら準備しろ!」

 

 

 カタパルトブロックから上がってくるグレイズを見る。オーリス隊長の乗っていた機体が今はこのような形で運用されている。

 自分としては何とも言えない感覚だが、子どもを大量虐殺した汚名を少しでも晴らせればいいと思うのは傲慢だろうか?

 

 

「じゃあ行こうか。ヤマギ君は俺と一緒にデータ回収とクランクさんからの報告書の送信。タカキ君は他の子たちと一緒にスラスターの点検。終わったら推進剤の補給をしてくれ」

「わかりました!」

「報告書お願いします」

「それは俺とアイン、雪之丞でやっておこう。これがバー――んん! クーデリアに勉強を見てもらうといい」

 

 

 丁度クランクさんが出てきたようだ。お疲れ様です!

 

 

「宇宙装備ではなかったがああいったグレイズもまた新鮮だ」

「すまねぇな。売り物にできれば手を付けたくねぇんだが……俺から言っておこうか?」

「いや、それには及ばんよ。長年モビルスーツのパイロットをしてこれぐらい、御せずにいれば引退ものだ」

「ウェイストさんには負けたけどアデッ!?」

「ライド、あんまり大人を揶揄うんじゃねぇぞ?」

「いってぇな、でも本当じゃん」

 

 

 事実だけに何とも言えないのが悲しい。

 

 

「まぁ、そう思うのも当然だろうな。実際、この歳までギャラルホルンに居たがモビルスーツ相手に戦ったのは二十にも満たんよ」

「そうなの? 大したことねーな」

「ライド!」

「構わんよ。元は地球から左遷されたからな。地球圏では海賊連中はそこまでいない。月外縁軌道統制統合艦隊(アリアンロッド)が存在するせいでな」

「そのアリアンロッドってなんなんですか?」

 

 

 月より外側――つまり、地球圏の外側の治安維持を行う月を拠点とした独立艦隊のことだよ。

 

 

「うむ。セブンスターズの一人、ラスタル・エリオン候が指揮をしているギャラルホルンの最精鋭だ。地球外縁軌道統制統合艦隊(ブリーイッド)も同様だが、地球圏の治安維持を担う関係上、外に出ることはほぼ無い」

「ギャラルホルン全体を統括しているのは統制局って言ってね。火星支部などのコロニーやアリアドネに点在する支部は全て統制局の管轄なんだ」

 

 

 統制局とは別に監察局も存在するけど、どこまで機能しているかわからない。辞めるときに聞いたセブンスターズ(ゆかり)の特務監察官が来たと言われたがそれもどうだか。

 

 

「ともあれ、社長は圏外圏で腕を鳴らしていたんだ。それにまだ生きている。汚名挽回はいくらでもあるさ」

「そうですね。さ、皆も仕事だ」

「「はーい(うっす)!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆☆☆―――――☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の言い分はわかった。マクギリス」

 

 

 目の前にいる竹馬の友、マクギリス・ファリドに俺は釈然としないまでも考えを改める努力をした。

 ああ、自己紹介が遅れたな。俺の名はガエリオ。由緒正しきセブンスターズであるボードウィン家の次期当主として恥じぬ行いを心掛けている。

 

 

「納得はしていない、というのが不足しているな」

「火星人のヒゲ付きだ。それは変わらん。何より俺はお前の方こそどうしたんだと聞きたいぐらいだ。奴ら……なんだったか?」

「鉄華団」

「そう。それだ。その鉄華団のことを送られてきた男から聞き出した後からだ」

 

 

 ここに到着するまではクーデリアをどうするのか。腐敗したギャラルホルンをどうやって正道に戻すのかを語りあっていたというのに。

 

 

「何か琴線に触ることでもあったか? 哀れみか? 親しみか? 慈しみか?」

「―――――だとしたらどうする?」

「どうもしない。俺たちは親友だろう? 誓いあったじゃないか。どちらかが道を間違えたら正すと」

「………そう、だな」

 

 

 いったいどうしたというんだ? 何時もなら皮肉の一つでも返すのに。

 

 

「…………なあ、ガエリオ」

「なんだ?」

「俺は出自からしてセブンスターズには不向きだと思っている。本当に」

「お前はお前だ! ふざけたことを抜かすな!」

「これはお前が思う以上に深い問題だ」

 

 

 ――しばらく休む。一人にしてくれ。

 そう残してマクギリスは部屋に戻っていった。何か悩んでいるのか?

 

 

「俺にも話せないことなのか? 深い問題、というやつは……」

 

 

 マクギリスがファリド候の妾腹―――でなく、私生児というのは社交界では有名な話だ。そもそも血を残すこともなく、今の今まで生きてきた候の責任のはず。世界の秩序を守るギャラルホルン。そのトップに君臨し、かじ取りを行うため、血を残さぬことがどれだけのことか。

 

 

「父上に聞いてみるべきだろうか。いや、そんなことをしたら小言が待っているな」

 

 

 どうにも父、ガルス・ボードウィンは何かと俺に態度を改めろと小言を言ってくる。セブンスターズとしての立場と高貴なるものの宿命(ノブリス・オブリージュ)を心掛けているはずなのだが……。

 

 

「うーむ。どうするか」

「ならば私が付きあいましょう、ボードウィン特務三佐」

「げぇ! イーリス・ステンジャ!?」

「悪魔を見たような顔をするとは乙女に向かって失礼極まりますよ? ―――――10時間コース決定ですね」

「待て。シミュレーターを10時間は無理だ! 職務があるからな!」

 

 

 こんな化け物にかかずっていられるか! こいつのせいでカルタも女傑っぽくなってきてるし!

 

 

「勘違いなさっているようですが帰還するまで毎日です」

「仕事が―――」

「コクピットが貴方の居住空間になりますが?」

「いや、無理―――」

「やれ」

「…………はい」

 

 

 めのまえがまっくらになった…………!!

 

 

 

 

 

 

 





 次は歳星に到着します。どっちかと言えばマクマード絡みは原作通りの為、カットする方針です。
 メインは歳星名物の整備屋オヤジによるガンダム蘊蓄ですよ。


P.S. ガエリオの強化フラグが発生しました!

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