鉄血のオルフェンズ 赤い悪魔、翼を開いて 作:カルメンmk2
―――モビルスーツを持っているから只者じゃねぇとは思っていたが……正直、見た目と交友関係の釣り合いが全く取れてねぇよ。
まあ、そのおかげで今があるんだけどよ?やっぱ納得できねぇ。
鉄華団火星本部所属、現社長ユージン・セブンスターク
「ミカ!?」
空の薬莢が山積みになるほど撃ちまくったミカがついにヤっちまった。
確実に殺せるよう、次々と弾丸を喰らわせていくのを黙ってて、気付いた時には死ななくてもいいヤツが血の海に沈んでいた。
「オルガ? どうしたの?」
「どうしたも何もお前何をやって………え? はぁ?!」
ちょっとイラっと来る格好で出入り口の前に立つ傭兵、レッド・ウェイストが無傷で存在していた。
「おいおい。このスタイリッシュさがわからないのか?」(ズギュゥゥーン!)
「僕はちょっと……」
「どんな格好だよそれ? てか、よくその態勢でいられるな」
「……お、俺もよくわからねぇな! ああホントにだ!(やべぇ。めっちゃカッコいい!!)」
「ダサい」
いやいや。お前は銃弾叩き込んでいただろ? あれ? どうなってんだ? 誰か教えてくれ。300ギャラーあげるから!
目の前が真っ暗に―――――止まるんじゃねぇぞ……!
「君らのボスはどうしたんだ? なんか前髪が高速回転してるんだが……」
「オルガ!? しっかり!」
「はっ!?」
なんだ今のは? 俺はどうして走っていたんだ? スーツなんて上等なもん持っているわけが……!
「な、なんでもねぇ。っと………そうだ、ライドはどうした?」
「純真そうだったから少しブラックジョークを吐いてハンガーに向かわせた」
「ブラックジョーク?」
「自分の商売道具を勝手に弄られるのはイヤだってことだ」
―――そこのドクズ野郎なら猶更だ。
ああ、そうだった。ハエダとササイが赤いのを売り払うって話をしてたんだっけか。
「部外者が口を出すんじゃねぇ!!」
「俺のー、ものに―、手を出そうとしている時点でー、部外者じゃありませんー」
「この野郎……! オルガッ! さっさとそいつを黙らせろ!!」
「いや、あのな? 立場ってものを弁えろよ」
アレだ。コイツはシノとガキどもを足して二で割ったような性格だ。そんでもってトドみたいになんかイラっと来る喋り方をしてきやがる。
であっても、恩人は恩人だ。俺はクズ共と違って道理と義理を守る。件の男に向き直り、まっすぐ目を見て頭を下げる。
けど、その人はひらひらと手を振って先を促していた。
「ケジメってやつをつけなきゃならねぇ」
「っ………ここはお互い大人になって話そうぜ、な!?」
「手前みたいなクズ、にか? そんなのが大人ならなりゃしねぇよ」
「あ、アンタはどうなんだ!? わかるだろ?! 俺らみたいな弱小がギャラルホルンに目をつけられたらどうなるかってことぐらい!!」
ササイの野郎は強い奴に媚びんのが得意だな。そんなことする前に潔くなれねぇのかよ。
「……ウェイストさん。アンタはどうする?」
☆☆☆―――――☆☆☆
(どうするのか…………どうしようか?)
ユージン・セブンスタークとチャラ男みたいな奴の間を通って前に出る。
人相を見るに碌でもなさそうな二人を眺めていると、まぁ要らないことを叫ぶ訴える嘯くときたものだ。ガキどもじゃなくて俺たちと組もうから始まり、目の前で殺されそうな奴を放っておくのかと訴え、ツテだってあるんだ悪いようにはしないと嘯いてくる。
こっちもそれなりのツテだって持ち合わせているのだ。ハーレムイケメン野郎とか色白髭面のご同業とか、妙に和風かぶれのマフィアとか、焼肉奉行の司令官だとかとだ。
ふむん、と顎に手をやって考えると笑みを浮かべるオッサン共と背後から感じられる勝手に失望されたような蔑み。
なるほど。どっちも勘違いしているようだ。
「――――アンタらの話には乗らないぜ」
「んなぁ!?」
「いや、そもそもだね? 人の物をかっぱらって売り払おうとするヤツと仲良くなりたいか? そんなヤツがいるとしたらよっぽどのキチ〇イかお人好しだね」
一服盛ろうとしたことだって忘れたわけじゃないと釘は刺しておく。それとこれとは話が違うし、ド貧乏な私は仮従業員の為に大金を稼がねばならず、血も涙も情も情けもない借金取りにお金を返済しなければならないのでぃすヨー。やべ! 思い出したら首吊りたくなってきた。
「というわけで、俺は別にアンタら二人以外の進退についてはノータッチでエンドだ」
「待ってくれ! 他の奴らも話にのってたんだぞ!」
「言い出しっぺはどうせお前らだろ? 万年バカンス中の神様はこうおっしゃいました。先導者こそ善悪のもっとも深きものであると」
クソがぁ! と月並みな反応で体当たりしようとするハエダを俺は冷静に対処した。傭兵さんの七つバーの一つ
ラバー弾と同等の速度・威力を保持し、弾頭先端の鉤爪が服に食い込み、一回限りの殺傷クラスの電流が流れる優れものだ。肩口を狙ったからちょっとやばいかな?
「ッ――――ッ、ッッ――――!」
白目を剥いて口から泡を吹きだし、強烈な電流による熱量が刺さった部分と
「ひ、ひぃいい!!」
「てめぇもナー」
「やめ―――ギャアアアア―――――――」
抵抗されてもアレだから、ササイとかいうのにも喰らわせておく。
うーん。この後どうしようか? と後ろに顔を向けると引き攣った顔の4人――残り一人はどうでもよさそうな顔でミサンガを眺めている――がドン引きしていた。
「どうした? 笑えよ。ほら」(悪鬼スマイル
☆☆☆―――――☆☆☆
((((こ、怖ぇえええ……))))
(やっぱりいい匂いだ)
三日月以外、目の前で起きた所業にドン引きしていた。何よりもこんなことをしておきながら、夢に出てきそうな笑顔を浮かべ、笑えと圧迫するその鬼畜という言葉が裸足で逃げ出すその在り方。
オルガ、シノ、ユージン、ビスケットは引きつりながらか細い声で笑い声を出していた。笑わなければ次は自分たちがこうなるかもしれない、この時の四人は自信が笑顔を浮かべられているのか不安だった。
逆にレッドは必死な顔で歪みきった笑顔と笑い声を聞いてドン引きしていた。
「えっ、すっげぇ怖いんだけど?」
「「「「アンタが笑えって言ったんだろう!!?」」」」
「えー……俺、そんなこと言ったか?」
「言ったよ。面白くもないしどうでもいいから無視したけど」
――可愛げのない奴。
――アンタにそんなことを思われる筋合いはない。
どこまでが冗談で、どこからが冗談じゃすまされないのか四人は気が気ではなかった。知っている大人ではこんなにも破天荒な奴はいない。殴られるにしろ八つ当たりされるにしろ、それらを察せるだけの気配を目の前で痙攣している二人は感じさせていた。
オルガは参番組の頭を張る以上、仲間に危険が及ばないように立ち回る必要がある。
シノとしては面白いのか恐ろしいのか今一、判断がつかない。
ユージンは頭張っていたらコレと交渉をしなければならなかったのだと安堵している。そしてオルガはそれを目ざとく感じてイラっとしている。
ビスケットに関しては、下の妹たちが学校に行き、高等学校まで通って彼氏を連れてきてしまった妄想に逃げ込んでいる。
☆☆☆―――――☆☆☆
目の前で暴力の権化ハエダ・グンネルと強者に媚びるササイ・ヤンガスが無残な姿に変えられた。
二人の普段の行いや勤務態度を見ている自分――デクスター・キュラスターからすれば当然の報いだと声を大にして言える。同情など浮かばない。
――しかしながら自分も同じ穴の狢だと良心が蔑んでいる。
「あのぅ……」
「何かな?」
「ひぃっ! こ、殺さないでください!!!」
「待ってくれ! デクスターさんは何も悪いことはしてねぇ!!」
人を殺人鬼扱いしないでくれるかな!? ウェイストと呼ばれる青年が少年兵のオルガ君たちに抗議している。私にとっては……とても罪深い言葉だった。
(何も悪いことはしていない。言いかえれば、目の前で酷いことが起きていても何もしなかったんだ。どれだけ使い捨てられていても、私は我が身可愛さに……)
彼らを庇ったとしても痩身矮躯の自分ではハエダの拳を受ければ一発で病院送りに違いない。そもそもな話、自分には強きをくじき、弱きを助けるなんてことは怖くてできなかった。
「………退職を願います。私はここには居られませんから」
「待ってくださいデクスターさん」
「ビスケット君?」
「経理も担当していた貴方に抜けられるのはちょっと………」
「…………ですが」
「辞めていく奴らの退職金も出さなきゃならねぇんだ。頼む」
「はぁッ!? おい、待てよ!!!」
ああ、彼は――――オルガ君は例え憎い相手でも筋は通すべきだというのか。ユージン君の反応こそ普通だというのに……。
「わかりました」
「ありがとうございます!」
☆☆☆―――――☆☆☆
あの後、若干の業務上の事故死者を出して解散となった。
俺はと言うと、やたら勢いのあるノルバ・シノとやらに付き添われつつ監禁となった。その状態も朝には解放され、とりあえず遅めの朝食を屋外でとっている。一人ではなく、CGSを乗っ取った幹部組とだが……。
「挨拶が遅れたな。俺はオルガ・イツカ。援軍、感謝する」
「レッド・ウェイストだ。こっちも収入があったし、あとはお嬢さんへ繋げてくれればかまわないさ」
「必ず繋げる。それが筋ってもんだ。で、ハエダ達のことなんだが……どうするんだ?」
「ああ、それな」
宇宙漂流刑にする、って言ったらそら恐ろしいものを見る目で見られた。宇宙でも多少は仕事をしたことがあるみたいだな。
「確かにアイツらは殺したいほど憎いけどよ。それは……」
「君らがそうでも、俺はそうじゃないぞセブンスターク」
「ユージンでいいって………」
「仕事中はファミリーネームと決めているんだ。つまり、今は仕事中なんだ」
プライベートのオン・オフははっきりとしましょうってことだ。
「俺の商売道具に手を出そうとした。そのケジメだ」
宇宙漂流刑なんて、司法による死刑としては最悪の類だ。三日分の酸素と食料を脱出ポッドに載せ、罪人を乗せて放出する。当然救助ビーコンは作動させず、窒息死か餓死。あるいは発狂死の未来が待っている。
なお、何も知らない第三者がポッドを拾った場合、すべての罪が免除されるというご褒美がある。
「君たちもそういう世界に足を踏み入れている。忘れないほうがいい」
「………忠告感謝する。捕虜はどうするんだ?」
「ギャラルホルンとの交渉に使う。飽くまで自衛をしたという体でな」
「また来たらどうするんだ?」
「容赦をする必要なんてないが可能であれば殺さずに見逃すことだ。必要以上の殺しをやらないのは一種の信用になる」
俺? 皆殺しにしたわけじゃないから
「案外、ギャラルホルンを辞めるかもしれない。自分が攻撃した連中が子供だったから落ち込んでいたからな」
「そんなことで真っ当な仕事を捨てんのかよ?」
「真っ当な境遇だからな」
生まれと育ちで未来の大半が決まってしまうのが今の世界だ。地球生まれの地球育ちで中産階級ならそれなりの地位に就くことが可能で、下層市民なら実力次第で成り上がれる。上流階級は生まれながらの勝ち組だ。ギャラルホルンのセブンスターズ縁の奴なら言うまでもない。
これがコロニーとなるとギャラルホルンで出世は絶望的となり、地球出資の企業においても同様となる。なれるだけでも御の字であるのは違いない。
圏外圏だと悪夢となるのはわかるだろう。火星の実情を見ればわかるはずだ。
「腐ってない普通の軍人なら子供を殺すなんてことは拒絶する。命令で仕方なくとも、終わったあとに夢に出るだろうさ」
「……………それが真っ当、ってことか」
何か憧れでもあるのかね?
「こんな命がけの仕事より、きったはったのない仕事がしてぇんだ。誰も死なせないためにも」
「明確なプランはあるのか?」
「お嬢様の護衛の仕事がある。それを成功させられれば、俺たちの名は売れるし金も入る」
「じゃあ、商売敵ってことになるのか」
俺もクーデリアのお嬢さんに売り込みに来たのだ。パトロンがいたとして、二つの傭兵組織に満足のいく報酬など出せるだろうか?
「そのことについて、折り入ってお話したいことがあるんです」
「ものによるな」
「一時的に外部顧問として僕らのCGSに―――」
「CGSじゃない。ビスケット。鉄華団だ」
「鉄華団に所属していただけませんか?」
――鉄華団ってなんだよ、それ?
――今決めたんだよユージン。マルバもいないからな。
「どちらにせよギャラルホルンと対峙するのは時間の問題です。クーデリアさんに雇われる点では同じだと思います」
「………上にいる連中に話しを通してもいいか?」
「仲間がいんのか?」
「仲間というより、成り行き上の連中だ」
元海賊のヒューマンデブリだけどな。
普通に考えて、モビルスーツや輸送船の維持費が安いわけがない。
実際の相場そのものはわかりませんが多分、収入のほとんどは維持費で消えてるんじゃないでしょうかね?