鉄血のオルフェンズ 赤い悪魔、翼を開いて 作:カルメンmk2
私はパトレイバーも好きですよ? リチャード・王とか美味しいじゃん!!?
鉄華団のメンバーがコレジャナイ感を多く感じますが、主人公のせいだということにしておいてください。ぶっちゃけ、原作よりも相当イージーです。
――彼のことかい? 初めてあったのは経済圏から金を使うよう要請されて、暇つぶしに金貸しをし始めた時だね。
――当時の彼のこと? …………意志の強そうな青年だったよ。実際、雲隠れしようとするまでは返済も滞りなくやっていたからね。逃げた理由は……まあ、彼ならそうしてしまうって納得したよ。
――あ、今でも彼は不良債権さ。早く返しに来てもらいたいね。ホントにね。
地球火星間経済連合総長 エンマルク・ドルポンド
えっと、“鉄華団が解散するというのは本当ですか?”――違いますね。ここは“本当なのですかっ!?”のほうが臨場感があって? フミタン? 今台本を―――
「んんっ。―――三日月は大丈夫なのですか? 団長さん」
「いや、俺らからしたらアンタのほうが大丈夫なのか?」
「だって第一話からようやくの再登場なんですよ!? 私、鉄血のオルフェンズのヒロイン枠でしょう!?」
「メタい話はヤメロー!!」
~オルガとクーデリアが
「三日月は大丈夫なのですか、団長さん」
「………」
「団長さん?」
「お、おう! ミカなら大丈夫だ(学のある連中ってのは皆こうなのか?)。ウェイストがどんなに強いと言ってもミカは俺を裏切らない。俺もミカを裏切らない」
「そうですか――――くっ、鎮まりなさい私の右手。リアルのカップリングは諸刃の剣よッ!(ボソッ」
「やっぱ碌でもないこと考えてないかアンタは!?」
~オルガ、クーデリアを説教中~
「すみませんでした。久々で―――」
「お嬢さん?」
「ええ! 大丈夫ですぅ!!?」
「………はぁ……なんで戦いが始まる前にこんなに疲れるんだ」
だって、嬉しかったんだもの。出番が欲しかったんだもの――byクーデリア
「いやー。面白いものが見れた見れた♪」
「アンタもさも当然のようにここにいるな? あっち側だろ?」
エンマルク・ドルポンド氏…………ギャラルホルン、ひいては経済圏も圏外圏ですら無視できない存在。なぜ、イサリビにいるのでしょうか?
「向こうも面白そうだけど、こっちのほうがもっと楽しそうだと思ってね」
「俺らにとっちゃ楽しくもねぇよ」
「人生楽しまなきゃ損だ。逆境を如何に楽しむか? それが自分を豊かに方法だよ」
逆境を楽しむ………私には理解できそうにないですね。誰も欠けることのなく、無事に旅が終わることが望ましいです。
「そんな甘い事、もう出来なくなると思うけどね(ぼそり」
「なにか?」
「いいや、なんでもないさ」
ここが私の分岐点だったのだと思います。
火星に戻り、ただ夢を見る少女であり続け、有力者の妻となってバーンスタインの家に尽くす平凡な人生。
地球に行き、立ち寄る先々で革命の乙女として現実と冷酷さを知り、上に立つものとして生きることの……。
あの日、あの時、あの場所が私の未来を決める一瞬となったのです。
☆☆☆―――――☆☆☆
よう、俺は鉄華団に居残った大人組の一人。ナディ・雪之丞・カッサパってもんだ。整備をしていて、実質的に整備班の責任者をやってる。ちなみにモビルスーツよりモビルワーカーの整備が専門だ。忘れんなよ?
「すまねぇ、三日月。バルバトスの調整は完全にじゃねえ。装甲の補修と補強、鹵獲したスラスターは着けたがもろもろの調整も不完全だ」
「大丈夫だよおやっさん。あとは俺がなんとかするから」
「本当なら完璧に仕上げなきゃならねぇのによ」
「気にしなくていいよ。アイツに負けるつもりなんてないし、相手は怪我人だからさ」
そうは言うがモビルスーツに乗り続けて何年の傭兵。それも色々と未知数なうえにタービンズからの信頼も厚いと来やがる。阿頼耶識があるといっても、整備不良気味の骨董品じゃ心配になる。
何よりもソフトウェアの構築が追い付いていないから、青いグレイズのスラスターがメインのと同期できていない。阿頼耶識がどこまで対応するかがキモだな。
「いいか。怪我なんてするんじゃねぇぞ? 機械はぶっ壊れようと直せるが人間は壊れた治せないからな!」
「わかったよ」
あいつはオルガの命令だったら躊躇なく実行しやがる。まるで自分をモノか鉄砲玉みたいに扱いやがる。
「………死ぬんじゃねぇぞ。ようやく明日が開きかけてんだからよ」
「おやっさん! エアー抜きますよ!!?」
「すぐに行く!!」
頼むぜ、ウェイストさんよぉ。戦争屋にこう願うのは何だが、ガキ共を殺さないでくれよな。
『三日月・オーガス、バルバトス発進するよ』
☆☆☆―――――☆☆☆
「アレをどう思う、アイン」
「宇宙仕様のスラスターを増設してますね。出力に対しての慣性制御ができているかがわかりませんが」
「同期ができているかもわからんな」
「聞いたところ、鉄華団には専門のメカニックが居ないそうです。火星衛星軌道では、事前に我々がセッティングしていました」
そんなことをクランクさんとアインさんがブリッジで話している。あ、俺はビトーってんだ。社長に最初にボコられてたけど、宇宙での経験は長いんだぜ。
「阿頼耶識を使ってれば簡単だぜ?」
「そうなのか?」
「イメージは思いっきり前に進もうとするイメージかな。グッとスラスターがある位置を意識するのもあるけど」
「凄まじいな。バランスは、生身でとるような感じか」
「うん」
ペドロがそんな調子で俺たちの操縦のことを話している。ブルワーズじゃ訓練なんて受けていない。最初にシミュレーターに乗せられて使い物になればパイロット。使えなければ陸戦部隊にされる。時々、陸戦もやっていたけど。
「そうなると社長は不利だ」
「なんでだよ? 何年も乗っていたんだろ? クダル――ブルワーズの
「……恐らくだが本来だと君らのほうが強かったのだと思う」
クダルより強い? 俺たちが? ……想像できないな。
「ミリアムから話は聞いたが君たちは過度の栄養失調による、身体能力低下が酷かったそうだ。そして暴行や普段の生活で縛り付け、犯行の気が起きないように洗脳していたのだろう」
「洗脳? ………よくわからないけど、クダルやブルックに逆らおうって気は起きなかった、よな?」
起きなかったな。団長のブルックにも殴られてたし、逆らえば飯抜きと折檻が待っていた。
「だからこそ解せんのだ。生き残るために死に物狂いな君たちに…………社長は
「どうだったかな? ………あ、そういえば―――」
――ペドロとビトー、アストン、昌弘、デルマも俺たち五人が集まったとき、急に動きが変わったと思う。
☆☆☆―――――☆☆☆
おやっさんの言っていた意味が分かった気がする。あ、俺、三日月・オーガス。よろしく。
―――これ、毎回やらなきゃダメなの? わかりづらい? ふーん、あっそ。
『ミカ。ウェイストは目標宙域にいる。場所はわかるな』
「うん。アステロイド、だったっけ? 石ころがいっぱいあるとこ」
『そうだ。何度も言うが、絶対に殺すな。火星でやってた模擬戦と同じ気持ちでやってくれ』
「了解」
降参か、戦闘不能の判定を受けたら終了。致命傷を与えるような攻撃は禁ずる。面倒くさいな。
「まあ、大丈夫だろ」
『ミカ』
「何? オルガ」
『―――頼んだぞ』
「任せて。―――俺たちの前に立ちはだかる奴は何が何でも蹴散らしてくから」
そうだ。オルガが連れて行ってくれる。ここじゃないどこか。俺たちが―――鉄華団の皆がたどり着く場所へ。
だから、こんな所で立ち止まっているわけにはいかない。
『――来たか』
赤いモビルスーツ。バルバトスと同じ、目が二つに角が二本。耳と頭の天辺あたりに板みたいなのがついている。
よく見たこととはなかったけど、二の腕あたりに三段ぐらいフレームが束ねられている。腕には尖ったデカい杭が一つずつ。ビスケットやユージンの話だと、ワイヤー繋がっていて射出できるらしい。
「ごめん」
『最終確認のいい時間になった。そっちは………色々とくっつけたみたいだな』
「アンタもね」
背中に桜農場のトウモロコシみたいなやつが二つ付いている。俺のみたいにスピードを上げるのかな。
『三日月』
「チャド? どうしたの?」
『ドルポンドさんもこっちで見ているんだが、アドバイスをしてやれってな』
「あっち側じゃないの?」
『ハンデ、だそうだ。使えるものは何でも利用しろって、オルガも言ってる』
「そう。じゃあお願い」
『まず、あの背中の追加ブースターはバルバトスに付けたやつより出力は上だと思う。けど、近接装備でもないものにナノラミネートは意味はないから、手持ちの120㎜ライフルで狙ってみてくれ。数を撃てば当たるかもしれない。それと―――』
阿頼耶識を利用して、変則軌道で接近。メイスで一撃入れて終わり………意味ある?
『俺だって出番欲しいんだよ!? 誰も俺の名前を………そんな目で見るのはヤメロー!!』
―――みんな、アイツと関わってから変な感じになったな。
『三日月! タービンズから試合開始の合図が出る。残り十秒!』
「ビスケット? チャドは?」
『泣いてどこかに行っちゃったよ! それより準備して!』
9――8――7――6――
『さて、お手柔らかに』――5――4――3――
「死ななければいいんだろ」――2――1――
――始めッ!!――
『「……ッ!!」』
☆☆☆―――――☆☆☆
最初に仕掛けたのはバルバトスだった。左手に持った120㎜ライフルを撃ちながら最大出力で接近していく。狙いはメイスによる一撃必殺。手早い方法を考えたのだろうが、一瞬でカタをつけるインパクトは今後の交渉では大きいものだ。
そしてヴァサゴはその射撃を難なく避ける。自分で近づくことはせず、最低限の動きで待ち構える。
『なんか気に入らないな』
『そう不機嫌になるなよ。坊や』
やがてクロスレンジの距離に到達した。
反撃は一切受けず、バルバトスはメイスの射程圏内にヴァサゴをおさめた。120㎜ライフルを放り、両手でメイスを保持、死にはしないだろうと頭部に向かって思い切り振り下ろす。
『油断しすぎ!』
『お前がな!』
刹那、どこにそんな推力があったというのか一瞬でメイスの射程圏外まで後退するヴァサゴ。たたらは踏むまいとバルバトスは三日月の操縦センスもあり、そのまま突きへと移行する。
どんな仕掛けかわからないが、メイスに仕込んであるパイルバンカーなら下がられても十分射程内だ―――その時、三日月は違和感とともに悪寒を感じ、メイスを横に振るい、反対側に蹴りを見舞った。
『ッ!?』
『防ぐな。すごいすごい』
ヴァサゴの両腕が伸びていた。左右から挟み込むように迫っていた手にはハンドアックスが握られている。
『ゲイレールって奴の装備でな隠し武器にもなるし―――』
捻った体勢で滑空砲を発射する。
『盾にもなる』
重い金属音を響かせ、砲弾は弾かれた。しかしチャンスでもあった。
『これで決める』
『そういや、
『あっそ! またか!!』
『当たるわけにはいかんねぇ』
再び突撃の姿勢で迫るバルバトスを妨害したのはヴァサゴの両腕にあったはずの巨大な杭だった。敵の懐にいるわけには、と逃げるもまるで意志を持つように杭は追いかけてくる。
ヴァサゴは腕を元に戻し、ハンドアックスを放って、腰からハンドガンを取り出す。
『――やっぱり……』
一発、二発、三発と発泡する。
バルバトスが僅かな隙をついて接近する。
『うざったいな。けど、これで右は使えない!』
『腕に着けるべきだったな!』
腕を引いたことにより、ほんの一瞬だがワイヤークローが引っ張られたのだ。その隙を三日月は見逃さない。片方を掴んで無理やり引き千切り、追いかけてくる方へ投げつけたのだ。ワイヤー同士が絡まるのは何としても避けたいと、ワイヤーの引き出しを止めクロー部分に搭載されたブースターが大回りするように離れていく。
必然的に右腕は引っ張られ、体勢を崩す。
『メイス相手にハンドじゃ無理だ!』
『腕ももっと邪魔だッ』
基部をパージした左腕を鞭のようにしならせて、バルバトスの右腕へと狙いをつける。しかし滑空砲の的確な射撃によって、勢いを殺され、弾かれた。
『これで!』
『まだだ。まだ終わらないぜ!!』
背中の追加ブースターが火を噴いた。
☆☆☆―――――☆☆☆
模擬戦の様子はイサリビの全部所流されていた。とはいえ、MSデッキに人はおらず、殆どは食堂に集まっていた。
戦いのオープニングは終始三日月が押し切り、レッドがそれを嫌がって逃げた―――ライドを筆頭とした年少組の感想だった。
「やっぱ三日月さん、スゲーよ!!」
「あの人追い詰めてるじゃん! さっすがー!!」
「阿頼耶識を持ってる三日月さんに勝てる奴なんていないって! ギャラルホルンもぶっ倒したしな!」
口々に三日月は凄い。俺たちなら大丈夫。マルバなんて追い払っちまえ、と声を大にして叫んでいた。
その状況はMSデッキの控室でも同じだったが雪之丞は眉を顰めていた。
(ウェイストはほとんど動いてねぇ。腕と姿勢制御、後退したぐらいだ。けどそんなこと可能なのか?)
雪之丞は火星の地上と宇宙の戦いをログから見分している。どの相手も三日月に対して、近接武器の鍔迫り合いか一撃離脱を主体としていた。足を止めて殴り合うことは最初の一機がやられてからしていなかった。
だが、ウェイストは鍔迫り合いもせずに三日月をあしらった。接近しても間合いから逃さず、相手の間合いからは逃げ余計にガスを使わせるように仕向けていた。
(こいつァ………阿頼耶識云々より、パイロットとしての技量と引き出しが違いすぎる)
阿頼耶識により、三日月の操縦は普通とは違って遥かに効率的で柔軟だ。それこそ生物的な動きをほぼ再現していると言ってもいい。阿頼耶識あってのものだ。
対してウェイストは阿頼耶識も無いのに似たような動きをしている。
「――元気なうちに仕留めねぇと負けるな」
☆☆☆―――――☆☆☆
一方でブリッジではオルガたちの表情は明るかった。三日月が押し続ける中、ユージンやダンテ、ビスケットは安堵の息を吐いている。クーデリアもその活躍に胸を撫で下ろしていた。
その中でドルポンドと明弘は対照的だった。前者はニコニコと笑みを絶やさず、後者はウェイストの技量と自分の差を実感していた。
「どうした。明弘」
「どうしたって……すげぇって思った」
明弘に気づいたオルガが言葉をかける。それに気づいたほかの面々も二人へと視線を向けた。
「あんな動きをしてて阿頼耶識がない。三日月と渡り合ってる。それが信じられねぇ」
「防戦一方だったじゃねぇかよ。何発かもらってたしよ」
「けど動いている。表立った損害は装備の一つを捨てただけだ」
戦場の動きが加速していく。ヴァサゴの追加ブースターは急ごしらえのグレイズのものとは比較にならない。縦横無尽に駆け抜けているヴァサゴは機体の色も相成って、まるで赤い流れ星のように見えた。
「まるで赤い流星だ」
二機は瞬く間に岩塊の漂うアステロイド帯へ突入していった。時折、岩塊の間から交差するスラスターの光が見える。
岩塊とはいえ相当の質量をもつ。正面衝突すれば中破、もしくは大破に至る場所で阿頼耶識持ちと戦う。本来なら勝ったも同然の状況をウェイストは生き物のように間をすり抜け、思いもよらないところから銃撃を加えていた。
「アイツ、頭のネジが外れてんじゃねぇか!? あン中で機動戦とかイカレてんだろ!!?」
機械の補助があるということだが岩塊を蹴って加速するなんてことが可能なのだろうか。
誰もがウェイストの技量に戦慄した。そして次はそんな彼を容易く仕留めた
ギャラルホルンに襲撃を受けたときのことが頭をよぎる。
「ミカを信じろ!」
「オルガ」
「ここで負ければ確かに鉄華団は解散だ。けれどもタービンズ預かりになる。真っ当な仕事をしながら生きていける」
「………なら――」
「代わりに俺たちはバラバラだ。仲間と! バラバラになるんだ!!」
同じ飯を食って、辛い時も苦しい時も支えあって生きてきたのだ。ようやく自由を手に入れて、望んでも得られなかったチャンスを手に入れられたのだ。
「ミカは俺を裏切らない。俺はアイツが勝つのを信じている」
鉄華団の誰もがその言葉に返す言葉が出なかった。この場で団員ではない、二人の人物は勝利を願い、祈る少女と三文芝居を見るように笑みを浮かべる男だった。
――男が静かになったブリッジで呟いた。
「――なら、君たちに正しいケレンを教えてあげよう」
その言葉と同時にバルバトスはヴァサゴの蹴りを食らい、岩塊にたたきつけられたのだった。
「ミカァ!!?」
ヴァサゴのイメージは画像検索で「ガンダムフレーム ヴァサーゴ」で調べてみてください。一番鉄血に近いカッコイイのがモデルです。
是非ともご覧ください。予定では改修していくとその画像のような姿になります。
【ケレン】:漢字では「外連」と書く。クリーンが訛ったという説もある。意味は嘘やハッタリなどを指す。
【ヴァサゴの弱点】
腕部の延伸機構のせいで完全にロックできない状態となっています。そのため鍔迫り合い等の組み合いを行うとロックが弾けて、腕を元に戻せなくなります。
また、収納状態ですが肘の部分を伸ばす形にしているため肘の外側が、ガンダムXのヴァサーゴの肩アーマー内と同じ状態にです。それゆえに大口径の火器をまともな体勢で使用できないところなどです。