「やっぱりマシュには白いワンピースが似合うなあ」
「ありがとうございます!先輩にそう言っていただけてとても嬉しいです!」
麦わら帽子を被って夏の日差しを浴びる僕の後輩。帽子を片手で抑え、スカートを翻しながら僕の方を振り返って笑う。
カルデアに居た頃にはなかった本物の青空の下、笑顔で輝いてる。
こんな時が来るなんて思ってなくて、どこの神様に言えばいいのか分からないけど、お礼を言いたくなってしまう。
願わくば、サーヴァント以外のカルデアのみんなともこんな…なんて欲張りすぎかな。
マシュやメディアたちとまた会えたことだけでも奇跡みたいなことなのに。みんなと居ると僕はどんどん欲張りになってしまうみたいだ。
顔を上げたら、少し離れたところでマシュが僕を手招きしている。
ひまわりが似合いそうだな、と思いながら彼女が僕を「先輩」と呼ぶのを…
「さっさと起きんか雑種!」
呼んでなかった…
魔力の枯渇とあまりの現実に一瞬気絶していたらしい。
相変わらず眩しいくらいの金ぴか具合で目がチカチカする。
ギルガメッシュ王は僕を心配するそぶりはおろか、助け起こそうとする気配すらないので自力で立ち上がる。
まあ王様が僕を心配しながら膝をついて抱き起こすぐらいしたら、見た目だけそっくりな新宿のアサシンかな?って思うけど。
「お久しぶりです王様…息災のようでなによりです」
「フン、貴様はなにやらその矮小な魔力のせいで我(オレ)を呼ぶのにも一苦労したと見える…こんな下賎な場所に長居するつもりは毛頭ない。せいぜい励めよ、雑種………それからそこの金髪!貴様もせいぜい足掻いてみせるが良い。我の暇つぶし程度にはなるかもな…」
え、ええ~…魔力使うだけ使っといて言うこと言ったら消えちゃった…いや、飛んで来る瓦礫から僕を守ってくれたけど。
ちなみにその瓦礫は砂と化している。
近くまで駆け寄って来ていたトッシーとお師匠さんも突然現れた王様に唖然として立ち止まっていた。
普通に考えたら雄英に侵入者って大事件なんだろうけど、状況的にどう見ても僕の個性だし、彼が居なかったら怪我していたのは確定なので何も言えないって感じかな…
トッシーには怒涛の勢いで謝罪されて、お師匠さんも「周囲の状況を見て行動しろ!守るべき一般人を自ら危険に晒してどうする!」と言いながら、トッシーを動けないくらいボッコボコにした後、僕に謝罪した。
訓練とはいえ戦闘中にボーッとしていた僕も悪いし、結果的に王様が助けてくれたで問題はない。
でも危なかったのは事実なので、今日はもう家に帰ることになった。
お詫びにトッシーが送ってくれるらしい。
お師匠さんはすまんがまだ仕事があると言って、トッシーに1発決めてから去って行った。
チヨさんのところにもう一度顔を出して挨拶してから雄英を出る。
ちなみにまた肩車すると言って聞かないのでトッシーの肩の上に乗っています。
この人は本当に人の話聞かないんだなあ。
来る時とは逆に坂道を下りながら、さっきのことを質問された。
「う~ん、さっきの金ぴかの人は僕の個性。色んなすごい人を呼び出せるんだ。あの人は王様」
「へ~!それは楽しそうな個性だね!王様かあ…確かに見た目とか言動とか王様っぽかったねえ」
古代バビロニアの王様でギルガメッシュ王って言うんですよ、とは流石に言えなかった。
英霊とか言うと話がややこしくなるし、あながち間違いでもないのでセーフ!ごめんねトッシー。
「ちょっと怖そうな人だったけど堂々としててカッコよかったし、私のこと応援してくれたみたいだね!嬉しいなあ」
あれを応援と解釈するのか…初対面で王様に物怖じせずこの寛容さ…トッシーすごいな。
実際あれが応援なのかどうかは別として、王様に会っただけであんなこと言われるなんて本当にすごいなあ。
ヒーロー目指してるみたいだけど、将来英雄になっちゃったりするんじゃないだろうか。なんてね。
色々考えてギルガメッシュ出したつもりなのに、マスター以外の人間が居たら全く動いてくれなくて大苦戦でした。
オルマイもオジマンっぽいとか書いちゃいましたけど王様ではないですし。
ナンバーワンヒーローというシステムは絶対嫌いだと思います。
人の身に余る、それは王たる者の責務だ。そして王と呼ばれるべきは天上天下において我ただひとり。有象無象が頂点に立つとほざくなど片腹痛いわ!とか言いそう。
嫌いっていうか気に入らない。
まあそれは客観的に見たらというか、そもそもまだ平和の象徴じゃないですしおすし。
「何であれ、自己の限界に挑まぬ生命はつまらん。獣と人の違いよな」と仰ってる人なんで、現状の成長しようとするその姿勢を見て、マジで酒を片手に暇つぶし程度には見所がありそうな男よな、くらいには思ってそうです。(多分)
あと一応新シンくんの真名は伏せました。