「こいつを殺されたくなかったら、有り金全部持って来い!!!」
ええ…またですか…
この1年で人質にされたり事件に巻き込まれること実に5回。
そしてその度にサーヴァントの誰かに助けて貰っているのだが…犯罪発生率多すぎでは?ここは米花町なんですか?
いや、米花町だったとしても、主人公と関わりのない所であればそんなに犯罪は起きていない気がする。
となるとここはあの町よりもタチが悪いのでは…ええ…
なんて冗談を言っている場合ではない。
それもそのはず、今日は今までの事件の中でも一番のピンチなのである。
今朝、王様がママの出した朝食に文句があったようで、ママに小言を言ったことをきっかけに一悶着あったので魔力が全然足りません!
具体的に言うと、サーヴァント1人を実体化させられるだけの魔力すらない。
も~!うちには無駄遣いできる魔力なんかないってお母さんいっつも言ってるでしょう!?
完全にガス欠ですわ…まあ放っておいてもその内ヒーローが来てくれるだろう。
事実、この間は銀行強盗をトッシーのお師匠さんがとっ捕まえていた。
あの人は本当アグレッシブだよね。個性の都合だけど俊敏な動きで敵にドロップキックをお見舞いしていた。
さあ、今回もやっちゃって下さいヒーローさん方!
と思っていた時期が僕にもありました!
ヒーローが助けに来ません!!
いや、現場に来てはいるんだけど、人質が危ないので手が出せなくてこう着状態なんですよね…
そのせいで敵たちはイライラしているのでとても危険です。
僕は慣れているとはいえ、今日はサーヴァントを呼べないし、今は礼装もない。
ただ事件に遭遇する回数が多いだけの一般市民に過ぎないのだ…言うならばモブCくらい。
それだけならまだ良かったんだけど…さらに悪いことに僕以外にも人質にされている子が居る。
僕よりも小さい男の子で、ずっと泣いている。
大声をあげて泣いたら犯人を刺激してしまうと分かっているのか、泣いてはいるがとっても静かで大人しくしている。
せめて僕が安心させてあげなくてはと思い、ずっと握っている手は痛い程強く繋がれている。
こんな小さい子が降りかかる理不尽な恐怖に黙って泣いている姿をただ見ているだけしかできないだなんて…クソ、何が世界を救った人類最後のマスターだ!
そう思いながらこれからどうしようか思案している時だった。
短気な敵の1人が見てろ!と叫び、その大きな腕を男の子に向かって振り下ろそうとした。
僕の隣で男の子がヒュッと息を飲む音が聞こえる。
駄目だ。
やらせない。
守らなきゃ。
拒絶の声が聞こえる。
それが隣の男の子の声だったのか、自分の声だったのか…それとも周りの誰かの声だったのか分からないうちに、僕は踏み出した。
手が繋がれている左腕で庇うように男の子の前に出て、右腕で頭上を覆う。
右の手の甲がカッと熱くなり、ふと令呪の存在を思い出す。
すぐさま全画消費しマシュを呼ぶ。
頼む。
この子を、護ってあげて──────!!
眩しくて目が開けていられない程の光と鈍い轟音に包まれ、僕は右腕を弾かれるようにして横に吹っ飛んだ。
転がすスピードが落ち止まった頃、すぐ横で重い金属が床に叩きつけられるような音がする。
痛む右腕を無視して起き上がり目を開けると、そこには驚愕の眼差しとともに僕を見る周囲の視線と未だに響く金属音。
音の正体を探るべく隣の床を見れば…そこには見慣れた僕の後輩、マシュ・キリエライトの盾が「自分が攻撃を防いだのだ」と主張するように未だに揺れながら、その本来の主の姿を見せないまま転がっていた。
「マシュ───?」
投稿スピード落ちてしまってすみません。
以前ほどネタが浮かばなくなったり風邪引いたり色々していました。