マスターの絆は砕けない   作:きど

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転機5

今日、学校で「将来の夢」という作文を書くことになった。

 

僕はフヨおばあちゃんとあの家で慎ましく平和に過ごせればそれでいいんだけど、小学生が書く作文にしてはじじくさいかな…

周りの子たちはほとんどヒーローになりたいと書いていた。個性社会である現代のヒーロー人気は凄まじいものだ。

 

 

家に帰って家事を手伝っていたマシュと作文のことを話せば、マシュは当然のように「先輩の夢もヒーローではないんですか?」と首を傾げた。可愛い。

え、でも僕がヒーロー?何でだ?

 

「何故、ですか…当然のようにそう思っていたのですが……先輩は私にとっていつだってヒーローでしたから!困っている人を見捨てられない優しい心の持ち主ですし、先輩がいらっしゃらなければ人理修復は成し得ませんでした…」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど…僕ひとりじゃ人理なんて修復できなかったよ。マシュが居なくたって無理だったし、それはカルデアのメンバーひとり残らずそうだったと僕は思ってるよ」

 

そんなことはマシュだって言われずとも分かっている。

あそこにいた誰ひとりとして欠けていたらあんな偉業は達成できなかった。それなのに、マシュは僕をヒーローだと言う。

 

…そんなマシュの真っ直ぐな心が、ちょっと照れくさいけど嬉しいんだ。

 

確かに困っている人が居たら放っておけないし、手を差し伸べずにはいられない。そういう性分なのだ。

でも僕は世界を救うヒーローになりたくて頑張ったんじゃない。誰かを助けたい、守りたいという思いが原点で、その行動の結果ヒーローみたいになっただけだ。

あの時は僕しか居なくて、僕にしかできないことだったし。

 

でもなあ…みんなを助ける仕事なら、僕は交番のお巡りさんとかが良いなあって言ったら「素敵です!先輩にお似合いのお仕事ですね!!」と食い気味に言われた。

エミヤさんも街のお巡りさんが似合いそうですね~マシュも似合うよ~!あ、でもお花屋さんとかケーキ屋さんも良いなあ…と話していると、通りかかったメドゥーサが衝撃の一言を。

 

「堂々と個性を使えるのはヒーローだけかと…思うのですが…」

 

一瞬で表情の曇った僕とマシュを見て言葉の勢いを弱めたが、事実は変わらない。

 

そ、そうだった…!

「個性使ってま~す」感がないので人目を気にせずガンガン使ってみんなを現界させているが、本来公的な場では個性は使用禁止なのだ…

普通に法律違反してた。

 

え、ええ~…いや、無理だよ。

僕はみんなが居ないと生きられない身体になってしまった…というか、まあ冗談は置いておいて、僕の日常になり過ぎていてまじで盲点だった。

 

という訳で、僕の勝利の夢はあっさり軌道変更。

みんなと一緒に生活できないなんてこの個性を授かった意味がない。

 

まずはヒーローとはなんたるかを勉強しなくては、と思い情報収集に入ろうとすれば「マスターのお婆さまは元ヒーローとか言ってなかったかい?」なんて眼鏡をかけて本を読んでいた燕青が呟いたので、身体はパソコンから縁側へ向き直った。

 

どうでもいいけどイケメンは何しててもイケメンだね!

フチなしの眼鏡って何か知的~。

燕青はリハビリ療法士さんとか似合いそう。リハビリめっちゃ頑張るわ。

図書館の司書さんとかしてたらめっちゃ通いつめるわ。

後はね、後はね!エミヤママが経営するカフェの店員さん!いやこれは全員似合うな。みんなでお店やって欲しい。

 

 

将来の夢、みんなのお陰で決まったよ!

僕はみんなの為にヒーローになる!




ちょっとスランプだったりで筆を止めていたら恐ろしい程の時間が経過していた…こわ…
お待たせして申し訳ない

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