秒で捕まった。
猫みたいに首根っこ掴まれて連れ戻される。
やめてくれ~首が絞まる~。
メディアが服が伸びるからやめろと怒っているが、そこじゃない。頼むからマスターに対してこんな扱いをしていることを怒ってくれ。
フヨおばあちゃんは、あらあらまあまあ新しいお友達?仲がいいのねえ、なんてニコニコしながら言っている。
いつも笑顔で優しいおばあちゃんは大好きだが、孫が何されてるか見えないのか?誰かまじで止めてくれ。
部屋の中央まで連れて行かれると急に解放された。
ぐえっと言って床とハグしていると頭上から声が降ってくる。
「なぜ逃げるんだマスター。他にするべきことがあるだろう」
真っ赤な服が塞いでいた僕の視界に、見慣れた顔が割って入る。
「や、やあエミヤ。久しぶり。元気そうでなによりだよ。会えて嬉しいなあ~」
「質問の答えになっていないぞマスター。まずは逃げた理由から聞かせてもらおう」
「まずはって何!?次になにが待ってるわけ!?だいたいこっちは顔見れば何を考えてるかくらい分かるんだぞ!?僕を見つけた瞬間お説教モードってどういうことなのさ!!そもそもなんで僕の居ないところで召喚されてるわけ!?おかしいでしょ!」
てっきりそんなことも分からないのかね?とか嫌味を言ってくると思っていたが、ちょっと目を見開き驚いた顔をして黙り込んでしまった。
後ろでメディアがおでこに手を当てため息をついている。何なんだ2人して僕が駄々っ子みたいな反応して…
僕を正座させてから正面で腕を組み仁王立ちしているエミヤは、微妙な顔をして僕に何から言ってやろうか思案しているようだった。いや、さっきからなんなの?その顔は。僕に文句があるなら言ってみろ!あ、やっぱいいです。
見かねたメディアが後ろから助け舟を出す。
「マスター。貴方がお茶を淹れに行ったすぐ後にそこの赤いのは召喚されたのよ。貴方が召喚に気付かず勝手に彼を置いていってしまったの」
「そんなことってある!?っていうかふたりも実体化してるから魔力がどんどん消費されてるんだけど!頼むからどっちか霊体化してくれないかな…」
本気で魔力消費がやばいので、空気読んでない発言をする。
欲を言えばどっちも霊体化して欲しいんだけど、それを言えば余計に怒られるのは目に見えているので黙った。
「っていうかエミヤはなんでさっきからずっと黙ってるんでしょうか…」
「貴方ねえ…ハァ、こいつだって顔に似合わずマスターに逢えて嬉しいのよ、分かる?それが召喚されたらマスターは居ないし見つけたら逃げるし、なのに「顔を見れば何を考えてるかぐらい分かる」だなんて言われて…まあ、今彼が黙り込んでいる理由が分かっていないんだからそれもどうかと思うけど…ちょっとやめなさいよ!」
僕を助けるためというよりも、ママに嫌がらせするためだろう。
あることないこと言い出したメディアを黙らせようとママが掴みかかるが、さすがに本気を出してはこの家も僕の魔力消費もまずいと分かっているのか、ただの追いかけっこみたいになっている。
魔力はガンガン減っていくけど、2人とも生き生きしてるなあ…カルデアでもこんな感じだった。
嫌ならちょっかいかけなきゃいいのに、と思うけど、頭の良い彼らが学習しないはずもない。まあ、そういうことなんだろう。
喧嘩なんて普通は怖いし悲しいことなので止めて欲しいが、カルデアではそんな喧嘩も何故か笑って見守ってしまう。本気でブチ切れてる時もあってそれは死人が出るので止めるけどね。王様系サーヴァントの扱いは慎重にならないとね。
ギャーギャーやっているといつの間にかチヨさんがやって来ていて一喝されて終わった。すげえ。
とりあえず魔力消費が洒落にならなくなってきたので、土下座してメディアには戻ってもらった。
フヨおばあちゃんと編み物の続きを教える約束をして、ママに捨て台詞を吐いて去って行ったが。
とりあえず今夜は最高に美味い飯が食べられそうだ。
チヨさんも夕飯食べて行かないかな。
エミヤママを「エミヤ」と呼んでるのはふざけるとガチで怒られそうだったからです。
普段はエミヤママかママ呼びですが、戦闘中とか真面目な話をする時はちゃんとエミヤって呼びます。