翌朝、目が覚めてまず思ったのが「ちょっと待って嘘でしょ無理」だった。
多分ママが一晩中実体化していたんだろう。魔力が全然足りない。
さすがの世話焼きエミヤ先輩も夜通し家事なんかしないだろうと思って特になにも言わずに寝たけど…恐るべき世話焼き体質…
サーヴァントは睡眠を必要としないから支障はないんだろうが、こっちの方に支障があるわ!
カルデアの魔力供給システムってすごかったんだな…ダ・ヴィンチちゃん召喚できないかなあと思ったけど、やっぱり魔力が足りないし魔術工房を作る金もないのであった。
いい匂いのするキッチンに行けば当然のようにエプロンをしたママが立っていた。
「おはようママ」
「おはようマスター。それと誰がママだ、誰が」
ママが冷蔵庫から出した牛乳をコップに注ぎながら僕の言葉を訂正して、そのコップを僕に手渡した。
控えめにチビだと言われた気もしないでもないが、それについては言及せず黙って渡された牛乳を飲む。小言を言いながらこういうことするところがママなんじゃん!
コップを返してお礼を言い、身支度のためキッチンを離れる。
着替えて居間に戻れば食卓には朝ご飯が並べられているところだった。
ああ〜もうすでに甘〜い匂いがしますママ!フワフワのスクランブルエッグやソーセージ、サラダにスープまで…うん、どこに出しても恥ずかしくない完璧な朝食だ。
高級ホテルの朝食よりすごいと思う。高級ホテル行ったことないけど。
朝ご飯を美味しくいただいたのでママには霊体化してもらった。
まだ洗濯物がどうとか言っていたが無視。
太陽が出ていない夜中に洗濯はできなかったんだろう。他は完璧っぽい。部屋中ピッカピカだからな。
その日幼稚園で食べた給食は…ちょっと不味かった。
いや別に食えないわけではないんだが、もう元の舌には戻れないらしい。
困ったけど実に幸せな悩みだ。
家に帰るとチヨさんが来ていた。
この人…落ちたな。魔性のアーチャーめ。
「おかえりマスター。今日の夕飯はチヨさんが持参してくださった海老を天ぷらにするぞ」
えっ!?やったーーーー!!天ぷら大好き!じゃねえよなんでまた実体化してるんだお前。
「マスターの魔力が回復したとみて夕飯の準備に来たのだ。俺が来た以上、マスターに自堕落な生活はさせんぞ」
やっぱりママじゃん。別にいいけど茶碗蒸しも食べたい。
その程度なんでもないという風に冷蔵庫に向かったママを見てガッツポーズを決める。よっしゃ。
僕は魔力消費量と回復量を計算してサーヴァント実体化シフトを組んだ。
今のところサーヴァント一体が一日10時間実体化するくらいがギリギリっぽい。これが聖杯戦争だったら僕は死んでるな。幼稚園児が出る聖杯戦争なんてあってたまるかって感じだけど。
実体化がギリギリなので宝具どころか戦闘もできないだろう。
いい匂いがして来たので自室を出る。
居間に行くとそこには大きな海老の天ぷらが…!
海老以外にもタラ、キス、半熟卵、かきあげ、レンコン、かぼちゃ、とうもろこし、あ!紅生姜もある!いかん、よだれが…
でも本当に待って!なんでマシュとメディアまで座ってるんだ!魔力消費がやばいんだって!!!
いやまあ、ママのご飯なら仕方ないか…みんな食べたいもんな。
マシュは気を遣ってくれていたが、エミヤとメディアはいつも通りやいのやいの…あんまりやりすぎるとチヨさんから喝が飛んでくるので嫌味や小言が飛び交うくらいだったが。
あれだ、嫁と姑みたいな…あ、もちろんママが嫁でメディアが姑ね!本人に言ったら確実に殺されるので絶対言えないけど。
そんな感じでみんなで夕飯を食べたら片付けのあるママ以外すぐ霊体化してくれた。
ちなみに夕飯はどれも美味しかったが、チヨさんの持って来てくれた海老はサクサクプリップリでとっても甘くて、とにかく美味しかった。優勝。
自分で書いててお腹空きます。
今日の昼食はうどんです。天ぷら乗せたい。