起きたらマ・クベだったんだがジオンはもうダメかもしれない   作:Reppu

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今回ちょっと短いです


第六十三話:0079/09/20 マ・クベ(偽)と大地に立つ-Ⅱ-

「やはり、そう簡単には見つからんか」

 

カメラ・ガン越しの映像を確認しつつシャアはそう呟いた。時間は既に深夜でありコロニー内も殆どが闇に閉ざされている。

 

「こちらは空振りかもしれませんな。他の連中は上手くやっているでしょうか?」

 

コロニーに侵入したシャア達は事前の決定通りロッテ3組に分かれ偵察していた。シャアの隊は侵入した港から最も離れているが、一番確率が低いと目されている居住区であったため、僚機のデニム曹長もどちらかと言えば他の隊が気になっているようだった。

 

「ラル大尉はベテランであるし、部下達も同様だ。我々が心配するようなヘマはせんさ」

 

そう言いながらカメラ・ガンを今度は商業区へ向ける。まだ営業している店が幾つかあるのか、居住区に比べれば灯りはあるものの、やはりシャア達が望んでいる物は無さそうだ。

 

「しかし、考えましたな」

 

最低限のAMBACで姿勢を制御しつつデニム曹長が口を開く。コンスコン少将の考えた計画への称賛だ。

 

「コロニーの中央は無重力だから、ここならばコロニーの奥までMSで侵入できる。夜間を狙っていけばほぼ見つからんだろう、コロニー内をレーダー探査していなければな」

 

少将の言葉通り、障害らしい物は一切受けず最深部までたどり着いていた。恐らく他の隊も同じ状況だろう。

 

「だが、目的の物が見つけられんでは徒労だ。何か成果があると良いのだが…」

 

そう言って今一度索敵をしようとしたところで、遠方で何かが瞬いた。続いてセンサーが僅かに届いた空気の振動を検知する。それは、兵士には見慣れたものだが、ここではあってはならないものだった。

 

「爆発!?」

 

「しくじったのか!?」

 

最悪の状況を想定して姿勢を変えつつ手にしたカメラ・ガンを発光のあった方向へ向ける。瞬きは断続的に起こっており、それが攻撃であろう事は間違い無い。

 

「港湾区!?アコース少尉とコズン少尉が見つかったのか!?デニム曹長、残念だが作戦は失敗だ。戻るぞ!」

 

最早隠れる必要は無いとシャアはバーニアを吹かす。一拍遅れてデニム曹長の機体も了解の声と共に加速を始めた。大気をものともせずに来た行程の十分の一以下の時間で駆け抜ければ、問題の元凶が眼前に映った。

 

「ジーン伍長!何をしている!!」

 

港湾区に向けて攻撃を行なっていたのは、潜入した二人では無く退路を確保していたはずのジーン伍長のザクⅡだった。

 

「敵です少佐ァ!奴らのMSです!」

 

その言葉に釣られて射線の先へ目を向ければ、確かに人型であったであろう残骸が転がっていた。だが、それよりもシャアの頭の中では別の問題が警鐘を鳴らしていた。

あの機体はどれも搬入用のトレーラーに寝かされていて、ここは港湾区だ。そこから導き出される答えに背筋が粟立つ。

 

「止せジーン!作戦は失敗だ!味方と合流し撤退するぞ!」

 

思考にとらわれている一瞬の間に、ジーンの機体を取り押さえようとデニム曹長が接近する。

 

「何を言ってるんです!ここで見逃せば連中はつけあがる!アースノイド共にはMSは過ぎた玩具…」

 

「っ!避けろデニム!」

 

シャアの言葉にデニム曹長が反応できたのは奇跡に近かった。咄嗟に飛び退いたその装甲を掠めるように赤熱した光条が地面をえぐる。だが、それはデニム機を狙ったものでは無く、考え無しに足を止めて射撃を行なっていた、もう一機のザクから逸れたものだった。

数発の光条にコックピットを貫かれたジーンのザクが搭乗者の言葉が終わるより早く脱力し、バックパックの推進剤が誘爆し上半身を吹き飛ばした。

 

「ジ、ジーン!?」

 

唐突な仲間の死に混乱したデニム曹長が動きを止める。そしてそれは彼の人生を終わらせるのに十分な時間だった。

 

「デニム!動けデニム!!」

 

敵が居るであろう辺りへ向けて射撃を行ないつつシャアが叫ぶが、奇跡に二度は無い。先ほどより数は減ったが、それでも数条の光に貫かれたデニムのザクが、ジーン機の後を追うように爆発した。

 

「…やってくれる!」

 

そしてシャアが敵を眼前に捉えた頃、他の隊もまた危機的状況にあった。

 

 

「クソ!冗談じゃねえぞ!?」

 

最後のマガジンに取り替えながらコズン少尉が毒づく。偵察初期の段階で船舶用ベイに何か進入していることを確認した二人は、より正確に情報を得るべくベイに進入したのだが、それが敵の新造艦である事を確認した矢先に戦闘が始まってしまった。そして当然ながら戦闘が始まると敵が索敵を行なったために潜伏していた二人もあっさりと見つかってしまい、濃密な防御砲火に晒されている。逃げようにも艦内に収容されていたMSが展開し包囲してきているため迂闊に動けば蜂の巣だ。

 

「…こりゃ、覚悟を決めるしか無いかね?」

 

ミノフスキー粒子が散布されていないため、使えている通信機からアコース少尉の声が聞こえた。

 

「バカ言うな」

 

傍受されることを警戒して短く返事をする。投降して捕虜になるにせよ、ここで死ぬにせよ、せめて大尉が離脱するまでの時間は稼がねばならない。それにもしかすれば他の隊が救援に来てくれるかもしれない。そう考えていた矢先、外から爆発音が響く。どうやらまだ運は尽きていないようだ。

 

 

「爆発!?た、大尉殿、どうすれば…」

 

「狼狽えるな軍曹。作戦は失敗だ。貴様は全速で進入口へ戻って退路を確保しろ」

 

爆発した地点から即座に状況を察したランバ・ラルは僚機のスレンダー軍曹にそう指示する。コズン少尉は好戦的ではあるが、潜入作戦で不用意に攻撃するようなバカではない。同行しているアコース少尉が慎重な性格であるし、間違い無くあの攻撃は退路確保のために残してきた伍長だろう。

 

「た、大尉はどうされるのでありますか?」

 

一人で戻らされるのが不安なのかそんなことを聞いてくる軍曹に兵の質の低下を感じながら答えてやる。

 

「工業区画でひと暴れして陽動をかける。心配するな、進入口にまだ敵は気付いていないから安全なはずだ。だがお前さんの働きが俺たちの命綱だ、頼むぞ」

 

「っ!了解しました!」

 

そう応えて元来た方向へ加速していくザクを見送ると、ランバは慎重に機体を降下させる。

 

「120ミリを持ってくれば良かったな」

 

90ミリは初速と貫通力に優れる一方、遠距離での速度減衰が激しく長距離射撃に向かない上、弾頭の炸薬量も少ないため固定目標の破壊活動には向かないからだ。最も今回は偵察の筈だったのでそれで十分だったのだが。

 

「まあコイツならコロニーの壁に穴は開くまい。恨んでくれるなよ?戦争だからな」

 

そう言うとランバは敢えて速度を殺しきらずに着地する。派手に巻き上がった埃と飛び散った瓦礫の中でゆっくり立ち上がりながら手近な倉庫へ発砲すると、近くに設置されていたタンクが可燃物であったのか派手に誘爆し辺りをオレンジ色に染め上げた。

 

「さて、上手くいくと良いが」




ちなみにジーンが撃っていたのは分隊支援火器として配備されている120ミリのヘビーバレルモデルです。威力も弾速も優秀ですが宇宙で連射するには反動がでかくて不便という脳内設定です。

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