ポケットモンスター 侵食される現代世界   作:キヨ@ハーメルン

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第10話 配信、序盤ポケモン達とモンスターボール

「はい、皆さんこんばんは。シロです。事前の告知通り、今日はお絵描き配信メインでいきますよ」

 

 東郷お爺ちゃんとアイドルネキとの話し合いから丸一日後。アイドルネキの迎えが明日に迫った夜、私は配信者として自分の机に着いていた。

 手元にはいつもの道具達。そして視線を動かせば……シロ民達の声がある。

 

『わこつ』『初見』『待ってた』『初見』『ワイも初見』『俺古参』『船の上で見る配信も案外いいわねー』

 

「はい、わこつです。初見さんはゆっくりしていって下さいね」

 

 各コメントに反応しつつ、視界に捉えたアイドルネキらしきコメから予定は順調らしい事を感じる。とはいえ配信中に話す話題でもないからスルーするしかないが。

 さて。

 

「今日はポケモンを二匹と、風景画を一枚書こうと思います」

 

 私はそう言いつつ手先を動かし、ポケモンを描いていく。頭に思い浮かべるのはポッポと同じ序盤鳥にも数えられる事のあるポケモン、オニスズメだ。

 オニスズメを選んだ理由は主に2つ。先日描いたのがポッポだという事と、オニスズメがカントー地方で比較的生息数の多いポケモンだと推測できる事。つまり、私の推測通りポケモンが現実に現れたのならば、人々が最初に遭遇する可能性の高いポケモンだからだ。

 

「ちなみに今日書くポケモンは、カントー地方でよく見かけるポケモンなんですよ。良かったら覚えて行って下さいね」

 

 そういう理由から選んだので当然こういう押し付けがましい事も言う。普段なら言っても疎外感しか感じれないから、絶対に言わない言葉なのだが……

 

『OK!』『なるほど、今日はそういうチョイスか』『まぁ、そうなるな』『むしろ有り難い?』『遠回しに備えろと……関東民は聞いてるな?』『聞いてる。有り難い』『関東活動部隊向けの内容になりそうだ』

 

 どうやらシロ民は概ね察してくれているようだ。関東で活動する有志の協力者達の助けとなればいいのだが……

 問題は。

 

『んんー予備知識いる感じかな』『カントー?』『ポケモン?』『あー、初見連中は混乱しかないか』『コメで補足してやるから読め、聞け、絶対損はしないから』『りょ』『ハードル高いのか低いのか分からんなw』

 

 初見の人達は置いてけぼりだと覚悟していたのだが、シロ民達が有能で助かった。これで初見の人達にも伝える事が出来そうだ。今は少しでもポケモン知識を持つ人を増やしておきたいからな。

 さて、そうこうしている内にも手はオニスズメを描き続け、まだ完成には遠いがオニスズメだと判断出来る程度には描き上がっていた。鋭い目付きに赤く小さな翼。我ながら、なかなか躍動感あるオニスズメが描けたと思う。……後で背景を付けてサイトに上げておくか。

 

『上手いな』『鳥?』『てか描くの早い』『まぁ、鳥だな』『オニスズメか。確かに出てきそうだ』『俺、ポッポも好きだけどオニスズメも好きなんだよな……』『浮気はよくないぞ』『ナイスボート』

 

 どうやら古参の人は概ねオニスズメの事を知っている様だ。そこそこ描いてるから不思議ではないのだが、覚えて貰えていると実感出来るのは嬉しい。刺されている人は……放っておこう。

 

『ナンバー21、オニスズメ。ことりポケモン。タイプ、ノーマル、ひこう。全長30センチ。鳥型のポケモンではあるが、羽が小さい為に飛ぶのは苦手。ナワバリ意識が強く、ポッポに比べて好戦的。食欲旺盛でむしポケモンを襲う事もある』

『有能ニキ有能』『速報、有能ニキ今回は有能!』『(`・ω・´)』

『へー、結構作り込んでるんだ』『そういえばそんなだったな』『鳥なのに飛ぶのは苦手なのか……』『てか大きい。大きくない?』『ポケモンにしては小さいぞ』『アイエエエ……』『むしポケモン好きのワイ。少し悲C』『アキラメロン。むしポケモンの宿命や』

 

 っと、どうやら今回はニキの仕事が間に合ったらしい。台詞を取られたと嘆くべきか、喋る手間が省けたと喜ぶべきか。まぁ、取り敢えず。

 

「ニキ、説明有り難うございます。初見さん達は楽しんで、シロ民は覚えて行って下さいね。……はい、オニスズメの完成です。色塗りは後日にして、次に行きますね」

 

『絵上手いな』『オニスズメイケメンやなぁ……』『なにせ鬼雀だからね』『それ語感が矛盾してないか……?』

『シロちゃん早足?』『今回は風景画も描くから、それやろ。まぁしゃあない』『てか今回は復習みたいな側面もあるからな』

『おら、初見はじゃんじゃんコメントで質問するんだよ。シロ民が答えるゾ』

 

「絵の上手さはちょっとした自慢なんですよ? 有り難うございます。オニスズメはイケメンさんですからね。……はい、今回は早足です。質問コメはシロ民の皆さんに任せますね」

 

 手早くコメントに答えて、次の紙にポケモンを描いていく。画面に流れるコメントを拾う事もせずに思い浮かべるのは……コラッタだ。

 紫色の体毛と突き出た前歯。手先はスルスルと動き、コラッタを描き出していく。スッスッと、あるいはシャシャっと。

 そうして特徴的な前歯を含む頭部を描き終えた私がチラリとコメントを覗いて見ると、意外と言うべきかシロ民は優秀だった。

 

『━━という感じでポケモンはシロちゃんのオリキャラゾ』『本人は否定するけどな』『なるほど』『りょ。後でウェキ見てくるわ』

『これはコラッタかな』『コラッタやね』『ネズミか』『ネズミだな』

 

 どうやら私がコラッタに集中している間に初見さんの質問に答えてくれていたらしく、何人かはまだ頭部だけなのにコラッタだと指摘してくる。こういうのは有り難いし、覚えて貰えているというのは嬉しい話だ。

 ……オリキャラ云々だけは、仕方ないとはいえ不満だが。

 

「シロ民の皆さん、質問への対応有り難うございます。えぇ、これはコラッタですよ。かなり数の多いポケモンで、1匹居たら40匹居るといわれるポケモンです」

 

『ナンバー19、コラッタ。ねずみポケモン。タイプ、ノーマル。全長30センチ。特徴的な前歯は一生伸び続けるので、定期的に削る必要がある。警戒心がとても強く、高い生命力と適応能力を持つ。放っておくとドンドン増える』

『有能ニキ有能……?』『たぶん有能』『速報、有能ニキ、たぶん有能!』『(`・ω・´)』

『まさにねずみ』『デカイねずみ』『作り込み凄いなぁ』『というかその説明だと台所の茶羽じゃないか……?』『あれよりは若干マシだろ。たぶん』

『ねずみ……そういえばねずみの遊園地、結構前に新しくなったんだっけ?』『あ、おい馬鹿ヤメロ』

 

 ニキが補足してくれたので、これ以上言う事が無くなってしまった。今回の目的上なら黙っていても問題無いが……ここはコメントを拾うか。うーん、そうだなぁ……G云々は触りたくないし、遊園地か? とはいえ。

 

「ニキ有り難うございますね。コラッタはニキのいった通りのポケモンですよ。……しかし遊園地ですか。楽しそうですよね」

 

 ニキを労い、遊園地に対して率直な感想を述べておく。楽し『そう』という推測なのは、今世では一度も行った事が無いし、前世でも学校行事なんかで片手で足りる程度しか行かなかったからだ。それに私は煩いところや人の多い場所は苦手だし、普通なら恐らく楽しいのだろうというのが正直な感想だった。まぁ、貸し切りとか人が少ないのであれば……

 

「ジェットコースターとか、面白そうですし……お化け屋敷とかもありですね。ゴーストタイプのポケモンとか出てきそうです」

 

 ジェットコースターは純粋な興味から。お化け屋敷はポケモン云々もそうだが、今のボディを勘案してのチョイスだ。前世のボディでは見栄えもクソも無いが、今世のボディならさぞ見栄えするだろうという安直かつ下世話な考えだった。

 

『セヤナ。ポケモンとか出てきそうやな』『ポケモンとかな!!』『ジェットコースターも楽しいと思うで!』『ゴーストポケモン見れるかもな!!』『なぁ、今何かニュアンスが……』『何で推測系……?』『黙れ、妙な事を言う奴は今すぐ黙れ』『闇に引きずり込むぞ』『ゴーストポケモンコワイヤッター』『闇深の気配』

『大丈夫。何の邪魔も無ければ遊園地行くから。何なら貸し切りでね!』『さすネキ』『流石はアイドルネキ。スケールが違うゥ!』

 

 ふむ、案外コメントが付いて来ていて驚きだ。幾つかよく分からないのはいつもの事だが……殆んどのコメが茶化してくるかと思っていたので、意外という他ない。

 しかしアイドルネキの貸し切り云々は……まぁ、流石にジョークだろう。ゲルマンジョークの親戚か何かだ。

 

「ゴーストポケモン、見てみたいですねぇー……はい、コラッタ完成です」

 

『相変わらず上手いな』『しかも早い』『安……くはないか』

『ねずみ?』『ネズミやな』『紫鼠や。出っ歯のな』『なお出っ歯過ぎると物が食えなくて餓死する模様』『不憫な……いや、アホなのか?』『アホ可愛いだろ?』『せ、セヤナー』

 

 ふむ、多少は印象付いただろうか? これでオニスズメやコラッタを含めたポケモンに理解が広がると良いんだが……その時になるまで何とも言えないか。

 さて、次は。

 

「では次の絵に行きましょう。次は風景画、モンスターボールを中心に描いて行こうと思います。」

 

 やはりポケモンといえばモンスターボールだろう。こいつに関する知識が無ければ、ポケモンを楽しむ事は困難だ。

 

『モンスターボール?』『あぁ、あの紅白玉か』『あれもよく分からん代物だよな……』『きのみみたいにアレが出てきたら……学者連中は失神するなw』『おら、説明ニキ出番やぞ』『(`・ω・´)』

 

 まぁ、きのみの様にモンスターボールがひょっこりと出てくれば、大なり小なり混乱は間違いなく起こるだろう。この絵とニキの説明で多少なりそれが緩和できると良いのだが……っと、そろそろ始めないと時間がキツいか。

 

「この絵は後でオークションに出すので、気になる人は買って下さいね」

 

 私はそう言って何時も使う紙よりも大きく、また上等な紙を取り出す。残りの時間では……全ての色塗りは無理か。仕方ない、さっさと取り掛かろう。

 鉛筆を手に取って、思い浮かべるのはモンスターボール。そしてその側で休むポケモン……そうだな、今回は序盤の虫ポケモンにしょう。ならばキャタピーとビードルだろうか? ━━よし。

 

「~♪」

 

 私はテキトーにチョイスしたポケモンの主題歌を歌いながら、スルスルと手を動かしていく。

 モンスターボール、キャタピー、ビードル。ならば背景は森。手は自然とそれを加味した動きになり、ラフではあるが大きな切り株を描き出す。そしてその上にポツリと置かれるモンスターボール。どこか寂しげだ。ならばと私はそれの側にキャタピーとビードルを描いていく。これで賑やかになった。後は背景に木々を描けば、ほら、優しげな木漏れ日が差し込んでくる。

 

『唐突に歌うなぁ……』『しかも完全新曲やぞ』『お歌シリーズがまた増えるな』『シロちゃん上機嫌やん』

『スッゴいなぁ』『ワカル。スゴイ』『上手いよね』『そして早い』『安くはないがな。また万行くだろ……コレ』『ラフスケッチでこれだもんな』『んー、今回は譲るわ。毎度私じゃ芸が無いし』『やはり買ったのは貴方か……』『あの値段じゃ安かったぐらいだけどね』

 

 チラリとずらした視線に入った情報によれば前回の絵はアイドルネキが買った様だ。7、8万の値がついたはずなんだが……そこまでの価値は無いと思うぞ?

 しかしニキの説明は終わったのか? それともまだか? そろそろ歌も品切れなんだが……

 

『モンスターボール。ポケモンをゲットする為に必要な球状の道具で、ポケモンを捕獲する能力を持つ。幾つか種類があり、最も基本的な物は紅白カラーをしている。ボールの中は快適な環境が保たれており、ポケモンの出し入れはスイッチやポケモン自身の意思に基づいて行われている様子。なおポケモンをボールに入れると縮小する様に見えるが、これはボールそのものの力ではない(シロちゃん&ポケモンまとめウェキより抜粋)』

 

「はい、モンスターボールについてはニキの書いた通りですね。詳しく知りたい方はまとめウェキへお願いします。長いので」

 

『セヤナ』『ニキ有能?』『かろうじて有能』『りょ、後で見て見ようかな』『(`・ω・´)』『関東活動部隊各員は必ずチェックしろよ。てか暗記しろ。俺はした』『俺もした。ていうかそれぐらいもうやってたよ』

 

 ふむ、関東で活動する有志の人達は思ったよりも本腰でやってくれる様だ。実に有り難い。……これならポケモンを、あるいはモンスターボールぐらいなら見付けれるかも知れないな。

 

「━━っと、一先ず完成です。ここから先は配信外で仕上げてオークションに出しておきますね。…………それと、この絵にあるようなボールを見掛けたらご一報……はしなくていいので、一つは確保しておくと良いと思いますよ」

 

『セヤナ』『ソレナ』『ワカル』『ワカル~』『まぁ、関東活動部隊の目的の1つはソコだからな』『政府より早くモンスターボールを確保し、シロちゃんに届ける……ハードなミッションだぜ』『やる意味しかないならやるけどな』

『なんかよく分からんけど、見つけたら確保しとくわ』『あれか、きのみ? みたいにコイツが出てくるって事か?』『気になった初見はウェキかスレに行け。そして仲間になれ。人手が足りん』『作戦エリアは関東全域だからなぁ……』

 

 うん? なんか思ってたより大規模にやるみたいなんだが……今回の配信は余計なお世話だったか? いや、結束を強め、新規を引き込むという意味では悪くないはずだ。

 

「んー、少しだけ時間が余りましたね。では、少しだけ雑談して終わりましょうか」

 

 私はそう言って描き掛けの絵を脇に置き、短い時間ではあったがコメントを1つ1つ拾って雑談していく。

 それが終わって配信が終了した後、私は描き掛けの絵を仕上げていった。バランスを整え、線を強くし、色を付け━━そうしているうちにも夜は更けていき……オークションに出す手続きを済ませて、ベッドに入り込んだ頃には日付が変わってしまっていた。

 ……アイドルネキとの合流まで、後数十時間。


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