ポケットモンスター 侵食される現代世界   作:キヨ@ハーメルン

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 普通のポケモン作品は他にもあるし、ランキングも落としたので……誰も着いて来ないのは百も承知で書きたいものを書いて差別化していく。


第33話 武装勢力、襲来

 ポケモンリーグの開催及び設立を祝うデモンストレーションが行われている……その最中。誰もが盛り上がっている会場内でただ一箇所、陰鬱とした空気が流れる場所があった。

 会場警備、その指揮所である。

 

「俺もなぁ、シロちゃんのバトル見たかったなぁ……」

「ならそこのモニターに張り付いてれば良いだろうが。そろそろ出番だろうし。というか退け。見えん」

「ちげえよ! 生で見たかったんだよ!」

「黙れ! お前は生ビール飲んでるんだから良いだろがっ! というか警備中に飲むな!」

「うるせぇ! これが飲まずにいられるかぁ!」

 

 キンキンに冷えてやがる……! 犯罪的だ……! 等と口走りながらビールをグビグビと喉に流し込むシロ民は、間違いなく酔っていた。

 だが、それをたしなめる者は居ても、本気で咎める者も止める者も居ない。その気持ちは大なり小なり分かるからだ。このポケモンリーグの開会式はずっと推してきた少女の晴れ舞台であり、今まであちこち走り回って努力し続けたシロ民達の努力の結晶でもあるのだから。ハメを外すなという方が難しい。……だが、喜んでばかりも居られないのが現実だった。

 

「そういえば、警察の人達は戻ってこれそうなのか?」

「あー……たぶん無理だと思うぞ。デモ隊が思ったより多いらしくてな。しかも既に暴徒化し始めてるらしい」

「そこかしこで煽ってる奴が居るっぽいな。まぁ、警察もそれは予測してるから機動隊の準備は終わってるはずだぜ? 何かあれば戦力を投入してくれるはずだ」

「それにそうなると見越してたから、会場警備はポケモンリーグ……まぁ、俺ら主体で進めてたからな。言うほど問題ないだろ」

「コミケとは訳が違うんだけどなぁ……」

「ポケモンが出て来てからこっち、荒事多かったもんな……そら慣れるわ」

 

 無数の通信機やモニターが置かれた指揮所の中で交わされる、シロ民の不安。

 それは急進するポケモン化運動に比例する様に過激になってきた反ポケモン派のデモ活動に対するものであり、ここが襲われるのではないかという懸念だ。反ポケモン派の説得をこれ以上は無理だと諦めたツケがいよいよ回ってきたとも取れる状況……だが、ポケモンに関しては基本的にタカ派で通っているシロ民に準備は抜かりなかった。増援の確保は前もって完了しており、警備自体にも支障は無い。

 とはいえ……問題が全く無い訳では無かった。

 

「けど、自衛隊は動けないんだろう?」

「まぁ、なぁ……戦争になった訳でもないし、テロの声明が出されてる訳でもない。ただ正体不明の武装勢力に襲われる可能性が高いってだけだ」

「偶然にも、偶然にもポケモントレーナーの自衛官が非番を利用して、偶然にも会場内に居るが……さて」

「はいはい偶然偶然。意図してない」

 

 警察はデモ隊の対応に忙しく、自衛隊も動けない。言い訳出来る範疇で戦力自体は確保しているものの、不安要素は残されていたのだ。法律関連での抜け穴等の事もあり、暗雲立ち込める状況。にも関わらず襲われる可能性は極めて高く……状況は極めて複雑かつ奇妙な事になっており、所謂、グレーゾーン事態に近かった。

 平時と有事の中間点、国軍を投入したり宣戦布告するには事態が小さく、かといって民間や警察組織では対応できない状況。にも関わらず国家の主権が脅かされている事態……そして、そんなグレーゾーン事態に置いて明確な答えなど無い。何をしても非難されるし、何をしても被害が出るのだ。しかも状況を打破するのはあくまで個人の決断に掛かっている。

 だがポケモンに決断を押し付ける事は出来ない。ならば、この場の個人の勇気ある決断はシロ民と……彼らの共通点である一人の少女にゆだねられていた。今後の地球秩序、パワーゲームの行く末、ポケモンの未来が。

 

「何事も無ければ良いんだがな……」

「シロちゃん、楽しみにしてたもんなぁ……でもまぁ、馬鹿は来るだろうなぁ」

「ポケモンに喧嘩売る奴なんて居ないと思ってるシロちゃんと、絶対居ると諦めた俺ら……どっちが正しいんだろうな?」

「俺らが間違ってて欲しいわ。今度ばかりは」

「ポケモンが新たなる鉄と血に、抑止力になれたかと聞かれれば……なぁ?」

「シロちゃん的には充分だと思ったんだろ。あれだけキャンペーン打って説明して回ったし、身銭を切って利益も投げまくったんだから。なお現実」

「ポケモン派が過半数とは言え……ため息が出るわ。シロちゃんじゃなくても人類の愚かさに闇落ちするぞ。こんなん」

 

 全人類が叡智を得る日はまだ遠く、地球人類の革新は未だならず。今なお人々は既存の価値観でポケモンを測っていた。だから、この混乱と闘争は必然だったのだ。

 ポケモンという新たなるフロンティア。絶大な力。膨大な利権。それらに集まる者共は数多く、特にパワーゲームに参加している大国からの目線は極めて熱く鋭い。グレーゾーン事態を活用し、リスクを最小限に抑えつつ成果を得ようとするのは殆ど間違いなかった。……無意識のうちに、ポケモンを格下に置いたまま。

 中心人物である不知火白や、その近くにいるはずのシロ民の対応能力を越え、日本国家の弱みを打ち抜き、強みを出させないままに。

 そして、誰もが懸念した通り、事態が動く。

 

「レーダーに反応だと? 間違いないのか」

「間違いありません。リヴァイアサン号からの報告では、突如として新たな反応が出現したとの事です。方位3-2-0。距離1キロ。コンテナ船の様だと事ですが……」

「南西1キロ? 東京湾内じゃないか。そんなところに突然……まさか、テレポートか?」

 

 始まりはリヴァイアサン号から入った奇妙な一報。コンテナ船が突如としてレーダー上に現れたという情報だった。まさかテレポートなのかと混乱が僅かに広がり……やがて誰かが呟く。やっぱりやって来たか、と。

 本音かネタか分からない一言。だが、それは全体に共有された。予想していた事だろうと。ならば。

 

「戦闘準備だ! 所定の計画に従って防衛線の構築、避難準備にかかるぞ!」

「おう!」

 

 誰かが叫び、誰かが答える。

 酔っぱらっていたシロ民にはラムの実──かなり硬い──が投げつけられ、各々が予定した通りに動いていく。ある者は前線へ、ある者は避難誘導へ、ある者は情報収集へ。そして、更なる報告が飛び込んでくる。大変だ! と。

 

「今警察の知り合いから連絡があったんだが、デモ隊が暴徒化しやがったらしい! こっちに向かって来てる!」

「だろうな。予測通りだ」

「それだけじゃねぇ。連中、道路を封鎖してやがるんだ。増援の機動隊は出動すらままならねぇ!」

「なに!?」

「そんなバカな!」

 

 入ったのは増援が到着出来ないという報告。

 そして悪い事は続くもので、あちこちから助けに行けないという報告が次々に飛び込んでくる。他の警察組織も、それどころか消防すらもデモ隊が邪魔で移動すらままならないと。それらをまとめると……ポケモンリーグの開会式場は孤立無援と化していた。明らかに、狙って起こされた暴徒化だ。

 誰かが息を飲む。予測されていたとはいえ、本当にここが陸の孤島と化すとは、と。

 そう、予測はされていた。ポケモンという大き過ぎる力を前に、どこかで大きな作戦が実行されるであろう事は。それに利益を計る大国の暗部の思惑や、プライドを捨てれない軍部の手が絡む事も。だが、だからといってホントにやらかすとは誰が予想しただろう? 誰もが予測はしつつ、現実的では無いと一笑していた破壊工作作戦……それが今、実現されようとしていた。

 

「リヴァイアサンCICよりシロ民各員に通達! 不明船から複数のブリップが出現、船自体もこっち目掛けて動き出した!」

「おいでなすったか……」

「屋上の観測員から連絡! 複数のヘリがこっちに向かってくる!」

「機種は?」

「初期型のハインドにイロコイ……とにかく沢山だ! 国籍表記は確認出来ず!」

 

 ハインド、Mi-24はソ連製の攻撃ヘリであり。イロコイ、UH-1はアメリカ製の汎用ヘリだ。

 つまり、あり得ない。お世辞にも仲の良いとは言えない超大国のヘリが並んで飛行するのは現実的ではなく、見張りのいう沢山という言葉は何も間違ってはいなかった。こんな事はあり得ないと。しかし、国籍表記が無いという事実が一気に現実味をかけてくる。あり得ないが、あり得るに。

 

「あくまでテロリストによるテロって形は崩さない気か……しかし、洋の東西問わずとはな。どこから支援を受けたのか、誤魔化す為か……?」

「いや、全部じゃないか? それが合同したんじゃ……」

「まさか。ロシアとアメリカが仲良しこよしでポケモン案件に挑んでいるとでも? テロリストを尖兵にしたてて?」

「ポケモンの戦闘能力を測りかねているのはどの国も同じだ。アメリカもロシアも、中国だってそれは変わらん。ヨーロッパもな。バカの計画に便乗しようっていうバカが少しぐらい居ても驚かんがね。それに送ったのは兵員じゃなく、武器だ。横流しぐらいならどこでも発生してる」

「そりゃそうだろうが、こうも派手に動くか? 普通。……いや、何かミスったか?」

「ポケモンが登場した時点で、スパイ合戦とそれに付随する軍事介入は避けられんだろ。ポケモンの強さ的に考えて。それより、避難誘導は?」

 

 ポケモンの戦力を測り、可能ならポケモン優位の流れを破壊する。一見ふざけた話ではあるものの、そうでもしなければ軍事力でパワーゲームでの優位性を確保していた国家は大打撃を受けてしまうのだ。事が極東で収まらないのなら、尚更。

 その為に大国が動いている……そんな事は分かりきっているのだ。ならば今はやれる事をやろう。そう口にしたシロ民が避難の状況を確認する。どうなっているんだ? と。

 

「マニュアル通り進めているはずだが……」

「パニックを避ける為、有毒ガス発生の名目で進めている。会場内での混乱は無い。抽選とか言いながら怪しいのを落として、選り好みさせてもらったかいがあったな……スムーズだよ」

「三割は何事もなく終わるとはいえ、残り七割の確率でこうなると予測してたからな……さもありなん」

「陸側のゲートから避難させているんだよな? だとすると避難完了まで持ちこたえる必要があるぞ。怪我人なんぞ出したらメディアから集中砲火をくらう」

「……現場から連絡があった。一部VIPは脱出成功だと。……早くね?」

「襲撃があるのを知っていたな? リストを作って……いや、脱出した連中はいい。民間人の避難を急がせよう。巻き込んじまったのは事実だ。人員は足りているのか?」

「ちょっと待て……ゲート近くが少し手薄だ。誰か行ってくれないか?」

 

 ここ数ヶ月荒事に従事し続け、人によっては軍事教練まで受けたのはダテではないという事か、慣れた様子で状況を話し合いつつ対応していくシロ民達。

 そんな彼らの話題は次から次へと変わっていき……やがて一人がポツリとこぼす。そういえば、と。

 

「シロちゃんの様子は?」

 

 その一言が出た瞬間、誰もが一斉に目を逸した。

 考えたくない現実だと言わんばかりに。

 

「ユウカ嬢&ハクリューとのポケモンバトルの直前だったんですよ」

「知ってる」

「無表情で、控え室に戻って行きました……」

「ガチギレですね。分かります」

「分かりたくねぇよ……」

「アイツら死んだな」

 

 予測では、最低でも彼女のポケモンバトルは出来る予定だったのだ。だからこそ盛り上げる為の演目が用意されたし、トーナメントも一応組んであった。チケットを販売して観客だって呼んだ。

 そもそもテロリストや大国側の理性が働いて襲撃されない可能性もあった以上、ポケモンリーグの開催をこれ以上延期する――既に数回延期されている――訳にもいかなかった。

 予想外だったのは、シロ民の予測を越えて連中が速過ぎた事。そして人類がポケモンをすんなり受け入れなかった事にあった。

 

「これ、シロちゃん闇落ちするんじゃ……え? 未だに誰もポチネキ止めれないんだけど? シロちゃんが人類粛清し始めても止められなくない?」

「止めれないなぁ。ポチネキもそうだけど、シロちゃんもスーパーマサラ人化してるから……仮に対物ライフルで狙撃しても無意味なのよね。戦略核兵器ならワンチャンあるけど」

「笑うわ」

「お前ら……その辺にしとけ。だいたいシロちゃんがニンゲンを殺す前にこちらで捕縛すればいいだろうが。というか、それしかない」

 

 襲われているというのになんとも間の抜けた話をしながら、それでもシロ民達は各々やるべき事を果たしていく。

 ポケモンとの未来の為に。

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