ポケットモンスター 侵食される現代世界   作:キヨ@ハーメルン

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閑話 大惨事ポケモン大戦

 皆さんこんにちは。

 司会のウィリアムです。

 

 今回は二時間の特別放送で、ポケモンと人との歴史を追っていきたいと思います。

 

 突然ですが、皆さん。我々人とポケモンの歴史の始まりはいったいどこでしょう? 遥か古代から存在する彼らとの始まりはとても古く、語り尽くせない様に思えます。

 ですが、実は明確に始まりがあったのを、ご存知ですか?

 

 

「人とポケモンの歴史の始まりをどこかと問われれば難しいです。答えようがありませんからね。しかし、決定的事件がどれかと問われれば簡単です」

 

 人類歴史学の権威、ジョン・スミス氏はそう言います。

 

「ポケモンリーグ襲撃事件。あるいは大惨事ポケモン大戦。当時そう言われた事件こそ、人とポケモンの歴史、その命運を決定付ける事件でした」

 

 それはなぜ? そんな疑問にジョン氏はある資料を見せてくれます。人類の二つある歴史書……旧人類歴史書と、ポケモン歴史書です。

 

「そもそも人類の歴史はポケモンの歴史とぶつかった結果、凄まじい改変を受けています。我々の歴史は二つあるのです。ポケモンの居なかった歴史と、ポケモンと暮らしてきた歴史。しかし、正しい歴史はポケモンと暮らしてきた歴史の方……なぜ、そんな事になったのか? それは我々が負けたからに他なりません」

 

 

「人とポケモンの差は圧倒的だった。旧人類はポケモンを上位者として受け入れるしかなかったのだ」

 

 旧人類の軍事学を教える、ハンス・シュミット教授は言います。

 

「旧人類の叡知は、まるで役に立たなかった。彼らが自信満々で持っていた銃も、砲も、ミサイルも、ポケモンに対してはオモチャ同然だったのだ。だからこそ、今現代、それらは申し訳程度に現存するのみとなっている。そんな物を持つより殴った方が早いとな。実際“波動の戦士”の力は……いや止めよう。あぁ正しく、負けるべくして負けた戦いだ。あれは」

 

 ジョン氏は言います。それが決定付けられた事件の始まりはポケモンリーグ開催と同時だったのだと。

 

「当時ポケモンリーグでは……あぁ、本人はこう言われるのを酷く嫌がっていましたが、しかし、事実として初代チャンピオンと呼ばれる少女、不知火 白のポケモンバトルがデモンストレーションとして行われていました。いえ、行われるはずでした」

 

 それと同時に起きた事とは何だったのでしょう?

 ジョン氏はそれにも答えてくれました。

 

「暴徒の襲来です。今では信じられないかもしれませんが、当時ポケモンを頑として認めなかった一団が居たのです。彼らはポケモンリーグ開催地の近くでデモを行っていましたが……突然、暴徒化しました。これは複数の勢力がコントロールした結果であり、煽動された暴徒は真っ直ぐにポケモンリーグ開催地へと向かいます。そして、ポケモンリーグ開催地を警備していた警官隊と衝突しました」

 

 その激突は非常に激しい物だったと言います。

 その原因の一つとして、ジョン氏は人数差があったと指摘します。

 

「辿り着くまでに幾らか分散したとはいえ暴徒は数千単位で存在しており、一方の警官隊は数百程度だったと言われています。圧倒的戦力差を前に、警官隊は戦力を集中しなければなりませんでした。それこそ、本来の業務である警備を疎かにしてでも。勿論、それ自体は間違いではありません。目の前に差し迫った暴徒が居るのですからね。しかし、それこそが、敵の狙いでした」

 

 

 

「会場の警備が手薄になった瞬間、彼らはテレポートして来たのだ」

 

 敵の狙いとは何だったのか?

 それに詳しく答えてくれたのはハンス教授です。

 

「かつてのいかなる戦史にも無かった、テレポート戦術が始めて人類の手で実行された瞬間だ。このときテレポートしたのは一隻の大型のコンテナ船……に偽装した輸送船だった。会場の直ぐ近くに現れたこの船には、多数の歩兵、戦車、攻撃ヘリ、汎用ヘリが搭載されており…………それらが一斉に解き放たれたのだ」

 

 それは歴史上でも類を見ない、テロリストによる異様な奇襲作戦だったと語ってくれました。

 

「先ずヘリ部隊がコンテナ船から離陸。次いでコンテナ船が……岸壁に激突した。コンクリートを捲り上げながら接岸した船から、戦車部隊が出撃。このとき会場を警備している警官隊は反対側で暴徒に襲われており、彼らテロリストは完全なる奇襲を果たした。会場は無防備だったのだ」

 

「歩兵、戦車、攻撃ヘリ、汎用ヘリ……限定的ながらも諸兵科連合を編成したテロリストを前に、民間人しか居ないポケモンリーグは成すすべがないかに見えた。しかし、そうはならかったのだ」

 

 

 

「不知火 白。デモンストレーションのバトルを中止させられたばかりの彼女が号令を下したのです。迎撃せよと。……諸説ありますが、彼女の性格的に間違い無いでしょう。敵対者には容赦無かったそうですから」

 

 ジョン氏は語ります。それこそ、旧人類史に於いて人とポケモンの関係性が方向付けられた、歴史的瞬間だと。

 

「年端も行かない少女だったと伝わる彼女。そんな少女の号令は、驚くべき事に実行に移されました。無防備な民間人を守る為、ポケモンの未来を守る為、多くの信奉者……シロ民達が立ち上がったのです」

 

 勇敢にもテロリストに立ち向かった民間人達。しかし、それはあまりにも無謀に思えます……が、ハンス教授はそうではないのだと指摘します。

 

「ただの民間人でしかない彼らが立ち上がれたのは、彼らに大きな勝ち目があったのも大きい。彼らは知っていたのだ。兵器ではポケモンを殺せないと。そして自分達もまた、同じであると」

 

 自分達もポケモンと同じ。それはどういう意味なのか? その疑問に答えてくれたのは、人体のスペシャリストであるアラン・スミシー博士です。

 

「スーパーマサラ人。当時そう言われていた、新人類としてのアドバンテージ。それこそ、彼らが終始強気でいれた理由でしょう。一説によると当時の彼らは“波動の戦士”として覚醒していたと考えられています。生半可な試練など、容易かったに違いありません。人の力が上か? ポケモンの力が上か? それを決める戦いが、あの日始まり、そしてその日の内に終わったのです」

 

 

「戦闘の結果など、言うまでも無い。ポケモンリーグ側の圧勝だ」

 

 ハンス教授は当たり前の事だと前置きして語ってくれました。酷くアッサリ終わったその事件の流れを。

 

「先ず先行したヘリ部隊が叩き落とされた。次いで戦車部隊が撃破され、生き残っていた歩兵部隊も包囲、捕縛された。双方の死者数はゼロだ」

 

「途中でリヴァイアサン号がポケモンリーグ側に付いた事、メタングに乗った御仁……当時最強だったスーパーマサラ人……サツマ人の参戦が決定的だった様だ。武装勢力は総崩れを起こし、会場に一発の銃弾も撃ち込めないまま撃破された」

 

「現代兵器群の完全敗北だ。これを受けて、人類はポケモンを受け入れていくしかなくなる。大国……あぁ、今や形骸と化した国家という枠組み、その頂点立つ者達は『精鋭部隊なら』あるいは『核兵器なら』と考えたらしいがな。しかし、そんな考えにならざるを得ない時点でお察し物だった。あの日、概ねポケモンを受け入れる方向性に入るしかなくなったのは間違いない」

 

 

 教授が語った事件の全貌。しかし、ジョン氏はそれだけではないと言います。

 

「ミュウツーの介入があったと考えて良いでしょう。死者が居ないのも、テロリストがテレポートで直接会場に入れなかったのもそれが原因だと。このテレポートの掌握は非常に強力で、この事件に血を残さず、過激な反対活動を行っていた者達も無力化され、次々と捕縛されたそうです」

 

「そして、初代チャンピオン。不知火白とミュウツーは少ない時間ですが対談したと伝えられています。どんな会話だったのかは不明ですが……きっと、人とポケモンの良き未来について語り合ったのでしょう」

 

 

 こうして人とポケモンは共に歩む道へと進んで行きます。

 そして、その道こそ、私達のいる今へと繋がっているのです。

 

 ポケモン大好きクラブ会長、スキゾー氏は言います。

 

「ポケモン、好きですねー」

 

 ポケモンを愛する心。それはこのとき既にあり、その流れが加速していく切欠に繋がっていく……そんな事件だったのです。




次話はpixivFANBOXとアマゾンで出してる商業作品の改訂作業が終わってから書きます。
私も生身なので、生活費がね……
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