さらば花粉! そしてこんにちは風邪。
まぁ風邪など花粉症の辛さに比べれば屁でもありませんが。
風邪の時の対策は気にしないこと。自分は元気だと思い込めばプラシーボ効果でなんとかなります←
流石に一日寝込みはしましたが、もう大丈夫であります。
皆様おはようございます。フリューア・アーデルハイト軍医中尉であります。
本日はお日柄も良く、絶好のハイキング日和です。
もちろん、向かうのは戦場でありますが。
「総員、傾注!」
ダキア軍、およそ六十万が我が帝国の領土を侵犯しているのだとか。
報告を受けたデグレチャフ殿は敵航空隊の有無、暗号化されていない平文での通信などを聞き、満面の笑みとかなりのご機嫌のご様子であります。
「さて、諸君。戦争だ――いや、戦争の様な代物の始まりだ!」
大軍も大軍、我ら大隊程度が向かったところで、どの程度の被害を与えられるか……。
そんな不安を抱いているのが隊員の表情から分かりますが、皆さんはご自身が飛べる事の優位性を理解しておられないのでしょうか?
まぁ正直、私もつい最近までは似たような考えでしたが、デグレチャフ殿と話をしていると彼女の考えが段々と分かってくるのであります。
人的資源という概念の事や、果たして「勝利」とは何か? そんな部分までも、デグレチャフ殿は何も知らない私に分かりやすく説明してくれたのです。
「折しも今日は、私の誕生日だ」
おや、奇遇ですね。私も誕生日であります。
……だからといって特にどうとは思いませんが。
「それを知ってか、ダキア公国からのご芳情だ」
ざわめく部隊ですがそれを気にせずデグレチャフ殿は続けます。
にしても、本当に巡り合わせがいいというか、まるで神の御意志のようです。
新設された大隊の初めての実戦が、数だけは圧倒的に上の相手で、しかし我ら大隊を脅かすような航空戦力は皆無で、さらには通信の暗号化さえ行っていない一時代前のような相手。
よき実弾演習とでも言いましょうか。あるいは、大隊の士気を上げる敵国提案のデモンストレーションと。
「さて、ここまでサプライズプレゼントの説明をしたが、一応反撃してくる……はずだ。まぁ落とされる間抜けどころか、軍医殿の手を煩わせる者は居ないだろうが、留意せよ」
その言葉を持って大隊の皆様は蒼い空へと向かわれました。
さて、私はと言いますと――。
「今回は、私の出番は無さそうです。――というか、この戦いで万一負傷する方が居るようでしたら、足手まといすぎて摘み取った方が今後のためのような気がしますね」
流石に付いていくのは足手まとい過ぎますので、大隊の少し後をのんびりと追従中であります。
軍医や衛生兵等は、戦時国際法により一応は保護されている存在ですので、高度を上げる必要も、速度を出す必要も、光学術式を用いた迷彩も不必要……の筈です。
流れ弾で負傷した衛生兵なんて山ほど見てますし、
「ではジェントルマン諸君。スポーツの時間だ!」
雲を抜け、デグレチャフ殿の声を受けて下を見れば、お出ましですね。
前情報の通り六十万かは分かりませんがワラワラと動いております。
「奴らに文明の鉄槌をたたき込んでやれ!!」
その檄を合図にそれぞれの部隊が展開。地を這うしか能の無いダキアの連中へ無慈悲な射撃を披露します。
「困ったな。……やることが無いぞ」
「私の場合、やることが無いのは優勢の証ですので、素直に喜びますけどね?」
言葉の通り、本当にやることが無く、停止していたデグレチャフ殿に追いつき、会話の相手をします。
「まぁ、たかが三個師団如き、ラインの地獄を思えばこの程度だろう」
「同感です。こんな楽な戦争――失礼。スポーツをしていたとラインにいる方に話せば、激怒されてしまうかもしれませんね」
「そうだな。ラインにいる連中にはこの話題をしないことにしよう」
そんな会話をしていると、セレブリャコーフ少尉がおずおずと口を挟んできました。
「お二人方とも――その……三個師団ですよ? 常々思うのですが少佐殿と軍医中尉殿の感性はちょっと……」
はて? いくら数が多いといえど、鷹がネズミに手こずると? 烏合の衆という言葉を知らないのでありましょうか。
「スマン。セレブリャコーフ少尉。貴官が正しいようだ」
内心でセレブリャコーフ少尉に呆れていましたが、デグレチャフ殿は違ったようです。
「正しくは五万弱の暴徒ないしは群衆と表現すべきだった。うっかり師団と呼んでしまったことで、とんだ誤解を与えたようだ」
あぁ、なるほど。自分らと同じ兵と勘違いしていたと。なるほどなるほど、であるならばその勘違いは納得出来ます。
……あの眼下で逃げ回り、無駄な反撃しかできない無能共に、デグレチャフ殿の再教育プログラムを完走出来るとは思えませんし、皆様が付けている装備も、連中は身に付けていません。
客観的に見ても、こちらの方が最低でも一騎当千かと思われますがね。
「全く、私としたことが」
ご自分の説明不足、あるいは表現不適切によるせいだと、デグレチャフ殿はセレブリャコーフ少尉をフォローしました。
このように自らのミスをあっさりと認め、たとえ部下にでも謝罪を行うのは部隊を預かる者としてとても大事なことと思います。
……ほとんどの上官が出来ていないように思えますがね。
さて、あまりに皆様がご機嫌にスポーツを楽しんだためか、ダキアの連中に動きがあったようです。
何やら密集していくようですが……何をするつもりでありましょうか?
時に小さな存在が、大きな存在を脅かす脅威になるというのは創作の話で見聞き致しますが、何故創作でしか見ないかをまともに考えた方はおられるでしょうか。
ご機嫌よう。フリューア・アーデルハイト軍医中尉であります。
どうやらまともに思考する事すら放棄したらしいダキアと現在交戦中……失礼、戯れ中であります。
時代遅れも甚だしかった連中ですが、大隊として収穫はあったと思われます。
あぁ、先ほどの質問の答えでしょうか。
現実的に有り得ない事だから。であります。
次回 幼女軍医 「少佐のいたずら」 ではまた、戦場で